超越というのは人間にとって一つのテーマではないかと思います。重力に引きずられた肉体とその制限の影響を多分に受けやすい頭脳が所与の条件を超越したいという願望をもつのはある意味自然なことです。今日はこの超越に関して哲学的な方面から書いてみます。 私は超越という言葉を考えるとき、カントのことが思い浮かびます。私は西洋的な厳密な学としての哲学の素養が少し欠けているので、カントの議論についていくことは満足にできず、カントの言葉とそれに関する適切と思われる解説を見比べてカントをごくわずかばかり理解してきました。認識のプロセスを明らかにするのが超越論的意識であるという人がいますが(超越論的ということ:カント…