今夜はどうにも眠れなかった。 毛づくろいをしても、 丸くなっても、 目が冴えてしまう。 仕方なく、私は小さな足音を忍ばせて、 駅前のロータリーへと出ていった。 秋の風は少し冷たく、背中の毛を逆立てる。 夏の名残がすっかり消え、 季節が変わったことを、肌で感じる夜だった。 時刻はすでに1時をまわり、 終電後の駅前は静けさと光が交差していた。 人影はまばらだが、まだそれぞれの人間模様がそこに息づいていた。 一台の車が駅前に停まっていた。 ハンドルを握るのは、化粧気のないすっぴんの女性。 窓を少し開けて、手元のスマホを眺めながら待っている。 やがて改札口からスーツ姿の男性が現れると、 女性の顔がふっ…