アンドリュー・ワイエスは、1917年にペンシルベニア州チャッズフォードで生まれ、2009年も同地で亡くなった、アメリカ生まれアメリカ育ちの画家である。その作風は写実的でありながら、どこか叙情的だ。私が惹かれるのは、そこに漂う「気配」と、作為的ではない境界線なのかもしれない。人と自然、内と外、生と不在。そうしたものが、説明されるのではなく、ただ静かに置かれている。 だからだろうか。この特別展が「境界」という言葉を前面に押し出していることに、とても納得した。 特に印象に残ったのが『納屋と猫たち』だった。絵の中に入り込んでしまったような感覚になる。納屋は綿密に描き込まれているのに、“猫たち”はどこに…