山口昌男(やまぐち・まさお)は、現代日本を代表する人類学者・記号学者・思想家である。北海道出身。フランスの構造主義の影響を受けているが、その守備範囲はきわめて広く、ひと言で表現するのは不可能に近い。人類学の領域での業績に限定すれば、記号論や象徴論という分野の専門に入る。人類学上のデビュー作は『アフリカの神話的世界』ならびに『人類学的思考』であり、初期の彼の関心を読むことができる。その象徴論という分野での代表作は『文化と両義性』である。1984年から10年間は磯崎新、大江健三郎、大岡信、武満徹、中村雄二郎とともに岩波書店の総合誌『へるめす』の同人になる。山口の知識人・思想家としての世界的なつきあいの広さを知るためには対談集『二十世紀の知的冒険 対談集』『知の狩人 続・二十世紀の知的冒険』が必読書になろう。1990年以降は明治期以降の日本のメジャーになれなかった/ならなかった知の巨人に光を当てた『「敗者」の精神史』『「挫折」の昭和史』『内田魯庵山脈』が著名である。筑摩書房から『山口昌男著作集』全5巻が公刊されており、山口昌男入門としては最適である。