ふじさん病院は、この地域で最も信頼される医療機関だった。 院長不在のこの病院は、「すべての職員が平等」をモットーに、重大な決定を医師、看護師、事務スタッフが集まる「評議会」で民主的に決めていた。評議会の部屋には「チーム医療の誓い」が刻まれたプレートが掲げられ、どんな問題でも全員で乗り越えると謳っていた。しかし、その誓いはある日、試されることになる。 冬の夜、病院に緊急事態が起きた。新型の感染症が急激に広がり、集中治療室(ICU)のベッドが満床になった。患者が次々と運び込まれ、人工呼吸器も不足し始めた。評議会が招集され、30人の幹部職員が会議室に集まった。 議題は一つ:「どの患者を優先し、限られ…