——地下にくらい世界があつて、魔物がいると考えられている。 これは異郷説話の一つである。 火の神を斬る部分は鎭火祭の思想により、黄泉の國から逃げてくる部分は、 道饗祭の思想による。黄泉の部分は、主として出雲系統の傳來である。 そこでイザナギの命の仰せられるには、 「わたしの最愛の妻を一人の子に代えたのは殘念だ」と仰せられて、 イザナミの命の枕の方や足の方に這《は》い臥《ふ》してお泣きになつた時に、 涙で出現した神は 香具山の麓の小高い處の木の下においでになる泣澤女《なきさわめ》の神です。 このお隱れになつたイザナミの命は 出雲の國と伯耆《ほうき》の國との境にある比婆《ひば》の山にお葬り申し上げ…