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2016-04-01

モンティ・パイソン化するアメリカ政治

| 00:06 | モンティ・パイソン化するアメリカ政治を含むブックマーク

[ワシントン 1日] アメリカの共和党と民主党の主流派は、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任すれば、アメリカのみならず世界の安全保障にとっても大きな脅威となるため、どのような手段を取ってでも阻止する必要があることで意見が一致し、トランプのようなバカの大統領就任を阻止するため、両党が合併して「賢者党」(Sensible Party)を設立し、統一候補としてヒラリー・クリントン氏を擁立することで合意した。

これに対してトランプ氏は、「共和党と民主党のエスタブリッシュメントが賢者づらして国民の意思を無視しようとしている。奴らが俺たちをバカというのならばそれでも良い。奴らこそが合衆国を外国に売り渡して衰退させた張本人なのだから。我々は奴らに対抗するため「バカ党」を設立しよう。合衆国には反知性主義の伝統がある。バカこそがこの国の多数派だ。」と演説し、「バカ党」(Silly Party)の設立を宣言した。

さらにクルーズ氏が「バカならばトランプには負けない」と「すごいバカ党」、サンダース氏が「我々はあれほどバカではない」と「ちょっとバカ党」を設立するなど、アメリカ政治はモンティ・パイソンのコントのような状況になりつつある。

これに対して、アメリカの主要紙は相次いで「国民の賢明な判断を望む」という内容の社説を掲載し、「賢者党」への支持を明確にした。一方、インターネットでは「バカ党」の支持者が「賢者党」をバカにする書き込みが溢れている。


モンティ・パイソン化するアメリカ政治 - Finansilly Times


この記事で取り上げられている「モンティ・パイソンのコント」とは、このサイトでも取り上げられている「選挙速報スペシャル」のことでしょう。


映画・ロック地獄サバイバル法: 空飛ぶモンティ・パイソン 第2シリーズ第6話


しかし、アメリカ政治をモンティ・パイソンに例えるとは、ブラック・ジョークですね。もはや誰もがバカみたいに見えてしまいますw

財務官僚が国会前で反アベデモ

| 00:06 | 財務官僚が国会前で反アベデモを含むブックマーク

[1日 東京] アベ総理は「現在の日本経済低迷の原因は2014年に実施した消費税増税であり、そのマイナスの影響はリーマンショックに匹敵する。したがって、日本経済復活のため、10%への消費増税を凍結するともに、2014年の増税も撤回して消費税を5%に減税する」と発表した。

この発表について国民からは歓迎の声が相次ぎ、日経平均は2万円を突破、円相場も1ドル120円台の円安となっている。

一方、この発表に憤慨した財務省の官僚たちは、職務を放棄して国会前に集結し、「アベ政治を許さない」「あべしね」などと書かれたプラカードを掲げて国会前広場を占拠している。

このデモに駆けつけた野党民縮党のオカダ代表とノダ前総理は、「消費税を5%に減税したら、アベ政権は国民の支持を得て憲法を改悪してしまう。憲法を守るために消費税を10%に増税して、アベ政権を打倒しなければならない」と演説し、財務官僚たちの歓声を浴びていた。

また、反アベ派のハマ教授は「アホノミクスを止めなければならない」と叫び、周りの財務官僚も「アホノミクス!アホノミクス!」と連呼していた。

本紙記者の情報源である財務官僚は「消費税増税が実現するまで、このまま国会前を占拠し続ける。このストライキで、本当にこの国を動かしているのは財務官僚であることを、アベ総理に思い知らせてやる」と語っていた。


財務官僚が国会前で反アベデモ - 日本敬財新聞


日本経済の現状を考えれば、消費税増税など言語道断であり、むしろ減税が必要なのですが、増税を支持しなければ出世できない財務官僚にとっては、そんなことはどうでも良いのでしょう。

アベ政権に反対する人たちも、財務省の詭弁には惑わされないようにしてほしいものです。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20160401

2016-03-19

腐敗や緊縮はなぜ起こるのか

01:32 | 腐敗や緊縮はなぜ起こるのかを含むブックマーク

最近、僕が読んだ本の中に、ジェイン・ジェイコブズの「市場の倫理 統治の倫理」があります。元々は、僕がこのブログでも取り上げたことがある山岸俊男氏や松尾匡氏の著書で内容が取り上げられていたので興味を持ったのですが、たまたま最近復刊されたこともあって読み始めたところ、夢中になってしまいました。

この本では、古今東西の様々な道徳律を2つのタイプに分類して、それぞれを「市場の倫理」と「統治の倫理」と呼んでいます。

市場の倫理 統治の倫理

  • 暴力を締め出せ
  • 自発的に合意せよ
  • 正直たれ
  • 他人や外国人とも気やすく協力せよ
  • 競争せよ
  • 契約尊重
  • 創意工夫の発揮
  • 新奇・発明を取り入れよ
  • 効率を高めよ
  • 快適さと便利さの向上
  • 目的のために異説を唱えよ
  • 生産的目的に投資せよ
  • 勤勉なれ
  • 節倹たれ
  • 楽観せよ

  • 取引を避けよ
  • 勇敢であれ
  • 規律遵守
  • 伝統堅持
  • 位階尊重
  • 忠実たれ
  • 復讐せよ
  • 目的のためには欺け
  • 余暇を豊かに使え
  • 見栄を張れ
  • 気前よく施せ
  • 排他的であれ
  • 剛毅たれ
  • 運命甘受
  • 名誉を尊べ

「市場の倫理」は商業や生産、科学に関係する職業に見られるもので、「統治の倫理」は政府や軍隊、宗教、独占企業などに見られものです。さらに言えば、「市場の倫理」は取引(trading)に関する道徳、「統治の倫理」は占取(taking)に関する道徳です。


先に述べた山岸俊男氏は、この「統治の倫理」と「市場の倫理」を、「安心社会」(閉じたメンバーの中で相互監視することで、お互いを信頼することなく安定した人間関係を築き、安心を得られる社会)と「信頼社会」(開かれたメンバーの中で信頼出来る相手を見極めることで人間関係を築く、信頼に基づいた社会)に対応させています。

また、山岸俊男氏も松尾匡氏も、「統治の論理」を日本の伝統的な「武士道」、「市場の倫理」を日本の伝統的な「商人道」に対応するものとして、日本社会を「武士道」が重んじられる社会から「商人道」が重んじられる社会へ変えていくべきだと論じています。日本はまだまだ「安心社会」や「武士道」、つまり「統治の倫理」に基づいた「ムラ社会」が根強く残っていますが、経済発展や市場経済の浸透にともなって「ムラ社会」が解体されるにつれて、これまでの倫理が通用しなくなっているので、「安心社会・武士道・統治の倫理」から「信頼社会・商人道・市場の倫理」への移行という観点で、ジェイコブズの考え方が受け入れられやすいのでしょう。


ただ、ジェイコブズの本を読むと、彼女は「統治の倫理」と「市場の倫理」は人類社会が最初から持っている2つの倫理体系であり、この2つの倫理体系を混ぜ合わせることで倫理的破綻が生じることを問題視しています。欧米では昔から2つの道徳体系が両立しているため、「移行」という観点はあまりないのでしょう。

このような倫理体系の混合による倫理破綻の例としては、犯罪組織(ジェイコブズはシチリア系のマフィアを取り上げてますが、日本で言えばヤクザが典型的でしょう)、旧ソ連などの共産主義国、不良債権となった発展途上国への融資、アフリカの狩猟採集部族であったイク族を定住させて農業をさせようとした結果、腐敗し略奪を行う集団になってしまったこと、アメリカの投資銀行が行ったLBO(買い入れによる買い占め)による企業の敵対的買収、アメリカ軍産複合体などが取り上げられています。

このような倫理混合による破綻を防ぐために、歴史的には統治に関わる階級と商業に関わる階級を分けることが行われてきました。日本の江戸時代の「士農工商」もその一例でしょう。ただ、日本の江戸時代は一般的なイメージよりも階級間の人の移動は大きかったのですが。

統治階級は「取引を避けよ」の倫理を守って商業活動に関わらず、商業階級は下級階級とされて統治には関われませんでした。ただ、統治階級は治安を維持し交易を暴力から守ることで商業階級を保護し、商業階級は金銭面で支援することで統治階級を助けました。そのようにして、2つの倫理体系は並存していたのです。

ただ、近代社会では身分制は否定されていますので、このような方法をとることはできません。そのため、人々は「統治の倫理」と「市場の倫理」の両方に従う必要があるわけですが、倫理の混合を防ぐために、その時の状況によってどちらの倫理体系を選択するか、自覚して自分のモードを切り替えることが重要であるという結論となっています。


ただし、この本は原書が1992年、日本語版が1998年に発売された本であり、著者のジェイコブズも2006年に亡くなっています。そのため、それ以降に起こった事件については取り上げられていません。

ただ、この本を読んでいると、最近の事例についても、倫理混合による問題をいくつか指摘することができます。


まず思いつくのは中国の腐敗でしょう。習近平政権になって積極的な腐敗の摘発が進められていますが、そのために失脚した共産党幹部の中には、1兆円を超える不正蓄財をしていた者も何人かいました。政治家や官僚の腐敗は世界中のどの国でもありますが、これだけの規模の腐敗は中国くらいでしょう。また、中国は政府のトップから個人レベルに至るまで、あらゆるレベルに腐敗が及んでいます。

このような中国の腐敗は、ジェイコブズが取り上げていた共産主義国の腐敗と基本的には同じものですが、市場経済導入によって経済規模が拡大し、それと同時に共産党支配による「統治の倫理」と、市場経済導入による「市場の倫理」の混合が果てしなく進んだ結果、10億を超える人口を抱える国家と社会全体が腐敗してしまったのだと思います。

具体的に言えば「統治の倫理」の「取引を避けよ」が無視されて、共産党のトップから末端役人までが自分の利益のために、自分の職務権限を「取引」に使ってしまったため、汚職がまん延したのでしょう。さらに中国の多くの企業は国営企業なので、そこも汚職に巻き込まれ、さらにそこと取引していた民間企業や外国企業、個人にまで汚職が広がったのだと思います。

もちろん民主主義国にも腐敗はあります。最近だと上から下まで不正経理が蔓延していた東芝や、環境規制をごまかすために、テスト中だけ規制をパスするようなソフトウエアをディーゼル自動車に組み込んでいたフォルクスワーゲンが代表的な例でしょう。ただ、民主主義国の場合、社会全体、国家全体が腐敗してしまうことはなく、どこかで不正が露見して歯止めがかかります。

習近平は汚職追放を政権の最大の課題にして、強権を振るって汚職摘発を行っていますが、このような見方から考えれば、共産党支配を終わらせて民主的な政治制度を確立するか、市場経済を統制して経済発展を諦めるか、そのどちらかしか中国を腐敗から救う道はないことになります。共産党が自らの支配を終わらせることはないでしょうから、このまま汚職追放を続けていけば、いずれは経済衰退しか道がないことがはっきりすると思います。


次に思いつく事例は、リーマンショックを招いたアメリカ金融業界の腐敗です。ジェイコブズの本ではLBOを取り上げていましたが、2000年代に入ると、これまで住宅ローンを組めなかった貧しい人々にローンを組ませ、多数のローンをリスクに応じて分割したり、別々のローンを組み合わせたりして、リスクが少なくて利回りが良く見える金融商品に仕立て上げて、大量に販売する手法が編み出されました。これが「サブプライムローン」です。

この方法は住宅価格が上昇しているうちは、ローンの借り換えで支払いができるため破綻しなかったのですが、住宅価格が下落するとローンを払えない人々が続出し、家を差し押さえても十分な担保にならないため、金融商品の購入者に約束した利息を払えなくなりました。さらに多くのローンがバラバラにされたり混ぜ合わされたりしていたため、どのサブプライムローン商品がどれだけ損失を出しているのかすら分からなくなり、これらのローンを大量に抱えてた金融機関の経営危機に発展しました。この危機はFRBなど各国の中央銀行が金融機関の救済と大規模な金融緩和を行ったため、世界大恐慌再来の寸前で食い止められたのですが、それでも破綻を食い止められなかった金融機関が出たことや(リーマンショックの語源となったリーマンブラザーズがその代表です)、日本のように大規模な金融緩和を躊躇して大不況に陥った国が出たこともあって、今なお世界経済に大きな傷跡を残しています。


このように、「統治の倫理」と「市場の倫理」の混合は、世界有数の大国が丸ごと腐敗したり、世界大恐慌を引き起こしかねない原因となってるのです。ジェイコブズが存命なら、間違いなくこれらの問題を論じていたでしょう。


ここまで述べてきた腐敗の問題は、ジェイコブズの本を読んだことのある方なら納得してもらえると思います。ただ、僕はこの本を読んでいるうちに、もう一つ「統治の倫理」と「市場の倫理」の混合による大きな問題が発生しているのではないかと思うようになりました。

それは「緊縮」です。


現在、日本では消費税増税を予定通り行うか、延期もしくは凍結するかが大きな政治的問題となっていますが、今は国債金利も低く、急速なインフレや円安の危険もなく、むしろデフレや円高が懸念され続けています。世界的にも経済成長の低下が大きな問題になっていて、これまで行われてきた大規模な金融政策だけではなく、各国が財政政策も行うという合意が、先日のG20でもなされています。客観的に見れば、今、増税を行う理由はないでしょう。

しかし、それでも財務省をはじめとして消費税増税に固執する官僚、政治家、マスコミ、経済学者は少なくありません。

ジェイコブズの本を読んでいて、彼らが消費税増税に固執する理由、さらには世界的に「緊縮主義」が広がっている理由も、「統治の倫理」と「市場の倫理」の混合にあるのではないかと思うようになりました。

「市場の倫理」に「節倹たれ」という項目があります。分かりやすく言えば「節約せよ」ということでしょう。「緊縮主義」を信奉する人々は、この倫理を無自覚のうちに「統治の倫理」と混ぜ合わせてしまっているのではないでしょうか。

政治家や官僚は統治者であり、「統治の倫理」に従わなければなりません。彼らに経済政策を助言する経済学者やエコノミストも、その時は「統治の倫理」に従うべきでしょう。

しかし「節倹たれ」は「市場の倫理」ですから、これを「統治の倫理」と混ぜ合わせることは倫理的破綻を生じさせます。そのような倫理的破綻が最も分りやすい形で生じたのは、実は東日本大震災のときだったと思います。


東日本大震災から5年がたった。3月11日のテレビではこれまでの5年を振り返った放送が多かった。筆者は5年前の3月11日は大阪にいたので、大震災はほとんど体感しなかったが、東京の家では本箱、コンピュータが倒れて大変だった。当日は新幹線が動かなかったので大阪に一泊して、翌朝早くに東京に帰ってきた。

大震災の状況は大いに気になったが、その過程で、当時の菅政権が野党の自民党・谷垣禎一総裁と組んで「復興増税を企んでいる」という情報が入ってきた。

これは経済学を学んだ人なら、すぐ間違いとわかる政策だ。課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策である。その当時、大震災という重大事に何を考えているのかと大いに憤った記憶がある。

そこで大震災直後、2011年3月14日付けの本コラムで「「震災増税」ではなく、「寄付金税額控除」、「復興国債の日銀直接引受」で本当の被災地復興支援を 菅・谷垣『臨時増税』検討に異議あり」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2254)を書いた。正直言えば、大震災直後の人命救助が重要なときに、復興モノを書くのはためらったが、時の菅政権のあまりの非常識に怒ったわけだ。

このときの増税勢力は勢いがよかった。大震災で、多くの人が被災者を助けたいという「善意」を悪用して、復興増税は結果として行われた。

経済学者も情けなかった。そのとき、経済セオリーを主張する者はほとんどおらず、逆にセオリー無視の復興増税を推進した人たちのリスト http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm)は以下の通りだ。


http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/2/5/600/img_25cf709652c63fe37be515c8f87fefca350530.jpg


一流と言われる学者たちでもこの有様なので、社会からの信頼を大いに落としただろう。

大震災直後の増税勢力は、1ヶ月後の4月14日、復興会議の五百旗頭真(いおきべまこと)議長の挨拶のなかに「増税」を盛り込ませている(2011年4月18日付け本コラム「あらためていう。「震災増税」で日本は二度死ぬ 本当の国民負担は増税ではない」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2463)。

5年たった現在、そのことがどう評価されているのか。今年3月12日に放映されたNHKスペシャル『“26兆円” 復興はどこまで進んだか』は興味深かった(http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160312)。インタビューに応じた五百旗頭氏が、開口一番「復興増税がよかった」といったのだ。これにはかなり驚いた。


増税勢力は東日本大震災を「利用」した 〜あんな非常識なやり方を忘れてはいけない  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] 増税勢力は東日本大震災を「利用」した 〜あんな非常識なやり方を忘れてはいけない  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] 増税勢力は東日本大震災を「利用」した 〜あんな非常識なやり方を忘れてはいけない  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]


この時のことは僕も覚えています。東日本大震災が起こり、福島第一原発が大事故を起こして、2万人近い死者・行方不明者が出て、何十万もの人々が避難生活を余儀なくされ、東京でも電力や物資の不足に苦しんでいる時期に、事態に責任を持つ政治家や、一流と思われていた経済学者やメディアが、被災者そっちのけで増税を唱えだしたのですから。

これこそまさに「倫理的破綻」だと思います


この時、復興増税を唱えた勢力が、今もなお消費税増税に固執しています。あれだけの大災害でも増税を唱えた人たちですから、日本経済や世界経済がどうなろうと増税を進めるのが当たり前という考えなのでしょう。前回の記事でも書きましたが、すでに前回の消費税増税が日本の消費を止めてしまったことは、はっきりしているというのに。

なぜ、彼らがここまで増税に固執するのか、これまで色々考えてきましたし、このブログでもそのような考えを書いてきましたが、単なる個人的、組織的利害だけで本当にあれほどの固執が生まれるのかが、心に引っかかっていました。彼らが何らかの倫理的な正当性を持っていて、しかも実はそれが本当は間違っていると考えなければ、あのような間違いは説明できないでしょう。


先ほど述べた「節倹たれ」は、「市場の倫理」の中では間違いなく正しいものです。ただし「統治の倫理」に持ち込んではいけないものです。それを行ってしまったから、大災害の最中に「節倹」を実施して増税を行うことになってしまったのでしょう。

大災害の時は、「統治の倫理」の「気前よく施せ」が何よりも求められることでしょう。その正反対である「節倹たれ」を「統治の論理」と混ぜ合わせてしまったことが、あのような倫理的破綻の原因だと思います。

そのような間違いを犯し続けている勢力が、財務省を中心として、日本の政官財マスコミ、さらには経済学者まで広く及んでいます。現代の日本は、まさに「緊縮主義」という名の倫理的破綻に首まで浸かっているのです。人々を苦しめた日本の長期デフレ不況「失われた20年」もそのような倫理的破綻の結果として起こったものでしょう。


さらに恐ろしいのは、そのような「緊縮主義」という名の倫理的破綻に落ちいっているのは日本だけはないということです。ギリシャは長年経済危機に陥ってますが、昨年誕生した左派政権がきっかけで経済危機が深刻化した時、アメリカやIMFは債務減免を求めました。しかし、ドイツはそれに抵抗して、債務の減免を認めませんでした。*1このようなドイツの「緊縮主義」には、多くのEU加盟国も反発していますが、欧州最大の経済大国であるドイツには表立って逆らえません。

その後、欧州では難民の流入が深刻な問題になっていますが、その最大の入り口は他ならぬギリシャです。経済危機に陥っているギリシャには、難民の通過を抑える力はありません。本来ならば、難民問題の解決策として、ギリシャへの経済支援が再考されるべきなのですが、そのような話は全く出てこず、EUはトルコの民主化勢力弾圧を見逃して、トルコに難民問題への協力を求めています。

このような状況になっている原因も、ドイツの「緊縮主義」という名の倫理的破綻なのでしょう。おかげでEU内の移動の自由を保証したシェンゲン協定は有名無実となり、各国では極右勢力が台頭し、EUの理念も危機に陥っているのですが。


このように「緊縮」も「腐敗」と同様に、世界に大きな影響を及ぼす問題だと思います。そしてこの2つがどちらも「統治の倫理」と「市場の倫理」の混合による倫理的破綻として分析できることは、倫理体系の自覚的選択というジェイコブズが指摘した解決策が、非常に重要であることを示していると思います。

ただ、「腐敗」はこれまでも倫理的に大きな問題だと考えられていましたが、「緊縮」はそこまで大きな問題だとはみなされていませんでした。しかしこの2つが同じ原因を持つ問題であり、どちらも世界的に大きな問題を引き起こしていることを考えると、「緊縮」も「腐敗」と同じくらい、倫理的に大きな問題だと言えるのではないでしょうか。


3/21 補足

改めて文章を読み返してみて、説明不足だったところがあったので、ここで補足します。

まず、リーマンショックを招いたアメリカ金融業界の腐敗について、どのような倫理の混合が起こったのかについてです。本来、金融業界は「市場の倫理」に従うべきですが、そこに「統治の倫理」の「目的のためには欺け」が入り込んだのでしょう。具体的には「企業の利益のためには顧客を欺け」ということで、その「倫理」に基づいて「金融工学」がリスクを過小に見せることに悪用され(つまり、こんなことに「新奇・発明を取り入れよ」や「創意工夫の発揮」が使われて)、最終的には倫理の混合による破綻がリーマンショックという形で起こったのだと思います。

次に「節倹たれ」を「統治の倫理」と組み合わせた「緊縮主義」についてです。「節倹たれ」は「市場の倫理」においては「生産的目的に投資せよ」と結びつき、節約したお金は投資されるようになります。このような貯蓄の再投資が生産性向上につながり、長期的には経済を成長させる原動力となります。

しかし、「節倹たれ」が「統治の倫理」と結びついた場合、それだけでは再投資されることはありません。「統治の倫理」は占取(taking)に関する道徳ですから、国民から取った税金をひたすら貯め込むことになり、経済は停滞することになります。「財政再建」も財政赤字を減らすことですから、「国民から取った税金をひたすら貯め込む」のと同じ効果をもたらすでしょう。

ただ、実際には「統治の倫理」に「生産的目的に投資せよ」を組み合わせることもあります。「国有企業」がその典型例ですが、これは資本主義の中に部分的に社会主義を作るようなものなので、旧共産圏と同じような失敗をもたらすでしょう。実際にこれを行うと、「統治の倫理」の様々な項目に影響されて、結果的に「生産的目的」以外のところに投資されることになります。今、その悪影響が最も目立っているのは、やはり中国でしょう。あの国は非生産的な公共投資が大量に行われましたから。そのような投資は財政を悪化させるだけで、長期的な経済成長にはつながりません。

*1:もちろん、ギリシャ問題については、統一通貨ユーロによって各国が独自の金融政策を行えないことも大きな原因なのですが、それを和らげるためには、ユーロ圏内部で国境を超えた財政移転を行う必要があります。具体的にはこのような財政移転はドイツからギリシャへ行う必要があるのですが、ドイツはこれにも猛反対しています。

amakanataamakanata 2016/03/21 13:16 とても面白い論考で、知的興奮を掻き立てられました。

記事の趣旨とは異なりますが、個人の倫理もまた、両者を混同すると過ちを犯すのかも知れない、などと考えたり、私自身の価値観が、商人道と武士道を混同してきたために、生きづらく感じてきたのではないか、などと考える材料にもなりました。ご紹介いただき、ありがとうございます。本を早速購入いたしました。

ところで、記事の中で、欧米では武士道と商人道が並立してきたが、日本ではそうではなかった、という趣旨のことが書かれていらっしゃいますが、これはどうかな? と思いました。

明治政府がコテコテの統治を重んじた政権のために、武士道のみが日本文化の華ともてはやされてきましたが、江戸の日本の庶民には、「心学」という名の商人道が大変普及しております。最盛期には全国に180カ所の学舎があったといいます。武士よりも町人の数が多かったことを考えますと、心学の日本全体への影響は大きく、両者の道徳は日本でも並立、拮抗していたと考えて良いのではないかと思うのですが、いかがでしょう? 心学について、ジェイコブズ氏の日本人研究家たちは、何か言及していないのでしょうか?

BaatarismBaatarism 2016/03/21 23:39 >amakanataさん
早速本を購入いただいたそうで、ありがとうございます。
この本については、僕の考えにこだわることなく、本を読んで自分が気づいたことを大切にした方が良いと思います。

ジェイコブズの本には、江戸時代に日本で商業が発展して商人が富を蓄積したことは書かれていますが、「心学」に相当する倫理についての記載はなかったと思います。ただ、ジェイコブズはこの本を書くときに綿密な調査を行っていたようなので、「心学」についても知っていた可能性はありますね。

あと、江戸時代に武士道と商人道が両立していたのは、両者の身分が分かれていたことが大きな要因だったと思います。
これは僕の推測なのですが、明治維新後に両者の身分がなくなった後、日本では武士道による統治の論理が主流になり、武士階級以外にも及んでしまったのではないかと思います。当時は欧米列強による植民地化を防ぐことが最優先課題だったことと、旧武士階級が政治家、官僚、軍人だけではなく、産業界やメディアにも進出して大きな力を及ぼしたことが、その理由だと思います。

塩沢由典塩沢由典 2016/04/02 01:25 ジェイン・ジェイコブズは、20世紀の都市計画思想を転換させた批評家としても知られています。じぶんたちの街を歩きながら、ジェイコブズの思想を考えなおそうという「ジェインズ・ウォーク」が彼女の誕生日の5月4日を中心に世界各地で取り組まれています。ジェインズ・ウォークは日本でも3年前から始まり、すこしすず広がりを見せています。ジェインズ・ウォーク@自由が丘2016は、今年2回目になります。詳しくはWEBページをごらんください。

とくにことしは、ジェイコブズ生誕100周年ということで、日本でもいくつもの企画が進んでいます。

BaatarismBaatarism 2016/04/02 11:50 >塩沢由典さん

ジェイン・ジェイコブズはもともと都市論を論じていた人ですね。
塩沢さんのWebページでは自由が丘と田園調布の違いが取り上げられていますが、実は僕の出身地は大阪府吹田市の千里ニュータウンの近くで、ニュータウンの外と中とで町並みや活気が一変することがずっと気になっていました。(ニュータウンの中は町並みは綺麗だが、活気がない)こういう視点もジェイコブズの問題意識に通じるのでしょう。

2016-03-05

消費税率を5%に戻せ

00:38 | 消費税率を5%に戻せを含むブックマーク

政府は来年2017年4月から消費税率を10%にあげる予定ですが、最近、それに対する障害が強まってきたと思います。

一つは2月末に行われたG20の財務相・中央銀行総裁会議で、各国に財政政策の実施が求められたことです。消費税増税は「逆財政政策」というべき政策ですから、その実施は国際的に見ても困難になったと言えるでしょう。日本は5月に伊勢志摩で行われるG7サミットの議長国となりますから、その国がG20の決定をに反する政策をしていては、各国の批判を浴びるでしょう。

中国・上海で開いた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は27日夕、市場の安定のために金融政策、財政政策、構造改革の「すべての政策手段を用いる」とする共同声明を採択し、終了した。中国経済の減速や原油安を起点とする市場の動揺に対し、G20が断固とした態度で臨むことを示すことで不安の沈静化を狙う。


G20が閉幕、市場安定へ「すべての政策」 共同声明  :日本経済新聞 G20が閉幕、市場安定へ「すべての政策」 共同声明  :日本経済新聞 G20が閉幕、市場安定へ「すべての政策」 共同声明  :日本経済新聞


また、国内でも消費税増税に対する反対は高まっています。日経新聞の世論調査では、消費増税反対が58%と急上昇しています。

日本経済新聞社の世論調査で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の評価がこれまでで最も低くなった。急激な円高・株安の進行などが背景にあるとみられ、追加の財政出動を伴う景気対策や2017年4月の消費増税の中止を求める声が多い。世界経済の不透明感が増すなか、安倍政権は経済成長と財政再建を両にらみしながら難しい経済運営を迫られている。


(中略)


 「新たな予算を追加して経済対策を行う必要がある」は47%に達し「必要でない」の35%を上回った。内閣支持層では58%、不支持層でも40%が「必要だ」と答えた。

 17年4月に消費税率を8%から10%に引き上げることに「賛成だ」が33%と、昨年12月の調査から9ポイント低下。「反対だ」は58%と11ポイント上昇した。


経済運営 一層難しく 本社世論調査、「消費増税反対」58%  :日本経済新聞 経済運営 一層難しく 本社世論調査、「消費増税反対」58%  :日本経済新聞 経済運営 一層難しく 本社世論調査、「消費増税反対」58%  :日本経済新聞


このような背景もあって、野党からの批判も強まっています。ただ、民主党は野田政権が消費税増税を決めたという事情もあって、はっきりと増税反対を打ち出すまでには至っていないようです。

 参院予算委員会は3日、安倍晋三首相と全閣僚が出席する2016年度予算案の基本的質疑を終えた。注目を集めたのは17年4月に予定する消費税率10%への引き上げ。経済の先行きが不透明だとして増税先送りも取りざたされる中、首相は「現段階では引き上げていく」と改めて強調。野党は首相の姿勢を相次いで批判した。7月の参院選をにらみ、与野党の神経戦が続く。

 共産党の小池晃氏は3日、パネルを手に「消費税率を8%に引き上げて以来、個人消費は冷え込んでいる」と訴えた。消費税率を3%から5%に引き上げた1997年より、14年の方が家計消費の落ち込みが大きかったとして「増税をすべきではない」と強調した。

 日本を元気にする会の松田公太氏や、日本のこころを大切にする党の中山恭子氏も「個人消費の喚起が必要だ」などと増税反対で足並みをそろえた。首相が改憲勢力として期待するおおさか維新の会の片山虎之助共同代表も「税率を上げて税収が落ちるばかなことになる」と断言した。


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このように内外で消費税増税への障害が強まる中、安倍総理や菅官房長官の発言にも変化が見られるようになりました。

 安倍晋三首相は15日、衆院予算委員会の経済と地方創生に関する集中審議で、2017年4月に予定する消費増税について「8%への引き上げで、予想よりもはるかに消費の落ち込みが大きく長く続いた。国民に納得していただき、消費への影響にも配慮しなければならない」と述べた。


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 2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げを巡り、安倍晋三首相の発言が注目を浴びている。首相は増税を先送りする状況として「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」と述べてきたが、年明けから「世界経済の大幅な収縮」とも言い始めた。財務省や内閣府は「増税の判断は変わらない」とするが、与党内では増税先送りや、夏の参院選と合わせた衆参同日選の臆測もくすぶる。


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 菅義偉官房長官は26日午後の記者会見で、来年4月に予定される消費税率10%への再引き上げについて「税率を上げて税収が上がらないようでは、消費税を引き上げることはあり得ない」と述べ、増税による買い控えなどで税収減が予想される場合、見送りもあり得るとの認識を示した。


税収減なら消費増税見送りも=菅官房長官 (時事通信) - Yahoo!ニュース 税収減なら消費増税見送りも=菅官房長官 (時事通信) - Yahoo!ニュース 税収減なら消費増税見送りも=菅官房長官 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 安倍晋三首相は3日の参院予算委員会で、2014年4月に消費税率を5%から8%へ引き上げた後の経済動向について「予想以上に消費が落ち込み、それが現在まで続いている。予想以上に長引いている」との見解を示した。


8%増税「落ち込み予想以上」=安倍首相 (時事通信) - Yahoo!ニュース 8%増税「落ち込み予想以上」=安倍首相 (時事通信) - Yahoo!ニュース 8%増税「落ち込み予想以上」=安倍首相 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 安倍首相が、2017年4月の消費税率10%への引き上げを先送りする場合の状況について、「世界経済の収縮」を条件に掲げ始めた。

 これまでは「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」が起きない限り、予定通り実施する考えを強調してきた。与党内では「首相は軌道修正を図っている。再増税を見送る可能性が高まっているのではないか」(自民党中堅)との見方も出ている。

 首相は最近の国会審議で、予定通り税率を引き上げる方針を明言する一方、「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているかなど、専門的見地からの分析を踏まえ、その時の政治判断で決める」(24日の衆院財務金融委員会)などと強調している。26日の衆院総務委員会でも、「株価、市場変動のみでなく、実体経済にどういう影響が出ているかも含め考えないといけない」と語った。年初から急激な円高、株安が進み、世界経済が不安定になる中、再増税を既定路線にしたくないとの思いが強まっているようだ。周辺には「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」と、半ば悔やむように語っている。


消費増税、先送りの兆候?…首相の発言に変化 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 消費増税、先送りの兆候?…首相の発言に変化 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 消費増税、先送りの兆候?…首相の発言に変化 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)


特に最後の記事では、安倍総理が消費税を8%に引き上げたことが景気悪化の原因で、引き上げなければ税収がもっと増えていた、つまり引き上げたために税収が減ったと語っています。国会審議では野党の追及を避けるために言えないことですが、内心ではそう考えているのでしょう。

消費税増税が決定される時、リフレ派は1997年の消費税増税で税収が減少したことを反対の根拠の一つにしていましたが、やはり今回も同じことが起こっているのかもしれません。


このように消費税増税への反対はどんどん強まっていますが、ただ引き上げを延期や中止するだけで良いのでしょうか?

確かに景気は日銀のリフレ政策のために、白川総裁時代よりは良くなっています。雇用は大きく改善して、失業率も下がりましたし、最近は正規雇用も増えています。

ただ、消費はまだ低迷したままです。「景気が回復しても実感がない」という声も大きいですが、そのことは消費の低迷という形で表れていると思います。ここを改善しないと、国民に景気回復の恩恵が及んだとは言えないでしょう。そして、そのような形の景気回復は長くは続かないと思います。だから、今のうちに消費回復の手を打たないといけないでしょう。


リフレ派の代表的なエコノミストである片岡剛士氏によると、消費低迷の原因が消費税増税であることがデータにはっきり表れています。

2016年1月の家計調査の結果が総務省から公表された。二人以上の世帯を対象とした結果をみると、実質消費支出は前年比3.1%減、前月比0.6%減とさえない動きが続いている。実質消費支出から世帯規模(人員)の変動の影響や、人口の高齢化の影響を除いて推計される消費水準指数(季節調整済)の動きをみても、2016年1月の結果は前月比1%弱の増加であって、水準は2015年10〜12月期の平均値にも届いていない(図表1)。2014年4月以降家計消費は停滞したままL字型のような形で推移し、2015年9月以降さらに減少傾向にある。2016年1月の持ち直しの動きも鈍いと言えるだろう。


http://www.murc.jp/uploads/2016/03/kataoka160304_1.jpg


以上は商品を購入する家計側から見た消費の動きだが、売り手側からみた消費もさえない動きを続けている。図表2は経済産業省「商業販売統計」と総務省「消費者物価指数」から実質小売業販売額の動きを試算した結果だが、2016年1月は前月比0.8%の減少となり、2015年10〜12月の平均を1.8%下回る。


http://www.murc.jp/uploads/2016/03/kataoka160304_2.jpg


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消費の底割れ、リーマン・ショック以来


 前回のコラムで指摘したとおり、2015年10〜12月期のGDP統計から得られる民間最終消費の動きは、統計的に見て2002年1〜3月期から2012年10〜12月期における前期比0.2%増のトレンドから有意に下ぶれたことを確認させる結果となった。図表で見るとわかりやすい。青い実線は家計最終消費支出の実績値、黒い点線は2002年1〜3月期から2012年10〜12月期のデータから計算した傾向線(トレンド)、二つの赤い点線で囲まれた部分は、家計最終消費のトレンドが統計的に成り立ちうる範囲(95%信頼区間)を示したものである。


http://www.newsweekjapan.jp/kataoka/kataoka160302-graph01.jpg


 アベノミクスが開始された2013年以降の消費の動きをみていくと、家計最終消費支出はトレンドを示す黒い点線から上ぶれる形で推移して、2013年4〜6月期以降はほぼ赤い点線上限近辺で推移していた。これは、アベノミクスにより家計最終消費支出の拡大が生じ、それが2002年から2012年までの家計最終消費支出のトレンドから統計的に有意な形で上ぶれつつあったことを意味する。

 そして消費税増税の駆け込み需要が生じた2014年1〜3月期には一時的に上限を上回った。しかし消費税増税後には動きが一変する。今度はトレンドを示す黒い点線から実績値が下ぶれて推移して、ついに2015年10〜12月期に家計最終消費支出は下限を下回ってしまったのである。これは統計的にみて「消費の底割れ」が生じたということだ。

 図表にはリーマン・ショック直後と東日本大震災の家計最終消費の値を明示している。東日本大震災が生じた2011年1〜3月期の値は大きく落ち込んだものの、赤い点線の下限を超えて落ち込むという「消費の底割れ」はかろうじて避けられた。統計的にみて、家計最終消費支出の底割れが生じたのはリーマン・ショックから1四半期程度経過した2009年1〜3月期である。2015年10〜12月期の家計最終消費は2002年以降のトレンドで見て、リーマン・ショック直後以来2度目の「消費の底割れ」が生じていることを示しているのである。

 こうした動きが常態化してしまうと、家計最終消費支出のトレンドは下ぶれし、それが家計最終消費支出のさらなる停滞につながってしまう。2016年1月も2015年に引き続き低調な結果に終わり、その後も十分な回復が見込めない状況が続けば、家計最終消費支出は前期比0.2%増のトレンドから更に下ぶれる可能性が強まる。早期に対策を行うことが今求められているのである。


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このようにグラフを見れば一目瞭然で、消費税率を8%に引き上げたと同時に消費低迷が始まり、それが今までずっと続いていることがわかります。最後のグラフによると、現在の消費の低迷は東日本大震災の時よりもひどく、リーマンショック以来の水準であることがわかります。

安倍総理は「リーマンショックや大震災のような事態が起きない限り、消費税の再増税を延期しない」*1と言っていますが、消費の面から見れば、消費税増税自体がこれらの事態に匹敵する問題を引き起こしていると言えるでしょう。


そして片岡氏は、消費拡大のための政策として、消費税率を5%に戻すことを提唱しています。

消費拡大のための財政政策とは


 さて、先程述べた金融政策・財政政策のシナリオを考慮しつつ、家計消費を再拡大させるための財政政策はどうあるべきか。財政政策のメニューは、定額給付金、社会保険料の一時的減免、低所得労働者を対象とする給付付き税額控除など様々なものが考えられるが、最も効果が大きいと考えられるのは「消費税減税」だろう。消費税減税のメリットは、簡明かつ現下の家計消費の落ち込みに直接影響を及ぼせることだ。わが国の総需要(実質GDP)と総供給(潜在GDP)の差であるGDPギャップは、内閣府の試算によれば7兆円弱のデフレギャップ(総需要不足)の状況にある。

 また図表における家計最終消費の2015年10〜12月期実績値と、2015年10〜12月期のトレンドとの差を計算すると、現状の消費をトレンドの水準まで復帰させるために必要な金額は8.1兆円だ。消費税率1%に相当する税収を2.7兆円とすれば、8%から5%への消費税減税の規模は8.1兆円(2.7兆円×3=8.1兆円)となる。以上からはデフレギャップを埋め、かつ「消費の底割れ」が生じている家計最終消費支出をトレンドに引き戻すためには8%から5%への消費税減税を行う必要があることがわかる。


 そして金融政策・財政政策のシナリオ、ポリシーミックスを考慮すれば、次のような政策を実行することが必要ではないか。


・日銀が2%インフレ目標を達成・安定化するまでの期間(具体的には2016年度、2017年度)の時限措置として政府は8%から5%への消費税減税(財政政策)を行う。

・日銀は展望レポートで示しているとおり2%のインフレ目標を2017年度前半中に達成することに全力を尽くす。なおインフレ率の基調判断は、消費税減税による物価押し下げ効果や原油価格の影響を差し引いた上で行う。

・2%インフレ目標達成から半年間の経過期間を置いてデフレからの完全脱却がなされたことが確認された場合、改めて毎年1%ずつのペースで消費税増税を行う。

・最終的に8%まで消費税率を戻しつつ、物価や経済動向を勘案しながら、日銀は段階的に出口政策に踏み込む。


 2年間の限定で消費税減税を行うために必要な財源は、8%から5%への引き下げの場合は累計16.2兆円となる。減税を行えば経済成長も高まり、デフレ脱却が進むことも相まって税収も増加することが見込まれる。合わせて外国為替特別会計に眠る内部留保(積立金)22.7兆円(2015年3月末時点)や、政府資産の売却を前倒しで実行していくこと、さらに長期金利がマイナス金利に突入する状況下ならば国債を増発して財源に充てることも検討に値するだろう。

 消費税増税は社会保障の財源を確保することが目的だが、消費税そのものには、低所得者ほど負担率が高まる逆進性の問題や、消費税率を引き上げるたびに経済の落ち込みが深刻となる、税率を引き上げるほど益税に代表される税の不公平が助長されてしまう、といった様々な問題点を抱えている。社会保障の財源を消費税増税に頼るのではなく、経済成長による税収増や現行の相続税を廃止の上で新たに100兆円とも言われる相続対象資産に一律に20%の税率を課すといった対策を行えば、消費税率は5%据え置きでも問題ないと筆者は考える。こうなれば、消費税率を8%まで引き上げる必要もないため、日銀は財政政策の影響を考慮することなく、出口政策に集中することが可能となるだろう。


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現状の消費をトレンドの水準まで復帰させるために必要な金額と、8%から5%への消費税減税の規模が同じ8.1兆円というのは、出来過ぎなくらいの一致ですが、規模の面から見ても、今の消費低迷が「消費税で家計からお金を奪われている」ために生じていることを、示していると思います。

片岡氏は消費税の5%への減税を時限措置としていますが、デフレからの完全脱却がなされたことが確認されるまでは消費税増税をしないこと、別の方法で社会保障の財源が得られるのであれば消費税増税にこだわる必要はないことも主張しています。

僕はよほど景気が過熱しない限りは、これ以上の消費税の引き上げは止めて、経済成長や相続税など、別の方法で財源を確保すべきだと思います。そしてもし消費税を上げる場合でも、片岡氏が言うように1%づつの引き上げとするべきでしょう。消費税増税にはそのくらいの慎重さが必要だというのが、今回の消費税増税の失敗から学ぶべき教訓だと思います。


以前は、僕も消費税率の引き下げは困難だと考えていて、それ以外の財政措置で増税ショックを和らげれば良いと考えていました。*2ただ、そのような方法は一時的な措置になりがちですし、実際に予算の細部を決める財務省が、こっそり予算の効果を弱める工作をすることも考えられます。*3

だから、財務省の工作が不可能で、永続的な措置とすることも可能な、消費税減税こそが最も良い方法だと考えるようになりました。


安倍政権にとっても、野党が消費税増税見送りを主張している今となっては、見送りだけでは選挙に勝つための十分な優位は得られないでしょう。それを上回る消費税減税という政策を出してこそ、有利な立場に立つことができます。また、消費税減税という最良の財政政策を行うことは、世界経済の回復に対して日本が積極的に貢献していることを示すことになるでしょう。

もちろん、野党が先手を打って消費税減税を主張しても良いです。それで安倍政権が選挙に負ければ、消費税減税を受け入れざるをえないでしょう。

民主党の馬淵澄夫氏は、すでに消費税の5%への引き下げを主張しています。このような意見を民主党執行部が取り入れてくれれば良いと思います。もっとも、民主党では消費税増税を決定した野田政権時代の幹部が今も大きな力を持っていますから、この馬淵氏の提言が受け入れられる可能性は高くないと思いますが。

また、争点設定もそうなると、現今の景気回復への足踏み状況から、「消費税」となることはほぼ間違いないだろ。

 消費税の再凍結。

 そして、さらに、引き下げへ。

10%引き上げは、凍結。これは当然やってくるだろう。そしてさらに、現行8%から特例2年間の5%への引き下げ措置。14年に上げた3%はやはり消費に大きなインパクトを与えてしまった。正直少し早まったといえる。従って、景気回復のために2年間の特例措置で5%へ引き下げる。というものだ。

 財政当局や財政健全化路線で洗脳されてしまっている輩は、猛然と反論するだろうが、政策オプションがさりとてない状況では十分考えられる政策だ。うかうかしてられない。

ダブル選挙は、憲法でも何でもなく、いきなり、消費税をどうするかという景気対策ど真ん中路線を、争点化される。のんきに構えている場合ではない。いち早く、民主党が、凍結のみならず引き下げまで検討、言及すべきだ。


消費税引き上げ凍結どころか引き下げへ: まぶちすみおの「不易塾」日記 消費税引き上げ凍結どころか引き下げへ: まぶちすみおの「不易塾」日記 消費税引き上げ凍結どころか引き下げへ: まぶちすみおの「不易塾」日記


この馬淵氏のような考え方が、与野党を問わず広がってくれることを望みます。

それが人々の生活を改善し、ひいては日本のため、世界のためとなる政策でしょう。

3/6 追記

今回の記事では消費税増税が消費に与える悪影響を中心に説明するため、片岡剛士氏の記事を紹介しましたが、以前からリフレ派は消費税減税が必要だという主張をしています。以下の2つの記事はどちらも2014年のものです。


田中秀臣氏(2014/11/17)

 さらに注目すべきは消費の弱さだ。第2四半期ほどの落ち込みではないが、それでもわずかにプラスになっただけだ。この背景には、消費増税によって実質所得が恒常的に減少している可能性がある。つまり多くの消費者は増税の効果が長期に続くと予想し、自らの財布のひもをきつく締め続けることを意味している。消費増税の悪影響が短期間のものではない可能性を示唆している。

 純輸出も弱く、政府最終消費支出も弱い。政府の財政政策は公共事業中心だが、その効果は乏しいものがある。むしろ消費増税の悪影響を取り除くためには、政府は実質的な減税政策(各種の所得補助金)を中心に行う必要があり、筆者の私見では消費再増税よりもむしろ消費減税が必要な局面とさえいえるだろう。

 雇用状況は堅調なようでいても、経済指標の性格から実体経済を遅れて反映する。このようなリセッションを放置していれば、やがて確実に雇用面にも深刻な影響を生じるだろう。


景気後退局面か GDP速報値大幅減が示唆 消費増税で深刻な経済悪化を招いた財務省の罪 | ビジネスジャーナル 景気後退局面か GDP速報値大幅減が示唆 消費増税で深刻な経済悪化を招いた財務省の罪 | ビジネスジャーナル 景気後退局面か GDP速報値大幅減が示唆 消費増税で深刻な経済悪化を招いた財務省の罪 | ビジネスジャーナル


高橋洋一氏(2014/9/18)

 ちなみに、筆者が潜在GDPを試算し、実際のGDPとのギャップを見ると図3の通りだ。


http://dol.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/600/img_f7a4496245b8a5b0b75828884bd90f4a33317.jpg


 今のところギャップは12兆円ほどある。これは内閣府のものとほぼ同じはずだ。消費増税は駆け込み需要とその反動減、可処分所得の減少よる需要減を招いたが、上の図で、増税以前の傾向が続いていれば、いまごろは、需給ギャップがほとんどなくなっていただろうことも推測できる。

 昨年は、金融政策と財政政策を一体として発動したので、いい景気だったが、今年4月から、金融政策は同じだが、財政政策が一転して緊縮政策になったため、景気が低迷している。これをもう一度よくするためには、昨年と同じような政策が必要である。それは消費増税をなしとする政策である。

筆者はこれまでも言ってきたが、今となっては最善の手は、5%への消費減税。それができないときには、軽減税率を導入して、全品目5%の軽減税率の適用。それもダメなら、97年増税時には先行所得減税だったが、今回は事後所得税減税。それもできないなら、これまで増税した分をすべてはき出すような減税と財政支出だ。


日銀総裁の講演の疑問点を読み解く 景気後退への最善策は5%への消費減税|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン 日銀総裁の講演の疑問点を読み解く 景気後退への最善策は5%への消費減税|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン 日銀総裁の講演の疑問点を読み解く 景気後退への最善策は5%への消費減税|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン


消費税減税という主張が消費税増税の直後から出ていたことを、これらの記事は示しています。将来を的確に予想した記事だったと思います。

JancloJanclo 2016/03/20 04:45 政府資産の売却はデフレを促進するだけでは?

リフレ派と呼ばれる人の意見で気になるのが、この政府資産の売却ですが、過去を見ると官業払い下げなど、インフレ抑制の為に行われてます。

不況下でインフレを起こすには政府のバランスシート拡大しかないでしょう。
減税や所得補償では、企業や国民は将来不安が解消されていないのですから、ためこむだけ。

公共事業であれば、政府のバランスシートを拡大するだけで、減税や政府消費(公務員の賃金や社会保障支出)と比べ、財政も悪化させないんですがね。

どうもリフレ派の人は土建が嫌いなだけでなく、会計も分かってないのでは、と思ってしまいます。

BaatarismBaatarism 2016/03/20 22:50 >Jancloさん
政府資産の売却益を財政政策に使うのであれば、国債は減らないので、デフレ促進にはなりませんよ。

JancloJanclo 2016/03/21 20:37 >Baatarismさん

>売却益を財政政策に

それは、消費税にも言えることですよね?

増税した分を財政政策に回せば同じことではないでしょうか?
というか、現に社会保障費に回されていますが、インフレにならないどころか、デフレになってますよね?

BaatarismBaatarism 2016/03/21 23:21 もし増税した分を財政政策に全額回したとしたら、インフレにもデフレにもならないことになります。
ただ、実際にはそうではないようです。消費税が8%に増税された2014年4月に、こんな記事がありました。

【消費税8%】社会保障充実は1割のみ
http://www.sankei.com/economy/news/140401/ecn1404010068-n1.html

>5%から8%に引き上げられた消費税の増収分約5兆円は全額、社会保障の財源にする。だが、社会保障の充実に使えるのは1割にとどまる。大半は赤字の穴埋めなどに消え、施策の新たな充実に振り向ける余地は少ない。

「全額、社会保障の財源にする」とは言ってましたが、実際にはその9割は赤字の穴埋め、つまり「反財政政策」に使われたことになります。

JancloJanclo 2016/03/22 09:25 赤字の穴埋めが反財政政策なら、今より赤字額の多かった民主党政権で、なぜデフレだったのでしょうか?
財政収支
http://ecodb.net/country/JP/imf_ggxcnl.html
インフレ率
http://ecodb.net/country/JP/imf_inflation.html

JancloJanclo 2016/03/22 09:29 >もし増税した分を財政政策に全額回したとしたら、インフレにもデフレにもならない

政策によって経済への効果が異なるので、これは違うと思います。

BaatarismBaatarism 2016/03/27 23:53 >赤字の穴埋めが反財政政策なら、今より赤字額の多かった民主党政権で、なぜデフレだったのでしょうか?

それは白川総裁と黒田総裁で、日銀の金融政策が全く違うからでしょう。

>政策によって経済への効果が異なるので、これは違うと思います。

確かに、全く効果が同じというわけではないですね。
ただ、前のコメントで言いたかったのは、消費税の増収分のほとんどが財政赤字の穴埋めに使われていたということです。これでは確実にデフレを招くでしょう。

JancloJanclo 2016/03/30 05:48 >白川総裁と黒田総裁で、日銀の金融政策が全く違う

つまり、消費税増税は異次元緩和の効果を上回るデフレ作用があるということでしょうか?

あと、
>増収分のほとんどが財政赤字の穴埋めに使われていたということです。これでは確実にデフレを招くでしょう。

バブルの頃を見ると、財政は黒字であるにも関わらず、インフレ率はプラスですが、これについては、どう思われますか?

BaatarismBaatarism 2016/04/01 00:16 >つまり、消費税増税は異次元緩和の効果を上回るデフレ作用があるということでしょうか?

上回るかどうかはわかりませんが、帳消しにするくらいの効果はあったと思います。

>バブルの頃を見ると、財政は黒字であるにも関わらず、インフレ率はプラスですが、これについては、どう思われますか?

あのバブルの時代は日銀が大幅な金融緩和を行っていました。だから好景気でインフレとなったのでしょう。

JancloJanclo 2016/04/01 06:54 http://www.iecon.jp/loan/loan_kinri.html
長期金利の推移をみると、90年には金融政策は引き締めに入っていますが、財政の黒字もインフレも続いているようです。

財政も黒字、金融政策は引き締め、なぜインフレになってるんでしょうか?

ななしななし 2016/04/04 19:09 来年4月に予定している現在・8%から2%アップの10%への消費増税先送りするなら、よっぽど、スレ主のいう、消費税を今の8%から2%ダウンの5%にする案には、何の異論もなく諸手を挙げて大賛成です!!。政治家の人達には我々しもじもの庶民の生活実態など最早何もわからないでただ、機械的に次々にじゃあ次は消費増税、次は安保法案成立→次は…っていうふうにただ機械的に法案を次々に通してるだけかもしれないが?、現実的に来年の4月に消費税が10%になったとしたら?、我々しもじもの庶民の財布の中や、どっしりした重税感は我々庶民にとっては、計り知れないもの、恐怖っていう事を政治家の人達は、はたしてどこまで?、考えてるのか?。

ななしななし 2016/04/04 19:09 来年4月に予定している現在・8%から2%アップの10%への消費増税先送りするなら、よっぽど、スレ主のいう、消費税を今の8%から2%ダウンの5%にする案には、何の異論もなく諸手を挙げて大賛成です!!。政治家の人達には我々しもじもの庶民の生活実態など最早何もわからないでただ、機械的に次々にじゃあ次は消費増税、次は安保法案成立→次は…っていうふうにただ機械的に法案を次々に通してるだけかもしれないが?、現実的に来年の4月に消費税が10%になったとしたら?、我々しもじもの庶民の財布の中や、どっしりした重税感は我々庶民にとっては、計り知れないもの、恐怖っていう事を政治家の人達は、はたしてどこまで?、考えてるのか?。

janclojanclo 2016/04/08 23:13 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2014/qe144_2/gdemenuja.html
90,91年は、民間企業の設備投資がピークのようで、恐らくこれが、インフレの要因でしょう。

ちなみに、この翌年から日本経済が停滞するわけですが、この期間に行われた政策が「総量規制」です。
土地を担保に事業をしている企業が多かったのですから、そりゃ停滞しますよね。

mama 2016/04/23 06:38 社会保障の持続可能性についてはどうお考えでしょうか。高齢者増加による社会保障の負担が高まっていく中、医療負担・年金需要は確実に増大していきます。「税をどこから集めて、それをどう運用するか」が政府の役割である以上、社会保障の需要増大に対して、増税をもってして応える政府の対応は当然と言えます。
増税すれば消費が低迷するのは当然のことで、ことさら強調するまでもないと思います。
高橋洋一氏は日本の財政破綻は嘘と必死に叫んでいますが、破綻するかどうかは海外の投資家・金融機関の受け止め方によって変わってくると思います。ポールグルークマンなどの一部の経済学者を除いては、海外の学者は消費税増税は必要と訴えています。海外の信用格付け機関も、続々と、日本国債の信用順位を下げていってます。信用不安をきっかけに、国債価格が暴落する危険性さえあります。
消費税増税は絶対に必要だと思います。

景気低迷の原因は、消費の低迷よりも賃金の低迷にあると思います。
企業利益が上がったのに、労働者に還元されず、むしろ非正規雇用者の増大によって賃金が下がったからではないでしょうか。
企業利益の増大→賃金の増加→活発な消費活動というサイクルが起きれば、消費税がたった3%上がったところで消費に大きく影響を与えなかったと思います。
では、なぜ利益が労働者に還元されないのでしょうか。
私は日本の雇用システム・労働市場に原因があると思います。
長期雇用を前提とした日本の労働市場こそが、企業が賃金を上げにくくくしている要因となっていると思います。賃金には下方硬直性があるゆえ、長期雇用が一般的な日本では、企業にとっては余計にリスクを抱えることになるからです。
リフレ政策にしても、貨幣が適切に供給されるには、人材の流動化が必要です。

2016-02-18

テレビ局は報道の自由を守るために周波数オークションを受け入れるべき

10:23 | テレビ局は報道の自由を守るために周波数オークションを受け入れるべきを含むブックマーク

高市総務相が「政治的な公平性を欠く」放送に対して、放送法4条違反を理由に電波停止を命じる可能性に言及したことで、言論の自由や報道の自由が脅かされるのではないかと懸念の声が出ています。

この問題を巡って様々な意見が出ましたが、僕が一番納得できたのは国際政治学者の三浦瑠麗氏の意見でした。

結論から言うと、言論の不自由さに対する懸念には一定の根拠があると思っています。しかし、その原因については、政権側の抑圧や、日本社会の保守化といった単純なものではないと思っています。足元で高まっている言論の不自由さは、日本社会の政治化という変化を反映した症状であると考えるからです。


日本的な権力分立の仕組み

欧米社会と比較した際に日本社会が際立っているのは、それが並立する「ムラ社会」のあつまりであるという点です。ムラとは会社であったり、業界であったり、地域であったりします。ムラ同士が交わることは少なく、個々人にとって「ムラ社会」の存在は圧倒的です。国民や市民という概念は、わかりやすいストーリーとしては存在しても、実際の社会的な単位としてはそれほど力を持っていません。個々のムラが縦割り的に存在し、それぞれの縦割りの中で秩序を保つための伝統と統治原理を育んでいるのです。

実は、この縦割り構造が日本の言論の自由においても重要な役割を果たして来ました。自民党に代表される日本政治の現場は昔から保守主義であり、権威主義でした。責任ある立場にいたことのあるジャーナリストの方に聞けば皆そう答えるでしょう。メディアをコントロールしたがるのは政治の本能のようなものです。その本質は何も変わっていません。

メディア業界が独自の「ムラ」として自律性を持っている限りにおいて、政治の介入を組織としてはねのけることができたに過ぎません。そして、その自律性はメディアの中で圧倒的な存在であったリベラルな価値観によって支えられていました。

政治と官僚の関係にも同様の構造が存在します。戦後日本のリベラリズムの原点にはGHQが主導した改革がありますが、霞が関のエリート達はその政策の忠実な承継者でした。政治的な介入を排除し、リベラルな法体系の下で漸進主義的に政策を実行していったのです。生存権を原理とした社会福祉の増進も、男女同権を原理とした女性の地位向上も、時間はかかったけれど戦後一貫して改善してきました。官僚機構というものは、軌道修正は苦手である代わりに、一定の方向に向かって少しずつ成果を出すことには向いているのです。

そんな中、近年変化したのは日本社会において政治化される領域です。日本は、過去20年の間の諸改革を通じて、一貫して政治的なリーダーシップを強化する方向に舵をきってきました。省庁を統合し、内閣府や内閣官房の権限を強化したことで首相の権限は大幅に強化されました。小選挙区制を導入したことで、政党内で資金や公認権を握る執行部への権力集中が進みました。現在の首相は、かつてとは比較できないほど大きな力をふるうことができるようになったのです。

それは、国民が求めた変化でした。冷戦の終結とバブル崩壊を経た90年代の日本は変化に対して極度に臆病になっていました。個別の「ムラ」の統治原理に委ねている限り、変わることは不可能と思われたのです。そこで採用されたのが、政治が関与する領域を拡大するという手段でした。独立性の高い社会が割拠する状態から、政治の大きな物語に基づく横断的な変化へと一歩踏み出したのです。

政と官との関係において、それは「政治主導」という物語でした。しかも、政治主導の内実は世論主導であり、メディア主導であることも多かったのです。政治とメディアとの関係では、政権に対する距離感でメディアがより鮮明に色分けされるようになりました。当然、政権に批判的なメディアに対しては政治の側からの圧力が増大します。それに対するメディア「ムラ」の抵抗力は弱まっていました。

政治の拡大によって物事が前に進んできたことも事実です。薬害との闘いも、無駄な公共事業の削減も、左派的なイデオロギーに支えられた外交政策の転換も、既得権益を排除するための制度作りも、そうして初めて可能になったのでした。その代償が、霞が関やメディアへの政治の介入を許したことでした。


メディア「ムラ」は民主的に統制されるべきか?―高市総務相の放送法発言問題 - 山猫日記 メディア「ムラ」は民主的に統制されるべきか?―高市総務相の放送法発言問題 - 山猫日記 メディア「ムラ」は民主的に統制されるべきか?―高市総務相の放送法発言問題 - 山猫日記


このように、メディア業界が日本的な独自の「ムラ社会」であり、その自律性を支えていたのが「ムラ社会」とは本来相容れないはずのリベラルな価値観であったというところに、日本のメディア業界の矛盾があるのでしょう。

しかし、国民の要求によって「ムラ社会」の力が弱まり、それに代わって「政治化される領域」が広がった結果、メディアへの政治の介入が起こってしまいました。メディアは報道の自由というリベラルな価値観を振りかざしてそれに対抗していますが、メディアの自律性を支えていた「ムラ社会」が弱体化しているため、効果的な抵抗ができないのでしょう。


ただ、三浦氏は「権力は「政治的中立」を判断できない」ため、政府による民主的統制をメディアに対して行うべきではなく、マーケットの中での競争によって不人気な番組やテレビ局を淘汰させることで、民意を報道に反映させるべきだと論じています。

権力は「政治的中立」を判断できない

話を言論の自由に戻しましょう。高市総務相の発言の問題の本質は、権力は「政治的中立」を判断できないという点にあります。百歩譲って裁判所が「中立性」の解釈者たりえたとしても、行政が判断権者である時点でその判断こそが中立性を欠いているのです。大臣は原理的に不可能なことを仰っている。それは、厳密な意味では放送法の規定自体が間違っているということです。日本の行政は「間違い」を改められないという掟をもっていますから、長らくこれは倫理規定であると解釈してごまかしてきたわけです。

そこに、法の原理に対する表層的な理解をもった政治家が現れ、法律を字句どおりに解釈することで影響力を発揮しようとした、というのが一連の発言の本質です。しかし、高市総務相が自民党の政治家として特異な考え方を持っているとは思いません。保守政権の中で頭角を現すための、忠誠心競争に気を取られている傾向はあるのかもしれませんが。

そこにはあるのは、法の原理よりも統治者としての倫理を重視する発想です。現に、高市大臣は「私の時に(電波停止を)するとは思わないが、実際に使われるか使われないかは、その時の大臣が判断する」と言っています。徳のある倫理的な指導者として振る舞う「お上」による「さじ加減」に基づく人治・徳治の発想です。

もちろん、自民党の支持者の中にも、国民一般にも、そのような発想を受け入れる土壌が存在します。民主主義という制度が、政策の方向付けを国民の集合的な判断に委ねている以上、その判断が原則によって行われるのか、倫理によって行われるのかを問うことはできません。日本には中庸の道徳の伝統もあれば、喧嘩両成敗の知的DNAもあります。メディアが、とってつけたように政治問題について賛成と反対の立場を紹介するのは、サラリーマン的な事なかれ主義でもあるけれど、日本的な倫理的発想にも沿っているのです。


政治主導に不可欠なもの

したがって主権者である国民がどのような判断軸によって政治的意思を表明するかについて規定することは難しい。しかし、政治主導の暴走を避けつつ、適切に機能させるための仕組み作りを担うのはプロの責任です。

誤解のないように申し上げますが、私は、政治が介入する領域が拡大することそのものに反対ではありません。今日の世界にあって、個々の「ムラ社会」の掟に従って社会を運営することはできないからです。したがって、中選挙区制に戻すべきという懐古主義には与しません。また、知識人や専門家の意見がより尊重される「知性主義」を万能視する立場にも反対です。知性を尊重しない社会は不幸ではあるけれど、知性を主張する側に知性が備わっているのかという観点も重要だからです。

しかし同時に、私企業や、公共放送に対してすら、マーケットの中での競争(=視聴率やコアなファン層形成をめぐる)を超えて、民主的統制を、政府や国会を通じてやるべきだとは思っていません。なぜなら、大衆の集合的な意思をすべてに押し付ければ多様性はなくなり、尖った番組も作れなくなるし、カレーライスに激辛もスパイス風味もなくなり、すべてがマイルドなお子ちゃま味になってしまうようなものだからです。不人気な番組やTV局は競争の中で淘汰されるべきであって、それが正しい民意の反映のさせ方なのです。


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この意見を読んで僕が思ったのは、それならばテレビ局は電波帯域の周波数オークションを受け入れるべきではないかということです。

今の放送用電波帯域は、総務省の裁量によってテレビ局に割り当てられています。しかし、政府や官僚の裁量によって割り当てられた帯域は、裁量によって取り上げられる可能性を否定できません。高市総務相の発言はその可能性をほのめかしたものであり、それだけでもテレビ局に対する脅しとしての効果を持ってしまいます。だから、これだけ問題視されているわけです。だから、この問題の本当の原因は裁量による電波帯域の割り当てそのものでしょう。


この総務省による裁量を排除するためには、電波帯域を周波数オークション(公開入札)によって分配するのが良い方法です。テレビ局は公開入札によって、電波帯域の利用権をを期限付きで「買い取り」ます。その結果、電波帯域利用権は財産としての価値を持ちますから、もし政府が裁量によって「停波=電波帯域利用権の取り上げ」をするなら、それは財産権の侵害であり、テレビ局は巨額の損害賠償訴訟を起こすことができるでしょう。従って、政府はそのような訴訟を起こされることを恐れて、停波の可能性を口にすることも難しくなるでしょう。

もちろん、周波数オークションを導入すると、テレビ局は多額の電波使用料を政府に支払わなければなりません。それはテレビ局の経営悪化要因ですが、逆にそのことがテレビ局に利益を上げる必要性を認識させ、より視聴者の支持を得られる番組作りを促進することになるでしょう。また、コストばかりかかって人気がない番組を作る余裕はなくなりますから、テレビ局の経営も効率化されるでしょう。それができないテレビ局は、電波オークションで放送用の帯域を落札できなくなり、倒産や吸収合併を余儀なくされるでしょう。あるいはネット企業など異業種企業の傘下に入ることで資金を確保して、帯域を落札することも考えられます。このようなことを通じて、メディア業界はマーケットにおける競争に晒され、政府を通さずに民意が反映されるようになります。


ここで懸念されるのは、弱体化したとはいえ「ムラ社会」であるメディア業界が、「ヤミ談合」によって入札者や入札価格を操作して、電波使用料を抑えようとする可能性です。ただそれを行うと、停波の際に要求できる損害賠償額も少なくなりますから、政府は訴訟を恐れることなく停波の可能性をちらつかせ、メディアへの介入を強めるでしょう。従って、そのような「ヤミ談合」はメディア自身の首を絞める結果となります。


これまで日本の様々な領域にあった「ムラ社会」が弱体化し、「政治化される領域」が広がっていくのは、国民の要求によるものですから、この流れは変わらないでしょう。ただ、それによってメディアへの政治介入が強まるのは、悪い副作用だと思います。それを避けるためには、メディア業界がマーケットによる競争を受け入れ、政府ではなくマーケットによって民意が反映される報道機関になることが必要でしょう。周波数オークションはそのために不可欠な道具です。だから、テレビ局が報道の自由を守りたいのならば、周波数オークションを受け入れなければならないと思います。

メディア業界が掲げているリベラルな価値観は間違っていません。ただ、その価値観で閉鎖的な「ムラ社会」を支えてきたことに問題があったのでしょう。すでに「ムラ社会」の維持が困難になっているのですから、報道の自由を守りたいのならば、メディア業界はマーケットに身を委ねて、その結果を受け入れるべきです。周波数オークションの受け入れは、メディア業界が本当に「ムラ社会」を抜け出して、報道の自由を守る気があるのかどうかを判断する、リトマス試験紙となるのではないでしょうか。

2016-01-10

なぜ中国の経済危機が起こったのか

00:34 | なぜ中国の経済危機が起こったのかを含むブックマーク

昨年以来、中国では株価の暴落が繰り返されています。今年になってからも暴落が発生し、今年から導入したサーキットブレーカーが2度も発動されたため、慌ててサーキットブレーカーを停止するなど、市場の混乱が続いています。その影響は世界中に波及し、先進各国の株式市場も株安になっています。

このような混乱がなぜ起こっているのかを知りたくて、ここ数日、内外の様々な記事を読んでいましたが、十分納得できるものがなかなかありませんでした。その中で唯一納得できたのが、なんと夕刊フジの田村秀男氏の記事でした。

 年明け早々から株式市場はチャイナ・リスクで大荒れである。世界最大水準の中国債務は今後さらに膨らむ情勢なのだから、不安がグローバルに伝播してしまう。

 「中国、今年は改革の正念場に」(米ウォールストリート・ジャーナル1月4日付)であることには違いないが、習近平政権にとってはそれどころではない。

 中国金融のどん詰まりぶりを端的に物語るのは、中国人民銀行による人民元資金発行残高である。昨年後半から急減している。前年比マイナスは実に16年ぶりだ。

 人民銀行は2008年9月のリーマン・ショック後、元の増発に増発を重ね、国有商業銀行を通じて資金を地方政府や国有企業に流してきた。大半は不動産開発など固定資産投資に向けられ、国内総生産(GDP)の2ケタ成長を実現した。その結果、10年にはGDP規模で日本を抜き去ったばかりか、党中央は豊富な資金を背景に軍拡にもいそしんできた。東シナ海、南シナ海などでの海洋進出はマネーが支えてきた。党の意のままにできる元資金こそが「超大国中国」の原動力だ。

 元膨張を支えてきたのはドルである。リーマン後の米連邦準備制度理事会(FRB)によるドルの増発(量的緩和=QE)に合わせて、人民銀行が元を刷る。グラフはQE開始後、元資金のドル換算値がドル資金発行増加額とほぼ一致していることを示す。偶然にしては、でき過ぎの感ありだ。

 人民銀行は自らが定める基準レートで流入するドルをことごとく買い上げては元を発行する。買ったドルはゴールドマン・サックス、シティ・グループなど米金融資本大手に委託して米国債で運用するのだから、北京とウォール街の間には何らかの合意があったとしてもおかしくない。

 ところが、FRBは米景気の回復に合わせて14年初めごろから、世界に流れ出た余剰ドルの回収の模索を始めた。QEを14年10月末で打ち切った。さらに先月下旬には利上げした。バブル化していた中国の不動産市況は14年初めに急落、次いで上海株も15年6月に暴落した。

 中国からの資本逃避に拍車がかかり、人民銀行は外貨準備を取り崩して元を買い上げ、暴落を食い止める。それでも売り圧力は高まるばかりだ。元の先安予想がさらに上海株売りなどによる資本流出を助長する。


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【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK 【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK 【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK

実はこの記事で一番重要だと思ったのは、人民元とドルの資金発行量増価額を示したグラフでした。リーマンショック以降、中国がドルに合わせて人民元発行を増やしてきたことがよく分かります。つまり中国は人民元をドルにペッグしていたことになります。この人民元の膨張こそが、ここ数年の中国経済発展の理由でしょう。

実は1980年台後半の日本のバブル景気も、日銀による金融緩和の結果でした。ここ数年、中国経済がバブルではないかと言われてきましたが、そのバブルの理由もこの人民元膨張だったのでしょう。

しかし、昨年に入ってFRBは利上げを模索するようになり、昨年末には利上げが行われました。そのためにドルの発行量増加は止まり、中国もそれに合わせて人民元の増加を止めることになりました。昨年、中国で株価が大幅下落してバブルが崩壊したのはそのためでしょう。日本のバブル崩壊も、日銀による金融引き締めが引き金になっています。

さらに中国ではインフレ率が低下し、経済成長率も下落しています。


その対策として、昨年8月、中国は人民元の切り下げを行いました。為替介入で人民元のレートを維持すると、金融緩和しても効果がなくなるので、これは経済学の教科書通りの政策です。

しかし、その結果資本流出が起こり、資本逃避の懸念が増してしまいました。そして今年の株安も人民元安と連動しています。

中国の通貨、人民元の対ドル相場が下げ止まらず、世界の金融市場を揺さぶっている。急激な元安は中国からの資本流出を招き、同国経済を一段と下押ししかねないとの懸念が広がっているからだ。7日の世界市場では株価が大幅に下落し、原油価格はリーマン危機後の安値を下回った。米国の追加利上げが予想されるなか、元安に歯止めがかかる兆しはない。


人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞 人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞 人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞



このように人民元の下落は景気を刺激するどころか、資本流出を招いて逆効果になっています。これはなぜでしょうか。

FRBがドルの発行量を増やしている間は、中国はドルに合わせて人民元を増やすことで、景気を刺激することができました。しかし、FRBがドルの発行を増やさなくなると、中国が人民元の発行を増やすためには、人民元を切り下げなければなりません。

しかし、中国経済は外資を取り入れることでここまで成長してきました。外資はドルの資金量、つまりFRBの金融政策によって増減しますから、中国が金融緩和しても外資に影響を与えることはできません。もともとFRBのQE終了と利上げで外資の引き上げが始まっていたところで、人民元を切り下げたため、さらに外資の流出を加速させてしまったのでしょう。これが今回の中国の経済混乱のメカニズムだと思います。


このような資金流出を恐れて、今後中国は人民元の切り下げには慎重になるでしょう。ただ、そうなると金融緩和もできなくなり、中国は財政政策や構造改革で景気を回復させようとするでしょう。

昨年末、実際にこのような報道がありました。

中国は、景気支援に向け、金融政策に柔軟性を持たせる一方、財政出動を拡大する。2016年の経済政策の優先課題を話し合う中央経済工作会議の決定事項を国営メディアが報じた。

発表された声明は「積極的な財政政策を強化し、穏健な金融政策を一段と柔軟にすることが必要」と表明。

財政赤字の比率を緩やかに引き上げるとともに、企業の負担軽減に向けた減税を行なうとした。

来年の成長率を「妥当な範囲」に維持するとしたが、詳細には言及しなかった。

政府はまた、インフラ向け支出を拡大するほか、低迷する不動産市場を下支えるため、住宅購入に伴う規制を緩和する。

<サプライサイドの改革>

中央経済工作会議では、新たな成長のけん引役の育成を支援するため「サプライサイドの改革」を推進し、過剰生産能力の削減や不動産の在庫の調整に取り組むとした。

関係筋によると、政府はサプライサイドの改革を推進する一方、需要の押し上げに向けた措置を講じる。

「構造改革の断行には、一定の成長率の維持が必要」という。

関係筋はまた、中国、および世界経済は急激な落ち込みから低成長が長期間続く「L字型」回復となる見込みのため、「需要サイドの政策だけでは、景気支援は不可能」と語った。

また金融リスクへの対応をさらに進め、地方政府の債務リスクを効果的に抑制するとしている。

来年の経済政策ではデレバレッジを重視する方針も示した。


中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters 中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters 中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters

中国の政府当局者は欧米諸国がここ数年ほとんど役立ててこなかった政策を試そうとしている。国内のサプライサイド(供給側)を重視する経済改革だ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のリンリン・ウェイ記者(北京在勤)は、中国政府が公表した2016年の同国経済の青写真には減税計画が含まれ、財政支出の拡大を押し進めた従来政策からの方針転換をうかがわせていると指摘する。青写真は企業のコスト負担引き下げも視野に入れている。


中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ 中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ 中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ


しかし、「穏健な金融政策」というのは、実際にはかつての日銀のような、"too littile, too late"な金融政策になるでしょう。経済成長が低迷し続ければ、いずれ財政政策も続けられなくなり、逆に増税などの財政緊縮に走ることになるでしょう。そしてサプライサイドの「構造改革」は、デフレやディスインフレの不況に対しては効果がありません。

かつて日本はこのような組み合わせの経済政策を行い、「失われた20年」を招いてしまいました。どうやら中国もその轍を踏みそうな状況です。

ただ、日本はアベノミクスで大規模な「異次元緩和」を行っても、外資の流出を心配する必要はありませんでした。日本の投資は、日本国内の資本で賄われていたからです。日本がこのような間違った経済政策をしてしまったのは、単に財務省、日銀、経済学会などの専門家が間違った理論を信じていたことと、財務省が財政危機を煽ることで利益を得る構造を作り出してしまったからでした。

しかし、中国は外資流出という実害があるために、金融緩和に踏み切ることができません。中国の経済専門家は正しい経済理論を使っても、問題を解決することができないのです。従って中国の経済問題は、日本以上に解決が困難でしょう。


今後、中国はかつての日本のようなデフレ不況に陥ると思います。しかも日本と違い、そこから抜け出す道はありません。中国はこのまま衰退し、「21世紀のアルゼンチン」となってしまうのかもしれません。

ただ、中国共産党がそれを座視することはないでしょう。経済政策で抜け道がないのならば、間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います。そのような行動は、東アジアに安全保障上の危機を起こすでしょう。

日本はバブル崩壊から7年後に深刻な経済危機に陥りました。中国も同じペースで経済的に衰退するのであれば、2020年代前半には深刻な経済危機に陥るのでしょう。ちょうどその頃、今の習近平体制は政権交代の時期を迎えます。これまでと今後の中国の軍拡を考えると、中国で政治的な混乱と経済的な混乱が同時に起こるこの時期に、太平洋戦争にも匹敵する東アジアの危機が起こるのではないかと、僕は懸念しています。

投資家投資家 2016/01/11 09:41 中国の潜在成長率がどれくらいあるのかが鍵を握ると思いますね。潜在成長率が低ければ、財政乗数も貨幣乗数も低くなりますが、高ければ巨額の外貨準備を使って対策を取れば回復できると見ています。


「潜在成長率は、均衡実質金利もしくは自然利子率(natural rate of interest)の代理変数として、政策金利の水準評価に用いられる場合もある3。長い目でみた実物投資のリターンは、中長期的に持続可能な成長率と概ね等しくなると考えられる。したがって、理論的には、実際の実質金利が均衡実質金利を上回れ(下回れ)ば、景気に抑制的(刺激的)に働いて、需給ギャップのマイナス(プラス)方向への動きを促すことになる(IS曲線)。」
潜在成長率の各種推計法と留意点
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2009/data/rev09j13.pdf

9999 2016/01/11 09:53 中低所得者の減税をすれば全て解決すると思うのですが。
そもそもGDPに占める投資の割合が高すぎる
それを消費を増やすことで解決すれば良いのです

いるかいるか 2016/01/11 13:27 最後の「経済政策で抜け道がないのならば、間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います」という点がどういうことなのかよく分かりません。そうなった場合、具体的にどういう軍事的方法を用いれば経済危機を乗り切ってくると想定しているのでしょうか。
私の拙い頭では、尖閣・南シナ海・インドを攻めたところで…とイメージが広がらず、せいぜい国内の暴動デモの鎮圧くらいと思ってしまいます。でもそれは今までの体制維持の方法と同じと考えこんでしまいます。

hat_24ckghat_24ckg 2016/01/11 15:34 中国の苦境は日本など国外にあり、この脅威を除かねばならない、と言い張り始めて国民のガス抜きをするということですね。
それで苦境から逃れられるかもしれない、と中国国民が騙されれば御の字と。ありそうなのが嫌でたまりませんが、手をこまねいてばかりもいられない…
はたして、日本にどういう対応ができるでしょうか。ここで書かれているような分析を提示して、無理をするなと言ってやるのが存外良いのかもしれませんね。

BaatarismBaatarism 2016/01/11 17:09 >投資家さん
中国の成長率を論じる場合、まず「ルイスの転換点」(安価な余剰労働力が枯渇して、賃金上昇が引き起こされる時点)を考えなければいけないと思います。
すでに中国はこの点を超えたという見方が多いので、今後は潜在成長率も低くなると思います。

>99さん
減税も財政政策なので、金融政策なしでは経済成長への効果が打ち消されてしまいます。(マンデル・フレミングモデル)
経済成長がなければ結局増税になってしまうので、解決策になるかは疑問です。

>いるかさん、hat_24ckgさん
この点は誤解させる書き方だったと思います。
「間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います」と書きましたが、その間違いを国民には正しいと信じ込ませてしまうようなことを考えています。具体的な例で言えば、日本による満州事変のような状況でしょうか。あの時は、満州への進出が経済問題の解決策だと信じられていました。
具体的な地域としては、台湾が焦点になるでしょう。経済成長が続いているうちは軍拡を続けて、いずれは台湾を「取り戻す」展望も持てるでしょうが、経済成長がなくなるとその展望もなくなってきます。そのためまだ可能性があるうちに台湾周辺(南西諸島も含まれる)で軍事行動を起こそうとして、アメリカや日本と衝突する状況です。その過程で、中国による韓国取り込みもありえるでしょう。
台湾だけではなく日本の資本を取り込むために、日本を軍事的に屈服させることも考えるかもしれません。これは誇大妄想だと思いますが、歴史的にはそのような誇大妄想で戦争が起こったことも多いですから。日本もかつては東アジアの覇権を握るという誇大妄想を抱いて戦争しましたから。

投資家投資家 2016/01/11 21:49 市場メカニズムが万能ではないにせよ、市場メカニズムを無視すればいずれ破綻する好例ですね。
固定相場によって国際金融のトリレンマに陥り、過度なサーキットブレーカーによって株価急落を招く。いずれも市場メカニズムの重要性が分かってないってことですね。
まぁ政変がない限りは日本より成長すると思いますけど、生産性を上げるための構造改革は不可欠でしょうね。言うまでもなく、改革の本丸は共産主義の放棄なわけですが。笑

mtagmtag 2016/01/11 21:49 中国の場合には、中国という国という理解をしていると判断を誤ります。軍区レベルで別の国が連合して活動しているという理解をすると、軍事的に動く軍区と、あくまで経済的に動く軍区と分けて考える必要があります。いわゆる上海閥と太子党との軋轢もこの流れの中にいます。北朝鮮の水爆とかもこの流れの中で考える必要があります。
上海は近代国家として生きていきたいし、内陸はそれではやってられないし、北京はそのバランスをどうするか考えているし、東北部は北京とくっついていてよいかを探っているし、カオスな状況ですね。
石原莞爾が正しかったかどうかはともかく、一国として統制をするために無理を重ねているのが今の中国でしょう。その結果として、暴走する軍部が現れるのは時間の問題だと思います。

BaatarismBaatarism 2016/01/11 23:51 >投資家さん
多くの人たちが参加して作り上げる経済には、やはり法則性があるのだと思います。現在の経済学がその全てを解き明かしているわけではないですが、その法則は厳然として存在し、それに反する政策は失敗するのでしょうね。
中国の「構造改革」はサプライサイドではなく、まず台湾や韓国の民主化を見習うべきでしょう。ルイスの転換点を超えた経済は、需要が多様化して、開発独裁体制ではそれに応じることができなくなります。人々がアニマルスピリッツを持って試行錯誤して需要のありかを見つけ出すためには、人々の自由な考えや行動を自由を認める政治体制が必要でしょう。

>mtagさん
その軍区を習近平が解体しようとしています。この改革を成し遂げて、中国が一枚岩の軍事体制を構築できるかどうかも、注目すべきですね。

THTH 2016/01/12 21:37 >中国経済は外資を取り入れることでここまで成長してきました

中国が3兆ドルを超える外貨準備を持つ事を考慮しても、外資の資本流出は問題となるのでしょうか。よろしければお考えをお聞かせいただければと存じます。

BaatarismBaatarism 2016/01/12 22:57 >THさん
この場合、客観的に見て資本流出がどれだけ問題かよりも、中国政府が資本流出をどれだけ問題だと考えているかが重要になると思います。政府の経済政策に影響を与えるのは、政府の経済認識ですから。

そして昨年からの中国政府のなりふり構わぬ資本流出防止策を見ていると、資本流出を非常に重大視していると思います。銀聯カードの引き出し限度額規制をやった時は、正直「そこまでやるか?」と思いました。

中国人“爆買い”にブレーキ? 大人気のカードに引き出し制限、幹部の資金流出を牽制か
http://www.sankei.com/world/news/151001/wor1510010029-n1.html

外貨準備も12月だけで1000億ドル減少してますから、3.3兆ドルの外貨準備があってもこのペースが続くと3年も持ちません。

中国外貨準備は12月末3.33兆ドル、減少幅が月間・年間とも過去最大
http://jp.reuters.com/article/china-dec-idJPKBN0UL0VO20160107

このようなことから考えて、中国政府が外資流出を非常に深刻に捉えていて、それが金融政策に影響を与えているのではないかと思います。