昨秋亡くなった高階秀爾さんの著書を読み返して『滴一滴(250103)』は思う▼絵はがきを見ると、欧州では建造物を正面から画面いっぱいに捉えて余計な景色は切り捨てるが、日本ではこの余分が大役を演じるという▼名所旧跡は周りの自然とワンセット。高階さんは私たちが古来、何が美しいかではなく、どういう状況に美が生まれるかに感性を働かせてきた、と説く▼子どものころ、暗くなるまで遊んだ公園の大樹を夕日が赤々と照らす瞬間。こちらが分け入る気配を聞きつけて一斉に飛び立つ鳥の群れ。合戦の最中、勝ち筋を見定める戦国武将のさえたたたずまい▼幅広い作品群をたどれば、心が共振する光景に出合えるかもしれない。スマートフォン…