マンホールのふた「家“栽”」表記の謎 人気漫画を先取り? - 西日本新聞(2018年6月4日)

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/421779/
http://archive.today/2018.06.04-063126/https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/421779/


少年審判の舞台となる福岡家庭裁判所(福岡市中央区大手門)に、知る人ぞ知るマンホールのふたがある。本来なら「家裁」と記されているはずが、よく見ると「家栽」。「裁」の字が「栽」になっているのだ。少年を裁くのではなく、育てる(栽培する)との意味が込められているのか。8月の家裁庁舎の移転を前に、ふたの歴史に迫った。
「家栽」と記されたふたがあるのは、裁判所の敷地内にあるマンホール約30カ所のうちの12カ所。「なぜ『裁』ではなく『栽』なのか、事情は分からない」(福岡地裁総務課)という。
ふたを見ると「FUKUOKA SETO」の文字が。特命取材班が九州の鋳造メーカーをたどると、福岡県新宮町の「瀬戸製作所」に行き着いた。「うちで作ったもので間違いありません」と瀬戸浩嗣(こうじ)社長(55)。家裁庁舎の新築工事の際に納入したという。
家裁を舞台にした「家栽の人」という漫画がある。テレビドラマにもなり、人気を博した。
漫画の影響ですか? そう問うと、瀬戸社長いわく「そうではなくて、どうやら単純に『裁』の字を『栽』と勘違いしてしまったようです」。家裁庁舎の新築工事は1975年。「家栽の人」が漫画誌に連載されたのは87年から96年まで。確かに時期が合わない。
納入当時の完工検査では間違いを見抜けず、96年の改修工事の点検中に、家裁職員が気づいたという。「誤記はあってはならないこと。お取り換えしますと申し出たら『施設の管理・運営上、支障はない』というご返答だったと思います」と瀬戸社長。家裁側の粋な計らいにも思える。
      ■
家栽の人」は、心優しい裁判官、桑田義雄が主人公。この作品に触発されて法曹の道を志した人も少なくない。
福岡県弁護士会で非行少年の更生支援に取り組む知名健太郎定信(ちなけんたろうさだのぶ)弁護士(43)もその一人。「家栽の人」の原作者で、長崎県佐世保市出身のフリーライター毛利甚八さん(1958〜2015)と交流があった。
毛利さんから「福岡家裁のマンホールのふたには『家栽』と書いてあるらしい」と聞き、実際に見つけた。画像を毛利さんにメールで送ると、「すごいですね」と喜んでくれたという。
毛利さんが「栽」の字に込めた思いは、「審判は懇切を旨として和やかにこれを行う」(少年法22条)。植物をめでるように人を愛する主人公も、この条文のイメージから生まれた。
少年犯罪を巡っては近年、厳罰化の流れが定着している。政府の法制審議会は、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げることを検討している。
毛利さんは3年前に亡くなる直前まで、こうした議論に懸念を示していたという。知名さんも「19、20歳は『教育』がまだ意義をもつ年代。引き下げるべきではない」と反対する。
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福岡家裁は地裁、高裁などとともに今年8月、九州大六本松キャンパス跡地(福岡市中央区六本松)に移る。「家栽のふた」はどうなるのか。福岡家裁総務課によると、移転後に残る旧庁舎はふたも含め、財務省の所管となる。取り扱いは決まっていないという。
「あのふたがなくなると、『家栽の人』の精神が薄れるようで寂しい」と知名さん。「どうにかして買い取ります。一つは弁護士会館に、もう一つは毛利さんの墓前に供えたい」
現実には、漫画のように理想的な結末ばかりではない少年事件。それでも、ただ裁くのではなく、少年の可能性を信じ、育てる姿勢を持ちたい−。そんな心を持った法曹人たちが、偶然にも毛利さんの遺志が刻まれたふたを守る方策を思案している。

(政界地獄耳)首相外遊中に歴史は動く - 日刊スポーツ(2018年6月7日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201806070000226.html
http://archive.today/2018.06.07-005719/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201806070000226.html

自民党筆頭副幹事長・小泉進次郎は6日、加計学園獣医学部新設をめぐり「どう考えても『愛媛県にうそをついた』というのはおかしい。(国会に)特別委員会を立ち上げてほしい」と発言した。小泉発言は政界に及ぶ影響が大きい。だが、国会に特別委員会が設置される機運はない。5日の自民党総務会では、財務省の決裁文書改ざん問題の調査結果に批判が噴出した。「当事者だけで作った報告書は信用できない」「なぜ改ざんが行われたのかや、国有地の値引き理由も明確ではない」に始まり、元財務省理財局長で前国税庁長官・佐川宣寿の「停職3カ月相当の処分は甘い」にまで話題は広がった。
★総務会長・竹下亘も「一定のことは書いてあったが、ストンと落ちる状況ではなかったというのが正直な感想だ」と苦言を呈した。その竹下は派閥の会長就任祝いとして5日夜、首相・安倍晋三の招待で会食した。約3時間の中身はなかなか漏れてこないが、政局認識、総裁選と多岐に及んだものとみられる。自民党総務会の財務省批判は、野党のそれと立場は違うものの、一体化し始めた。自民党からも副総理兼財務相麻生太郎辞任論が高まれば、事実上の倒閣運動に飛び火することは明白。麻生の責任論は首相の責任論に直結する。まして首相発言が文書改ざんの契機となっていたとなれば、なおさらだ。
★与党は慎重に推移を見守るが、麻生問題は政権の存命に直結する。政界関係者が言う。「6日に首相が日米首脳会談、カナダのG7に向かう。帰国は11日の予定。この間に秋の総裁選の行方が決まるだろう。主人公が外遊中に歴史は動くものだ」。党内が水面下で動きだすのは、麻生降ろしと安倍3選阻止の2段構え。与野党対決の構図になっている新潟県知事選(10日投開票)の結果も影響するだろう。政局はこの週末、1つのヤマを迎える。(K)※敬称略

自民の選挙改革 ご都合主義が目に余る - 東京新聞(2018年6月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018060702000140.html
https://megalodon.jp/2018-0607-1021-56/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018060702000140.html

「抜本的な見直し」とは懸け離れた「小手先の見直し」との批判は免れまい。自民党参院選挙制度改革案。理念を欠き、地方組織の不満解消を最優先にした弥縫(びほう)策だ。ご都合主義が目に余る。
自民党の合同部会がきのう来年の参院選から導入する選挙制度改革案を了承した。総務会での了承を経て法案を今国会に提出し、会期内の成立を目指す、という。
改革案の柱は二つ。一つは議員一人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数を二(三年ごとの改選数では一)増やすこと。もう一つは比例代表の定数を四(改選数では二)増やし、名簿順位を付けない現行制度の例外として、各党が事前に定めた順位に従って当選者を決める「拘束名簿式」の特定枠を導入することだ。
鳥取・島根」「徳島・高知」をそれぞれ一つの選挙区に統合する「合区」と「十増十減」の定数見直しを行った三年前の前回改正では、二〇一九年の参院選に向けて「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする」と、改正法の付則に盛り込んでいた。
自民党の改革案は「抜本的な見直し」という、国民との約束を果たす内容とはとても言えない。
半数改選という憲法上の制約がある参院で定数増による「一票の不平等」是正は一概には否定しないが、そもそも埼玉の定数を増やしても、三倍近い格差が残る。
最高裁が前回一六年参院選での格差三・〇八倍を「合憲」と判断したのは、抜本的に見直すとした立法府の姿勢を評価したからにほかならない。自民党案は投票価値の平等を追求する真剣さを欠く。
さらに問題なのは特定枠の導入だ。「国政上有為な人材」らの選出を名目に、対象人数などは各党の判断に委ねてはいるが、自民党の狙いが、合区対象県で公認に漏れた県の候補を比例代表で救済することにあるのは明らかだ。
これまで主張してきた憲法改正による合区解消が難しいからだろうが、自党の議席維持を優先する場当たり的な対応と批判されて当然だ。
参院選挙制度改革では故西岡武夫氏が参院議長当時に全国九ブロックの比例代表制公明党が十一ブロックの大選挙区制を提唱したことがある。抜本改革の参考になるのではないか。
選挙制度の抜本見直しは本来、衆参それぞれの権限や役割などに踏み込んで議論すべきである。それを怠ってきた責任は、与野党が等しく負わねばならない。

参院選挙制度 自民案は露骨な党略だ - 朝日新聞(2018年6月7日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13529397.html
http://archive.today/2018.06.07-012914/https://www.asahi.com/articles/DA3S13529397.html

自民党がきのう、参院選挙制度の改革案をまとめた。懸案の「一票の格差」の是正より、現職の「保身」を優先させた内容で、「改正」の名に値しない。今国会で成立をめざすというが、認められない。
自民案は比例区で4、埼玉選挙区で2、定数を増やす。3年ごとの改選数は比例区が48から50に、埼玉は3から4になる。
さらに、個人名得票の多い順に当選する比例区に、各党が優先的に当選させられる特定枠を設ける。ここに自民党の露骨な党利党略が見える。
参院選では前回から「島根と鳥取」「徳島と高知」が合区した。この4県で来年、自民現職が1人ずつ改選を迎える。特定枠は「有為な人材確保」のためというが、選挙区から出られなくなる現職2人を比例区で救済する狙いがあからさまだ。
比例区はもともと、政党が当選順位を決めていた。それを約20年前、野党の反対を押し切って、得票順に当選する現行方式に変えたのは自民党だ。一部とはいえ、かつて否定した「政党による名簿順決定」の復活など、ご都合主義が過ぎる。
参院格差是正は長らく、総定数を増やさずに都市部と地方の定数の増減で対応してきた。13年選挙では「4増4減」、16年は「10増10減」のうえ合区を導入した。
自民党は今回、党内にも異論のある「定数増」を打ち出した。一票の格差は前回の3・08倍から2・98倍へ。3倍未満に収まるというが、埼玉選挙区で激戦を繰り広げる公明党への配慮がにじむ。
前回の定数是正の際、各党は改正公職選挙法の付則に19年選挙に向けて「抜本的な見直し」を検討し「必ず結論を得る」と書いた。自民案のいったいどこが抜本的な見直しなのか。
この間、自民党は「改憲による合区解消」を一方的に唱えてきた。強引な改憲案を降ろす代わりが、この案だ。民主主義の根幹にかかわる選挙制度の見直しを、こんな乱暴な議論で進めていいわけがない。
本来、選挙制度改革は衆参両院の役割分担を踏まえ、両院が一体的に取り組むべきだ。
参院については、既にいくつか改革案が示されている。選挙区を廃止し、全国を9ブロックの比例代表制にする。全国を10ブロック程度の大選挙区制にする。定数増の場合は議員の経費を大幅に削る、などだ。
来年の参院選まで残された時間は少ない。付則の約束を果たすため、各党は即刻、真剣に改革論議をすべきだ。

外国人就労の受け入れ拡大 共生政策も同時に議論を - 毎日新聞(2018年6月7日)

https://mainichi.jp/articles/20180607/ddm/005/070/052000c
http://archive.today/2018.06.06-224323/https://mainichi.jp/articles/20180607/ddm/005/070/052000c

政府が「骨太の方針」の原案で、外国人就労の受け入れ拡大を打ち出した。原則として認めてこなかった単純労働にも門戸を開くもので、実質的な政策転換につながる。
政府案によると、受け入れ対象は人手不足が深刻になっている建設や農業、介護などの5業種。2019年4月に新たな在留資格を設け、25年までに50万人超の就業を目指す。
政策転換の背景にあるのは、少子高齢化に伴う労働力不足だ。高齢者や女性を含む「1億総活躍」、ロボット導入による省力化などでも賄いきれないと判断したのだろう。
外国人労働者の拡大は世界的な動きであり、経済成長のためにも欠かせない。人口減少が進む日本で検討していくことは当然だ。
ただし、それによって増加する外国人労働者に国内での共生を促す政策は見当たらない。
人手不足解消という喫緊の課題にばかり目が行き、働く外国人の生活を守る視点が欠けているように思える。労働力の穴埋めと考えるだけでは、将来に禍根を残すことになりかねない。
外国人受け入れの先例である技能実習制度では、賃金不払いや長時間労働などが問題化している。その二の舞いとしてはならない。
優れた外国人材の獲得は中国や韓国、タイなども進めている。劣悪な条件を強いるようでは、獲得競争で後れを取りかねない。賃金などの労働条件はもちろん、社会保障などを含めた環境の整備が求められる。
新制度について政府は「移民政策とは異なる」と強調している。確かに新制度による滞在期間は原則5年で、帰国を前提にしている。
しかし、日本語や専門分野の試験に合格すれば期間が撤廃され、家族の帯同も認められる可能性がある。そうなれば「移民」との境界は、一段とあいまいになる。
外国人の増加を巡っては、国民の間で治安悪化の懸念など不安が根強いことも否定できない。だからといって排外的な考えを優先するのは好ましくない。
目指すべきは、外国人労働者が地域の人々と交流し、共に生活を営む社会であろう。そのためには、官民で就労受け入れを巡る議論を深める必要がある。

学童保育「安全守られない」 指導員の基準緩和反対 全国連絡協 - 東京新聞(2018年6月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018060702000121.html
https://megalodon.jp/2018-0607-1024-13/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018060702000121.html

共働き家庭などの小学生が放課後を過ごす学童保育(放課後児童クラブ)の指導員の配置基準や資格要件をなくそうとする動きが進んでいる。全国学童保育連絡協議会は六日、「子どもの安全が守られない」として、超党派の国会議員連盟に反対意見を伝えた。十八万人の反対署名を集めており、国会に請願する予定。 (小林由比)
学童保育は二〇一五年度に始まった子育て支援制度に基づき、国の基準に沿って市区町村が運営している。指導員は保育士などの資格者で、認定研修を受けた「放課後児童支援員」。原則、一カ所に二人以上配置するよう義務付けられている。しかし、人材確保が難しいとの声を受け、政府は昨年末、基準緩和を検討し、一八年度中に結論を出すと閣議決定内閣府地方分権有識者会議で、廃止も含めた議論が進む。
この日開かれた「公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟」(会長・馳浩文部科学相)の会合で、協議会の木田保男会長が「指導員には重大な事故から子どもを守る仕事もある。全国どの地域でも有資格者の指導員が必要だ」と訴えた。また「基準の検討は、内閣府ではなく、児童福祉専門の厚生労働省でやってほしい」と求めた。
議連のメンバーからは「人材が集まらない理由は基準だけなのか。処遇改善などに解決策があるのではないか」との意見も出た。

学童保育(放課後児童クラブ)> 厚生労働省の調査では、2017年5月時点で全国に約2万4500カ所あり、登録児童は約117万人。利用できない待機児童も約1万7000人いる。同省は今後もニーズは高まるとして今月、23年度末までにさらに約30万人分を整備すると発表した。待機児童が多い都心部などでは、文部科学省が親の就労の有無などにかかわらず全児童を対象とする「放課後子ども教室」との一体化も進む。

幼保無償化「高所得者に恩恵」 国民・山井氏試算 - 東京新聞(2018年6月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018060702000129.html
https://megalodon.jp/2018-0607-1025-45/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018060702000129.html


国民民主党山井和則衆院議員は六日の衆院厚生労働委員会で、政府が来年十月からの導入を決めた所得制限のない幼児教育・保育無償化について「低所得者より高所得者に六倍の恩恵がいく『逆社会保障』政策だ」と批判し、根拠となる独自の試算を公表した。内閣府の担当者は、無償化に必要な予算額が固まっていないとして「(二〇一九年度予算案が決まる)年末までに試算する」と答えるにとどめた。 (坂田奈央)
山井氏の事務所によると、試算は年収別の保育施設利用者数をまとめた厚労省の「福祉行政報告例」などを基に実施。無償化予算を総額八千億円とした場合、低所得の非課税世帯に使われるのは約二百六十億円なのに対し、年収八百万円以上の世帯向けは約千五百億円に上った。それぞれの人口比率は約17%と約13%という。
現行の認可保育施設の保育料は、所得に応じて設定されている。生活保護世帯は無料になるなど低所得世帯は減免され、高所得世帯ほど高い。
山井氏は無償化に関し「お金を投じることで、貧困家庭と高所得家庭の子どもの格差を広げる。史上最悪の子ども政策になる」と指摘。一九年四月から行う保育士の1%(月三千円相当)の賃金引き上げ予算が二百億円規模とされていることに触れ「保育の質の向上につながる保育士の処遇改善にもっと回すべきだ」と主張した。
無償化を巡っては、自民党が五日に開いた「人生百年時代戦略本部」の会合でも、出席議員から「高所得者優遇になる」「所得制限をかけるべきだ」などの声が出た。

セクハラ対策尻すぼみ 政府は法整備先送り、課題残す - 東京新聞(2018年6月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018060702000128.html
https://megalodon.jp/2018-0607-1027-56/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018060702000128.html

前財務次官ら官僚によるセクハラ問題が相次ぐ中、政府は野田聖子女性活躍担当相が意欲を示した法整備の結論を先送りにした。緊急対策として新たに幹部職員への研修義務付けなどで防止を図る。尻すぼみの状況となり、野田氏が盛り上げたセクハラ対策強化の流れを、政府が今後どう生かすのかという課題は残ったままだ。
民放女性記者に対する前財務次官のセクハラ疑惑が判明したのは四月中旬。直後から野田氏は、財務省が同省の顧問弁護士に調査を委託したことを非難するほか、防止対策の検討を表明した。四月下旬には「法律を作り替えるのか、新法を作るのか、いろんなやり方がある」と法整備の必要性に言及。五月には「(法律に)罰則や罰金が必要であれば、検討していけばいい」と踏み込み、「女性記者に実態や意見を聞きたい」と懇談会を開くなどした。
ただ、職場でのセクハラ防止のための男女雇用機会均等法を所管する厚生労働省では当初から「野田氏は思いが先行し、具体的な対策は打ち出せないのではないか」との見方が広がっていた。
加藤勝信厚労相は国会答弁で、事業主による防止措置を義務付けている均等法の性格から「行為者に刑事罰というのはなじまない」と慎重姿勢を示した。与党議員も「刑法で罰するとセクハラの認定範囲が狭まり、逆に被害者が保護されにくい恐れがある」と指摘していた。
結局、安倍晋三首相の指示を受けた形でまとまった緊急対策案は、研修を通じた官僚の意識改革が主な内容になった。

セクハラ防止 表面的な対策でなく - 東京新聞(2018年6月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018060702000139.html
https://megalodon.jp/2018-0607-1027-56/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018060702000128.html

福田淳一前財務次官によるセクハラ問題をきっかけに、政府は中央省庁の幹部職員にセクハラ防止研修への参加を義務付けるなど緊急対策をまとめた。表面的な対応で片付けようとしていないか。
中央省庁の幹部職員によるセクハラ問題をめぐっては、四月に辞職した前財務次官に続き、厚生労働省で福田祐典健康局長による女性職員へのセクハラ行為が発覚。外務省でもロシア課長にセクハラ疑惑が浮上するなど相次ぐ。
セクハラ問題への対応が迫られる中での緊急対策は、各省庁の課長級以上の職員を対象にセクハラ研修への参加を義務付けるほか、受講状況を内閣人事局が確認。実質的に昇格の要件とするとしている。
各省庁に通報窓口を整備するほか、省庁からの独立性を保つために、人事院には第三者的な相談窓口の設置を検討するよう求める。
セクハラへの認識の欠けた人が幹部として昇任する組織は許されない。中央省庁が一斉に研修に取り組むことでセクハラの防止や理解促進に効果はある。だがこれらの策は民間企業ならすでに取り組んでいることだ。むしろ中央省庁がこれまで研修などを徹底していなかったことに驚かされる。
前財務次官の問題では民放の女性社員が被害に遭い、対策は、野田聖子女性活躍担当相が女性記者や経営陣らメディア関係者との意見交換を踏まえてまとめた。対象は全職員だとしてもメディア関係者に絞った印象も拭えない。
一連の問題が提起したのは、すべての人がセクハラという人権侵害に脅かされることなく、健全に働き、生活できる環境をどう整えるのかという問いだった。
セクハラ問題が後を絶たないのは現行法に禁止規定がないことも一因だろう。政府は「現行法でセクハラ罪という罪はない」といった答弁書閣議決定したが、法の不備でセクハラがなくならないのであれば、政府内に限らず、すべての人の被害防止や救済を目的とした法整備に踏み込む選択肢もある。野田氏も当初は「罰則付きの法整備」に意欲を示していた。政府内で議論が進まず、結論が先送りになったのは残念だ。
国際労働機関(ILO)がセクハラを全面禁止にする条約制定に動きだそうとしている。条約ができ、日本が批准しないことになれば、国際的な反ハラスメントの動きにも取り残されかねない。セクハラ対策を表面的な取り繕いで済ませてはならない。

子育て支援 無償化ありきでなく - 朝日新聞(2018年6月7日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13529398.html
http://archive.today/2018.06.07-013219/https://www.asahi.com/articles/DA3S13529398.html

手薄だった子育て支援を思い切って拡充することには賛成だ。それだけに、貴重な財源の使い道をよく考えてほしい。
安倍首相が昨秋の衆院選で掲げた幼児教育・保育の無償化の具体策が政府の「骨太の方針」の原案で示された。3〜5歳では認可保育所の利用を無料にしたうえで、認可外の施設を利用する人にも一定の補助をする内容だ。今後、法改正などの準備にとりかかるという。
国の懐に余裕があるならば、無償化は理想だろう。しかし待機児童の解消も進まぬなか、すでに施設を使っている人たちの経済的な負担を軽くすることが最優先の課題だろうか。無償化ありきでなく、政府は政策の優先順位を柔軟に見直すべきだ。
選挙戦の目玉として唐突に打ち出された無償化だけに、具体策には無理が見える。
認可施設の利用者だけを対象にすると、希望しても認可施設に入れない人との間で不公平感が広がる。一方で、施設の面積や保育士の配置が不十分な施設の利用にまで税金を投入することには、批判もある。
新たな方針では、市区町村で保育の必要性があると認められた認可外の利用者に対し、月3万7千円を上限に補助をする。対象施設は認可外に対する国の指導監督基準を満たすことを条件とするが、5年間は経過措置として基準を満たさない施設の利用も補助の対象になる。
だが、この案でも、認可施設との不公平感は解消されない。そもそも認可の利用料は所得に応じて定められている。高所得世帯ほど優遇される、との批判は与党内からも出ている。
これらは待機児童問題を解消しないまま、認可施設の無償化を先行させることにより生じるゆがみだ。今は無償化の対象を必要性の高い人に絞るべきではないか。
待機児童ゼロに向けた新たな保育所の整備計画は、首相が無償化を打ち出す前に作られた。無償化を進めれば利用者はさらに増えることが予想される。
無償化に多くの財源を使ってしまい、新たな受け皿整備に回す予算がなくなっては、本末転倒である。まずは潜在的なニーズも含めてしっかり把握し、計画を見直し、必要な財源を確保することが先だ。
保育所の整備が進まない理由の一つに、深刻な保育士不足もある。人材確保のための賃金の引き上げや、職員の配置の増加といった取り組みにも、財源が必要だ。
無償化以外にも、やるべきことはたくさんある。

(大弦小弦)「どうして子どもが来ないのか」。県内のある子ども食堂で… - 沖縄タイムズ(2018年6月7日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/263605
https://megalodon.jp/2018-0607-1031-07/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/263605

「どうして子どもが来ないのか」。県内のある子ども食堂で運営者の嘆きを聞いた。スタッフは善意と熱意があり、温かい食事を用意して待っていた。自治体の補助金
を受けていたが、来所者ゼロの日もあった

▼気になったのは「施し」の感覚だ。悪意はないにせよ「恵まれない子に食べさせる」という意識がのぞいていた。あいさつや食事作法にこだわる言葉を、子どもは説教くさく感じたかもしれない。地域に定着せず数カ月で閉所した

▼民間団体の調査では、無料か安価で食事を提供する子ども食堂は全国に2200カ所以上ある。沖縄は127カ所で東京、大阪、神奈川に次いで4番目、人口比では最も多い

▼子どものため何かしたいという大人の多さは心強い。だが子どもが望むこととずれがあり、居場所になり得ていない例もある。貧困家庭の子が利用する場所、という誤った認識を拭い去る努力も必要だ

▼県内で最初にできた沖縄市NPOももやま子ども食堂は5月、開所から3年を迎えた。鈴木友一郎副理事長は「大人が子どもから学ぶことの方が多い」と一緒に楽しむ姿勢を強調する。開所時の小学生たちが中学生になった今も通う

▼先週土曜は30人以上の小中学生が来た。子どもからのシンプルな回答がそこにある。食事だけでなく、心を満たす何かが求められている。(田嶋正雄)

(基地と環境対策)国内法適用の手法探れ - 沖縄タイムズ(2018年6月7日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/263604
https://megalodon.jp/2018-0607-1032-17/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/263604

米軍基地ではさまざまな有害物質が日常的に使われているが、その種類も量も使用履歴も、あきらかにされていない。汚染事故が発生したときの立ち入り調査も、米軍の裁量に委ねられているのが現実だ。
2016年1月から17年11月までの間に米軍嘉手納基地で、有害物質の流出事故が95件発生し、確認されているだけで2件が基地の外に流れ出していたことが分かった。
本紙のジョン・ミッチェル特約通信員が情報公開制度を利用して入手した同基地の内部資料であきらかになった。
有害物質はジェット燃料、ディーゼル油、汚水、泡消化剤などで、流出総量は少なくとも6万3366リットル(ドラム缶317本分)に達する(4日付本紙1面)。
「以前は基地内の事故でも報告があった。最近、それがなく事故が減っているのかと思った」と嘉手納町の當山宏町長は言う。
事故の通報がないというのは、現行制度の欠陥である。
基地の中で何が起き、どう処理されたかが分からなければ、自治体は有効な対策を取ることができない。
こうした現実は、沖縄では周知のことであり、決して目新しい話ではない。基地が「ブラック・ボックス」になっているのだ。
事故の情報開示を義務づけ、自治体による迅速な対応が可能となるよう事故発生時の基地内立ち入りを原則としてすべて認める−そのための県、県議会、市町村あげての取り組みが必要だ。

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環境問題の情報共有や立ち入り調査の円滑化を柱とした日米環境補足協定が発効したのは15年9月のことである。 政府は、地位協定の実質的な改定にあたると自画自賛したが、騒音協定同様、環境協定にも抜け穴が用意されており、発効当初から実効性が疑われてきた。 
例えば、環境事故が発生した場合や、返還予定地の現地調査(文化財調査を含む)のための立ち入りについて、協定は裁量権を留保している。
「日本側の申請に妥当な考慮を払う」としつつ、「米軍の運用を妨げる」場合や「施設・区域の運営を妨げる」場合には、認めるかどうか米軍が判断する、というわけだ。
環境省は1978年から基地内で水質、大気、ばい煙などの調査を実施してきた。ところが、2014年度以降、理由もあきらかにされないまま基地内調査が中止され、基地外での調査に変更されている。
後ろ向きの「ブラック・ボックス化」の動きというしかない。

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米軍基地の環境保護対策は、在日米軍が作成する「日本環境管理基準」(JEGS)に基づいて行われる。
だが、在日米軍には国内の環境法令が適用されない。米軍は基地に対する排他的な管理権を持っているためJEGSが実際にどのように運用されているかはっきりしない。
環境対策の透明性を確保するためには県も交えた協議機関に大きな権限を与え、地元の意向が最大限生かされる仕組みがなければならない。それは可能なはずだ。