「竹部さんですか?」 「はい。ほんとに来たんだ」学生は端末に視線を落とす。「もういいでしょう」 立ち上がって歩き出しそうな彼女を鈴木は両手で制した。「ちょっと、もう少しだけ。学生証があれば見せてください」 「もうっ!」学生は用意していたようにコートのポケットから手帳を取り出した。 問題はない、顔写真も当人であるようだ。住所も符合する。 「国道沿いのマンションの部屋をあなたが親に内緒で借りていたのですか?」 「はぁ、何を言って。だから、時間がないって何度も……」彼女は学生所を取り出したポケットを探り、端末に出た。「もしもし、うんわかってる、もういくから、席取っといて」端末を切った。「仕送りだけで…