慶長二年一月六日(1597/2/22)「なんと! それで明け渡したのでございますか?」「明け渡したのではない。そもそも誰の領土でもなかったであろうが」 大陸から戻ってきた純正に対して直茂が問いかけた。新年早々小言は勘弁してくれといわんばかりの純正であったが、三十年来純正を側で支えてきた戦略会議衆の筆頭である。 無視は、できない。「なればこそにございます。ああ、|斯様《かよう》な儀ならばウラジオストクでヌルハチと相見えた際に、朝鮮の国境までわが国の領土としておくべきでした」 昨年末、ちょうど渡海する直前に体調を崩しており、同席できなかったのだ。 直茂が無念そうにつぶやくと、純正は反論する。「オレ…