中国で発達した文学、または中国語で書かれた文学のこと。
それらの作品や作家を研究する学問のこと。「文学」という語の最も古い用例は『論語』先進篇にあり、孔子が弟子を才能別に4つのタイプに分けた孔門四科(徳行・言語・政事・文学)の一つとしてあげられている。前9世紀ごろの詩を含む「詩経」を最古の作品とし、詩文にすぐれた作品が多いが、元・明代以降は小説や戯曲も発達した。
日本・朝鮮文学の紹介 中国人から見て朝鮮人は野蛮人、日本人は禽獣なので、近代以前に日朝の作品を読んだ中国人は皆無に近かっただろう。錢稻孫(1887〜1966)による『源氏物語』の中国語訳が出たのは1950年代で、アーサー・ウェイリー(1889〜1966)による英語訳(1925〜33)よりだいぶ遅い。韓国語訳に至っては、1999年に出た3巻本の抄訳が最初らしい(聯合ニュース 2007-01-15)。 『春香伝』は半井桃水(1861〜1926)が1882年に日本語訳を大阪毎日新聞紙上に連載し、ホレイス・ニュートン・アレン(1858〜1932)が1889年に英訳している。1936年にはロシア・バレエ…
小説の発展 宋代の歴史講談は、鎌倉時代に琵琶法師が『平家物語』のような軍記物語を語ったのと似た演芸と言えよう。『平家物語』の場合、琵琶法師の語りを記録した語り本以外に、読み物として増補された読み本が14世紀には流布していた。中国ではすでに金代(1127〜1234)に最初の白話伝奇小説『董解元西廂記』が印刷出版されたのに続き、元代(1234〜1368)には白話歴史小説「全相平話」シリーズが刊行された。これは殷周革命から三国時代までの歴史(必ずしも史実とは限らない)を描いた絵入り本五巻から成るが、小松謙によると実際には八巻あったかも知れないという。ともあれ「全相平話」のうち『三国志』は最もよく売れ…
この文を構想したのは、金台俊『朝鮮小説史』を読み直して「なんかショボいな」と感じたのがきっかけだった。日本や中国と比べてどうショボいのか考えてみるために、中国文学史の入門書も読んでみた。以下でまともに読んだのは引用文献にあげた本だけで、言及した文学作品は読んでないものだらけである。 金台俊(安宇植訳注)『朝鮮小説史』平凡社東洋文庫, 1975. 古代の詩文 インドの『リグ・ヴェーダ』、中国の『詩経』、日本の『万葉集』は、各国(言語圏)最古の文献が詩集である点で共通している。詩集ではないが、メソポタミアの『ギルガメッシュ叙事詩』、エジプトの『シヌヘの物語』、ギリシアの『イーリアス』等も、各言語最…
『三体Ⅱ』下巻 「黒暗森林」 読了!感想と深掘り(ネタバレあり) ※注意※ この記事には小説『三体Ⅱ 黒暗森林』のネタバレが含まれますので、未読の方はご注意ください。 読み終えた感想:圧倒的な面白さに大満足! いやー、ついに読み切りました!一言で言えば「めっちゃ面白かった!」です。これほどのボリュームがありながら全く失速せず、むしろ物語のスケールと緊張感が加速していくのが驚異的でした。 序盤から予想を超える展開の連続 特に下巻からの展開には驚かされっぱなしでした。時間が大幅に進んでおり、「どんな未来が描かれるのか?」とわくわくしながらページをめくる手が止まりませんでした。 面壁者(ウォールフェ…
本日は、聴講生として通っているB大学で講義と演習に出席した。 まず2限の中国文学の講義。私は今の中国は好きではないが、この授業はなかなか興味深いものだった。中国では紀元前1000年ぐらいの殷の時代に描かれたと思われる詩が残っており、当時の人々の恋愛思考が現代とさほど変わらない形で残されていた。また、時代は遡って杜甫(712〜770)の書いた詩では、戦争に送られた人達の気持ちが生き生きと描かれている。教授は、このような詩が有名にならないから戦争が終わらないと述べておられた。 4限は哲学演習。ブログには書かなかったが、先週私が担当範囲を報告し終わっていたので、楽な気持ちで演習に参加できた。学者の哲…
隠公元年の和訳の4回目。原文、和訳の段落頭にある数字は各々が対応していることを示す。 今回からは原文の引用元サイトの段落ごとに、内容解説と疑問点を統合した上で注釈とし、原文、和訳、注釈を続けて書くことにする。引用元は「中国哲学書電子化計画」*1。 *1:https://ctext.org/chun-qiu-zuo-zhuan/yin-gong-yuan-nian/zh
隠公元年の和訳の3回目。原文、和訳の段落頭にある数字は各々が対応していることを示す。※この記事は私的な勉強のためです。ブログ主は専門家でないからあんまり真に受けないでね。 原文 1元年,春,王周正月,不書即位,攝也。2三月,公及邾儀父盟于蔑,邾子克也,未王命,故不書爵,曰儀父,貴之也,公攝位,而欲求好於邾,故為蔑之盟。3夏四月,費伯帥師城郎,不書,非公命也。 4初,鄭武公娶于申,曰武姜。生莊公及共叔段。莊公寤生,驚姜氏,故名曰寤生,遂惡之。愛共叔段,欲立之。亟請於武公,公弗許。及莊公即位,為之請制。公曰:「制,巖邑也,虢叔死焉,佗邑唯命。」請京,使居之,謂之「京城大叔」。*1 原文 和訳 内容…
今日から漢文の勉強を兼ねて『春秋左氏伝』和訳をアップしていくことにする。原文は「中國哲學書電子化計劃」*1から引っ張ってきている。文法の参考書は『漢文の読み方』(宮本徹、松江崇編著、放送大学教育振興会、2019年)、辞書は『新漢語林第二版』(大修館書店、2011年)を使う。訳の確認や参照のために小倉芳彦訳の『春秋左氏伝』(岩波文庫、全3冊)を手元においておく。 *1:古代の漢籍は有名所はほぼ網羅している素晴らしきサイト。原文参照に大変便利だ。
中国のはなし: ――田舎町で聞いたこと 作者:閻 連科 河出書房新社 Amazon 『中国のはなし-田舎町で聞いたこと』 閻連科著 飯塚容訳を読む。 作者が母の誕生日のパーティーのため、郷里に帰る。宴が終わった後、とある若者が作者に自分の家族の隠された話を囁く。そこから話が始まる。 家族は河南省の田舎の町に住んでいた。中国の改革によりその恩恵を受けたり、商売が当たって金持ちになり、町は新築ブームに沸いていた。ところが、この家族、商売下手な父親は西瓜を売って、母親はマントウを売ってささやかな日銭を稼いでいた。家もみすぼらしい。宅地だけはあるが、いつ新築できるのか予定はまったく立たない。当然のこと…
R読書会 2024.03.02【テキスト】『年月日』閻連科、谷川毅訳(白水社)【参加人数】5名(感想提出1名)※オンラインでなく対面形式でした。 <推薦の理由(参加者A)>とても印象に残っていた本。トウモロコシなど身近なものを登場させ、主人公を苦しめている自然を創り上げているのがすごい。この読書会には自分で作品を書いている方が多いので、参考になるのではと思い、推薦させていただいた。E:いつ頃読まれたんですか?A:3年くらい前です。大江健三郎が「すごい想像力」と評しているのを知って手に取った。素晴らしかった。F:著者の作品で最初に読んだのが『年月日』ですか?A:いいえ。『愉楽』『太陽が死んだ日』…