墨の香りが、彼女の青春を彩っていた。 彼女の名は、遥。 高校に入学したときから、書道部に入部し、 筆を握る時間が何よりの至福だった。 最初はただ文字を書くことしかできなかった遥だが、 先輩たちの迫力ある書道パフォーマンスを見て、 その世界に魅了された。 「私も、あの舞台で、自分の想いを文字で表現したい!」 卒業まであとわずかの時、遥は決意した。 書道パフォーマンス部を創設し、自分たちの手で新たな歴史を刻むことを。 部員はわずか数人だったが、皆、書道に対する情熱だけは人一倍だった。 練習は過酷だった。体育館で、時には校庭で、 体力の限界まで墨を磨り、何度も何度も文字を書く。 時には、指にマメがで…