五 Five けれども彼の異常に対する嗜欲はなかなかこれくらいの事で冷却しそうには見えなかった。 However, his desire for anomalies didn't seem to cool down because of this. 彼は都の真中にいて、遠くの人や国を想像の夢に上して楽しんでいるばかりでなく、毎日電車の中で乗り合せる普通の女だの、または散歩の道すがら行き逢う実際の男だのを見てさえ、ことごとく尋常以上に奇なあるものを、マントの裏かコートの袖に忍ばしていはしないだろうかと考える。 He's in the middle of the city, not only en…