近い、と感じた瞬間、いつもより呼吸が浅くなる。 ウシマスくんは、その感覚を曖昧にしなかった。 嫌いなわけじゃない。怖いわけでもない。 ただ、今の距離が少しだけ近い。 前までは、笑ってごまかしていた。少し体を引くだけで済ませていた。でも今日は、ちゃんと測ってみた。 あと三歩。 それだけ下がれば、自分の余白が戻るとわかった。 「あと三歩、下がってもらえますか」 言葉にした瞬間、空気が一瞬止まった。 お願いでも、冗談でもない。具体的な数字が、線を引く。 曖昧な「ちょっと離れて」より、三歩のほうが誤差が少ない。 感覚ではなく、位置の問題として扱える。 ウシマスくんは、下がってくれたその距離に立ち直す。…