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2014-07-05

やはり消費を激減させていた消費税増税

23:59 | やはり消費を激減させていた消費税増税を含むブックマーク

消費税増税直前に思うこと - Baatarismの溜息通信 消費税増税直前に思うこと - Baatarismの溜息通信 消費税増税直前に思うこと - Baatarismの溜息通信


消費税増税前にも、僕はそれを懸念する記事を書きましたが、やはりその懸念は当たっていたようです。


株式市場・労働市場が比較的堅調であることから忘れられがちだけど...消費の現場に近い人ほど6月に入って景気に急速に暗雲が立ちこめてきていると言う.今月の家計調査を見るとかなり心配な結果になっているみたい.

 そこで,ちょっと前回の増税と今回の増税の違いをまとめてみた.


まずはデータから


 ここでは家計調査の家計消費水準指数を使おう.ニュースなどで見る家計支出額等だと世帯人員数や物価の変化が混在しているので(それでも以下の傾向はほぼまんま維持される),これらの調整を行った指数値の方が実態を反映していると考えるからだ.

 増税の半年前から増税後1年間の消費動向を見ると...


f:id:Yasuyuki-Iida:20140628114505p:image


となっており,今次の増税の影響は過去の比を見ないものだとわかるだろう.ここまで極端な下振れを想定内だという論理が僕には分からない.


(中略)


これまでの消費増税と今回の消費増税は全然違う


 なぜこんなにも今次の増税の影響は大きいのだろう.一昨年来,それこそ政権交代前から繰り返してきたとおり,89年増税の際は物品税の廃止や所得・資産課税減税でマクロではむしろ減税が行われている.97年増税も同時に所得・住民税減税が行われ,これに社会保障給付の増大を含めると増税分と減収分はほぼ同じ.

 これに対して,今回の増税は純然たる増税! その影響は当然大きく異なる.経済学好き向けに言うと,これまでの消費増税は代替効果だけ.今回はそれに(負の)所得効果が乗っているんだ.増税の影響を前回と同じ程度にとどめるためには,デフレ脱却が達成され,一般世帯の所得上昇が明確になってからでないといけなかったはず...

 今年4月の消費増税は現時点でのデータからは失敗だとしか判断できない.7月に消費動向の急激な回復がおきる可能性は否定できないが,その可能性は薄いだろう.


消費増税後の消費動向 / 2014-06-28 - こら!たまには研究しろ!! 消費増税後の消費動向 / 2014-06-28 - こら!たまには研究しろ!! 消費増税後の消費動向 / 2014-06-28 - こら!たまには研究しろ!!


総務省が27日に発表した5月の家計調査で、ちょっとびっくりするような数字が出た。

マスコミ報道では、「1世帯当たりの消費支出(2人以上世帯)は27万1411円で、物価変動を除いた実質で前年同月比8.0%減った。減少幅は4月の4.6%から拡大した」「家計調査の実質消費は、東日本大震災があった2011年3月(8.2%減)以来の落ち込みだった」と書かれている。

ちょっと長めのデータを見てみよう。それには、家計調査にある「消費水準指数」がいい。これは、1世帯当たりの実質消費と似ているが、消費支出から世帯規模(人員)、1か月の日数及び物価水準の変動の影響を取り除いて計算した指数で、家計消費の面から世帯の生活水準をより的確に把握することができるものだ。

5月の消費水準指数の対前年同月比は▲7.8%と、たしかに東日本大震災があった2011年3月の▲8.1%以来の落ち込みなのだが、下図からわかるように、最近33年間における最悪が2011年3月なので、なんと2番目に悪い数字なのだ。

駆け込み需要の反動減が出るのはわかっていたので、4月の▲4.5%には驚かなかった。しかし、5月が4月よりこれほど悪くなるとは、驚いたわけだ。

まあ、3月が7.4%と過去33年間で最も高かったから、その反動減で悪くなったと説明できればいいのだが、以下に述べるように、そうは問屋が卸さない。


(中略)


政府は、この数字でもまだ楽観的だ。

甘利明経済財政・再生相は27日の閣議後の記者会見で「基調としては消費も回復に向かっていると判断していい」と発言している。事務方は、もう少し数字をきちんと説明したほうがいい。総務省も「想定の範囲内の動き」というが、何を想定していたのか、前に明らかにしていないので、なんとでも言える。このような言い方の時は危ないと思ったほうがいい。

まず、消費税増税の影響であるのは間違いないので、前の増税時と比べてみよう。以下の図は、筆者が講演などで消費税の影響を説明するときに使うものだ。増税は過去2回、1989年増税(創設時、つまり0%→3%の増税)、1997年増税(3%→5%)なので、その前後1年で経済指標の推移を書いたものだ。数字はGDPや消費などの前年同期比を取っているが、本コラムでは消費水準指数の前年同月比とする。


http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/b/9/550/img_b9d56142d933a96749ecaa8a1a3e7d3793335.jpg


1989年と1997年を見ると、それぞれ4月の増税後6か月ぐらいは似たような景気動向で、消費税増税の影響はあまり現れていない。しかし、6か月を過ぎるあたりから両者の景気動向に差がつき始める。1年後になると、89年増税時と97年増税時では大きな差がついた。

この理由はまず、89年は景気が良かったこと、97年はそれほどでもなかったことだ。消費税以外の税では、89年は減税もあったこと、97年ではならしてみると、増税減税ニュートラルだったことなどで、89年は消費税増税の影響は97年より少なかった。

それが今回は、図からわかるように、増税後の2か月で89年と97年を大きく下回っているのだ。2か月だけみると、今回の下げは異常に大きい。


過去33年でワースト2!消費税増税がもたらした急激な消費落ち込みに政府は手を打てるか 過去33年でワースト2!消費税増税がもたらした急激な消費落ち込みに政府は手を打てるか 過去33年でワースト2!消費税増税がもたらした急激な消費落ち込みに政府は手を打てるか


このように飯田泰之氏も高橋洋一氏も、今回の消費税増税による消費の減少は、1997年の消費税増税以上に悪いものだという意見です。その原因についても、1997年の時は所得・住民税減税や給付の増大があったのに対し、今回はそれがない純然たる増税であることで一致しています。

この消費減少は、ある程度のタイムラグを置いて経済成長率や雇用にも影響を及ぼすでしょう。昨年の金融緩和やインフレターゲット導入によって実現したアベノミクス好況も、消費税増税によって大きなダメージを受けることは確実だと思います。

これを避けるためには、年末に決定する予定の消費税10%への増税を見送るだけではなく、1997年のような所得・住民税減税や給付金の支給で、8%への増税を相殺することも必要でしょう。しかし、安倍政権は法人税減税には積極的ですが、消費税増税による消費減少を食い止めるための所得・住民税減税、給付金支給については発言すらしていません。

このままではアベノミクスは大きな危機を迎えるでしょう。すでに集団的自衛権の問題で安倍政権の支持率は下がっていますが*1、経済政策が失敗すれば、安倍政権の支持率は底抜けしかねません。


やはり安倍総理は、財務省の歳出権を確保するための消費税増税には応じてはいけないのだと思います。そのために自民党内の親財務省派と対決する必要があるならば、衆院解散してでも彼らを押さえつけるべきでしょう。そこまでの覚悟がなければ、財務省が悲願としている消費税増税を撤回することなどできないと思います。

*1:ただ、僕自身は日本が集団的自衛権を保持することは支持しています。朝鮮半島、台湾海峡、南シナ海の危機が懸念される状況では、これらの地域で当事国の要請によりアメリカと共に軍事行動するオプションは確保しておくべきだと考えています。

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2014-05-11

ブラック企業の温床である「サドマネタリズム」と「サドファイナンス」

00:18 | ブラック企業の温床である「サドマネタリズム」と「サドファイナンス」を含むブックマーク

最近、労働者に長時間労働やサービス残業、薄給などを強いている、いわゆる「ブラック企業」の苦境を伝えるニュースが目立ちます。

牛丼チェーン大手「すき家」の店舗が次々と閉店している、などとネットで騒ぎになっている。ツイッターや掲示板には閉店情報と閉店した店舗の写真がアップされていて、店の入り口には「従業員不足に伴い、一時的に閉店させていただきます」などといった張り紙が出ている。

どうやら従業員が2014年2月下旬以降に大量に辞めたことが原因のようで、掲示板「2ちゃんねる」のすき家クルー(従業員)専用スレには従業員と思われる人たちの「みんな辞めるなら俺も辞めたい」「まじで同時退職しようぜ」といった呼びかけが出ていた。


「すき家の春の閉店祭り始まったぞw」「閉店理由がシュール」などとネットが騒がしくなったのは14年3月中旬から。ツイッターや掲示板で閉店店舗の写真が次々にアップされていった。この閉店はゼンショーの業績悪化のためとか不採算店舗、ということではないらしい。入口の張り紙には「機器のメンテナンスのため」「リニューアルのため」などと書かれていて「一時的な閉店」を強調している。特に目立っていたのが「従業員不足」という張り紙だった。

実は、14年2月下旬からネットの掲示板などに「忙しすぎてやってられない」「もう辞めたい」などといった従業員と思われる人たちの書き込みが増えていった。その理由は14年2月14日から始めた「牛すき鍋定食」といった鍋メニューの販売で、このメニューを提供するのに時間と手間がかかりすぎる、というもの。ただでさえ他の牛丼チェーンに比べメニューの多い「すき家」だから、厨房が回らなくなっているというものだ。

掲示板「2ちゃんねる」には従業員専用のスレが立っていて、一人でオペレーションする店が多すぎる、とか、深夜帯は仕事が多すぎて処理できないことがある、人手不足が深刻で当日欠勤はまず不可能、強盗が一番入りやすい店、などの問題点が書き込まれている。そうした厳しい環境なのに手間のかかる鍋メニューが加わったとして、経営者や商品開発担当に対する批判が噴出した。


牛丼「すき家」店舗が次々と『人手不足閉店』 新メニュー「鍋定食」に従業員が憤慨? ネットに「やってられん!」の声 : J-CASTニュース 牛丼「すき家」店舗が次々と『人手不足閉店』 新メニュー「鍋定食」に従業員が憤慨? ネットに「やってられん!」の声 : J-CASTニュース 牛丼「すき家」店舗が次々と『人手不足閉店』 新メニュー「鍋定食」に従業員が憤慨? ネットに「やってられん!」の声 : J-CASTニュース

 牛丼チェーン大手「すき家」が人手不足で苦しんでいる。店舗リニューアルのために3月中旬から一時閉店させていた100店以上が、店舗従業員などが集まらず開店できずにいることが、28日までに分かった。

 すき家を運営するゼンショー広報部によると、3月中旬から改装のため167店舗を随時閉店。4月下旬までにそれぞれ開店を目指していた。しかし、現在まで開店できたのは数店舗で、百数十店舗が閉店したままだ。担当者は、「5月中に開けられる店舗を調整しているところですが、5月末までに開けられない店舗も出てきそう」と話す。

 リニューアルするにあたり、強盗などに狙われやすい深夜に1人で営業する「ワンオペレーション」を解消しようと人員を増やす方向で募集をかけているが、希望者が思うように集まっていないという。担当者は、「例年、4月は求人に対して希望者が増えるのですが、今年は想定を下回っています。新卒(採用)の応募者も減っていますし」と頭を抱える。


すき屋 人手不足で新装開店できない - 社会ニュース : nikkansports.com すき屋 人手不足で新装開店できない - 社会ニュース : nikkansports.com すき屋 人手不足で新装開店できない - 社会ニュース : nikkansports.com

 ワタミの桑原豊社長は8日、決算発表の記者会見で、ことし4月に入社した新卒社員は120人で目標の半分にとどまったことを明らかにした。桑原社長は「深刻な人手不足という外的環境の変化があった。われわれの成長戦略が曲がり角に来ている」と語った。

 ワタミでは長時間労働の問題が指摘されており、採用が苦戦した一因になった可能性もある。

 ワタミが設置した有識者による業務改革検討委員会は「所定労働時間を超える長時間労働が慢性化している」と指摘した報告書をまとめた。正社員やアルバイトの確保も難しくなっており、桑原社長は「労働環境の改善を最優先で進める」と述べた。

 今後の改善策は、2014年度中に60店舗を閉鎖し、従業員を他の店に振り分けて、1店舗当たりの従業員数を増やす。営業前などに実施している会議の時間は、これまでの年間約250時間から80時間程度に減らし、拘束時間を短くするという。

 また、人手不足を解消するため、転勤がない地域限定社員として6月以降、アルバイトからの登用などで100人を確保する計画も明らかにした。


ワタミ新卒社員、目標の半分 : 社会 : スポーツ報知 ワタミ新卒社員、目標の半分 : 社会 : スポーツ報知 ワタミ新卒社員、目標の半分 : 社会 : スポーツ報知


このように「すき家」を運営するゼンショーや、ワタミなど、代表的なブラック企業と言われていたところが、相次いで人手不足に陥っており、店舗を維持できない状況に追い込まれています。

また、同じようにブラック企業との噂があったユニクロ(ファーストリテイリング)は、従業員の正社員化を進める方針を打ち出し、人材確保のための待遇改善を目指しているようです。

 国内のユニクロ店舗に務めるパートタイマー、アルバイト約1万6000人を正社員として雇用する――。

 カジュアル衣料チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが現在、人事施策を大転換させていることが明らかになった。ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏が、本誌取材班のインタビューで打ち明けた。

 国内約850のユニクロ店舗では現在、約3万人のパートタイマーやアルバイトが勤務している。このうち、学生アルバイトなどのごく短期に務める従業員を除く、約1万6000人を正社員に転換する計画だ。

 これまでにも同社には、アルバイトやパートタイマーを正規社員として登用する仕組みはあった。かつて「パートタイマー5000人を正社員化」とぶち上げたこともある。だが従来の仕組みでは、正社員に転換した場合、フルタイムで勤務することが求められた。

 しかし今回の取り組みでは、子育てや介護といった多様な事情で、不規則な勤務時間でしか働けないような従業員に対しても正社員化の門戸を開き、多様な働き方を認めたままで待遇を正社員化する。既に今年3月初旬から正社員化に向けてパートタイマーやアルバイトの面談を始めており、今後2〜3年の間に移行を進めていく。


【特報】ユニクロ、パートとアルバイト1万6000人を正社員化:日経ビジネスオンライン 【特報】ユニクロ、パートとアルバイト1万6000人を正社員化:日経ビジネスオンライン 【特報】ユニクロ、パートとアルバイト1万6000人を正社員化:日経ビジネスオンライン


これらの記事にはなぜこのような動きが起こっているかという解説がないですが、これは明らかに安倍政権誕生や黒田日銀執行部発足以降のリフレ政策によって景気が回復し、雇用状況を改善させた結果でしょう。

高橋洋一氏がこの状況をまとめた記事を書いています。

 牛丼チェーンのすき家や居酒屋のワタミが人手不足のため一部閉店したり、ユニクロが従業員の正社員化を進めるなど、デフレ下で成長した企業で人手不足の影響が出たり、人材確保を急ぐケースが相次いでいる。

 人手不足によって生じる時給の上昇や正社員化は多くの人に良いことのはずであるが、一部メディアでは「企業が悲鳴」という形で報道されている。それらの報道では、人手不足や時給上昇の原因といえる「金融政策による景気回復」についてはほとんど触れないのも奇妙である。

 デフレ下では、モノの価格が低下していくので、名目賃金などのコストを低下させられる企業が相対的に強くなる。その場合、正規社員は賃下げをやりにくいので、非正規社員が多いほうが対応が容易だ。名目賃金のコスト低下を過度にやると、「ブラック企業」というありがたくない称号をもらうこともある。

 一方、マイルド(ゆるやかな)インフレ下では、コストの調整はそれほど難しくない。名目賃金を低下させる必要はなく、上げ幅の調整が中心となる。そして動かしにくい固定賃金ではなく、ボーナスや残業代などで柔軟に対応できるからだ。

 マイルドインフレ下で有利な企業は、正規社員が多く、社員のスキルを長期的に活用できるところだ。業績のアップは、ボーナスや残業代によって労働者にすぐ還元される。こうした現象は、かつての日本の高度成長期では当たり前の姿だった。それと全く同じことはありえないが、似たようなものだ。

 インフレ率2%になるまで、日銀は金融緩和を続けるというのであるから、人手不足は多くの業界にまで広がるはずだ。ただ、雇用は、景気に対して遅行する指標であるので、幅広い業界で人手不足を実感できるまでには少なくともあと1年を要するだろう。


【日本の解き方】悲鳴上げるデフレの勝ち組企業 正社員多い企業が有利な状況に (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK 【日本の解き方】悲鳴上げるデフレの勝ち組企業 正社員多い企業が有利な状況に (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK 【日本の解き方】悲鳴上げるデフレの勝ち組企業 正社員多い企業が有利な状況に (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK


ブラック企業と呼ばれる企業は、コストダウンを進めることでデフレに適応してきた企業です。特に外食や小売りといった業種では、人件費をカットすることでコストダウンを進める企業が、デフレ下で有利に競争を進めることができました。ゼンショー(すき家)、ワタミ、ファーストリテイリング(ユニクロ)などは、その代表と言って良いでしょう。

しかし、そのような企業はあまりにデフレに適応していたため、リフレ政策によってデフレ脱却が確実になると、生存の基盤を失います。今、すき家やワタミに起こっているのはまさにその状況でしょう。またブランド力のあるユニクロは、まだ余力のあるうちにいち早くインフレに適応しようとして、正社員化を進めているのでしょう。

このように、ブラック企業がはびこる温床となっていたのはデフレであり、そのデフレをもたらしていたのは、白川執行部までのかつての日銀でした。かつての日銀こそが「ブラック企業の元凶」だったと言っても良いでしょう。


さて、最近、ポール・クルーグマン氏が、デフレを招いたスウェーデン中銀の金融政策を「サドマネタリズム」と批判し、それに対してスウェーデン中銀は「日本とは違う」と反論しているそうです。

サドマネタリズム


スウェーデンがデフレにはまり込んだ件からは,よそ者のぼくらにも関連する教訓がいくつか得られる.

第一に,サドマネタリズムの力を実物で見せてくれてる.サドマネタリズムってのは,多くの金融当局が金利を上げたがってる欲求のことだ.上げる理由? なぜなら――エエからとにかく上げるんじゃい.2010年,スウェーデンの失業率はきわめて高くて,インフレ率は低かった〔参考〕.基本的なマクロ経済学でいけば,「いまは金利を上げるようなときじゃない」ってなったはずだ.ところが,スウェーデン国立銀行は先走って金利を上げた.なんで?

いま当局が言うには,金融の安定のためだったとか,高すぎる住宅価格と借り入れの恐れがあったためだったとかだそうだ.でも,当時言われてたのは,それとちがってたじゃんよ! スウェーデン国立銀行総裁ステファン・イングベスは,2010年12月に同銀行のウェブサイトでオンラインチャットをやった.そこで彼はこう発言してる――金利を上げるのは,インフレの問題なんだって:「金利をいま上げなかったら,この先,高すぎるインフレが生じるリスクを冒すことになります.それは,経済にとっていいことではありません.我々の最重要課題は,インフレ率2パーセント目標を達成することにあります」

奇妙な言い分だ.インフレ率が目標を下回りはじめたときにも,スウェーデン国立銀行は金利を上げ続けて,その後,正当化を金融の安定に切り替えた.


ポール・クルーグマン「スウェーデン国立銀行のおかげでスウェーデンは罠にはまった」 ― 経済学101 ポール・クルーグマン「スウェーデン国立銀行のおかげでスウェーデンは罠にはまった」 ― 経済学101 ポール・クルーグマン「スウェーデン国立銀行のおかげでスウェーデンは罠にはまった」 ― 経済学101

  4月24日(ブルームバーグ):スウェーデン人はポール・クルーグマン氏にノーベル経済学賞を授与したことを悔やんでいるかもしれない。きっかけは、プリンストン大学教授(経済学)で、米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニストでもあるクルーグマン氏の21日付のコラム記事。

クルーグマン氏はその中で、スウェーデン中央銀行による2010年と11年の利上げが、日本経済をまひさせたようなデフレ・スパイラルを招いたと批判。低インフレ、高失業率の中でも低金利や金融緩和を直感的に嫌悪するものだとして、同中銀の金融政策運営を「サドマネタリズム」と断じた。

これにかみついたのがスウェーデン中銀当局者だ。セシリア・スキングスレー副総裁は23日、同国南部ハルムスタッドでクルーグマン氏の指摘について、「日本との比較には驚いた」と述べるとともに、「日本とは類似点よりも相違点の方がずっと大きい」と反論した。


クルーグマン氏にかみつくスウェーデン中銀-「日本とは違う」 - Bloomberg クルーグマン氏にかみつくスウェーデン中銀-「日本とは違う」 - Bloomberg クルーグマン氏にかみつくスウェーデン中銀-「日本とは違う」 - Bloomberg


このように対立している両者ですが、かつての(白川執行部までの)日銀の金融政策が「サドマネタリズム」であるということについては、共通の了解が得られているようです。日本で言われている「シバキ主義」と同様の意味なのでしょう。

先に述べたブラック企業の行動は、従業員に対する嗜虐(サディズム)とも解釈できますから、その元凶であるかつての日銀を「サドマネタリズム」と呼ぶことも、間違いでないと思います。デフレの間は、従業員をシバく企業ほど、競争を優位に進めることができた訳ですから。


ただ、ここでブラック企業の隆盛が終わったと判断するのは、まだ甘いと思います。なぜなら「サドマネタリズム」であったかつての日銀には、増税で国民をシバく財務省という、いわば「サドファイナンス」とも呼ぶべき協力者がいたからです。その財務省は財政再建や社会保障を名目にしながら、自らの「歳出権」を確保するための消費税増税を強行しました。

 ではなぜ、財務省は増税を指向するのか。それは、予算での「歳出権」の最大化を求めているからだ。予算上、増税は歳入を増やし結果として歳出を増やす。さらに、歳入は見積もりであるが、歳出権は国会の議決で決めるのが重要だ。実際の税収が予算を下回ったとしても、国債発行額が増えるだけで、歳出権が減ることはない。この歳出権は各省に配分されるが、それが大きければ大きいほど財務省の権益は大きくなる。このため、財務省が歳出権の最大化を求めるのは官僚機構として当然となる。


参院選後に財務省はこう動く  | ドクターZは知っている | 現代ビジネス [講談社] 参院選後に財務省はこう動く  | ドクターZは知っている | 現代ビジネス [講談社] 参院選後に財務省はこう動く  | ドクターZは知っている | 現代ビジネス [講談社]


まだ消費税増税後の経済指標は出ていませんが、もし消費税増税で景気が悪化するようだと、最初に述べたような人手不足によるブラック企業の苦境も消えてしまうでしょう。そしてまたブラック企業がはびこり、若者や女性などの非正規労働者が苦しむ社会に逆戻りするでしょう。

また、日銀法を改正してインフレターゲットを義務づけない限り、今後の日銀執行部がまた「サドマネタリズム」に逆戻りしてしまう可能性も大きいでしょう。

このような「サドマネタリズム」や「サドファイナンス」を阻止して、ブラック企業がはびこらないようにするために、これからも日銀や財務省を監視し、警戒していく必要があるでしょう。そしてそのような状況に逆戻りするようならば、その元凶である日銀や財務省を批判していかなけばなりません。

べっちゃんべっちゃん 2014/06/26 23:58 最近二宮尊徳の本を読みました。尊徳の農村復興策の肝は低利の事業資金貸し出しなんですね。それと大名との間に「たとえ農村が持ち直しても税率を上げない」という契約を結んだそうです。そして尊徳は用水路作りや道路作りも積極的に行っています。

まさしく金融緩和と財政政策の組み合わせなんですよ。

民間に富の蓄積ができてもそれが十分に増えるまでは絶対に取り上げないという安心感を民間に与えることを尊徳は重要視していました。これってインフレ期待に一脈通じるものがあると思うのです。

BaatarismBaatarism 2014/07/05 23:23 >べっちゃんさん
返事が遅れてすいません。
なるほど、二宮尊徳の考え方は現在の経済学から見ても妥当な政策ですね。

僕は最近「エドノミクス」(飯田泰之・春日太一)を読んだのですが、江戸幕府は貨幣改鋳というマイルドインフレ政策を続けることで、貨幣発行益による財源確保と金融緩和による経済活性化を実現し、その結果250年以上という長期の国内政治の安定と経済成長を実現したように思います。ただ、この政策は開国後、海外との金銀交換比の違いがあっために通貨政策が混乱してしまい、その結果国内の安定を維持できなくなった江戸幕府は滅亡したのでしょう。ただ、江戸時代に達成した経済成長による経済力が、明治以降に日本が独立を維持し近代化できた理由だったのでしょうね。
こう考えると、金融政策というのは本当に偉大です。

べっちゃんべっちゃん 2014/07/22 07:52 江戸幕府が鎖国を決断した理由も中国産絹糸の輸入激増によるインフレが、年金生活者である武士の生活を圧迫したからでした。しかしこれに対処した方法が国内の繊維生産力を引き上げて自給体制を作ることでしたから、非常に合理的なんですよ。

徳川幕府は通貨発行権を持ち、貿易を管理していましたので、経済のことがよく見えたのでしょう。統計も当時としてはそろっていました。貨幣改鋳によるマイルドインフレも「やってみたらうまくいった」というレベルではなく、わかっていてやったのだと思います。

鎖国を守ろうとしたのも、江戸時代前半に自由貿易で経済が揺らいだことを思い出したからではないかと。

リフレ派日銀ウォッチャーリフレ派日銀ウォッチャー 2014/07/27 01:55 日銀にはしっかりと、物価目標のコミットを達成して欲しいですね。

日銀総裁:潜在成長率が上昇しなくても物価目標の達成は困難にならず
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N7LZC76JTSET01.html

岩田日銀副総裁:潜在成長率の強化ないとインフレ下の低成長に
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N667HZ6TTDS201.html

2014-04-01 今日はエイプリルフールです。

INFが日本経済に関する2014年の年次審査報告書を公表

00:04 | INFが日本経済に関する2014年の年次審査報告書を公表を含むブックマーク

INFは1日に公表した日本経済に関する2014年の年次審査報告書で、日本は政府総債務残高が1100兆円を超え、対GDP比でも240%に達している危機的状況であり、一刻も早い財政赤字の削減が必要であると指摘した。

そのための方法として、まず日本政府が600兆円を超える資産を保有していることを指摘し、その中でもまず政府が保有する金融資産を全て売却し、国債の返済に充てることを求めている。政府が保有する年金運用預託金を除く金融資産は民間に売却し、出資金や貸付金については出資先、融資先である特殊法人を民営化して株式や債権を売却し、外為資金についても日銀に売却することで、300兆円以上の資産を現金化でき、財政赤字の圧縮が可能であるとしている。また、政府が保有する土地などの実物資産についても、公務員宿舎など売却可能なものは売却することを求めている。

また、社会保険料と税金の徴収を一元化するため、年金機構と酷税庁を統合して歳入庁を設立し、社会保険料の徴収率を上げることを求めている。これによって年間数兆円の収入が見込めるとしている。

さらに、これらの改革を阻害する最大の要因として、日本の債務省の反対があると指摘している。債務省は政府資産を使って多数の特殊法人を作ることで役人の天下り先を確保し、保有資産の運用先選定で金融機関に利益を与えることでやはり天下り先を確保するなど、国家予算を私物化していると指摘している。さらに酷税庁の人事を左右して支配下に置くことで、脱税摘発を政治家やマスコミの反対派を押さえ込むための脅しに利用しているとして、このような権力の行使は典型的なレントシーキングであると批判している。

消費税増税についても、「債務省が予算規模を大きくして財政支出を差配する「歳出権」を拡大することが目的であり、増税分は財政支出を増やしたり、特殊法人を設立することに使われるだろう。そのため財政赤字削減に役立つとは思えない」と批判している。

最後に、日本の債務省はINF自体にも多数の官僚を送り込んでいて、これまで債務省を批判する報告書の作成を阻止してきたと指摘している。そのため、「この報告書も日本に知られないように、例年とは別の時期に秘密裏に作成された」と書かれている。

このように、今回の報告書は債務省を日本の財政赤字削減を阻害する最大の要因であると名指しで批判しており、これまでにない異例の内容となっている。

この報告書の記者会見には多数の記者が出席していたが、何故か日本のマスメディアの記者は一人もいなかった。


この報告書について、ある債務省高官は「よりによって消費税増税のめでたい日に、なぜこんな報告書が出たのだ!INFに送り込んでいる工作員は何をしていたのだ!何のためにINFに多額の出資金を出しているのか分かっているのか。何としてもこの報告書が日本で報道されることは避けなければならん。この報告書を報道したマスコミは全部税務調査して、脱税でしょっ引いてやる!………そうか、タハカシの仕業だな。あの忌々しい奴め。三度殺しても飽き足らぬ。今度こそ奴の尻尾を捕まえて、刑務所にぶち込んでやる!」と叫んでいた。


IMFが日本経済に関する2014年の年次審査報告書を公表、財政再建を要求 - Wallet Street Journal


この記事のタイトルを見たときは、INFがいつも言っている緊縮財政の要求かと思っていたのですが、中身を読んでびっくりしました。INFも日本の財政のおかしさには気づいていたんですね。財政赤字削減を最優先とすることには僕は賛同しませんが、個々の指摘は納得できるものばかりであり、日本にとって非常に重要な報告書だと思いました。

画期的なビットコイン採掘法が発表される

00:04 | 画期的なビットコイン採掘法が発表されるを含むブックマーク

4月1日、米ゴールドラッシュ大学のリーバイス教授は、ビットコインの「採掘」を飛躍的に効率化する新たなアルゴリズムを開発したと発表した。

このアルゴリズムは、19世紀に金の精錬に技術革新をもたらした青化製錬法にちなんで、「シアン・アルゴリズム」と名付けられている。

ビットコインの「採掘」とは、ビットコインの取引を承認する作業であり、ブロックチェーンと呼ばれるビットコインの取引記録に新たな取引のブロックを繋げて追加していく作業である。ブロックを取引記録の末尾に正しくつなぐためには、繋ぐためのキーとなる値を見つけないといけないが、そのためにはランダムな値に対してハッシュ関数を何度も計算して、偶然キーとなる値が得られるまで繰り返すしかなかった。

今回のアルゴリズムは、このキーを探索する過程を効率化して、ハッシュ関数計算の回数を大幅に削減するものである。詳細については特許申請中ということで説明されなかったが、すでに単純な繰り返しに比べて100倍以上の効率化が達成されており、今後アルゴリズムの改良によって1万倍の効率化も目処がついているとのことであった。


リーバイス教授はすでにこのアルゴリズムを商業化するための企業を設立しており、今後はこの技術を使ったビットコイン採掘ソフトの販売や、クラウドサービスの提供を行う予定である。

リーバイス教授は「かつてのカリフォルニアのゴールドラッシュでは、金を採掘する人よりも、ジーンズを発明して彼らに売った人の方が、富を築いたと言われている。私もビットコインの採掘人にジーンズを売っていきたい。」と語り、会場の笑いを誘っていた。

このアルゴリズムが実用化されると、従来の方法によるビットコイン採掘者は、新アルゴリズムを導入した採掘者に太刀打ち出来ないのは明らかである。そのためこの発表に対してビットコイン支持者達は反発しており、「リーバイス教授は「シアン・アルゴリズム」をオープンソースとして公開すべきだ」という声が相次いでいる。


画期的なビットコイン採掘法が明らかに - Tired.com


ちょっと疑問に思ったのですが、ビットコインのブロックチェーンを繋ぐためのキーの探索は、アルゴリズム次第で効率化可能なのか、それとも効率化は数学的に不可能であると証明されているのか、どちらなんでしょうね?ハッシュ関数を逆計算することはできないようですが。

通りすがり通りすがり 2014/04/01 00:09 誤字発見。1行目。政府総債務残高1100億円→1100兆円

BaatarismBaatarism 2014/04/01 00:14 >通りすがりさん
ありがとうございます。さっそく修正しました。

KoichiYasuokaKoichiYasuoka 2014/04/01 00:24 「アルゴリズム次第で効率化可能」でも「効率化は数学的に不可能」でもなくて、「効率化できるアルゴリズムが発見されていない」あたりかな。私もBitcoinでエイプリルフールネタを書いてみたので、よければ http://slashdot.jp/~yasuoka/journal/579516 にもお越し下さい。

BaatarismBaatarism 2014/04/01 07:10 >KoichiYasuokaさん
教えていただきありがとうございます。まだこの分野はアルゴリズム的にもいろいろ可能性がありそうですね。

2014-03-22

消費税増税直前に思うこと

23:47 | 消費税増税直前に思うことを含むブックマーク

前回の記事から、ずいぶん長い間更新していませんでした。

気がつけば、消費税が8%に増税される日はもうすぐそこです。


安倍政権が増税を決定した頃に分かっていた昨年前半の経済成長率は高かったのですが、増税決定後に判明した昨年後半の経済成長率は下がってしまいました。高成長を理由に増税を決定した安倍政権の判断は、間違っていたと思います。

 安倍政権の経済政策アベノミクスで、想定していなかった経済統計の「変調」が起きている。10日には昨年10〜12月期の実質経済成長率が年率0・7%に下方修正されたほか、今年1月の経常赤字額は過去最大を更新した。消費増税を控え、経済政策のかじ取りは一段と難しくなっている。

 10日に発表された2013年10〜12月期の国内総生産(GDP)の2次速報値では、物価の変動をのぞいた実質成長率(年率)が前期比0・7%増に下方修正され、1%台を割り込んだ。先月発表された1次速報よりも0・3ポイント下げた。4月の消費増税前の「駆け込み需要」が成長率を押し上げると見られていたが、想定外の急ブレーキがかかっている。

 昨年7〜9月期の実質成長率も1・1%から0・9%に下方修正された。1〜3月の4・5%、4〜6月の4・1%に比べると、昨年後半からの減速ぶりが際立っている。


アベノミクス、相次ぐ想定外 経済指標「変調」:朝日新聞デジタル アベノミクス、相次ぐ想定外 経済指標「変調」:朝日新聞デジタル アベノミクス、相次ぐ想定外 経済指標「変調」:朝日新聞デジタル


消費税増税後の景気については、リフレ派の中でも意見が分かれています。浜田政府参与や黒田日銀総裁のように政府・日銀に入った人達は強気の見方をしていますが、この片岡氏の記事のように、景気悪化を懸念している人も多いようです。片岡氏は2014年度の実質成長率が民間予測期間の平均値0.8%を下回る可能性もあると言っています。

安倍首相が提唱した経済政策「アベノミクス」によって、ここまで日本経済は回復軌道を歩んできた。最大の牽引車は民間消費支出だ。その点で4月からの消費税増税はこれからの日本経済が抱える最大のリスクである。本稿では、消費税増税の影響を考える際にポイントになるであろう5つの視点を定め、直近時点で把握できる動きからどのような事が言えるのかを、2回にわたって考えていくことにしたい。


5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(上) 反動減と実質所得減のインパクトを読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第3回)|消費税増 5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(上) 反動減と実質所得減のインパクトを読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第3回)|消費税増 5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(上) 反動減と実質所得減のインパクトを読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第3回)|消費税増

 昨年末に政府と民間予測機関の成長率見通しの違いが話題になったが、こうした可能性を考慮すると、2014年度の実質GDP成長率は民間予測機関の平均値0.8%をさらに下回る可能性も十分にあり得るのではないだろうか。


5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(下) 政府の経済政策と日銀の金融政策の効果を読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第4回)|消 5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(下) 政府の経済政策と日銀の金融政策の効果を読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第4回)|消 5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(下) 政府の経済政策と日銀の金融政策の効果を読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第4回)|消


僕も昨年10月の消費税増税決定後にこのような記事を書いていますが、やはり来年度の実質成長率は1%を切るとみた方が良いでしょう。

この時(補足:2012年7月)の記事では消費税増税の2014年のGDPへの影響がマイナス2.1%だという記事を紹介しました。今でもこの数字の前提は大きく変わってないでしょう。

また、先ほど述べたように、補正予算もせいぜい2013年度と同程度なので、成長率に与える影響はゼロと考えて良いでしょう。マイナスでないだけマシかもしれません。

その一方で、黒田日銀の大規模緩和やインフレ2%目標による成長率への影響はかなり大きいでしょう。その結果、最近の成長率は年率換算で2〜3%くらいにはなっていると思われます。

従って、これらを差し引いた来年の成長率は、マイナスにはならないものの、1%には届かず、0.x%というオーダーになると思われます。

ここで、欧州や中国などの金融危機、あるいは最近噂されている米国の債務上限問題によるデフォルトが発生すれば、日本経済はマイナス成長に沈むでしょう。そんな事態が起こらないことを祈りますが。


消費税増税決定について - Baatarismの溜息通信 消費税増税決定について - Baatarismの溜息通信 消費税増税決定について - Baatarismの溜息通信


昨年の時点では「欧州や中国などの金融危機、米国の債務上限問題によるデフォルト」を心配していましたが、今はウクライナの政変をきっかけとなって、ロシアがウクライナ領である(「であった」と言うべきかもしれませんが)クリミアを併合し、新たなる冷戦の勃発も懸念されています。また、ウクライナ問題でアメリカがロシアに対して効果的な対抗を取れないという状況を見て、中国がアメリカを見くびって日本や台湾、東南アジアに対して何か行動を起こすことも考えられます。日本と韓国は歴史問題で相互不信に陥ってしまい、囚人のジレンマにも例えられる状況で、アメリカはそんな両国をもてあましていると言えるでしょう。北朝鮮も昨年末に張成沢氏が処刑されてから中国との関係が悪化し、もはや金正恩体制がどうなるのか誰にも予測できません。今や経済危機の要因は、世界のあちこちに存在していると言っても良いでしょう。

この中の一つでも経済危機に発展すれば、日本は間違いなくマイナス成長に陥るでしょう。

つくづく消費税増税は悪い時期に行うことになってしまったと思います。*1


昨年後半から失業率は改善してきて、最新のデータである今年1月は3.7%まで改善しました。*2様々な分野で人手不足が起こっているという話も聞きます。リフレ政策は明らかに雇用状況を改善しつつあるのは間違いないでしょう。

そのような時期に景気悪化を余儀なくされるのは、非常に残念です。もしアベノミクスが失敗するとすれば、その最大の原因がこの消費税増税であることは、間違いないでしょう。

今回消費税増税についての記事を書いて思ったのは、2年前に消費税増税が議論された時に予測されていたことが、今でもそのまま通用するということです。このようにはっきり結果が予測されていたにも関わらず、誰も消費税増税に突き進む財務省を止めることができなかったということが、日本の抱える大きな問題点だと思います。

*1:ただ、景気悪化を国際要因のせいにできるという意味では、財務省にとっては好都合かもしれませんが。

*2:参考:「統計局ホームページ/労働力調査(基本集計) 平成26年(2014年)6月分結果

2013-12-31

「リフレの年」だった2013年

23:29 | 「リフレの年」だった2013年を含むブックマーク

2013年の金融・証券市場は歴史的な株高・円安となった。日経平均株価は年間で57%上げ、41年ぶりの上昇率を記録。円は対ドルで34年ぶりの下落率になった。世界の投資マネーが新興国から先進国へと向かうなか、大規模な金融緩和などで日本が長引くデフレから脱するとの期待が浮上。内外の投資家が取引を活発に膨らませた。来年もこの流れが続くかどうかは、景気の持続的な拡大がカギを握る。


株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞 株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞 株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞

アベノミクス三本の矢の中で政策が十分な形で実行され、成果が出ているのは第一の矢たる「大胆な」金融政策である。4月4日に公表・実行された量的・質的緩和策では、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭においてできるだけ早期に実現すべく、長期国債、ETF、J−REIT、CP・社債等の買取りを通じてマネタリーベース(2012年末実績138兆円)を2013年末に200兆円、2014年末に270兆円まで拡大するとしている。

量的・質的緩和策公表時のマネタリーベースやバランスシートの見通しと実施動向を比較すると、日銀が当初見通したとおりの緩和がなされている。今年も日銀の想定通りの経済動向が続くのであれば、見通し通りに緩和が行われるはずだ。

第一の矢は予想インフレ率を引き上げ、円安・株高をもたらした。昨年11月14日の野田前首相の解散発言から11月14日における日経平均株価・ドル/円レートの動きを比較すると、株価は72%上昇し、ドル/円レートは25%の円安となった。

4月時点では、大胆な金融政策を行っても株高や円安といった資産市場の好転しか生じず、実体経済には影響しないという指摘もなされたが、第二の矢の効果も相まって、実質GDP成長率(前期比年率)は、2012年10-12月期の0.6%から2013年1-3月期には4.5%と大きく上昇し、その後2013年4-6月期3.6%、7-9月期1.1%と回復が進んだ。

実質GDPが回復することで2012年10−12月期に17兆円であったデフレギャップは、2013年7-9月期には8兆円まで減少した。そして完全失業率は昨年12月から11月までに0.3ポイント(4.3%→4.0%)、有効求人倍率は同じ期間に0.17ポイント(0.83倍→1.00倍)回復しており、マクロでみた雇用も改善が進んだ。企業利益も輸出企業を中心に大幅に改善している。


第二次安倍政権の経済政策を振り返る | SYNODOS -シノドス- 第二次安倍政権の経済政策を振り返る | SYNODOS -シノドス- 第二次安倍政権の経済政策を振り返る | SYNODOS -シノドス-


この記事にもあるように、今年、2013年は大幅に株高と円安が大きく進み、実質成長率も上昇、デフレギャップも縮小し、景気回復が鮮明になりました。それに伴い雇用状況も改善しています。安倍政権と黒田日銀執行部によるリフレ政策の結果であることは、もはや明白でしょう。

2013年はリフレ政策が実施されて、それが大きな成果を上げた年であったと言えるでしょう。まさに今年は「リフレの年」でした。

正直言って、これほど早く景気が改善するとは僕も予想していませんでした。インフレ期待が景気に与える影響は、長年リフレ政策を支持してきた僕の予想も超える素晴らしいものであったと言えます。

その一方で、リフレ政策反対派が懸念していた長期金利暴騰やハイパーインフレは、その兆しすら見えません。少なくとも「インフレ誘導政策」はコントロール不可能な事態になるという主張は、現実によって否定されたと思います。

しかし、同時に消費税増税が決定され、来年4月からは8%に上がることが確定してしまいました。再来年10月に予定されている10%への再増税も阻止できるかは分かりません。

従って来年はリフレ政策による景気回復効果と、消費税増税による景気落ち込み効果がせめぎ合い、どちらが勝つか分からない状況です。

2014年の日本経済の最大の懸念点が消費税増税であることは間違いないでしょう。


また、ちょうど1年前の大晦日、僕はこんな記事を書きました。

このように振り返ってみると、リベラル左派政権だったはずの民主党政権は、結局リフレ政策に否定的で、消費税増税を進めて、リーマンショック以降の日本経済を衰退させてしまいました。一方で、自民党の中でも右派と言われる安倍氏は、リフレ政策を推進し、消費税増税にも慎重です。

しかし考えてみれば、リフレ政策そのものは需要管理政策ですから、本来はリベラルな政策だと言えるでしょう。アメリカでも、この政策を理論づけたポール・クルーグマン教授は、リベラル派の代表的な学者です。

ところが日本では、リベラルな政策のはずであるリフレ政策や公共事業を右派が推進するという、ねじれた構図になっています。

なぜこうなってしまったかと言うと、日本ではリベラル・左派の経済学に対する無理解があまりにも酷く、その影響を受けていた民主党の議員達が、財務省や日銀の説明をあっさりと受け入れてしまったのでしょう。id:finalventさんが今日のブログで日本のリベラルや知識人を批判していましたが、僕もそれに同感します。


(中略)


一方、右派は中国や韓国の台頭に対する危機感もあって、日本経済の立て直しを本気で考えざるを得なくなり、リフレに好意的になってきたのだと思います。安倍総理自身は前回の政権の頃から、高橋洋一氏を起用するなどリフレに近い立場でしたが、最近はそれが右派に広く広がってきたように思います。

安倍政権のような右派政権は、生活保護などの社会保障削減や、教育政策にトンデモな考え方が入り込む、マンガやアニメなどの表現規制が強まるのではないかという懸念もあるので、一概に歓迎ばかりもできないのですが、ここまでリベラル・左派の経済音痴が酷いと、他に選択肢がなくなってしまいます。

今年の民主党の迷走と崩壊は、そのことをはっきりさせてしまったのだと思います。


2012年を振り返って - Baatarismの溜息通信 2012年を振り返って - Baatarismの溜息通信 2012年を振り返って - Baatarismの溜息通信


参院選で自民党が大勝し、ねじれ現象が解消した後の政治は、まさにこの言葉通りになっていると思います。特定秘密保護法案や靖国参拝を巡っては左派・リベラル派を中心に批判の声が上がりましたが、リフレ政策で景気を回復させた安倍政権への支持は根強く、彼らの反対は無力でした。内閣支持率も概ね50%程度を維持しています。経済政策を軽視し、経済成長や金融政策を敵視すらしてきた左派・リベラル派や民主党は、すでに政治的な選択肢から外れてしまっているのでしょう。

もちろん、このように選択肢が1つしかないという状況は好ましくないですが、それを脱却するためにはまず民主党がリフレ政策を受け入れて、景気回復を止めないことをはっきりさせる必要があるでしょう。そうしないと、民主党や左派・リベラル派が求める、社会保障の充実や中国・韓国との緊張緩和も実現できないでしょう。


繰り返しますが、2013年はリフレ政策が大きな成功を収めた年でした。それはマクロ経済学の知見に基づく経済政策が正しいことが実証されたということでもあります。

そのような政策を理解して推進したのが右派の安倍政権であったため、衆参両院で多数を得た安倍政権によって、経済政策以外の分野では右寄りの政策が進むことになりました。もしリフレ政策を実施したのが民主党政権であったなら、経済政策以外でも多くの分野で左寄りの政策が進むことになったでしょう。

安倍政権はこの成功に奢らず、今後も日本経済の再建を最重要課題として欲しいと思います。中国の軍事的膨張が進んでいるので防衛力の強化は必要だと思いますが、貧困層を増やしたり人権を制限したり、日本を国際的孤立に追い込むような政策は止めて欲しいものです。

一方、民主党や左派・リベラル派には、自らの経済音痴を反省して、マクロ経済学の知見に基づいた政策を取り入れて欲しいと思います。そうすれば彼らも再び政治的選択肢として復活するでしょう。


来年は消費税増税などの不安要因もありますが、日本経済がそれに負けずに力強く復活することを願います。