カント全集 15 人間学 岩波書店 Amazon 『単なる理性の限界内の宗教』(以下『宗教論』と略記)でカントは「人間は生来悪」(Ⅺ,32)と明示し、『世界市民という視点からみた普遍史の理念』(以下『普遍史』と略記)では「非社交的社交性」(ungesellige Geseligkeit)という独自の概念を提示する。 【過去記事】 chine-mori.hatenablog.jp これらの概念は、カントが人間を「理性的存在者」(vernünftiges Wessen)として捉える一方で、悪の視点からも人間を理解していたことを示している。 この観点をさらに掘り下げるため、本稿では『実用的見地におけ…