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2016-01-10

なぜ中国の経済危機が起こったのか

00:34 | なぜ中国の経済危機が起こったのかを含むブックマーク

昨年以来、中国では株価の暴落が繰り返されています。今年になってからも暴落が発生し、今年から導入したサーキットブレーカーが2度も発動されたため、慌ててサーキットブレーカーを停止するなど、市場の混乱が続いています。その影響は世界中に波及し、先進各国の株式市場も株安になっています。

このような混乱がなぜ起こっているのかを知りたくて、ここ数日、内外の様々な記事を読んでいましたが、十分納得できるものがなかなかありませんでした。その中で唯一納得できたのが、なんと夕刊フジの田村秀男氏の記事でした。

 年明け早々から株式市場はチャイナ・リスクで大荒れである。世界最大水準の中国債務は今後さらに膨らむ情勢なのだから、不安がグローバルに伝播してしまう。

 「中国、今年は改革の正念場に」(米ウォールストリート・ジャーナル1月4日付)であることには違いないが、習近平政権にとってはそれどころではない。

 中国金融のどん詰まりぶりを端的に物語るのは、中国人民銀行による人民元資金発行残高である。昨年後半から急減している。前年比マイナスは実に16年ぶりだ。

 人民銀行は2008年9月のリーマン・ショック後、元の増発に増発を重ね、国有商業銀行を通じて資金を地方政府や国有企業に流してきた。大半は不動産開発など固定資産投資に向けられ、国内総生産(GDP)の2ケタ成長を実現した。その結果、10年にはGDP規模で日本を抜き去ったばかりか、党中央は豊富な資金を背景に軍拡にもいそしんできた。東シナ海、南シナ海などでの海洋進出はマネーが支えてきた。党の意のままにできる元資金こそが「超大国中国」の原動力だ。

 元膨張を支えてきたのはドルである。リーマン後の米連邦準備制度理事会(FRB)によるドルの増発(量的緩和=QE)に合わせて、人民銀行が元を刷る。グラフはQE開始後、元資金のドル換算値がドル資金発行増加額とほぼ一致していることを示す。偶然にしては、でき過ぎの感ありだ。

 人民銀行は自らが定める基準レートで流入するドルをことごとく買い上げては元を発行する。買ったドルはゴールドマン・サックス、シティ・グループなど米金融資本大手に委託して米国債で運用するのだから、北京とウォール街の間には何らかの合意があったとしてもおかしくない。

 ところが、FRBは米景気の回復に合わせて14年初めごろから、世界に流れ出た余剰ドルの回収の模索を始めた。QEを14年10月末で打ち切った。さらに先月下旬には利上げした。バブル化していた中国の不動産市況は14年初めに急落、次いで上海株も15年6月に暴落した。

 中国からの資本逃避に拍車がかかり、人民銀行は外貨準備を取り崩して元を買い上げ、暴落を食い止める。それでも売り圧力は高まるばかりだ。元の先安予想がさらに上海株売りなどによる資本流出を助長する。


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【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK 【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK 【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK

実はこの記事で一番重要だと思ったのは、人民元とドルの資金発行量増価額を示したグラフでした。リーマンショック以降、中国がドルに合わせて人民元発行を増やしてきたことがよく分かります。つまり中国は人民元をドルにペッグしていたことになります。この人民元の膨張こそが、ここ数年の中国経済発展の理由でしょう。

実は1980年台後半の日本のバブル景気も、日銀による金融緩和の結果でした。ここ数年、中国経済がバブルではないかと言われてきましたが、そのバブルの理由もこの人民元膨張だったのでしょう。

しかし、昨年に入ってFRBは利上げを模索するようになり、昨年末には利上げが行われました。そのためにドルの発行量増加は止まり、中国もそれに合わせて人民元の増加を止めることになりました。昨年、中国で株価が大幅下落してバブルが崩壊したのはそのためでしょう。日本のバブル崩壊も、日銀による金融引き締めが引き金になっています。

さらに中国ではインフレ率が低下し、経済成長率も下落しています。


その対策として、昨年8月、中国は人民元の切り下げを行いました。為替介入で人民元のレートを維持すると、金融緩和しても効果がなくなるので、これは経済学の教科書通りの政策です。

しかし、その結果資本流出が起こり、資本逃避の懸念が増してしまいました。そして今年の株安も人民元安と連動しています。

中国の通貨、人民元の対ドル相場が下げ止まらず、世界の金融市場を揺さぶっている。急激な元安は中国からの資本流出を招き、同国経済を一段と下押ししかねないとの懸念が広がっているからだ。7日の世界市場では株価が大幅に下落し、原油価格はリーマン危機後の安値を下回った。米国の追加利上げが予想されるなか、元安に歯止めがかかる兆しはない。


人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞 人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞 人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞



このように人民元の下落は景気を刺激するどころか、資本流出を招いて逆効果になっています。これはなぜでしょうか。

FRBがドルの発行量を増やしている間は、中国はドルに合わせて人民元を増やすことで、景気を刺激することができました。しかし、FRBがドルの発行を増やさなくなると、中国が人民元の発行を増やすためには、人民元を切り下げなければなりません。

しかし、中国経済は外資を取り入れることでここまで成長してきました。外資はドルの資金量、つまりFRBの金融政策によって増減しますから、中国が金融緩和しても外資に影響を与えることはできません。もともとFRBのQE終了と利上げで外資の引き上げが始まっていたところで、人民元を切り下げたため、さらに外資の流出を加速させてしまったのでしょう。これが今回の中国の経済混乱のメカニズムだと思います。


このような資金流出を恐れて、今後中国は人民元の切り下げには慎重になるでしょう。ただ、そうなると金融緩和もできなくなり、中国は財政政策や構造改革で景気を回復させようとするでしょう。

昨年末、実際にこのような報道がありました。

中国は、景気支援に向け、金融政策に柔軟性を持たせる一方、財政出動を拡大する。2016年の経済政策の優先課題を話し合う中央経済工作会議の決定事項を国営メディアが報じた。

発表された声明は「積極的な財政政策を強化し、穏健な金融政策を一段と柔軟にすることが必要」と表明。

財政赤字の比率を緩やかに引き上げるとともに、企業の負担軽減に向けた減税を行なうとした。

来年の成長率を「妥当な範囲」に維持するとしたが、詳細には言及しなかった。

政府はまた、インフラ向け支出を拡大するほか、低迷する不動産市場を下支えるため、住宅購入に伴う規制を緩和する。

<サプライサイドの改革>

中央経済工作会議では、新たな成長のけん引役の育成を支援するため「サプライサイドの改革」を推進し、過剰生産能力の削減や不動産の在庫の調整に取り組むとした。

関係筋によると、政府はサプライサイドの改革を推進する一方、需要の押し上げに向けた措置を講じる。

「構造改革の断行には、一定の成長率の維持が必要」という。

関係筋はまた、中国、および世界経済は急激な落ち込みから低成長が長期間続く「L字型」回復となる見込みのため、「需要サイドの政策だけでは、景気支援は不可能」と語った。

また金融リスクへの対応をさらに進め、地方政府の債務リスクを効果的に抑制するとしている。

来年の経済政策ではデレバレッジを重視する方針も示した。


中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters 中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters 中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters

中国の政府当局者は欧米諸国がここ数年ほとんど役立ててこなかった政策を試そうとしている。国内のサプライサイド(供給側)を重視する経済改革だ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のリンリン・ウェイ記者(北京在勤)は、中国政府が公表した2016年の同国経済の青写真には減税計画が含まれ、財政支出の拡大を押し進めた従来政策からの方針転換をうかがわせていると指摘する。青写真は企業のコスト負担引き下げも視野に入れている。


中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ 中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ 中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ


しかし、「穏健な金融政策」というのは、実際にはかつての日銀のような、"too littile, too late"な金融政策になるでしょう。経済成長が低迷し続ければ、いずれ財政政策も続けられなくなり、逆に増税などの財政緊縮に走ることになるでしょう。そしてサプライサイドの「構造改革」は、デフレやディスインフレの不況に対しては効果がありません。

かつて日本はこのような組み合わせの経済政策を行い、「失われた20年」を招いてしまいました。どうやら中国もその轍を踏みそうな状況です。

ただ、日本はアベノミクスで大規模な「異次元緩和」を行っても、外資の流出を心配する必要はありませんでした。日本の投資は、日本国内の資本で賄われていたからです。日本がこのような間違った経済政策をしてしまったのは、単に財務省、日銀、経済学会などの専門家が間違った理論を信じていたことと、財務省が財政危機を煽ることで利益を得る構造を作り出してしまったからでした。

しかし、中国は外資流出という実害があるために、金融緩和に踏み切ることができません。中国の経済専門家は正しい経済理論を使っても、問題を解決することができないのです。従って中国の経済問題は、日本以上に解決が困難でしょう。


今後、中国はかつての日本のようなデフレ不況に陥ると思います。しかも日本と違い、そこから抜け出す道はありません。中国はこのまま衰退し、「21世紀のアルゼンチン」となってしまうのかもしれません。

ただ、中国共産党がそれを座視することはないでしょう。経済政策で抜け道がないのならば、間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います。そのような行動は、東アジアに安全保障上の危機を起こすでしょう。

日本はバブル崩壊から7年後に深刻な経済危機に陥りました。中国も同じペースで経済的に衰退するのであれば、2020年代前半には深刻な経済危機に陥るのでしょう。ちょうどその頃、今の習近平体制は政権交代の時期を迎えます。これまでと今後の中国の軍拡を考えると、中国で政治的な混乱と経済的な混乱が同時に起こるこの時期に、太平洋戦争にも匹敵する東アジアの危機が起こるのではないかと、僕は懸念しています。

投資家投資家 2016/01/11 09:41 中国の潜在成長率がどれくらいあるのかが鍵を握ると思いますね。潜在成長率が低ければ、財政乗数も貨幣乗数も低くなりますが、高ければ巨額の外貨準備を使って対策を取れば回復できると見ています。


「潜在成長率は、均衡実質金利もしくは自然利子率(natural rate of interest)の代理変数として、政策金利の水準評価に用いられる場合もある3。長い目でみた実物投資のリターンは、中長期的に持続可能な成長率と概ね等しくなると考えられる。したがって、理論的には、実際の実質金利が均衡実質金利を上回れ(下回れ)ば、景気に抑制的(刺激的)に働いて、需給ギャップのマイナス(プラス)方向への動きを促すことになる(IS曲線)。」
潜在成長率の各種推計法と留意点
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2009/data/rev09j13.pdf

9999 2016/01/11 09:53 中低所得者の減税をすれば全て解決すると思うのですが。
そもそもGDPに占める投資の割合が高すぎる
それを消費を増やすことで解決すれば良いのです

いるかいるか 2016/01/11 13:27 最後の「経済政策で抜け道がないのならば、間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います」という点がどういうことなのかよく分かりません。そうなった場合、具体的にどういう軍事的方法を用いれば経済危機を乗り切ってくると想定しているのでしょうか。
私の拙い頭では、尖閣・南シナ海・インドを攻めたところで…とイメージが広がらず、せいぜい国内の暴動デモの鎮圧くらいと思ってしまいます。でもそれは今までの体制維持の方法と同じと考えこんでしまいます。

hat_24ckghat_24ckg 2016/01/11 15:34 中国の苦境は日本など国外にあり、この脅威を除かねばならない、と言い張り始めて国民のガス抜きをするということですね。
それで苦境から逃れられるかもしれない、と中国国民が騙されれば御の字と。ありそうなのが嫌でたまりませんが、手をこまねいてばかりもいられない…
はたして、日本にどういう対応ができるでしょうか。ここで書かれているような分析を提示して、無理をするなと言ってやるのが存外良いのかもしれませんね。

BaatarismBaatarism 2016/01/11 17:09 >投資家さん
中国の成長率を論じる場合、まず「ルイスの転換点」(安価な余剰労働力が枯渇して、賃金上昇が引き起こされる時点)を考えなければいけないと思います。
すでに中国はこの点を超えたという見方が多いので、今後は潜在成長率も低くなると思います。

>99さん
減税も財政政策なので、金融政策なしでは経済成長への効果が打ち消されてしまいます。(マンデル・フレミングモデル)
経済成長がなければ結局増税になってしまうので、解決策になるかは疑問です。

>いるかさん、hat_24ckgさん
この点は誤解させる書き方だったと思います。
「間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います」と書きましたが、その間違いを国民には正しいと信じ込ませてしまうようなことを考えています。具体的な例で言えば、日本による満州事変のような状況でしょうか。あの時は、満州への進出が経済問題の解決策だと信じられていました。
具体的な地域としては、台湾が焦点になるでしょう。経済成長が続いているうちは軍拡を続けて、いずれは台湾を「取り戻す」展望も持てるでしょうが、経済成長がなくなるとその展望もなくなってきます。そのためまだ可能性があるうちに台湾周辺(南西諸島も含まれる)で軍事行動を起こそうとして、アメリカや日本と衝突する状況です。その過程で、中国による韓国取り込みもありえるでしょう。
台湾だけではなく日本の資本を取り込むために、日本を軍事的に屈服させることも考えるかもしれません。これは誇大妄想だと思いますが、歴史的にはそのような誇大妄想で戦争が起こったことも多いですから。日本もかつては東アジアの覇権を握るという誇大妄想を抱いて戦争しましたから。

投資家投資家 2016/01/11 21:49 市場メカニズムが万能ではないにせよ、市場メカニズムを無視すればいずれ破綻する好例ですね。
固定相場によって国際金融のトリレンマに陥り、過度なサーキットブレーカーによって株価急落を招く。いずれも市場メカニズムの重要性が分かってないってことですね。
まぁ政変がない限りは日本より成長すると思いますけど、生産性を上げるための構造改革は不可欠でしょうね。言うまでもなく、改革の本丸は共産主義の放棄なわけですが。笑

mtagmtag 2016/01/11 21:49 中国の場合には、中国という国という理解をしていると判断を誤ります。軍区レベルで別の国が連合して活動しているという理解をすると、軍事的に動く軍区と、あくまで経済的に動く軍区と分けて考える必要があります。いわゆる上海閥と太子党との軋轢もこの流れの中にいます。北朝鮮の水爆とかもこの流れの中で考える必要があります。
上海は近代国家として生きていきたいし、内陸はそれではやってられないし、北京はそのバランスをどうするか考えているし、東北部は北京とくっついていてよいかを探っているし、カオスな状況ですね。
石原莞爾が正しかったかどうかはともかく、一国として統制をするために無理を重ねているのが今の中国でしょう。その結果として、暴走する軍部が現れるのは時間の問題だと思います。

BaatarismBaatarism 2016/01/11 23:51 >投資家さん
多くの人たちが参加して作り上げる経済には、やはり法則性があるのだと思います。現在の経済学がその全てを解き明かしているわけではないですが、その法則は厳然として存在し、それに反する政策は失敗するのでしょうね。
中国の「構造改革」はサプライサイドではなく、まず台湾や韓国の民主化を見習うべきでしょう。ルイスの転換点を超えた経済は、需要が多様化して、開発独裁体制ではそれに応じることができなくなります。人々がアニマルスピリッツを持って試行錯誤して需要のありかを見つけ出すためには、人々の自由な考えや行動を自由を認める政治体制が必要でしょう。

>mtagさん
その軍区を習近平が解体しようとしています。この改革を成し遂げて、中国が一枚岩の軍事体制を構築できるかどうかも、注目すべきですね。

THTH 2016/01/12 21:37 >中国経済は外資を取り入れることでここまで成長してきました

中国が3兆ドルを超える外貨準備を持つ事を考慮しても、外資の資本流出は問題となるのでしょうか。よろしければお考えをお聞かせいただければと存じます。

BaatarismBaatarism 2016/01/12 22:57 >THさん
この場合、客観的に見て資本流出がどれだけ問題かよりも、中国政府が資本流出をどれだけ問題だと考えているかが重要になると思います。政府の経済政策に影響を与えるのは、政府の経済認識ですから。

そして昨年からの中国政府のなりふり構わぬ資本流出防止策を見ていると、資本流出を非常に重大視していると思います。銀聯カードの引き出し限度額規制をやった時は、正直「そこまでやるか?」と思いました。

中国人“爆買い”にブレーキ? 大人気のカードに引き出し制限、幹部の資金流出を牽制か
http://www.sankei.com/world/news/151001/wor1510010029-n1.html

外貨準備も12月だけで1000億ドル減少してますから、3.3兆ドルの外貨準備があってもこのペースが続くと3年も持ちません。

中国外貨準備は12月末3.33兆ドル、減少幅が月間・年間とも過去最大
http://jp.reuters.com/article/china-dec-idJPKBN0UL0VO20160107

このようなことから考えて、中国政府が外資流出を非常に深刻に捉えていて、それが金融政策に影響を与えているのではないかと思います。

2016-01-01

財務省は弱体化しているのか?

23:48 | 財務省は弱体化しているのか?を含むブックマーク

あけましておめでとうございます。

このブログの更新をしないでいたら、いつの間にか年が明けてしまいましたw

せっかくの新年なので、最近気になっていることを書いてみたいと思います。


去年の後半、政府、与党、財務省はずっと軽減税率の問題で対立していました。

軽減税率そのものは、どの品目に軽減税率を適用するか、まともな基準を定めることができず、どのような線引きをしてもバカバカしい矛盾が生まれるという問題があります。例えば今回の軽減税率論議では食品が軽減税率の対象になりましたが、加工食品を含めるかどうかでずっと対立が続き、最後は安倍総理の裁定で含めることに決まりました。また外食は対象外になりましたが、コンビニのイートインやショッピングモールのフードコートのようにどちらにするのか曖昧な領域もあります。

また、軽減税率が特定の業界に対する利権分配として使われる恐れもあります。今回、論議の最後で新聞にも軽減税率を適用する話が急に出てきましたが、これは明らかにマスコミの反対を抑えるための利権分配でしょう。普段、安倍政権を支持してしている新聞も、批判している新聞も、この利権は同じように受け入れてますから、彼らが本当に国家権力と対峙する気があるのか、疑問に思ってしまいます。

さらに大きな問題としては、軽減税率が必ずしも低所得者の救済につながらないという問題もあります。軽減税率品目は低所得者も高所得者も購入するため、低所得者救済としては効率的とはいえません。低所得者に払った消費税を払い戻す給付付き税額控除の方が良い政策だというのが、経済学者の間ではコンセンサスとなっています。


さらに言えば、今回の軽減税率論議は来年に消費税を10%に増税することが前提ですが、昨年の8%への消費税増税は未だに景気に悪影響を与えており、日銀の大規模な金融緩和や原油価格の低下にもかかわらず景気が回復しないのは、消費税増税のせいだと言ってよいでしょう。そんな時にさらに増税するのは大きな間違いであり、消費税増税は景気が過熱するまで凍結すべきでしょう。むしろ今の経済状況を考えれば、本当は税率を5%に戻すのが正しいでしょう。


ただ、この軽減税率問題における財務省の行動を見ていると、彼らが以前よりも稚拙な行動をとるようになっており、特に政策立案能力が低下してるように思います。

当初、財務省はマインバーを使って消費税を払い戻す「日本型軽減税率制度」を提案しましたが、この案は手続きが非常に煩雑な上、マイナンバーの漏えいというセキュリティ問題の存在や、データセンターの構築に数千億円という巨額の予算が必要になるなど、およそ現実的とは言えないものでした。

案の定、この制度は政府や与党から反対の集中砲火にあって撤回されてしましました。*1「この案は財務省も本気で出した案ではなく、本命は他にある」という観測*2もありました。

しかし、その後状況は財務省に不利な形になっていきました。まずこの反対の責任を取らされる形で、自民党内でも最大の財務省派であった野田税制調査会長が交代させられ*3、かつては独立王国とも言われた自民党税調は安倍政権の影響下に置かれました。

財務省は谷垣幹事長など残る財務省派議員を使って軽減税率の範囲を狭めようとしましたが、結局生鮮食料品に加えて加工食品も対象とする公明党の主張が通り、最後は逆に財務省が固執していたはずの「財源論」を無視する財源の拡大までやったが、それも政府・与党にはねつけられ、全く影響力を与えることができませんでした。


以下の長谷川幸洋氏の記事は、財務省の凋落ぶりを手厳しく指摘しています。

消費税の増税に伴う軽減税率問題が決着した。最大のポイントは税率の中身もさることながら、政治的に首相官邸が党内の増税派と財務省に圧勝した点だ。これで安倍晋三首相は2017年4月に10%に引き上げるかどうか、完全にフリーハンドを握った形になる。

約3ヵ月にわたった攻防で、財務省は終始一貫して読み違いをした。

間違いの始まりは、唐突にぶちあげた増税分の一部を後で家計に戻す「還付金案」だった。これは理屈の上では低所得者対策として正しかったが、まだ始まってもいないマイナンバー制度を活用する問題点や根回し不足もあって、あっという間に消えてしまった。

財務省はその後も迷走を続けた。4000億円の財源枠にこだわるあまり、与党である公明党の政治的重さを測りかねて首相官邸の怒りを買ってしまう。最後は適用食品の線引きの難しさから財源を一挙に1兆3000億円まで拡大したものの、自分たち自身の大臣である麻生太郎財務相や公明党の反対に遭って、これまた蹴飛ばされてしまった。

霞が関を仕切る財務省がこれほど無様な姿をさらしたのは、ほとんど記憶がない。あえて言えば、1994年の細川護熙政権で当時の大蔵省が小沢一郎新生党代表幹事(当時)と組んで導入を目論んだ「国民福祉税構想」の失敗に匹敵するのではないか。

情報収集力と要路(政府や与党幹部)に対する根回しの周到さにかけては霞が関、いや日本随一の財務省も「ここまで落ちぶれたか」と感慨深いものがある。

財務省がこの体たらくだから、自民党税制調査会の権威が地に落ちたのも無理はない。自民党税調は財務官僚が陰に陽に知恵袋、かつ手足となって動いていたからこそ、表舞台で権勢を誇ることができた。

ところが「裏舞台の司令塔」である財務省が肝心の政策立案で失敗した挙げ句、政治的パワーバランスを読み切れず、議論に説得力もないとなったら、党税調が力を失うのは当然である。どうして、こうまで失敗したか。遠因は昨年秋の増税先送り・解散総選挙にある。


財務省はなぜここまで落ちぶれたか 〜政策立案・根回しに失敗、議論も説得力がない 軽減税率をめぐって「大迷走」 | 長谷川幸洋「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] 財務省はなぜここまで落ちぶれたか 〜政策立案・根回しに失敗、議論も説得力がない 軽減税率をめぐって「大迷走」 | 長谷川幸洋「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] 財務省はなぜここまで落ちぶれたか 〜政策立案・根回しに失敗、議論も説得力がない 軽減税率をめぐって「大迷走」 | 長谷川幸洋「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]


結局、昨年の消費税増税先送りで安倍政権に完敗した財務省は、その力の源泉であった政策立案能力もおかしくなり、「日本型軽減税率制度」のような実現性の見込みすらない案を出すようになってしまったのでしょう。財務省がこれだけの権力を握っていた理由は、政治家の代わりに政策や法案を作っていて、税制や予算に内閣よりも大きな影響力を及ぼすことができたからでした。その能力が落ちていることが明らかになった結果、これまで財務省に依存・協力してきた政治家たちの力も大きく落ちてしまったのでしょう。


これまで日本の緊縮政策の総本山であった財務省の弱体化が明らかになったことは、これからの日本の政治に大きな影響を及ぼすでしょう。これまで財務省がいつも持ち出していた「財源論」も、今回の軽減税率で無視されてしまいました。このことは、日本の財政政策を緊縮路線から転換させるきっかけになるかもしれません。その試金石となるのが、来年の消費税増税のさらなる先送りや凍結を行うことができるかという問題でしょう。

現在、日銀の大規模金融緩和の効果が、消費税増税によって大きく削がれていることを考えれば、緊縮財政の停止はデフレ脱却や景気回復にも大きな影響を与えることは間違いありません。ひいては、今後の日本経済がまともに経済成長するかどうかを左右する問題だと言えるでしょう。


だから、僕は今年も財務省の「弱体化」が今後も続くのかについて、注目していきたいと思います。財務省が力を失い緊縮政策が停止されることが、日本の未来を大きく開くことにつながると思うので。

投資家投資家 2016/01/03 00:05 国債取引に関する議事録見てると、財務省は市場関係者からもいろいろ言われているみたいですね。

「ここ数ヵ月の変調は、1つの警鐘であり、変調の最大の要因は金融政策である。現在、低金利で安定調達が可能な日本の国債市場であるが、この歪みが潜在的に蓄積されたマグマを表していると捉えれば、長期的な観点から金融市場の異常さを少しずつ緩和する方向で議論されることが望ましい。
 今後の見通しについては、来年度も円金利が低いまま推移する状況は変わらないと思われるため、より長期的な観点から政策を検討してほしい。」

国債市場特別参加者会合(第63回)議事要旨
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/151126.html

BaatarismBaatarism 2016/01/04 23:01 >投資家さん
国債市場の関係者は、日銀の大規模な買いオペで市場から国債がなくなるのは困るけど、だからと言って政府が財政政策で国債供給を増やすのも、将来国債が暴落する不安が拭えないという心理に囚われているのでしょう。もっとも、本当に暴落するのであれば、その前に国債金利かCDSに予兆が現れると思いますが。
とは言え、日銀が金融を引き締めれば元の木阿弥ですから、国債市場関係者が望むリフレ政策の中止を行うわけにもいきません。
彼らの不安な状況は当分続くのでしょうが、日本経済が復活する代償として割りを食ってもらうしかないのでしょう。

2015-08-16

リフレ派が考える再分配政策と労働政策について

00:54 | リフレ派が考える再分配政策と労働政策についてを含むブックマーク

先日の記事については大きな反響があり、賛否双方から様々な意見をいただきました。本当にありがとうございます。

その意見の中に、このような記事がありました。

さて、なぜ私はポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツの主張には感心するのに、左派・リベラルはなぜ安倍政権を倒せないのか? - Baatarismの溜息通信(2015年8月6日)のような記事には反感が先に立つのか。

それは、クルーグマンやスティグリッツの文章からは、リベラル派としての立場がはっきりしていて信頼できるのに対し、上記ブログ記事は全くそうではないからだ。


(中略)


さらに問題なのはコメント欄だ。コメント欄に、ブログ主はこう書いている。

アベノミクス開始後に、54歳以下の生産労働人口において、非正規雇用から正規雇用への転換が始まっているというデータがあります。

「非正規から正規へ」雇用の転換が始まった――“反アベノミクス”に反論

http://nikkan-spa.jp/883248

しかし、そんなことを書くのなら、ブログ主はなぜ労働者派遣法の改定に言及しないのかと、強い疑問を抱く。いうまでもなく今国会において既に衆議院を通過し、参議院で審議中である。

ブログ主は記事の本文に、

さて、今、左派・リベラル勢力によって安保法案反対や安倍政権打倒を訴えるデモが起きています。特に若者によって組織された「SEALDs」が大きな注目を浴びています。

ただ、彼らは大声で安倍政権を批判していますが、何故かその支持の根幹である経済政策では、安倍政権に対抗しようとしていません。ここに打撃を与えないと安倍政権を打倒することはできません。

また安倍政権の好ましくない政策を止めたいのであれば、政権交代を実現させて安倍政権が制定した「間違った」法律を廃止する必要がありますが、そのためにも安倍政権以上の経済政策を打ち出す必要があるでしょう。

と書いているのだが、そう書くブログ主本人が、金融政策以外についてはほとんど何も書いていない。再分配政策について、「格差を縮小するための再分配政策は無策である」と書いてはいるものの、スティグリッツのように再分配を強めよとは書かない。労働問題についても、安倍政権の経済政策によって非正規雇用から正規雇用への転換が始まっている、と書くのに、労働者派遣法の「改正」はスルーする。「SEALDs」の主たる関心事である安全保障政策と経済政策の距離よりも、同じ経済政策の範疇に属する再分配政策や、経済政策と近親関係にあると思われる労働政策と、ブログ主の主たる関心事であろう金融政策との距離の方がずっと近いはずだと私は思うのだが、なぜ他人に要求しているのと同質のことをブログ主はやらないのか。不思議でならない。ブログ主の「SEALDs」に対する注文には、正直言って「お前が言うな」としか思えない。


なぜクルーグマンやスティグリッツは信頼できるのに日本の「リフレ派」は信用できないのか - kojitakenの日記 なぜクルーグマンやスティグリッツは信頼できるのに日本の「リフレ派」は信用できないのか - kojitakenの日記 なぜクルーグマンやスティグリッツは信頼できるのに日本の「リフレ派」は信用できないのか - kojitakenの日記

このように、僕の記事(ひいてはリフレ派全体)に、再分配政策や労働政策が欠けていることを批判する趣旨だと理解しました。

前回の記事は金融政策について左派を批判する内容だったので、再分配政策や労働政策については取りあげなかったのですが、左派からリフレ派を見たときは、そのような疑念が大きいようなので、今回は再分配政策や労働政策について、リフレ派の考え方を述べてみたいと思います。

ただリフレ派と言っても、リフレ政策以外では必ずしも意見が一致しているわけではないので、僕がこれから述べるのは、「リフレ派の平均的な再分配政策や労働政策」についての、僕なりの理解です。この考え方から外れている人はいるでしょう。


まず再分配政策については、「給付付き税額控除」政策を主張する人が多いと思います。これについては消費税の逆進性対策として、軽減税率を否定する代わりに給付付き税額控除を主張するという文脈で出てくることが多いです。

ちなみにこの政策は、下の解説にもあるように民主党も採用している政策なので、リフレ派だけの政策というわけではありません。

税額控除と手当給付を組み合わせた制度。算出された税額が控除額より多い場合は税額控除、少ない場合は給付を受ける。例えば、10万円の給付付き税額控除を行う場合、税額が15万円の人は5万円を納付し(10万円の税額控除)、税額が5万円の人には5万円が支給される(5万円の手当給付)。通常の税額控除や所得控除と違い、課税所得がない低所得者も恩恵を受けられる。民主党が平成21年(2009)の第45回衆議院議員総選挙の際に、所得税改革の一環としてマニフェストに掲げた。


給付付税額控除(キュウフツキゼイガクコウジョ)とは - コトバンク 給付付税額控除(キュウフツキゼイガクコウジョ)とは - コトバンク 給付付税額控除(キュウフツキゼイガクコウジョ)とは - コトバンク

このように、リフレ派は再分配政策というものを、文字通り「所得や資産」の「再分配」という意味で理解しています。

この考え方は、経済学者ミルトン・フリードマンの「負の所得税」の考え方を応用したものです。フリードマンというと、左派からは「新自由主義の元祖」というイメージが強くて評判が悪いのですが、彼は彼なりに不平等の問題を考えていたわけです。ただ、彼の支持者や後継者の中にはこのような視点が抜け落ちてしてしまった人も多いのですが。

給付付き税額控除(きゅうふつきぜいがくこうじょ)とは、負の所得税のアイディアを元にした個人所得税の税額控除制度であり、税額控除で控除しきれなかった残りの枠の一定割合を現金にて支給するというもの。ミルトン・フリードマンの「負の所得税」を応用したものである[1]。

勤労税額控除という形式で導入している国家が存在し、アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、スウェーデン、カナダ、ニュージーランド、韓国など10カ国以上が採用している。


給付付き税額控除 - Wikipedia 給付付き税額控除 - Wikipedia 給付付き税額控除 - Wikipedia


また、労働政策についてですが、リフレ派は雇用を非常に重視しています。例えば、浜田宏一内閣参与はリフレ派の代表的な経済学者の一人ですが、最近こんな発言をしています。

 「僕はあくまでも国民生活に一番響くのは雇用だと考える。雇用環境がひっぱくしているという現状がある限り、物価の細かいパーセントに一喜一憂する必要はない。物価目標は消費者物価指数(CPI)そのものではなく、エネルギーと食料品を除いた『コアコアCPI』とするべきだ」


増税へ緩和継続と第四の矢を 浜田宏一エール大名誉教授:朝日新聞デジタル 増税へ緩和継続と第四の矢を 浜田宏一エール大名誉教授:朝日新聞デジタル 増税へ緩和継続と第四の矢を 浜田宏一エール大名誉教授:朝日新聞デジタル

インフレ目標はリフレ派が最も重要視してきた政策ですが、それでも「物価の細かいパーセント」よりも雇用の方が重要であると浜田氏は言っています。インフレ目標に疑問を抱かせるような発言をしてでも、雇用の重要性を強調しているわけであり、リフレ派が雇用を無視しているわけではないのは、この発言でも分かるでしょう。

ただ、リフレ派が考える雇用政策は、景気を回復させて労働需要を増やすことで、労働市場を労働者側有利にして、失業率の低下や安定した雇用の増加を促すというものであり、労働者派遣法のような法的手段で、不安定な雇用や劣悪な雇用を規制するというアプローチとは異なります。


というわけで、リフレ派は再分配政策も労働政策も軽視しているわけではないのですが、クルーグマンやスティグリッツの主張には感心するのに僕の記事には反感があるという方ならば、恐らくこのような主張は知っていて、それでも反感を抱いているのだと思います。

特に、実際に福祉政策や雇用政策のNGOで活動している方から見れば、このような主張は「当事者のニーズを無視している」ように見えるのでしょう。

ただ、リフレ派がこのような考え方をしているのには、理由があります。それはリフレ派の発想が「裁量からルールへ」という考え方に基づいているからです。

リフレ派は以前「インタゲ派」と呼ばれたこともあるくらい、インフレ目標政策を強く主張していました。黒田総裁になってインフレ目標を採用したので、最近では主張は別の点に移ってますが。

このインフレ目標政策も「裁量からルールへ」という考え方を金融政策に適用したもので、従来は日銀の裁量によって不透明な形で行われていた金融政策を、インフレ目標という透明性の高いルールに基づいて行うことで、市場の予想を安定させ、安定的な経済成長や物価を実現させようという考え方です。その理論的基盤は「期待インフレ率」の安定が重要であることを証明した、クルーグマンやバーナンキ(前FRB議長)をはじめとする多くの経済学者の業績に基づいています。


リフレ派はこのような「裁量からルールへ」という考え方を、他の分野にも適用しています。

この考え方がよく分かるのが、前回の記事で著書を紹介した若田部昌澄氏の記事です。(この人もリフレ派の中心的な経済学者の一人です)

デフレ脱却後の「国のかたち」を求めて

 かくも「第三の矢」は玉石混交であるが、これは次のレジームを占うシグナルともなる。リフレ・レジームはいずれにせよ、一時的である。そもそもリフレーションが、デフレからの脱却をめざし、緩やかなインフレを実現することだからだ。インフレ目標の目標値が実現した暁には、リフレ政策の歴史的使命は終わる。問題は将来のレジームである。

 何よりもデフレ・レジームに後退しないことが必要であり、インフレ目標あるいはその進化した仕組みは維持されなければならない。それ以外の分野では、「第三の矢」と再分配政策が国のかたちを決めていくだろう。来るべきレジームの特徴を2つの方向でまとめてみよう(表2)。


f:id:Baatarism:20150816235845p:image


 2つのレジームの違いは、その政策哲学・思想にある。一方のオープン・レジームはルール・枠組みを重視し、そのもとで新規参入を促進しようとする。政府がおカネを使うよりは民間がおカネを使うことを重視する。再分配についても、ルールを定めて裁量が働かないようにする。他方のクローズド・レジームは、政府の裁量・計画を重視し、特定産業の利害を重視する。もちろん、来るべきレジームは、必ずしもくっきりとどちらかに分かれるものではないかもしれない。分野によって混合体になる可能性はある。

 これまでの「第三の矢」には、2つのレジームのどちらの要素も含まれている。ところで安倍首相は、これまで成長戦略を発表するのに自ら講演を行なうという手法をとってきた。その第一弾(4月19日)、第二弾(5月17日)での講演で、それぞれ下村治、池田勇人について言及していることは興味深い。どちらも高度成長期の立役者であり「国民所得倍増計画」で知られている。けれども、彼らはどちらも計画を嫌っていたという。池田は「私は統制経済や計画経済論者ではないから、10年という期間を限定して、計画的に月給を2倍にするとは、いいもせず、考えてもいない」(藤井信幸『池田勇人』ミネルヴァ書房、2011年)と。


最先端を行く「リフレ・レジーム」〔2〕 | PHPオンライン 衆知|PHP研究所 最先端を行く「リフレ・レジーム」〔2〕 | PHPオンライン 衆知|PHP研究所 最先端を行く「リフレ・レジーム」〔2〕 | PHPオンライン 衆知|PHP研究所

この記事にあるように、若田部氏はリフレ政策以後の日本のあり方を「オープン・レジーム」と「クローズド・レジーム」に分けて、前者をルール・枠組みを重視する考え方、後者を政府の裁量・計画を重視する考えたと分類しています。この記事でははっきりとは言ってませんが、前回紹介した「ネオアベノミクスの論点」という著書の3章「ネオアベノミクスの革新・オープンレジーム」では、「オープン・レジーム」が望ましい政策であることを表明しています。

ネオアベノミクスの論点 (PHP新書)

ネオアベノミクスの論点 (PHP新書)

このような考え方からすれば、再分配政策は給付付き税額控除やベーシックインカムといった、明確なルールに基づいた政策が望ましいと言うことになるでしょう。また、労働政策についても、明らかに人権侵害となる場合を除けば、法的な規制で裁量的な線引きを行うよりも、労働市場を活用して雇用や労働環境の改善を図るという考え方になるでしょう。


と、ここまでがリフレ派の再分配政策と雇用政策、そしてその元にある考え方の説明です。


ただ、この考え方では「当事者のニーズ」は市場の中で解決されるべきだということになります。

確かに裁量的な行政の元では、しばしば当事者のニーズを無視した一方的なサービスが押しつけられます。この弊害が一番出ているのが生活保護で、生活保護を受ける代わりに、子供の教育や日々の生活に様々な制限が加えられることが多いです。その制限は行政が考えた「生活に必要不可欠かそうでないか」という裁量的な線引きに基づくものです。また、生活保護の受給決定についても「水際作戦」のような不透明な却下が横行してます。右派の中には生活保護への不信感が強く、「ナマポ」などと揶揄・中傷する人もいますが、これも「どうせ自分が本当に困っても適用されない制度だ」と思っているからそういう行動を取るのでしょう。


しかし、市場にも欠陥はあり、特に情報の非対称性によって劣悪な福祉サービスを押しつけられることもあります。ブラック企業として有名な企業が介護分野に進出して、その施設では劣悪な労働環境と低質なサービスが横行しているという話も聞きます。

そのような問題は「裁量からルールへ」という考え方だけでは解決出来ないのでしょう。確かに行政の「裁量」が多くの問題を引き起こしてきたことは間違いないですが、「ルール」に基づいて「当事者のニーズ」を解決することが、市場だけで可能だという保証はありません。


そのような問題に真剣に取り組んでいるリフレ派は確かに少ないのですが、前回の記事の補足で述べた松尾匡氏は、その数少ない一人だと思います。左派でありリフレ派でもある松尾氏は、「裁量からルールへ」という考え方も支持していますが、それ故にこの問題に自覚的な人だと思います。

前回紹介したシノドスの連載記事や、それを書籍化した「ケインズの逆襲 ハイエクの慧眼」には、そのような問題意識が込められていると思います。

松尾氏は経済学の歴史にも詳しく、マルクス、ケインズ、ハイエク、フリードマンなど過去の経済学の巨人達の考えも自分なりに再解釈して取り入れて、「裁量からルールへ」という流れの中で、福祉・再分配政策や労働政策がいかなるものであるべきかを、過去の歴史や巨人達の思想から導き出した「リスク・決定・責任の一致原則」を踏まえて論じています。

松尾匡 | SYNODOS -シノドス- 松尾匡 | SYNODOS -シノドス- 松尾匡 | SYNODOS -シノドス-

松尾氏の考えについては、ここで説明するよりも、ぜひ松尾氏の記事や著書を読んでいただきたいと思います。特に左派の方々にとっては、非常に参考になると思います。

結局肝心の部分を書いていないではないかという批判もあるかと思いますが、これについては僕が付け焼き刃で説明することではないと思うのです。松尾氏自身もまだまだ模索中だと思います。


というわけで、リフレ派の再分配政策と雇用政策について、その長所も短所も含めて、自分の理解を書いてみました。今回の記事は若田部昌澄氏と松尾匡氏の考えに基づいていますが、二人ともリフレ派の中でも高く評価されている人ですので、この2人の考え方に異議を唱える人は、リフレ派でも少ないと思います。

今の僕に書ける内容は、こんなところです。

hogehoge 2015/08/17 05:28 私もエンジニアなので、裁量よりもルールベースの方が好ましいと基本的に思っている。
密室での裁量から、オープンなルールに変更するなら、なおのことどのようなルールを決めるかが重要になる。
上のエントリーでは、ルールの制定が大事だと主張するがではどのようなルールを設定すべきかという問には答えていない。
ルールはアルゴリズムと言い換えても良いので、そのルール自体にバグや暴走を許す穴や不正を許す穴があると全然上手く機能しない。
密室での裁量ならバグや不正は「こっそり^^;」修正できるが、オープンなルールの場合、そのようなことは許されない。
私は、Webサーバのエンジニアなので、ルールを定めるとそのバグを付いてくる利用者がいることをよく知っているし、ルールの欠陥は大体突かれる^^;。
つまり、オープンなルールに変更するなら、制度設計を行なう経済学者自身が優秀なルールデザイナーあるいは、ゲームデザイナーに成れなければ、ゲームの参加者にバグや不正な穴を突かれまくって制度自体が崩壊する。
市場のルールと言っても、メカニズムデザインの分野では、いくつかのオークション方式が提案されており、どのオークション方式を仕様として採用するかで、効率性や不正に対する耐久度も変わるのではないか。

これからの政策担当者とか経済学者は密室での調整(裁量)能力よりも、上手く機能するゲームのデザイン(オープンなルールの構築)能力が必要になってくるのかも知れない。

単にルールベースに変えるというだけじゃなくて、そのために何が必要か、どのようなことに弱いかを考えると良いかも。

質問者2質問者2 2015/08/17 07:48 再分配に関する記事、ありがとうございます。

ルールか裁量か、という論点で言えば、バーナンキがいう「(ルールによる)制約下の裁量」がリフレ政策であると思います。

田中秀臣さんの記事をご参照ください。
バーナンキのインフレターゲット論の復習
http://blog.goo.ne.jp/hwj-tanaka/e/da49736cae537b77b9cc42109081632f

野口 旭さんの『世界は危機を克服する―ケインズ主義2.0』 http://ow.ly/LPhOh
にも書かれていますが、ケインズ主義とは、金融政策と財政政策によって、不況に対して裁量的に介入して、経済安定化を目指すものと理解しております。

リフレ政策はマクロ経済政策ですので、平均点を良くすることに主眼がおかれ、ミクロの弱者や全員を良くすることとは異なります。この辺が、人によっては「冷たく」「再分配」に理解がないと感じられる理由ではないか、と考えております。

リフレ派と再分配の読書リストもあるそうですので、リフレ派は再分配を云々される方はご一読頂きたいですね。
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20140227

政策割当としては、リフレは経済安定化です。
再分配政策はそれとして分けて論じるのが吉と思います。
マイノリティーのリフレ派にこうも事前期待が高いのは一体なぜなのか、謎です。

いるかいるか 2015/08/17 12:55 リフレ派学者の再分配政策の考え方が理解できる記事だと思いました。
ただ「リフレ派の再分配政策と雇用政策についての自分の理解」というのは自身の主張という意味でいいのでしょうか。この、左派リフレ派の考え方と自身の考え方を切り離しているような書き方が気になります。

ABC1979ABC1979 2015/08/17 12:56 私の作った動画とブログでも見てください。

http://d.hatena.ne.jp/ABC1979/mobile?guid=on

nananana 2015/08/17 22:21 「まともに考えたことありません」の一文で済む内容ですね

nenenene 2015/08/17 23:39 いま「まともに考えたことありません」というコメントを目にしてふと思いついたのが麻生内閣に議論を呼んだ定額給付金ですね。

あの時、野党の共産党や社民党は消費増税につながるからとして、あるいは対案として消費税減税を掲げるなどして反対しましたが、実は逆進性を考えると、消費税減税or増税の延期は定額給付金よりもきつい、つまり貧乏人には恩恵の少ない対案だったんですね。

というのは消費税減税の逆が消費税増税とすれば、定額給付金の逆は人頭税の導入ということになるからです。当然税制の累進制・逆進性、あるいは再分配や低所得層の生活支援対策について「まともに考えた」ことがあれば(義務教育レベルの知識も必要ですが)、到底ありえないような反対理由を掲げていたということになります。

現在、公明党はプレミアム商品券や消費税の軽減税率導入などといった、よくよく考えると低所得層にはあまりメリットのない政策を打ち出しているわけですが、その遠因として定額給付金騒動で起きた無知無理解な野党による反対のトラウマから、効率的で累進的な経済対策を封じられたことが挙げられるかもしれません。

社会的弱者にとっての本当の利害とは何かを「まともに考え」ず、安易な「何でも反対」ポジションで目指すべきものを見失ったままでは左派政党の復権は難しいのではと感じますね。

BaatarismBaatarism 2015/08/18 09:28 >hogeさん
実は僕も元エンジニアです。リストラに遭って、技術部門から離れましたがw

>私もエンジニアなので、裁量よりもルールベースの方が好ましいと基本的に思っている。
密室での裁量から、オープンなルールに変更するなら、なおのことどのようなルールを決めるかが重要になる。
上のエントリーでは、ルールの制定が大事だと主張するがではどのようなルールを設定すべきかという問には答えていない。
ルールはアルゴリズムと言い換えても良いので、そのルール自体にバグや暴走を許す穴や不正を許す穴があると全然上手く機能しない。
>密室での裁量ならバグや不正は「こっそり^^;」修正できるが、オープンなルールの場合、そのようなことは許されない。
私は、Webサーバのエンジニアなので、ルールを定めるとそのバグを付いてくる利用者がいることをよく知っているし、ルールの欠陥は大体突かれる^^;。

実はユーロがこういう例ですね。あれは政治的な理由で、経済学から見て稚拙なルールを作ってしまったせいで、欧州に大災厄をもたらしてしまいました。あと数十年は、欧州はこの後始末に追われるのでしょう。
インフレ目標は世界の多くの国が採用して、効果が出ている信頼あるルールですが、財政や所得再分配の分野では、まだそういうルールが確立されてないのでしょう。

>これからの政策担当者とか経済学者は密室での調整(裁量)能力よりも、上手く機能するゲームのデザイン(オープンなルールの構築)能力が必要になってくるのかも知れない。

最近の経済学では、そういうことを考えているマーケットデザインという分野があります。グーグルでも生かされてるそうですね。
今後は、こういう知見も経済政策に取り入れられていくのでしょう。

マーケットデザイン : ECONO斬り!! - livedoor Blog
http://blog.livedoor.jp/yagena/tag/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3

>質問者2さん
参考記事の紹介、ありがとうございます。

>ルールか裁量か、という論点で言えば、バーナンキがいう「(ルールによる)制約下の裁量」がリフレ政策であると思います。
そうですね。完全にルール化できるのであればAIにでもやらせれば良いのですが、市場との対話や危機対応などで裁量が必要な時もあるので、「(ルールによる)制約下の裁量」という形になってますね。

>政策割当としては、リフレは経済安定化です。
>再分配政策はそれとして分けて論じるのが吉と思います。
>マイノリティーのリフレ派にこうも事前期待が高いのは一体なぜなのか、謎です。

今はリフレ派も政権に関わってますからねえ。だから経済安定化以外の政策についても見解を求められるのでしょう。

>いるかさん
本文でも述べたように、リフレ政策以外ではリフレ派の意見は必ずしも一致していません。それでも「裁量からルールへ」という考え方を持っている人が多いので、他の政策でもある程度の一致は見られます。そういう意味で「リフレ派の平均的な再分配政策や労働政策」と言いました。「僕なりの理解」と付け加えたのは、僕が見落としている意見もあるかもしれないと思ったからです。

>neneさん
定額給付金に近い考え方としてベーシックインカムもあるので、定額給付が逆進性が強いとは言えないでしょう。
ただ、逆に全員に定額の税金を割り振る人頭税は、最も逆進的な税金ですね。
プレミアム商品券や消費税の軽減税率導入は、僕もあまり低所得者層にメリットはなさそうだと思います。

低所得者層のために、税金には何らかの逆進性緩和措置が不可欠だという点には賛同します。
あなたがおっしゃるように、左派政党には社会的弱者にとっての本当の利害とは何かを、真剣に考えて欲しいですね。

vgobpavgobpa 2015/09/08 03:26 neneさんの見解に私も基本的には賛同なのですが、それは、(消費税)増税+再分配が社会民主主義の基本だと私が理解しているからです。

しかし、消費税減税を主張していた共産・社民を批判するということは、消費税減税反対という理解でよろしいでしょうか?リフレ派といわれる方は、ほとんどが消費税増税に反対しています。共産・社民もです。「まともに考えれば」消費税増税分を定額給付すると、金持ちの方が消費額が多いので、負担(=消費税増税)と給付(=定額給付)を合計すると、社会的弱者にとってプラスだし、社会全体で見ても消費性向の低い層から高い層への再分配になるので総需要を喚起します。

何が言いたいかというと、neneさんの見解は消費税反対のリフレ派を批判する理由にもなっているということです。

nenenene 2015/09/13 21:21 >vgobpaさん

リフレ派でも飯田先生のように中長期的な消費増税を容認している論者もいるので、現在の消費増税反対の論調は短期的な景気循環を念頭に置いたもの、つまり今のような低いインフレ率の経済を主に前提とした議論でしょう。

所得階層ごとの消費性向の差を意識して、税と現金給付を通じた所得再分配による需要底上げを唱える人は(リフレ派かどうかに関係なく)いるようですが、肝心の消費性向の差はさほど大きなものではないので、余程大規模な所得移転が起きないと景気対策として効果を発揮しづらいのではないかと思います。それなら最初から景気対策一本に絞る方がマシでしょう。

財政に関するリフレ派の立場は、短期的には消費増税反対で現金給付や本当に必要で効果的なインフラ整備の前倒しで対応し、中長期的な財政プランは論者によってまちまちでしょうね。こうした短期と長期の区別は政策割当の基本で、構造改革論や人口デフレ論もこうした視点がないと適切に評価するのが困難ではないかと感じています。

そういえば社会保険料負担増のように、主に勤労者限定ではあるものの人頭税的に機能する逆進的政策も年々静かに進行していますが、リフレ派にはかつて正社員雇用促進も念頭に社会保険料負担の免除を主張する動きもありましたね。今こちらの議論を復活させても特に何の支障もないかと思います。

nenenene 2015/09/13 21:52 ほとぼりも冷めたようなので書きますが、個人的には当エントリ冒頭のkojitakenさんのツッコミって全然共感できなかったんですよね。

理由の1つは労働政策がトレードオフの塊であることで、規制に対して企業側が抜け道的な対応(2年11ヶ月で雇い止め等)をしたり、さもなくば雇用自体を縮小させたりといった問題があって、かえって一部の労働者に負担が集中する(つまり格差が拡大する)結果となりかねません。もちろんパワハラセクハラなど、職場の生産性を悪化させかねないような不法行為への対処などは有効でしょうけどね。

次に理由の2つ目として、派遣労働者の実数が労働者全体の2%程度を占めるに過ぎないことです。非正規問題の諸悪の根源として小泉政権の派遣法改正がよく槍玉に上がりますが、統計を見ると非正規労働者はデフレ不況が加速した90年代後半に急増を開始していて、2%に過ぎない派遣労働者の増加では説明できません。それに派遣労働者の大半は女性で、その多くは寿退社を前提とした日本型女性正社員を置き換えたもので、実態として元々長期雇用ではなかったのではないでしょうか。

ですので個人的な印象として、非正規労働問題や格差問題を考えるなら、派遣規制の問題はあくまで副次的なものでしかなく、マクロ的な労働需要がボトルネックだと考えてリフレ政策を推進するというのが、労働問題について「まともに考えた」証になるのではないのかなという気がしています。まあ必死に何かと戦っている左派の方には大変申し訳無いなあとは思うんですが。

2015-08-06 左派・リベラルはなぜ安倍政権を倒せないのか? このエントリーを含むブックマーク

現在、国会で審議中の安保法案は、集団的自衛権行使は憲法違反だとする憲法学者の指摘や、安倍政権側の説明の混乱や問題発言などもあって、なかなか国民の支持を得られない状況です。これに伴い内閣支持率も低下し、7月の調査では不支持率が支持率を上回ってしまいました。

 安倍政権の支持率が低下し、新聞主要各紙で内閣不支持率が支持率を逆転している。

 報道各社の7月の内閣支持率は、NHK41%、朝日39%、毎日35%、読売43%、日経38%、産経39.3%、共同37.7%だった。不支持率はそれぞれ43%、42%、51%、49%、50%、52.6%、51.6%で、各社ともに支持率が不支持率を下回っていた。これは、安倍政権では初めてのことだ。


支持率急低下の安倍政権“維持可能性”を検証する|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン 支持率急低下の安倍政権“維持可能性”を検証する|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン 支持率急低下の安倍政権“維持可能性”を検証する|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン

ただ、この高橋洋一氏の記事によれば、自民党支持率の低下や野党支持率の上昇は起こっていないので、まだ安倍政権が退陣する状況ではないということです。

 もちろん、政治の世界では一寸先は闇なので、どのような展開もあり得る。ただ、政界では有名な法則がある。内閣支持率+与党第一党の政党支持率(青木率)が50%を切ると政権が倒れるという、いわゆる「青木(幹雄・元参院議員)の法則」である。これを使って、安倍政権の今後を見てみよう。

 歴代政権の青木率の推移を見ると、ほとんどの場合、発足当初に高かった支持率が時とともに低下し、40〜60%程度まで下がったところで退陣している。新政権発足当初は、前政権の反動から期待が大きいが、徐々に失望に転じるからだ。

(中略)

 これらをまとめると、青木率が60%を割ると黄信号、50%を割ると赤信号のようだ。

 つまり、青木率が60%を下回ると、党内で「次期首相候補」がささやかれ、50%を下回るようになると、本格的な政局になって、首相が引きずり下ろされるわけだ。

 今回の安倍政権については、100%を超えたスタートであり、6月までには80〜100%程度と高い水準を維持してきた。それが7月になって、NHK調査で見た青木率は75.7%(自民党支持率は34.7%)と、初めて80%を割り込んだ。

 ただし、歴代政権から見ればまだ高く、黄信号にもなっていない。民主党等への支持率が上がっていないので、自民党支持率は大きく低下していないからだ。安全保障関連法案で失ったものの、まだアベノミクスでのプラスの蓄えがある。


支持率急低下の安倍政権“維持可能性”を検証する|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン 支持率急低下の安倍政権“維持可能性”を検証する|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン 支持率急低下の安倍政権“維持可能性”を検証する|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン

その理由はアベノミクス、すなわち経済政策での成功によるものです。消費税増税による消費の落ち込みはありますが、雇用状況は大きく改善していて、株価も上昇しています。このような経済政策への支持が安倍政権の支持率を押し上げています。


さて、今、左派・リベラル勢力によって安保法案反対や安倍政権打倒を訴えるデモが起きています。特に若者によって組織された「SEALDs」が大きな注目を浴びています。

ただ、彼らは大声で安倍政権を批判していますが、何故かその支持の根幹である経済政策では、安倍政権に対抗しようとしていません。ここに打撃を与えないと安倍政権を打倒することはできません。

また安倍政権の好ましくない政策を止めたいのであれば、政権交代を実現させて安倍政権が制定した「間違った」法律を廃止する必要がありますが、そのためにも安倍政権以上の経済政策を打ち出す必要があるでしょう。


安倍政権の経済政策を評価すると、デフレ脱却をを実現しつつある異次元金融緩和やインフレ目標などの金融政策は良く、消費税増税で景気(特に消費)を悪化させてしまった財政政策は悪く、成長政策についてはまだ効果が出ておらず、格差を縮小するための再分配政策は無策であるという評価になるでしょう。

よって、成果が出ている金融政策は安倍政権のものを取り入れ、それ以外の政策でより良い政策を打ち出せば、安倍政権を上回る政策を作ることは難しくありません。

それなのに、何故左派・リベラルはそれをしないのでしょうか?

それどころか民主党首脳部には、金融緩和を否定し消費税増税を推進していたこれまでの路線を変えようという動きはありません。政権交代の中心にならなければならない民主党が、なぜかつての政権時代の誤った政策に固執しているのでしょうか?


この疑問を解くには歴史を遡って、今の左派・リベラルの源流となったかつての社会主義者が、どのような経済政策を主張していたかを知るのが有効だと思います。

経済学者の若田部昌澄氏が、「ネオアベノミクスの論点」という著書の4章で、それについて解説してますので、それに沿って説明したいと思います。

ネオアベノミクスの論点 (PHP新書)

ネオアベノミクスの論点 (PHP新書)


この本では戦前戦後のいくつかの経済論争が取り上げられています。

時期論点賛成側反対側
金解禁論争(1929-1930)新平価金解禁石橋湛山、高橋亀吉小汀利得、山崎靖純大多数の経済学者、官僚、政治家(特に濱口雄幸総理、井上準之助蔵相)
世界大恐慌期(1930年代前半)金本位制離脱、リフレーション政策石橋湛山、高橋是清蔵相笠信太郎、大内兵衛
戦後復興期(1940年代後半)インフレ許容による復興政策石橋湛山都留重人、大内兵衛
1950年代前半自由貿易(反対側は国家統制)中山伊知郎有沢広巳、都留重人
高度経済成長期(1960年代〜1970年代初頭)所得倍増政策、成長論争下村治、石橋湛山、池田勇人総理笠信太郎、都留重人、朝日新聞

これらの論争には重複して登場する人も多いのですが、大きくまとめると「賛成側」はインフレを許容して経済成長を追求する人達、「反対側」はハイパーインフレを恐れて経済成長を抑制する人達と分類することができます。そしてこの構図が過去20年のリフレ派vs反リフレ派の論争にそのまま重なるのです。

戦後の論争では、「反対側」に属する経済学者は全てマルクス経済学者でした。そして現在の左派・リベラルは、思想的にはかつての社会主義者の影響が強いです。上の表に何度も出てくる石橋湛山は、戦前に「小日本主義」を唱えて日本の対外侵略を批判したことでも有名ですが、このような日本を代表するリベラリストの経済政策が、今の「リベラル」にはほとんど入っていません。このことが、今の「左派・リベラル」は「リベラル」を自称していても、実態としてはかつての社会主義者の後継者であることを示していると思います。

ただ、1990年代の「非自民政権」を志向した政治家には小沢一郎、細川護煕、武村正義のような自民党出身者も多いのですが、彼らが財政再建を主張して消費税増税を画策し、インフレを恐れ、経済成長に無頓着であったことは、日本の「リベラル」を社会主義者の後継者にすることに大きく貢献してしまったと思います。彼らの後継者が今の民主党執行部であることを考えれば、この時代にインフレを許容して経済成長を追求する勢力を作れなかった(と言うか、そのような問題意識すら無かった)ことが、現代の「リベラル」を石橋湛山のような本来のリベラルと異なる物にしてしまった大きな要因だと思います。


このように、現代の左派・リベラルが、かつての社会主義・マルクス主義の思想的影響下にあることが、安倍政権の金融政策(リフレ政策)を取り入れられない理由なのでしょう。彼らにとって、石橋湛山や下村治の系譜を引くリフレ政策は、歴史的な仇敵なのでしょう。その敵対心は、安倍政権に対するものに匹敵するのかもしれません。

その結果、リフレ政策は民主党政権ではなく、安倍政権によって受け入れられたのだと思います。そして、リフレ政策が成果を上げても、左派・リベラルは現実を受け入れられず、徹底的に否定するしかないのでしょう。彼らがリフレ政策を受け入れることは、自らの知的系譜を否定することに等しいわけですから。

このような歴史的な経緯が、左派・リベラルが安倍政権を打倒できない根本的な要因だと思います。


安保政策についてはアメリカという歯止めがあるので、日本の右派勢力がいくら暴走しても、戦前のような事態は起こさないでしょう。ただ、歴史認識については、戦前日本の侵略や人権侵害という、世界的に否定できない事実まで否定してしまい、世界から批判を浴びることが懸念されます。

また、日本の右派は人権を軽視し、所得再分配にも消極的ですから、弱者を放置する政治になってしまいます。だから彼らがあまり暴走するのも困りものです。

ただ、本来ならばそれに対抗するはずの左派・リベラルは、これまで述べたような理由によって右派を押さえることはできないでしょう。これは歴史的な桎梏であり、変えさせることは困難だと思います。


そうなると、かつての石橋湛山や下村治の思想に基づいた、本当の意味での「リベラル」を再興して、暴走しがちな右派の押さえとするしかないのでしょう。今のリフレ派の思想はその基盤になると思いますが、それが社会主義的な「左派・リベラル」に取って代わるには、まだ長い時間が必要でしょう。

でも、経済成長を抑制する社会主義的な「左派・リベラル」を衰退させて、経済成長を推進する本来の「リベラル」を再興しなければ、右派の政治で見捨てられる貧しい人やマイノリティを救うことはできないと思います。それこそが本来のリベラリズムの目的でしょう。


アメリカのリベラルは、本来の姿を保っていると思います。だから、リベラル派の代表的な経済学者であるクルーグマンやスティグリッツは日本の現在の金融政策を全面的に支持しているのです。

また、欧州では国民を窮乏化させている緊縮政策に反対して、左派勢力が次々に台頭しています。失敗はしてしまいましたがギリシャのSYRIZAもその一つですし、スペインではPodemosが政権を奪取しそうな勢いです。本来、左派勢力というのはかくあるべきものでしょう。

しかし、日本の左派は上に述べたような事情によって、むしろインフレを恐れて緊縮政策を推し進めるドイツの側に立ってしまっています。


このように、日本の左派・リベラルは、国際的に見ても異質な存在です。(もう一つ異質な存在なのがドイツですが)

歴史的に奇妙な進化をしてしまい、国際的にも異様な姿になってしまった日本の左派・リベラルは、日本の俗語の用法で「ガラパゴス」と呼ぶにふさわしいものなのでしょう。

そのようなガラパゴス左派、ガラパゴスリベラルの存在が、日本の政治を歪めている大きな要因だと思います。


8/8追記

欧州左派が反緊縮に立ち上がっていることについては、経済学者の松尾匡氏のブログに詳しい説明があります。

jahikkaさん、ご指摘ありがとうございます。

松尾匡のページ 15年5月20日 闘う欧州労連は量的緩和を歓迎する 闘う欧州労連は量的緩和を歓迎する 闘う欧州労連は量的緩和を歓迎する


また、松尾匡氏は朝日新聞のインタビューで、「左派こそ金融緩和を重視するべき」という主張をしています。もし左派の皆さんが、僕が上で述べたようなしがらみを断ち切って、金融緩和重視に舵を切り、僕の面子を丸潰れにしてくれれば、これほどうれしいことはありません(笑)

左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授:朝日新聞デジタル 左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授:朝日新聞デジタル 左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授:朝日新聞デジタル


松尾匡氏は、マルクス経済学者であり、同時にリフレ政策も支持しているという方です。安倍政権の安保政策や戦後処理問題、人権問題へのスタンスには批判的です。安保問題については反対署名にも参加してます。「リフレ派=安倍支持者」と思っている方も多いようですが、リフレ派にはこういう人もいます。

下の記事に、安倍政権反対のさまざまなアピールで、呼びかけ人や署名をしていることが書かれています。

ワタクシこの夏も激動中(with生活保護と失業のグラフ) ワタクシこの夏も激動中(with生活保護と失業のグラフ) ワタクシこの夏も激動中(with生活保護と失業のグラフ)


松尾匡氏が凄いのは、リフレ派の思想もマルクス、ケインズ、ハイエクなど多くの過去の偉人達の思想も深く分析して、現代の潮流を「『リスク・決定・責任』がなるべく一致するシステムへの転換」と結論づけて、今後左派やリベラルが進む道を示していることです。僕も松尾匡氏の記事を読んで、何枚も目からウロコが落ちました。

2年にわたって連載し、最近終了したシノドスの記事『リスク・責任・決定、そして自由!』に、そのような松尾匡氏の考えがまとめられています。

松尾匡 | SYNODOS -シノドス- 松尾匡 | SYNODOS -シノドス- 松尾匡 | SYNODOS -シノドス-

この連載の前半はすでに書籍化されていて、後半ももうすぐ書籍化・刊行される予定です。

今回の僕の記事に好感を持った方も、反感を持った方も、この本や連載記事は一度読んでもらえたらと思います。今後の左派やリベラルの目指すべき姿について、きっと得るものがあるはずです。

もうすぐ夏休みを迎える方も多いと思いますが、松尾匡氏の思想にじっくり取り組むのも良いと思います。

正直言って、自分はいくら叩かれても良いので(それだけのことは言ってるわけですから)、松尾匡氏の本や記事をすこしでも読んでもらえたらと思います。

jahikkajahikka 2015/08/07 08:54 世界を代表するリベラル派の経済学者が金融緩和を支持し、米民主党をはじめとするリベラル派の各国政党が金融緩和を支持し、そして、松尾匡さんが指摘されていますが、欧州の労働組合も金融緩和を熱烈に支持しているわけです。(http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__150520.html)日本だけが全てこの逆なんですよね。

あ 2015/08/07 14:13 リフレとは日本銀行が10%の株式を持つという意味ですね。

bogus-simotukarebogus-simotukare 2015/08/07 19:21  アベノミクスが支持されてないからこそあれだけ支持率が落ちたんでしょうに(でそれを安倍も分かってるからこそ慌てて国立競技場建設の見直しをぶちあげた)。
 そもそも何を根拠にアベノミクスが支持されてるだの、野党の支持が伸び悩んでるのがアベノミクス不支持のせいだの言ってるんですかね?。脳内妄想も大概にしたらどうですか?
 ああそれと「シールズ」は護憲団体であって政党じゃないんですけどね。たとえるなら「デパート」じゃなくて専門店ですね。
 で専門店に向かって「何故デパートにならない」て言うのがいかにアホかという程度の事も理解できませんか?
 大体「リフレがどうとか」言ったら「リフレ反対派の護憲派がシールズに入りづらい」でしょうに。

bogus-simotukarebogus-simotukare 2015/08/07 19:39  金融政策はいい、株価が上がってるて、カンフル剤で無理矢理あげてるようなもんでしょうよ。多くのアベノミクス批判派が指摘してるようにいい加減出口戦略を考えないと反動で「円高や株価安(どのレベルかはともかく。まあ日本経済破局というレベルではなくても『アベノミクスってやる意味あったの?』てレベルにはなるでしょうね)」が起きかねないでしょうよ。いつまでもカンフル剤なんかやれるわけないんだし。
 それと「単に無理矢理株価を上げてるだけの男(安倍)とそのブレーン」と「とにもかくにも高度成長を実現した男(池田)とそのブレーン」を同列視するなんて池田に対して失礼だとは思いませんか?(まあ思わないんでしょうけど)

>欧州では国民を窮乏化させている緊縮政策に反対して、左派勢力が次々に台頭しています。

 だから日本でも共産党という左派は「生活保護カット」「消費税増税」「派遣規制緩和」などという国民窮乏化政策、緊縮政策を批判してるでしょうが。
 あなたにとっては「リフレ反対=緊縮政策」なんですか?(そもそも消費税増税なんかして景気にブレーキかけてる安倍がリフレ派と呼べるかはなはだ疑問だし、無理矢理株価を上げるなんてことを過去の政権がやってないのは経済音痴と言うより出口戦略の難しさだと思うが)。呆れて物も言えませんね。大体安倍がばらまいてるのって「土木と軍事と日銀の株式等買い上げ」だけじゃないですか。
 景気のことも考えて「社民的な形でのばらまき」が必要なんですけどね。あなたが「安倍を支持してる」というスティグリッツやクルーグマンは「社民的なばらまき」を主張してると思うんですけど。つうか単に左派に因縁つけるだけの駄エントリなんか書いて嬉しいですか?(そもそもリフレ反対=左派て理解も相当に酷いが)

sakamotoakiraxsakamotoakirax 2015/08/07 20:37 「失われた二十年」の頃にデフレを促進したのは自民党政権で、非自民政権ではない。非自民政権は無策だった。なら今の野党が政権を取って経済のビジョンが持てるの?
アベノミクスには批判も多い。経済ビジョンだけで安倍政権を倒せるとは思えない。

   2015/08/07 21:15 コメント欄を見れば、いかに日本の左派が馬鹿なのかよく分かる

雇用統計も改善しているのに、現実を直視できずに安倍が悪い&自民が悪いばかり。

日本の左派が馬鹿だから、自民党が左派の政策である金融緩和と財政出動を代わりにやってるんだよ。

bogus-simotukarebogus-simotukare 2015/08/07 23:00 >雇用統計も改善

失業率は「一応下がってる」ようですが「非正規が多い」「賃金は非正規も正規も上がってない→当然国内消費も増えてない」「つまり手放しで喜べない」てことはアベノミクス批判派が指摘してることですが?。

>左派の政策である金融緩和と財政出動

はあ?。いつから「左派の政策である金融緩和と財政出動」になったんですか?(別に左派がこれらの政策を否定してるという意味ではなく、これらの政策を左派だからやらないと行けないなどという論理関係はないと言う事。支持する左派もいれば支持しない左派もいるつうだけの話)
 ああ、それと「アベノミクス程規模が大きくないだけ」で、財政出動と金融緩和それ自体は民主党政権時代からやってるんですけどね。

BaatarismBaatarism 2015/08/07 23:02 >jahikkaさん
その松尾匡さんのブログ記事は、欧州の左派の動きを伝えてくれますね。
欧州でも旧来の社会民主主義政党には緊縮を容認してしまったところも多いですが、それを批判して新たな動きが出てくるところが欧州左派の良いところです。

>あさん

一般的に金融緩和で中央銀行が買うのは国債です。時には株式や債券など他の資産も買うことがありますが、特定の企業の補助にならないように、慎重に行われるのが普通です。

>bogus-simotukareさん
あなたが左派・リベラルを支持しているのであれば、それならば「アベノミクスが支持されてないからこそあれだけ支持率が落ちたんでしょうに」というのは、安保反対運動の左派の成果を無視することになりますね。
それに私が批判しているのはシールズではなく、その背後にいる旧来の知識人や学者、マスコミ、政治家などです。ここで持ち出した歴史的な話を、若者主体のシールズに対する批判だと考えるのはおかしいでしょう。

あとは、単なる反リフレ、反金融政策の話ですね。僕がこの記事で批判している意見そのものです。
それから、多くのリフレ派は所得再分配を支持してますよ。消費税の逆進性対策として「所得付き税額控除」を多くのリフレ派が支持していて、この政策は民主党も採用した「社民的なばらまき」政策です。
また、リフレ派はほとんどが消費税増税に反対しています。(政府・与党内で政治的な要因で増税を容認してしまった人はいますが、その人達も後に間違いを認めています)
だからリフレ派が「社民的なばらまき」を否定しているというのは間違いです。

>sakamotoakirax さん

経済ビジョンだけで安倍政権を倒せないのはもちろんですが、経済ビジョンなしでは安倍政権は倒せないのも確かでしょう。他国を見ても経済政策は常に大きな政策テーマになっています。米大統領選のビル・クリントンのように、経済ビジョンを中心に据えて、湾岸戦争の勝利をもたらした対立候補ブッシュ(父)を破ってしまった例もありますね。

>名なしさん

確かに金融緩和と財政出動は「左派の政策」なんですよね。それを右派の安倍総理に取られてしまったのは、左派にとっては大失態のはずです。僕もなぜそうなってしまったのかという理由を探しているうちに、この記事のような結論にたどり着きました。

BaatarismBaatarism 2015/08/07 23:17 >bogus-simotukareさん

>「非正規が多い」
アベノミクス開始後に、54歳以下の生産労働人口において、非正規雇用から正規雇用への転換が始まっているというデータがあります。

「非正規から正規へ」雇用の転換が始まった――“反アベノミクス”に反論
http://nikkan-spa.jp/883248

>「賃金は非正規も正規も上がってない→当然国内消費も増えてない」

雇用者全体の所得である雇用者報酬は増えています。賃金は増えていませんが、雇用者数が増えているため、雇用者報酬は増加しています。それが消費に結びつかないのは、消費税増税で可処分所得が増えていないせいでしょう。あなたも「消費税増税なんかして景気にブレーキかけてる安倍」と言ってるんですから、消費税増税の影響は無視すべきではないでしょう。

>左派の政策である金融緩和と財政出動
歴史的に見ても、多くの国では右派は金融緩和や財政出動に否定的で、左派が肯定的です。
日本だけがその傾向から外れてます。

tennteketennteke 2015/08/08 07:10 こういう意見を目にしまして
アベノミクスにNOを叫ぶ民主党政権時代の元・内閣府官房審議官と仲間たち…「安全保障関連法案に反対する学者の会」の内実
http://togetter.com/li/855050
経済に詳しくない私は、凄い指摘なのか陰謀論なのか、判断ができなくてモヤモヤしております…。

とおりすがりとおりすがり 2015/08/08 09:52 歴史的・世界的な現象かどうかわかりませんが、最近のドイツや
アメリカでは、右派が活発に護憲運動を展開してますよね。

ドイツでは金融救済策のESMやOMTに対して、財政負担を生じ
ドイツ連銀の健全性・独立性を侵すとして違憲訴訟が
起きましたし、最近の債務削減なきギリシャ"救済"策は、
ドイツが三たびの憲法訴訟を恐れた側面もあるように思います。

またアメリカでは憲法保守を名乗るティーパーティが、
金本位制や緊縮財政・小さな政府を求めて活発に活動していて、
国債上限枠拡大を認めなかったり、オバマケアに違憲訴訟を
起こしたりといった動きは、大きなニュースにもなりました。

自国のみならず近隣諸国や世界経済が多大な打撃を被っても、
憲法さえ守れるならいいのだというドメスティックで近視眼的な
志向は護憲派の止みがたい悪弊として注意すべきかもしれません。

YY 2015/08/08 12:12 福祉重視を謳うなら、増税已む無し!と訴えなければ、単なる脳内お花畑ですよ。個人的には、弱肉強食・自己責任のアメリカン・スタイルより、所得の半分以上を税金で持っていかれても、北欧スタイルの方が日本人にはあってるような気がしますが。なんか中途半端なんですよね、今の日本社会って。

BaatarismBaatarism 2015/08/08 23:33 >tenntekeさん
水野和夫氏は代表的なデフレ派の経済学者ですね。「100年デフレ」という本を書いているくらいですから。
この人は(この記事で批判している)左派・リベラルの経済学者ですので、シールズと繋がりが出来てもおかしくないのですが、このまとめサイトに書かれているような「すべてが繋がった」というような陰謀論は言いすぎかと思います。
例えば文部科学省は下村博文文科大臣が明らかに右派で日本会議との繋がりがありますし、江戸しぐさも右派教科書として知られる育鵬社の教科書で取り上げられてますので、むしろ右派とのつながりを問題視すべきでしょう。
また、財務省は左派・リベラルを利用することはあっても、利用されることはないでしょう。あそこはそんな甘い組織じゃありませんw
ただ、「元々、日本国憲法には「消費増税抑制条項」が設けられるはずだった?」というのは面白いですね。シャウブ税制が憲法に組み込まれる可能性もあったわけですね。

>とおりすがりさん
ドイツも米国も憲法改正や修正条項追加を行ってきた軟性憲法の国なので、「護憲」という概念は通用しにくいです。
ただ、ドイツは財政均衡条項を憲法に組み込んでいるので、これに反する動きを違憲とされるのを政府が恐れていることはあり得るでしょう。

同じような事情は韓国の反日政策にもあり、あれも憲法裁判所に違憲判決を出されないために、外交で日本に譲歩できないという事情があります、韓国憲法前文には「大韓民国は3.1運動により建てられた大韓民国臨時政府の法統を受け継ぐ」という規定があり、これを根拠に憲法裁判所が政府に慰安婦問題の解決を要求する判決を下したことが、現在の韓国の対日強硬政策に繋がっています。
ドイツ政府が緊縮政策をユーロ諸国に迫る背景にも、同様の事情があるのかもしれませんね。

アメリカのティーパーティ(この名称自体が、米国独立のきっかけになった「ボストン茶会事件」に由来します)は、連邦政府の縮小がアメリカ建国の理念であり、これを追求すべきだという考えですね。
どちらも他国や世界の事情、あるいは国内の経済状況を無視してでも、自分たちの信じる「国家としてあるべき姿」を貫くべきであるという点では共通しています。そういう意味では「ドメスティックで近視眼的な
志向」でしょうね。

>Yさん
確かに福祉財源確保のために増税は必要なのかもしれませんが、財務省がそれを「消費税増税」に無理矢理入れ替えてしまうのが問題でしょう。消費税は逆進性が強いので、そもそも福祉財源には適してるとは言えません。むしろ所得税、法人税、相続税などの逆進性が弱い税の増税や、歳入庁設立で税金や社会保険料の徴収逃れを防ぐことで、税収を確保すべきだというのが、リフレ派に共通した考え方です。
ただ、法人税については、企業収益は株主に属するものなので、法人税と株主所得の二重課税はふさわしくないという理由での反対意見(例えばこの記事でも取り上げた高橋洋一氏はこの意見です)もありますが、日本の場合、企業が株主のものという原則が貫かれているとは言えないので、僕は法人税廃止は教条的すぎるような気がします。
あと、欧州で消費税が主流なのは、個人や企業が各国の税制の違いを利用した税金逃れ(節税)をやりやすいため、税収確保のためには他に方法がないという事情もあるようです。

圭二圭二 2015/08/09 18:32 なぜ安倍倒閣が出来ないかの前に
なぜ倒閣したいのかを問わない不思議
SEALDsは共産党のラジコンで車の貸し借りをしています。その程度の若者に経済政策を考える能力がある筈も無く、教わった通りに踊っているに過ぎません。
注目させたいのは「ブーム」を生みたい「おリベラル」しかいません

bogus-simotukarebogus-simotukare 2015/08/09 19:21 Baatarismさん
小生も専門家ではないので、「無能な俺でも突っ込めるところだけ」に突っ込んでおきますが。

>「アベノミクスが支持されてないからこそあれだけ支持率が落ちたんでしょうに」というのは、安保反対運動の左派の成果を無視することになりますね。

 何でそう言う認識になるんですか?。あなたが「根拠も無しに」アベノミクスが支持されてるとデタラメなことを言うから「支持されてればあんなに支持率は落ちないでしょうに」と指摘しただけですが?
 つうか、そもそもあなた「アベノミクス支持されてる」と言う根拠(例:世論調査)を何一つ提出しない(できない?)じゃないですか?

>私が批判しているのはシールズではなく、その背後にいる旧来の知識人や学者、マスコミ、政治家などです。

シールズ持ち出して因縁つけてた人がそう言う詭弁吐きますか?。そもそもあなたが「共産党その他の経済政策」を支持しないのはあなたの勝手ですが「消費税5%への復帰」「欧州型社民政策による生活不安の解消(逆に米国型新自由主義という弱者切り捨てによって生活不安を高め消費意欲を下げてるのが安倍の訳ですが)」など「対案それ自体」は出しています(赤旗などで確認できるはずですが?)。対案そのものがないかのようにいうあなたは端的に言ってただのデマゴーグです。

>賃金は増えていませんが、雇用者数が増えているため、雇用者報酬は増加しています。

意味がわかりませんね。「一人当たり賃金が増えてない」のなら「被雇用者が増えてるから総額は増えてる」と言ってもあまり意味ないでしょうに。「要するに低賃金だから、新たに被雇用者になった人々も大して消費しない」てことでしょうよ(もちろんもともとの被雇用者も使わないのでしょうが)。
もう、なんて言っていいのやら。

松尾匡松尾匡 2015/08/10 23:44 うわっ。うれしはずかし(死語)。
ずいぶんご宣伝いただいて恐縮です。ありがとうございます。

お書き込みのみなさん。
上記お書きいただいている拙エッセーの中でもリンクをつけております、6月7日の「護憲円卓会議ひょうご」さんでの拙講演の動画がありますので、ぜひご検討下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=jm_aHa69_b4

BaatarismBaatarism 2015/08/11 00:31 >圭二さん
共産党がSEALDsを利用しているとも言えますし、逆にSEALDsが共産党を利用しているとも言えますね。
ただ、そういう関係からは金融緩和の発想は出てこないでしょうね。

>bogus-simotukareさん

>あなたが「根拠も無しに」アベノミクスが支持されてるとデタラメなことを言うから「支持されてればあんなに支持率は落ちないでしょうに」と指摘しただけですが?

今回の安倍政権の支持率低下の原因は、安保問題だというのが一般的な認識です。それは左派の反対運動の成果でしょう。
それでも支持率が危機的水準(20%以下)にならないのは、何かプラス要因があるからであり、消去法で考えると経済要因しかないでしょう。

>シールズ持ち出して因縁つけてた人がそう言う詭弁吐きますか?

今の左派の安保反対運動の盛り上がりを取り上げるときに、SEALDsを外すわけにはいかないでしょう。
そのような単なる例示に対して、そこまで執着するのはおかしいと思いますよ。
そこまで反発するということは、あなたは実は「旧来の知識人や学者、マスコミ、政治家」のどれかに属する人か、あるいはその支持者であって、SEALDsを弾よけにして自分への批判をかわしたいのでしょうか?w

>意味がわかりませんね。「一人当たり賃金が増えてない」のなら「被雇用者が増えてるから総額は増えてる」と言ってもあまり意味ないでしょうに。

新たに被雇用者になった人は、それまでは収入がゼロでした。ゼロがプラスになったんだから、意味があるに決まってるでしょう。


>松尾匡さん

なんだか炎上商法みたいになってしまいましたが、こんな騒ぎに付き合わせてしまってすいません。
動画も見たいのですが、1時間以上となるとなかなか時間がとれなくて(言い訳)
追記部分を考えてるうちに、ここは松尾さんを宣伝するしかないだろうと思ったので、こういう内容になりました。

ともあれ、松尾さんが真っ当な左派であることはヘタレ右派の僕も認めていますので、左派の方にこそ読んで欲しいと思います。
さすがにリフレ政策を受け入れているのが右派だけという現状は、僕も危惧しているので。
(それでも誰も受け入れないよりはマシですが)

bogus-simotukarebogus-simotukare 2015/08/11 23:47 ばーたりずむさん
>今回の安倍政権の支持率低下の原因は、安保問題だというのが一般的な認識です。それは左派の反対運動の成果でしょう。
 それでも支持率が危機的水準(20%以下)にならないのは、何かプラス要因があるからであり、消去法で考えると経済要因しかないでしょう。

 いや、まるで論理性のない考えですね(苦笑)。単に「未だに安倍政権を支持してる人間」は「安保法制を支持してる(あるいは興味ない)」「何があろうととにかく自民党政権なら支持する人」と考えることも「論理的には十分可能です」し「安保法制以外に何か支持理由があるとしても」それをあなたのように「アベノミクスだ」というには「世論調査結果に寄ればアベノミクスが支持されてる」などという何らかの根拠が必要です。根拠レスで「消去法」ですか?
 呆れて物も言えませんね。そういうのは「結論ありきの妄想」
といいます。あなたが「何が何でもアベノミクスが支持されてると言いたいだけの人である」ということはよくわかりました(前からそう言うくだらない人間だろうとは思っていましたが)。
 最初から「まともな応答が成り立たない相手」だとは思っていましたが、まあ、何と言っていいか言葉もないですね。


松尾さん
 こんな「左派叩きありきの低能野郎」に紹介されて何が嬉しいんですかね。「左派をバカにするな」と怒るべきじゃないんですかね。松尾さんに対する評価が俺の中でストップ安ですね。

>今の左派の安保反対運動の盛り上がりを取り上げるときに、SEALDsを外すわけにはいかないでしょう。

 シールズを取り上げるな、なんて一言も言ってませんが。
 単なる護憲団体に過ぎないシールズに「経済政策の提出」を主張するあなたはおかしいと言っただけですがその程度の事が分かりませんか?。
 本気で分からないのなら、あなたはバカですし、分かった上で詭弁を吐いてるのならただのクズです。

>SEALDsを弾よけにして自分への批判をかわしたいのでしょうか?w

 ま、「根拠レスで」勝手にそう妄想したいのなら妄想すればいいんじゃないですか?
 あなたの詭弁に「まともな脳みその人」は心底呆れてるでしょう。
 そもそも「あなたがシールズにした酷い因縁(経済政策の提出)」に「護憲団体に過ぎないシールズにそんな事を言うのはおかしい」と俺がいっただけで「弾よけ」ねえ(苦笑)。一体、何の弾よけになってるんでしょうか?

>ゼロがプラスになったんだから、意味があるに決まってるでしょう。

で消費は増えてるんですか?。あなたも認めてるように「大して増えてない」んですよねえ。
つまりは「ないよりマシ程度の収入(いわゆるワーキングプアなのでしょう)」てことじゃないんですかね。

bogus-simotukarebogus-simotukare 2015/08/11 23:51 寝ぼけてたので「松尾さん」への米を変な事頃に打ち込んでしまいましたが
>こんな「左派叩きありきの低能野郎」に紹介されて何が嬉しいんですかね。「左派をバカにするな」と怒るべきじゃないんですかね。松尾さんに対する評価が俺の中でストップ安ですね。
だけが松尾さんへのコメで他のは「バータリズム」へのコメです。
しかし何が「バータリズム」なんだかよくわかりませんが、「シールズへの因縁をわびもしないで詭弁で居直る辺り」はたしかに「場当たり主義」ですね。
 シールズに因縁をつけながら「俺に非難される」と「シールズじゃなくてそのバックにいると見られる左派一般を批判してるんだ」という場当たりズムの強弁は常人ならちょっと恥ずかしくてできないですね。だったら最初から政党でもなんでもないシールズに「経済政策を出せ」なんて意味不明な因縁をつけなければいいだけなんですが。

松尾匡松尾匡 2015/08/12 12:07 >bogus-simotukareさま

 Baatarismさんは、左派を叩くためにこの文章を書いたのではなく、安倍政権を倒すために左派・リベラル派が掲げるべき経済政策を提唱したいのだと理解しました。

 私も、安倍政権は20世紀なら何回内閣が吹き飛んでいるかわからない出鱈目を重ねているのですから、景気のことがなければとっくに倒れていたのにと、とても悔しく思っています。

 今、来年の参議院選挙(たぶん同日選挙)を好景気で迎えて改憲議席をとるという安倍さんの野望が進むことに、大変危機感を持っています。これを阻止するには、金融緩和マネーを、安倍さんのやらない福祉や医療や教育につぎこんで、もっと景気を好くする対案を出す以外ないと思っています。詳しくは、上にも書きました下記拙講演動画をご検討下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=jm_aHa69_b4

> Baatarismさま

 昔の社会主義者は、国有計画経済にすれば、失業者はいなくなって、不均衡を出す資本主義より効率的に生産できて、生産力が飛躍的に高まってみんな腹一杯食えるようになると考えていたわけですから、市場資本主義内部の経済政策としてのケインズ政策に冷淡だっただけで、雇用に無関心とか反成長とかの志向を持っていたわけではなかったということをご理解下さい。

 ソ連崩壊後、いろいろそれまでの方針を反省することがあったわけですが、90年代には、反省の方向を間違えて、エコロジーなどの中間層の市民運動に顔を向けることが新しい方向というような傾向が、とくに知識人層には過度にあったように思います。

bogus-simotukarebogus-simotukare 2015/08/12 20:38 松尾さん
・率直に言って俺は「アベノミクスで景気が良くなった」とは全く思っていません(そう言う宣伝を、NHKに籾井ら子分連中を送り込んでまで必至に安倍がやってることは否定しませんが)。
 そして「あなたはともかく」あなたと違いバータリズムは単に左派に因縁つけてるだけだろうと思ってます。

>安倍政権は20世紀なら何回内閣が吹き飛んでいるかわからない出鱈目を重ねている

 にもかかわらず「なかなか倒れない」その最大の理由は景気(アベノミクス)ではなく「民主党や維新に安倍と大して変わらない政治家がごろごろいるから」でしょう。
 平たく言えば「日本全体が安倍化(極右化)してるから」、安倍は倒れないのであってアベノミクスなどそういう意味ではある意味どうでもいいことです。なぜ「安倍化してしまったのか」はよくわかりませんが(いわゆる保守本流も衰退している以上ソ連崩壊のショックによる「左派の衰退」だけでは説明できないとは思います)。
 大体アベノミクス登場以前から「石原都知事」などウヨ政治家はいたわけですしねえ。

BaatarismBaatarism 2015/08/13 00:39 >bogus-simotukareさん
よほど、僕がSEALDs叩きをしていることにしたいようですね。
僕が取り上げているのはSEALDsのメンバーの若者たちが生まれる前の話なのですが。
だから「弾よけ」にしてるのかなとも思ったんですよ。

僕が批判しているのが、左派の「旧来の知識人や学者、マスコミ、政治家」であることは、
普通に読めば分かるように書いたんですけどね。
それを批判ととらえるか、因縁ととらえるかは、その人の感じ方次第でしょうね。

他の論点では、言うべきことはもう言ったので、理解してもらえないなら仕方ないです。

>松尾さん

いろいろ迷惑をかけてすいませんでした。

確かに本当に社会主義が正しいと思っていた人なら、そういう考え方になりますね。
ただ、欧州の左派はケインズを認める方向に進んでいるので、なぜ違ってしまったのかは気になるところです。
彼らもかつては国有計画経済にすれば解決できると思っていたはずで、実際に産業の国有化も行われた国がありますから。

エコロジーもそれ自体は間違っていないのですが、やはり科学や経済学の基盤に基づいた考え方でないと、
変な方向に行ってしまいますね。

janclojanclo 2015/08/13 12:42 60年代〜70年代の左派・リベラルは、革新自治体を誕生させ、福祉拡充策を取っていたので、決して「かつての社会主義・マルクス主義の思想的影響下」にあることが緊縮志向に繋がっているわけではないのでは?

私の考えだと、70年代以降、社会主義協会が主導権を握ったことや公害問題など、論理より権威・感情に重きを置く政党になってしまったことが原因のように思えますが。

>安保政策についてはアメリカという歯止めがあるので、日本の右派勢力がいくら暴走しても、戦前のような事態は起こさないでしょう。
戦前のような事態とはなんでしょうか?
また、どこの右派がそのような事態を目指していますか?

bogus-simotukarebogus-simotukare 2015/08/13 19:57 場当たりさん
>よほど、僕がSEALDs叩きをしていることにしたいようですね。

いやあの文章を読んでシールズ叩きじゃないと思う人間は普通いないでしょう。つうか「シールズ叩きじゃない」のならシールズを持ち出さなければいいでしょう。
「護憲団体に過ぎない」シールズに向かって「経済政策を出せ」などというご自分のトンチキぶりをあくまで認めないわけですか?

とおりすがりとおりすがり 2015/08/13 20:58 いやあ、コメント欄を見ると暗澹たる気持ちになりますね
まさか失業対策よりも消費が重要だという左派がいるとは・・・

最近の低所得層を中心とした消費低迷の原因である消費増税も
むしろ宮本太郎など再分配政策を掲げる学者や水野和夫のような
デフレ論者ら左派が民主党政権下で主張して実現させたわけですし
今も民主党代表の岡田さんなんかは安倍政権よりも消費増税に
前向きだったりするのでアベノミクスにダメ出しするつもりなら
かえって逆効果だと思うんですけどね >消費

まずは反自民というスタンスありきで何でも悪意にとって
相手を叩いているうちに自分でも何を言っているのか、
何を目的にしているのかわからなくなっている流れでしょうかね

とおりすがりとおりすがり 2015/08/13 21:16 それとシールズの公式サイト見ればわかりますが彼らは
(どこかで見たようなテンプレといった内容ですが)経済政策に
ついてもそれなりに問題意識を持ってるみたいですよ

ただやはりマクロ経済政策・景気という視点が欠けていますよね
社会保障は民主党のような増税先行型の例を見てもわかりますが
長期的な収支を合わせるために財源確保が必要になり
必ずしも拡張型の財政政策になるとは限りません
地方自治体のように裁量の幅が小さいと特にそうでしょう

官民の公表する各種景気指標を見てもアベノミクス以降の
急激な景気好転は明らかなので真のオルタナティブたるには
やはりマクロ経済政策という視点を持つべきでしょう

twitterでもシールズシンパの学者さんらに
シールズシンパの暴れん坊の皆さんが粘着するという
よくわからない光景が繰り広げられていましたが
貴重なアドバイスにも叩きだなんだと耳を貸そうとしない
ただのアンチ○○派でしかない左派の姿勢が政党支持率に
見られるような信頼感喪失の背景にあるかもしれません

とおりすがりとおりすがり 2015/08/13 21:41 あと蛇足ながら
コメント欄の「所得付き税額控除」って
民主党も提言している「給付付き税額控除」のことですよね?

このエントリには以下の様な反応も出ているみたいですが

なぜクルーグマンやスティグリッツは信頼できるのに
日本の「リフレ派」は信用できないのか
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20150813/1439417698
> そもそも、日本の「リフレ派」には再分配軽視の
> 新自由主義派も多い。すぐに名前が浮かぶのは
> 高橋洋一や長谷川幸洋だ。

旧みんなの党や維新の党が給付付き税額控除を採用しているのは
明らかに高橋洋一の影響なのでこれは誤解でしょうね

長谷川さんも社会保障の財源に貧乏人の負担が重い
消費増税を用いるのはおかしいと過去に言ってたりしますし
民主党と比べると余程まともに社会的弱者のことを
考えているように思えるんですが

BaatarismBaatarism 2015/08/13 22:59 >jancloさん
なるほど、70年代以降に左派が変質していったという考え方ですね。
僕は戦前〜戦後からの影響、松尾さんは90年代以降の変質という意見なので、意見が割れてますね。

>戦前のような事態とはなんでしょうか?
日本から積極的に戦争を仕掛けるような事態という意味です。

>とおりすがりさん
SEALDsもやはりマクロ経済や景気の視点は薄いんですか。
彼らに思想的な影響を与えているのはより上の世代ですから、そのようになるのでしょうね。
SEALDsにとって最も関心があるのは安全保障の分野ですから、経済政策については考え方の近い人達から取り入れるようになるのでしょう。

>あと蛇足ながら
>コメント欄の「所得付き税額控除」って
>民主党も提言している「給付付き税額控除」のことですよね?

その通りです。うっかり間違えて書いてしまいました。(^^;
向こうのブログでもコメントしたのですが、所得再分配については近いうちに別のエントリーで書こうと思っています。また歴史を遡る話になってしまいそうですがw

janclojanclo 2015/08/14 06:11 >日本から積極的に戦争を仕掛けるような事態

これは、アメリカが無くてもあり得ないですよ。
むしろ、日米安保の延長で中東やアフリカで戦争に参加する事態の方が考えられる気がしますが。

BaatarismBaatarism 2015/08/16 09:04 >jancloさん

>これは、アメリカが無くてもあり得ないですよ。
僕はそこまでは日本の平和主義を信用できないものでw
まあ、実際にはアメリカが日本から手を引くことはないでしょうが。

>むしろ、日米安保の延長で中東やアフリカで戦争に参加する事態の方が考えられる気がしますが。
アメリカもアフガンやイラクで相当懲りているので、しばらくはアメリカが中東やアフリカで大規模な戦争を起こすことはないと思います。宿敵イランとも和解に向かってますしね。対ISのように空爆や軍事支援はあるでしょうが、その状況なら集団的自衛権があっても日本の参加が求められることはないでしょう。
日本が戦争に参加するとすれば、むしろ国連PKOになるのではないかと思います。ボスニア紛争の教訓から、国連が現地の人々を守るためにPKO部隊も積極的に戦闘に参加するようになっていますので、自衛隊が難民保護のために、難民を攻撃する勢力に対して反撃するという事態はあり得るでしょう。今だと南スーダンやゴラン高原が危なそうですね。

質問者2質問者2 2015/08/16 12:40 いつも勉強になるブログ記事をありがとうございます。

日本の左派・リベラルと括ると、まともな方も含まれてしまうので、共産党や社民党、民主党(リフレ政策に理解がない)議員とその応援団(これらを「おサヨク」と定義します)が考えそうな再分配、というものが頭をよぎりました。

儲けすぎの資本家や企業の内部留保から持ってきて再分配すれば良い、という主張には「アンチ巨人」(強い巨人軍が前提)と相通ずるものを感じます。

国家であれ、企業であれ、資本家であれ、無い袖は振れないことには変わりがありません。全体のパイを大きくしたり、巨人軍(国会や企業や資本家をここでは「巨人軍」と定義します)を潤すことで、そこから更に再分配を充実させる(ある意味ビルトインスタビライザー頼み)ことが欠落しているように感じます。
これは既存の枠組み(税と社会保障のビルトインスタビライザー)ではなく、おサヨクの考えた素晴らしい方法(内部留保で賃金アップや予算組み替えで財源出てくるなど主知主義的な発想)を導入しさえすれば問題が解決すると思っているフシがあります。

このようなことから、おサヨクの再分配は設計主義的であり、ゼロサムゲーム的な印象を受けます。

対して、リフレ派と括りたくはありませんが、教科書的なマクロ経済安定化政策を理解したうえで再分配を主張されるかたは、全体を良くしたうえで、弱者への手当て(給付付き税額控除や累進性強化した税制による再分配など)を主張されるように受け取っております。

ボトムアップかトップダウンかの違い以上に、経済学的なアプローチを取っているか否かというレベルでの違いがあるように思います。
おサヨクからすると巨人軍は希少でも何でもない存在ですが、経済学からすれば、希少な資源(巨人軍も含む)をどのように使って何を作る(サービスや製品)かなので、前提が異なる気がします。
ここが海外の左派・リベラルと日本のおサヨクが決定的に異なる点だと思います。


何かご参考になることが少しでもあれば嬉しいです。

BaatarismBaatarism 2015/08/17 00:58 >質問者2さん

確かにその通りだとは思うのですが、リフレ派が重視している点と、左派が重視している点が、食い違っているような印象も持っています。それも踏まえて、一つ記事を書いてみました。

右側通行人右側通行人 2015/08/17 06:47 日本の安全保障の最適解は中国周辺諸国のNATO化と、そのネットワークが対中、対米相互確証破壊を確立する事だと思っています。
その実現から逆算して、私の中では日本の望ましい政治経済政策が決っていきます。その意味で安倍政権を高く評価しています。

戦争が起きるとすれば、昭和恐慌の再来と中国脅威論が結びついた時だと思います。その意味では、誤った経済政策により恐慌を起こしかねない日本の左翼やリベラルこそ戦争準備勢力と言えます。
まともな右翼は戦前に懲りて、まともな経済政策を支持し、中国、朝鮮には関与しない事を教訓にしていると思います。

SMAP/VSMAP/V 2015/08/17 07:54 「溜息通信」を読むのは久しぶりで、書き込むのは5〜6年ぶりだと思いますが、相変わらず充実した内容なので、ボクのような素人リフレ派にはとても勉強になります。
ネット上では、左派右派を問わず、「オレの方が正しいだろ」と一方的に勝利宣言しちゃうような人が絶えませんが、こればっかりはどうにもなりませんね。正しいかどうかを決めるのは読み手であって、書き手じゃないんですけど……。Baatarismさんは、実に冷静な対応をされていると思います。

で、ここからが本題です。(^^;;

日本の左派・リベラルが、金融政策・インフレ政策に対して否定的な理由については、ボク自身も10年くらいずっと気になっているのですが、なかなかこれといった答えは出てきません。当ブログに書かれている歴史的な経緯に関しても、勉強にはなりましたが、(いくつか異論が出ているように)本当にそうなのかなという疑問も残ります。

この問題に関しては、青木昌彦さんの「比較制度分析」ではないですが、ゲーム理論でいうナッシュ均衡みたいなものが成立してるんじゃないかという気がしてます。過去の経緯やしがらみ、他党派との対立関係を前提にすると、金融政策の中身とは関係なく、金融政策を否定し続ける選択肢の方に、運動論上の経済合理性があるということなんじゃないかと。金融政策の効果を認めたくないバイアス――みたいなものを強く感じます。

これに関連して言うと、ボクの場合、左派・リベラルのアベノミクス批判だけでなく、与党関係者のアベノミクス支持にも、違和感を感じることが多々あります。昨年の選挙の時なども、自民党や公明党の候補者がアベノミクスの成果を自慢げに演説していましたが、「この人、本当に分かっているのだろうか?」と疑問を感じてしまう人ばっかりで閉口しました。
おそらく民主党だって、馬淵さんとか金子さんが代表になるようなことがあれば、議員や候補者はもちろんのこと、とりまきの識者の発言内容もガラッと変わるんじゃないかという気がしてます。

BaatarismBaatarism 2015/08/18 09:39 >右側通行人
中国については、軍事的な抑止力を整えるのが妥当な対策だと思います。
そのために日本の安定的な経済成長が必要だというのが、安倍政権を支持する右派の多くが持っている認識なのでしょう。

>SMAP/Vさん

>正しいかどうかを決めるのは読み手であって、書き手じゃないんですけど……。

これは僕がリフレ派になる前から肝に銘じていることです。
論争というのは、実は論争を見ている人のために行うものなんですよね。

>この問題に関しては、青木昌彦さんの「比較制度分析」ではないですが、ゲーム理論でいうナッシュ均衡みたいなものが成立してるんじゃないかという気がしてます。過去の経緯やしがらみ、他党派との対立関係を前提にすると、金融政策の中身とは関係なく、金融政策を否定し続ける選択肢の方に、運動論上の経済合理性があるということなんじゃないかと。金融政策の効果を認めたくないバイアス――みたいなものを強く感じます。

僕もそう思います。マクロ経済的な合理性ではなく、ゲーム理論的な合理性なのでしょうね。

>これに関連して言うと、ボクの場合、左派・リベラルのアベノミクス批判だけでなく、与党関係者のアベノミクス支持にも、違和感を感じることが多々あります。昨年の選挙の時なども、自民党や公明党の候補者がアベノミクスの成果を自慢げに演説していましたが、「この人、本当に分かっているのだろうか?」と疑問を感じてしまう人ばっかりで閉口しました。

与党やその支持者にも「勝ち馬に乗る」だけの人は多いでしょう。そしてそういう人の中には、稲田朋美のように財務省理論に行ってしまう人もいるわけです。
そういう「勝ち馬に乗る」人をうまく使わないといけないというのは、政治の宿命なのでしょう。どんな政策でも、本当の理解者はいつでも少数派だと思います。

ikahonokahoikahonokaho 2016/01/11 10:54 アベノミクスに反対する人って意図的に資産効果を無視するから、話が噛み合わなくなっちゃいますね。また、高すぎる通貨水準を修正するメリットは、資源国の呪いなどの事例から明らかなはずなのに…

名無しさん名無しさん 2016/01/19 05:46 左派の最大の失策は日本人の尊厳を傷つけ過ぎたことでしょう。韓国に厳しい外交姿勢をとる度に支持率が上がることで解ります。すでに我慢の限界を超えつつあるんですよ。
むしろ日本人わりと経済オンチだし経済政策は満足するということがないので、決定的なものではないと思いますが。
まあ民主党の経済政策は論外ですけれども。
安倍政権の明らかなアキレス腱は世論の7割に逆行する原発政策です。でも安倍政権が倒れても自民党タカ派路線の政権が続くでしょうね。鳩山(弟)とか。

どんなにマスゴミが誘導しようと、経済問題にすり替えようと、自民党政権が揺るがないのは国民の我慢が限界だからですよ。いい加減現実を直視しましょう。

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2015-05-02

なぜ韓国はリフレ政策を採用しないのか

08:23 | なぜ韓国はリフレ政策を採用しないのかを含むブックマーク

黒田日銀が「異次元緩和」「黒田バズーカ」などと呼ばれるリフレ政策を採用し(インフレ目標の達成は消費税増税のために遅れてしまいましたが)、ECBも大規模な金融緩和を発表するなど、今やリフレ政策は世界の主要国に広がりつつあります。

しかし、そんな中でもリフレ政策を採用せずに、白川日銀、民主党政権までの日本のように効果の薄い為替介入を繰り返しているのが、お隣の韓国です。そこでなぜ韓国はリフレ政策を採用しないのか考えてみます。


 米財務省が韓国の不透明な為替介入を世界に暴露した。輸出の不振で経済が低迷するなか、ウォン高阻止のため、先進国はもちろん新興国でもやらないような巨額介入を秘密裏に行ったと指摘、朴槿恵(パク・クネ)政権による対日本円でのウォン高対策も批判した。日本の円安が容認される一方、為替介入で悪名高い中国よりも強いトーンで指弾されるなどさらし者になった韓国では、アジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐる米国の意趣返し、との陰謀論まで出るなど動揺を隠せない。

 報告書は米財務省が議会向けに半年に一度提出しているもので、各国の経済状況や為替政策について言及している。

 これまでの報告書で毎回やり玉に上がるのは中国だ。今回も、制裁の対象となる「為替操作国」への認定こそ見送ったが、人民元が「著しく過小評価されている」との見解を維持した。

 ただ今回の報告書で中国よりも厳しく批判されたのは韓国だ。韓国に関する項目では、「韓国は公式には市場で為替レートを決めている」「2013年2月には他のG20(20カ国・地域)諸国と同様に、為替レートをターゲットとした意図的な通貨切り下げ競争はしないことを約束した」と前置きしたうえで、実際には韓国当局がウォン高を阻止する形で為替介入を行っていると指摘した。

 「他の大半の主要な新興国市場や先進国経済と異なり、韓国は為替介入について公式な報告を行っていない」と厳しい表現で隠蔽体質を批判。14年夏に大規模な介入を実施、同年8月から11月までは小康状態だったが、ウォン高圧力が強まった12月から今年1月にかけて再び介入規模が拡大したと分析した。

 1ドル=1000ウォン突破に近づくと介入するという傾向も指摘、今回の報告書では月ごとの介入額を推定したグラフまで作成する念の入れようで、韓国のやり口が腹に据えかねている様子がうかがえる。

 対ドルだけでなく、対日本円でも、朴政権の当局者が昨年11月、ウォンを安くするよう意図したことも明記するなど批判は詳細かつ具体的で、ウォン安維持のための介入をやめるよう徹底した要求を行った。


米財務省、韓国の不透明な“為替介入”を猛批判 “手口”まで世界に暴露 (1/3ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK 米財務省、韓国の不透明な“為替介入”を猛批判 “手口”まで世界に暴露 (1/3ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK 米財務省、韓国の不透明な“為替介入”を猛批判 “手口”まで世界に暴露 (1/3ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK


 韓国の経済・通貨外交の行き詰まりを映すように、ウォンに上昇圧力がかかってきた。ウォン売りの覆面介入に対し、米財務省のいら立ちは募るばかり。日本としても隣国の苦境は他山の石としたい。

 「7年2カ月ぶりの100円=900ウォン突破」。4月23日の韓国メディアは対円でのウォン高進行に大騒ぎとなった。日本の民主党政権時代の2012年6月には100円=1500ウォン台の円高・ウォン安だったから、7割近くウォン高になった勘定である。

 これに対し韓国政府・企画財政部は23日、「円・ウォン為替レート900ウォン台崩壊」は事実ではないと説明した。韓国紙「中央日報(電子版)」はそう伝える。裁定相場の計算違いというのだが、「崩壊」などと大仰な言葉を用いるあたり、直近のウォン高に神経をとがらせている様子がうかがえる。

 そもそも直近のウォン高のきっかけは、米財務省が4月9日に発表した「為替問題議会報告」だ。年2回の報告は韓国の為替政策に対する批判を強めてきたが、今回は為替介入によるウォン安誘導への非難を一層強めた。

 「競争的な通貨安政策をとらず、為替相場を競争力強化の道具にしない」。13年2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でうたったこの約束を、韓国も受け入れたはずである。それなのに、ウォン高を防止するための介入を、韓国はその後も繰り返している。

 為替報告はウォンと円の関係にも言及している。韓国当局は昨年11月にウォン安誘導の意図を宣言。実際の相場も100円=940〜950ウォンの狭い範囲に押し込めてきた、というのだ。

 米財務省が腹を立てているのは、韓国が依然として介入の情報を開示せず、事実上の為替操作をしている点だ。しかも国際通貨基金(IMF)による14年7月時点の評価では、ウォン相場は依然として割安なのだ。

 先進国になったのなら、もっと政策運営の透明性を高めるべきだ、というのが米国の言い分。残念ながら、韓国はその辺の雰囲気が読めないようだ。為替報告の発表後も、介入継続の方針を示している。


韓国ウォンを呪縛する通貨外交のつまずき :日本経済新聞 韓国ウォンを呪縛する通貨外交のつまずき :日本経済新聞 韓国ウォンを呪縛する通貨外交のつまずき :日本経済新聞


 ウォン相場の上昇基調が続いている。輸出への依存度が高い韓国にとっては負の影響の方が多いとの見方が一般的で、通貨当局は断続的に市場介入をしているようだ。ウォンの取引は韓国内に限定されており規模も小さいため、介入は相場に大きな影響を与えることがあるが、今回の局面では威力を発揮できていないのはなぜなのか。

 「ウォンの実質実効相場は低評価区間にあったがいまや高評価区間に入った。主要交易相手国である中国と日本の緩和基調が続く場合、我が国の対外競争力が低下する可能性がある」

 韓国銀行(中央銀行)が公表した議事録によると、3月12日に開いた金融通貨委員会である委員はこんな見解を述べた。このとき同委員会は政策金利を年1.75%と史上最低水準への引き下げを決めている。ウォン高警戒一色というわけではないが、為替は重要な検討テーマの一つになっていたことがわかる。

 実質実効相場はウォンとドルなど特定の通貨ペアだけでなく、様々な通貨に対する相場を貿易額に比例するように組み合わせて計算したものだ。物価も勘案しており、貿易上の対外競争力を示す。国際決済銀行(BIS)によるとウォンの実質実効相場は2月時点で113.44。1月よりはやや低下したが、中期でみれば7年ぶりの高値圏だ。

 「最近も通貨当局は市場でウォン売り介入をしている」。韓国のある国内銀行関係者は証言する。それにもかかわらずウォン高が止まらないのは、ウォン相場が交換相手の通貨ごとに異なった動きをしているからだ。

 年内の利上げが取り沙汰されるドルに対してはウォンは下落している。韓国銀行によると3月の平均は1ドル=1112ウォン。半年前に比べ7%低い。一方で、円やユーロに対しては上昇が続いている。日銀や欧州中銀は量的緩和政策を継続しており、ウォン以上に対ドルで下落している。


http://www.nikkei.com/dx/content/pic/20150418/96958A9F889DEAE7E5EBEAE2E0E2E3E5E2E6E0E2E3E7E2E2E2E2E2E2-DSXMZO8580176017042015000001-PN1-8.jpg


韓国、市場介入でも止まらぬウォン高 :日本経済新聞 韓国、市場介入でも止まらぬウォン高 :日本経済新聞 韓国、市場介入でも止まらぬウォン高 :日本経済新聞


このように、韓国は米国から激しく批判されながらも、ウォン売りドル買いの為替介入を行ってウォン高を阻止しようとしていますが、その結果対ドルレートは下がっても、それ以外の通貨も含めたウォンの価値を示す実質実効相場(実質実効為替レート)はウォン高のままです。これでは国際的な批判を受けるだけで、ウォン高阻止には何の効果もありません。

かつては日本もこのような為替介入を行って米国から批判されてましたが、アベノミクス以降は金融緩和により円安が進み、国際的にもその行動は容認されています。従って、韓国も為替介入ではなく、金融緩和をすれば良いように思えます。

しかも韓国はインフレ目標(韓国は3%)を達成できず、インフレ率は大きく目標を下回っています。普通に考えれば、高橋洋一氏が指摘するように日本と同様の大規模金融緩和を行うべき状況でしょう。

ウォン円レートは、日韓のマネタリーベースでかなり説明できるので、アベノミクスで韓国経済が相対的に日本経済に後れをとっているのは明らかだ。


http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/8/d/600/img_8d86627ee18ea46851eef54bea7497c9145237.jpg


2年前から、アベノミクスのよる金融緩和の影響について、韓国はかなり真剣に考えていた。筆者に対して、韓国のメディアは日本のメディアより、しばしば取材にきていた。実は、韓国大使館やその関係者からも今後の見通しを聞かれた。その際、韓国はどうしたらいいのかとも聞かれたので、日本と同じ金融緩和すればいい、韓国はインフレ目標なので、日本と同じ金融緩和すればいいといった。ところが、筆者の相手の韓国人はどうも歯切れが悪かった。

実際、韓国のインフレ目標は、2013年から15年まで2.5〜3.5%である。ところが、2012年6月以降、この目標はまったく達成されていない。2015年2月のインフレ率は0.5%であり、このままでは目標期間で一度も目標達成していないということになりそうだ。つまり、この間、金融緩和が不十分だったのだ。利下げをしているが、そもそも為替が安くならないように、つまり経済効果があまりでない範囲での、言い訳程度の利下げしかしていないわけだ。


http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/7/5/600/img_752e9f68e822922c4090ab925118e172125945.jpg


シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]


また、韓国国内でも、今の韓国経済がかつての日本のような「氷河期」「失われた20年」だという、深刻な記事が出ています。

 韓国メディアのアジア経済は20日、「日本に似ていく韓国」というタイトルで記事を掲載し、現在の韓国経済は「少消費病」であると同時に「春來不似春」(春がきたが、春らしくないという意)だと紹介した。

 記事は、現在の韓国経済は「氷河期」であり回復の兆しが見えないと指摘。「低金利・低物価・低成長基調は“日本の失われた20年"を踏襲しているようだ」と報じた。

 また、現在「日本の失われた20年」と類似していると言われている韓国経済は、韓国史上初となる国内基準金利1%時代が到来し、消費者の財布の紐も緩まないと指摘。さらには、消費者物価上昇率までも0%台にとどまっており、OECD(経済協力開発機構)の調査において、韓国の2014年の消費者物価上昇率は「1.3%」で、41年ぶりに日本の2.7%」よりも低く、OECD(経済協力開発機構)の2014年の平均値である1.7%にも及ばなかったと報じた。

 また記事では、この現在の韓国経済の姿は、日本が不況に入り始めた時期と酷似していると指摘。実際、「韓国の実質金利(名目金利―物価上昇率)が2008年の金融危機以降、最高値となる現象が現れている」と論じた。

 続けて記事は、現在の韓国の消費パターンも1990年代の日本と類似点が多いと分析した。バブル崩壊直後の日本の20年間は、消費者が「低価格製品を好み、自社ブランド商品やアウトレット・食べ物のバイキングや超低価海外ツアー」など人気を集めた一方、日本のデパート業界では内需低迷により売上の伸び率がGDPの伸び率を大幅に下回ったと指摘。これは、現在の韓国流通産業も似ていると論じた。


韓国経済は「氷河期」・・・かつての日本のように=韓国メディア<サーチナ・モバイル> 韓国経済は「氷河期」・・・かつての日本のように=韓国メディア<サーチナ・モバイル> 韓国経済は「氷河期」・・・かつての日本のように=韓国メディア<サーチナ・モバイル>


それにも関わらず韓国が不十分な金融緩和しかしていない理由として、高橋氏は韓国の対外債務は短期ものが多く、ウォンが安くなると外資は韓国から引き揚げやすいからだと言っています。つまりウォン安がキャピタルフライトを招きかねない状況だということです。

その理由は、韓国では思い切った金融緩和ができにくい事情があるのだ。韓国の対外債務は短期ものが多く、韓国ウォンが安くなると外資は韓国から引き揚げやすいからだ。ちなみに、日本は対外資産が対外債務よりかなり大きくGDP比でみて6割程度の純債権国であるが、韓国は5%程度の純債権国にすぎない。


シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]

これについては、東京三菱UFJ銀行系のシンクタンクである国際通貨研究所でもレポートが出ています。このレポートは、韓国と中国や東南アジア諸国の対外純資産ポジションを比較しているのですが、韓国は「足の遅い」海外からの直接投資が少なく、「足の速い」(経営権取得目的でない)株式・債権の投資や銀行からの借り入れが多いことが分かります。

対外純資産からみた韓国ウォンの脆弱性 - 国際通貨研究所 対外純資産からみた韓国ウォンの脆弱性 - 国際通貨研究所 対外純資産からみた韓国ウォンの脆弱性 - 国際通貨研究所


ただ、このような議論についてはやや疑問も感じます。なぜなら、かつてアジア通貨危機の時、韓国はウォンへの通貨アタックを招いたドルへの通貨ペッグ制(固定相場)を放棄し、それに替わる通貨安定策としてインフレ目標を採用した経緯があるからです。なのに、インフレ率が目標を大きく下回っているのに十分な金融緩和を行わず、キャピタルフライトを恐れて対ドルレートの維持を最優先とするのは、まるで通貨ペッグ制への回帰のように見えるからです。それが不可能であるというのが、アジア通貨危機で得られた教訓ではなかったのでしょうか。


この疑問を解く鍵は、アジア通貨危機への対策として作られた日韓通貨スワップ協定が、韓国の反日政策によって崩壊したことにあると思います。アジア通貨危機のあと、日中韓とASEAN諸国は、チェンマイ・イニシアティブという相互通貨スワップ協定を策定しました。それに加えて、日韓は独自に通貨スワップ協定を行い、最も多かった2011年には合計700億ドルに達しました。

しかし、2012年の李明博韓国大統領の竹島(独島)上陸、今上天皇への謝罪要求などをきっかけに、日韓の通貨スワップ協定は次々に廃止され、2015年2月には全て終了しました。これによって韓国の通貨スワップの主要な相手国は中国となり、通貨危機の際、西側諸国が韓国を支える仕組みは失われました。

この日韓通貨スワップ廃止について、日経新聞編集委員で韓国に詳しいジャーナリストの鈴置高史氏と、真田幸光・愛知淑徳大学教授の対談で面白い記事がありました。アジア通貨危機の際、日本は最後まで韓国を助けようとしましたが、IMF救済を主張するアメリカの圧力に屈し、救済を断念しました。それにもかかわらず韓国では日本が通貨危機の原因だという主張が出てきたため、「恩を仇で返された」という不信が日本に広がり、韓国を助けようという動きがなくなっていったというのです。

−今後、韓国が金融面で困った時に日本は助けないのですか?

真田:容易には助けないと思います。日本の金融界には「恩を仇で返された」との思いが強いからです。韓国人は、あるいは韓国メディアは「1997年の通貨危機は日本のために起きた」と主張します。

 でも、それは全くの誤りです。あの時は、欧米の金融機関が韓国から撤収する中、最後まで邦銀がドルを貸し続けたのです。韓国の歴史認識は完全に誤っています。

鈴置:当時、真田先生は東京三菱銀行で韓国を担当しておられました。私も日経新聞のデスクとしてアジアをカバーしていました。

 あの頃は、韓国人の中でも分かった人は「日本は最後まで面倒を見てくれた」と語っていました。1998年と思いますが、危機の原因を追及した韓国国会でも、それを前提にした質問があったそうです。

 でも今やそんなことを語る人はいない。韓国では日本が悪者でなければならないからです。当時をよく知るはずの記者も「日本の貸しはがしが危機の引き金となった」と書きます。

真田:米欧が貸しはがす中、我々は最後まで引かなかった。「日本が引き金になった」とは言いがかりも甚だしい。これだけは記録に留めていただきたい。邦銀の担当者は本店を説得し、欧米が逃げた後も最後まで韓国にドルをつないだのです。

 韓国が国際通貨基金(IMF)に救済を申請した後でも、KDB(韓国産業銀行)とIBK(中小企業銀行)へは日本輸出入銀行がドルを融資しました。我々、邦銀の韓国担当者が走り回った結果です。

 それなのに「我が国の通貨危機は日本が起こした」と世界で吹聴する韓国。そんな国を助ける気になるでしょうか?

 麻生太郎財務相が2014年10月に「韓国から申し出があれば、スワップの延長を検討する」と国会で答弁したのも、恩を仇で返す国への不信感が背景にあったと思います。


「人民元圏で生きる決意」を固めた韓国:日経ビジネスオンライン 「人民元圏で生きる決意」を固めた韓国:日経ビジネスオンライン 「人民元圏で生きる決意」を固めた韓国:日経ビジネスオンライン

また、韓国は米国に対しても、中国カードを使ったチキンゲームを行っており、そのことが米国とのすれ違いを招いているとも指摘しています。

真田:韓国は米国に対しては「中国カード」を使えると考えているフシがあります。いざという時は「中国に人民元スワップを発動してもらう」と言えば、米国がドルを貸してくれる、と計算していると思います。

鈴置:そこの、米韓の心理的なすれ違いに注目すべきですね。韓国は「中国側に行くぞ」と脅せば米国が言うことを聞くと考えている。なぜなら「米国は自分を手放せないはずだから」です。

 一方、米国は「そんなに中国が好きなら、そっちへ行け」と放り出せば、韓国は戻ってくると信じている。「韓国は自力で国を守れないから」です。

 先生が指摘されたMD、ことに終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)の韓国配備の問題でもそうですが、米韓はチキンゲームを始めています。

 中国の怒りを避けようと韓国は「配備計画など米国から聞かされていない」と言い張る。「THAADで追い詰められた韓国が中国側に行ったら大変」と米国が思うはず、と考えているからです。

 これに対し米国は「もう、韓国と相談を始めている」などと“勇み足の発言”をしては「米中どちらの味方なのか」はっきりするよう、韓国に迫っています。

真田:そこが分析のポイントです。ただ、米国のハラが読みづらい。韓国を脅せば戻ってくると計算しているのか、あるいは「戻ってくればよし、戻ってこなくてもよし」と達観しているのか――。

 レームダック化したこともあり、オバマ政権は朝鮮半島に関し思考停止した感があります。問題は肝心の、米国を本当に動かしている金融と軍事の2つのパワーセクターが、この半島をどうしようとしているのか、迷っているように見えることです。

鈴置:ことに米国の金融界がどう動くかが注目ですね。ウクライナ問題でもそうですが、最近の米国は軍事力での勝負を避け、金融力で相手を圧倒しようとします。

 そして仮に米国が「朝鮮半島を捨てる」時も、単に捨てるのではなく中国と交渉するための「カード」にするのだろうと思います。


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このように、日本も米国も、韓国経済を本気で助けようという意志はもうありません。また、中国についても、韓国が米国へのカードとして使っているのであれば、本気で中国に助けを求めるのは躊躇するでしょう。

ということは韓国が再び経済危機に陥ったとき、韓国が頼れる国はありません。日本も米国も(韓国がそれを嫌がっていることをわかっていながら)冷淡にIMF支援を要請するでしょうし、中国に頼った場合は、どんな交換条件を押しつけられるか分かったものではありません。韓国はこの点で完全に孤立していると言って良いでしょう。

韓国が自分でもそれを認識しているのであれば、何が何でも経済危機を避けようとして、少しでも経済危機に繋がる政策は避けようとするでしょう。日本の例を見ても、金融緩和は大幅な通貨安を伴いますから、韓国はそのようなウォン安が通貨危機を招くのではないかと恐れ、インフレ目標が有名無実になっても、国内がどれだけ不況になっても、金融緩和に踏み出せないのでしょう。

しかし一方で、ウォン高が進むと輸出依存度の高い韓国経済は大きなダメージを受けるので、何とか通貨介入でそれを防ごうとするのでしょう。その結果、皮肉なことに、韓国はアジア通貨危機以前に似た、事実上の通貨ペッグ制になりつつあります。

しかし、通貨ペッグ制は市場から足下を見られるため維持不可能というのが、多くの経済危機の歴史と経済理論(国際金融のトリレンマ)から得られた教訓です。

もしウォン高要因が大きくなれば、韓国はデフレに陥り、かつての日本のような長期不況に陥るでしょう。

逆にウォン安要因が大きくなれば、韓国は通貨アタックを受けて、金融危機に陥るでしょう。しかも韓国を救済する国は、下心を持った中国だけです。


結局、韓国が自分勝手な外交によって日本と米国の信頼を失ったことが、韓国がリフレ政策を採用できない理由だということになります。韓国はなんとも愚かなことをしたものだと思います。

これを解決するには、韓国がその夜郎自大な態度を改め、日米との和解を進めるしかないのでしょう。例え韓国がそれを、日米への屈服だと感じたとしても。

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