子供の頃住んでいた町には本屋さんがなかった。 一番近い本屋さんは隣の市まで行かなくてはいけない。 子供の足では到底行ける場所ではなかったので、月に一度父に本屋さんに連れて行ってもらえるのが楽しみで仕方なかった。 月に一度一冊だけ本を買ってもらえる。そんな父との約束が始まったのは小学一年生からだったと思う。 都会のような大きな本屋さんではなかったが、子供の私にとってはそれはもう天国のような場所だった。何百冊もある本の中から一冊だけを選ぶ。あれもこれも読みたいけれど一冊だけ。 悩み、選び抜いて買ってもらった本は私の宝物となった。一ヶ月間はその本を何度も読む。月末にはその本を開かなくても暗記できるま…