『近畿地方のある場所について』背筋著(KADOKAWA, 2023.8) 斜面の上に人が住み、斜面の上に死者が眠っている。 長崎は、そんな街だ。至る所に墓地がある。都会のように大きな墓地公園はない。おそらく、入り組んだリアス式の地形のためだろうが、他にも理由があるのかもしれない。 僕が中学時代を過ごした家は、まさに斜面の上にあった。 その家と小さな道を挟んだ下側に墓地があった。夏の日、部屋の窓を開けると、長崎(九州)特有の墓の金色の文字がまぶしく反射していた。お盆が近づくと、夜遅くまで爆竹の音が響いていた。中学生の僕は、特別死者や霊を意識したことはなかったと思う。 でも、僕ら中学生は怪談が好き…