生まれた日を祝う記念日。
プレゼントをもらったり、誕生日ケーキを食べたりする。
誕生日ケーキの上に、年齢分のろうそくを立てて吹き消したりもする。
年を取るたびに余り楽しみではなくなる人も。
実は、この日まで生きてきたということについて、産み育ててくれた親や周りの人に感謝を表す日なのです。
誕生日に年を取ると思っている人が多いと思いますが、それは違います。
確かに記念日はその当日にお祝いすることが多いのですが、それは暦による期間計算の原則的な考え方にすぎません。
暦による期間計算には、
1.初日は省き、翌日を起算日とすること(民法第140条)
2.期間は、起算日に応当する日の前日に満了すること(民法143条第1項)
という二つの原則があります。この原則を適用しない場合は、別途法令や判決、契約書などで明示しなければなりません。(民法第138条)
期間の満了は、翌日の応当日の前日ですから、結局初日と同月同日になります。これが原則です。
しかし、年齢計算に限っては、例外的に起算日を翌日ではなく初日としています。原則を適用しない場合は法令等で明示しなければなりませんので、きちんと「年齢計算ニ関スル法律」という法律で定められています。その内容は、次のとおりです。
1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
2 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
3 明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス
年齢計算において「初日」とは出生日のことです。原則どおりこれを省いてしまうと、生まれたばかりの赤ちゃんは、その日の夜中の12時までは「人」として扱われなくなります。生まれた以上、胎児から人になったわけですから、生まれた時刻に関係なく、その日から年齢計算のカウントを始めるべきですよね。
満了日はあくまで起算日応当日の前日です。起算日が1日前倒しされたわけですから、満了日も1日前倒しされ、誕生日の前日となるわけです。
時間の単位が「日」の場合は以上になりますが、「時刻」までみるとなると、加齢は誕生日前日の午後12時です。とにかく「満了」ですから、起算日応当日の前日の全24時間まで満ちて、終了です。
この時刻は、誕生日当日の午前0時と全く同じ瞬間ですが、属する「日」は明らかに異なります。法令で「日」を基準としている場合は、誕生日前日の初め(午前0時)からその権利義務は発生していますので、注意が必要です。逆に、法令で「時刻」を基準としている場合は、誕生日前日の午後12時になって(誕生日を迎えて)初めて権利義務が発生します。つまり、各個別の法令における年齢規定の時間の単位が「日」か「時刻」かで、権利義務の発生する時刻が丸24時間違うわけです。
また、ここでいつも話題になるのが「早生まれ」ですが、学校教育法第17条第1項によると、
第十七条 保護者は、子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満12歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。(後略)
となっています。「達した日」「翌日」とありますので、時間の単位は「日」ですよね。
前述のとおり、加齢は「誕生日の前日」となりますので、この条項でいう「満6歳に達した日の翌日」とは、すなわち「満6歳の誕生日」ということになります。また、「学年の初め」とは4月1日です(学校教育法施行規則第59条)。
つまり、この条項は「保護者は、子の満6歳の誕生日以後における最初の4月1日から(中略)、これを小学校等に就学させる義務を負う。」と規定しているわけです。このような回りくどい言い方をしているのは、平年には誕生日が存在しない2月29日生まれの人に配慮しているからです。
その上で「以後」です。法令で「以後」とは基準日時を含みます。
よって、4月1日生まれの人にとっての「最初の4月1日」とは、まさに「満6歳の誕生日」の当日ですので、その人は同級生の中で誕生日が最も遅くなり、早生まれに含まれるわけです。