江戸と京を繋ぐ中山道のほぼ真ん中が木曽である。その木曽十一宿のうち、信濃国の北に位置し、江戸からくると「贄川 ・奈良井 ・ 藪原 ・ 宮ノ越」と続くのが上四宿。本作は、薮原宿の名産「お六櫛」を製作する父・吾助の櫛挽きに魅了され、父の櫛挽きの技を継承しようと一途に精魂を傾ける長女・登瀬の生き方を克明に描き込んでいく。 「お六櫛という薮原名産のこの櫛は、飾り櫛とも解かし櫛とも異なり、髪や地肌の汚れを梳(くしけず)るのに用いられている。なぜ『お六櫛』と呼ばれるようになったのかは登瀬も詳しくは知らぬのだけれど、頭垢(おろこ)をとるからだとも、昔お六というおなごが頭の痛んだときにこの櫛を使ったら痛みが消…