テンソル

テンソル

(サイエンス)
てんそる

テンソルとは、ベクトルからスカラーへの多重線形関数と定義される。

ベクトルxに対して、スカラー\phi(x)を線形的に対応させる写像\phi(\;)を考える。このような写像を線形汎関数というが、線形汎関数の和とスカラー倍を定義することで、線形汎関数全体はまたベクトル空間を作る。この空間を元の空間に対する双対空間、その要素を双対ベクトル、コベクトルなどと呼ぶ。詳細は「コベクトル」の記事を参照。

 双対ベクトルを一般化したものがテンソルである。すなわち、n個のベクトルからスカラーを生成する線形作用がn階のテンソルである。ここで線形性はすべての引数に関して要求される。たとえば2階のテンソルの場合は、2つのベクトルをスカラーに写像するので2変数の線形作用と見ることができるわけだが、
    \phi(x_1 + x_2,y)=\phi(x_1,y) + \phi(x_2,y)
    \phi(x,y_1 + y_2)=\phi(x,y_1) + \phi(x,y_2)
    \phi(cx,y)=\phi(x,cy)=c\phi(x,y) ただしcはスカラー
のように2つの引数のいずれについても線形となる(このような性質を双線形性という)。

 テンソルの成分は、基底ベクトルに作用させて得られる。2階のテンソルTの場合は、
    T_{ij} =T(e_i,e_j)
T(i,j)成分となる。空間の次元がdであるなら、n階のテンソルはd^n個の成分を持つ。

 上記においてはコベクトルはベクトルに対する線形作用として導入されたわけだが、ベクトルのほうをコベクトルに対する線形作用と見てもさしさわりがない。つまりベクトルとコベクトルとはどちらかがどちらかに作用するというものではなく、対等な立場にある2つの存在と見なされるわけである。そこで、複数のコベクトルからスカラーをつくる線形作用という役割をもったテンソルも考えることができる。このことから、その引数がベクトルであるのか、コベクトルであるのかを明示するために、次のような記法が用いられることがある。すなわち、n個のベクトルをスカラーに写像する線形関数は(0,n)テンソルと呼ばれ、n個のコベクトルをスカラーに写像する線形関数は(n,0)テンソルと呼ばれる。

 最も一般化されたテンソルは、次のようなものである。すなわち、n個のベクトルとm個のコベクトルをスカラーに写像する線形関数が(m,n)テンソルである。(m,n)テンソルの成分はm個の基底コベクトルとn個の基底ベクトルを入力して得られる。基底ベクトルを入力して得られる成分は共変成分、基底コベクトルを入力して得られる成分は反変成分と呼ばれる。相対論や量子論などの物理学でよく用いられる総和規約では、成分の反変、共変は添字の位置によって極めて合理的に区別されている。


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