道徳教科化の問題点訴え 玉村町で憲法考えるシンポ 金沢大准教授が講演:群馬 - 東京新聞(2016年9月25日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201609/CK2016092502000146.html
http://megalodon.jp/2016-0926-0934-36/www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201609/CK2016092502000146.html

憲法改正論議の加速が見込まれる中、群馬弁護士会は二十四日、憲法を考えるシンポジウム「憲法改正?その前に」を玉村町文化センターで開いた。金沢大の石川多加子准教授(憲法学)が「憲法と教育」と題して講演し、政府が進める道徳の教科化の問題点などを訴えた。
護憲派だという石川准教授は「衆参両院で改憲派が三分の二を超え、憲法の状況は戦後七十一年で一番危険ではないか。ここ一、二年が正念場だと思う」と危機感を表明。自民党改憲草案と現行憲法の対照表を来場者に配り、「草案には社会、経済的弱者への配慮が全くなく、個人の尊重が抜け落ちている」などと批判した。
小学校で二〇一八年から、中学校で一九年から道徳が教科になることについて「戦前に国民を戦争に向かわせたのは教育で、私より公を優先する価値観を子どもたちに植え付けたのが修身という教科だった。安倍政権は平和、人権、個人の尊重などを柱とした国の在り方をやめたがっており、道徳の教科化は修身の再来だ」と主張した。
また「内面的な問題を教科として評価することは、教職員と子どもの(憲法が保障する)思想良心の自由に土足で踏み込むことだ」と問題点を指摘した。
会場には約百五十人が来場。講演に先立ち、アイドルグループ「制服向上委員会」によるミニコンサートもあり、憲法九条や原発に関する歌を披露した。
シンポは、群馬弁護士会憲法問題特別委員会が〇七年から毎年開いている。同委員会は十一月二十三日にも、集団的自衛権自衛隊南スーダン派遣についての講演会を前橋市の県社会福祉総合センターで開く予定。 (原田晋也)

いま読む日本国憲法(27)第41条 立法機関を権威付け - 東京新聞(2016年9月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016092602000189.html
http://megalodon.jp/2016-0926-1358-00/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016092602000189.html


二十六日に召集される臨時国会では、消費税増税を再延期する関連法案など、さまざまな法案が審議されます。日本国憲法四一条から六四条までの第四章は国会に関する条文が並んでいます。四一条は、立法権が国会に属すると規定。行政権は内閣に属すると定めた六五条、司法権は裁判所に属するとした七六条一項とあわせて、「三権分立」の根拠となっています。
憲法下の帝国議会天皇の協賛機関にすぎず、立法権天皇に属していました。国民主権を柱とした現憲法では、国民の代表者で構成される国会こそ「国権の最高機関」だと四一条で宣言し、権威づけしているのです。
自民党改憲草案も、四一条は現行憲法とほぼ同じ表現です。
四一条は、国会が「唯一の立法機関」とも定めています。ただ、成立する法律は、国会議員が提出したものより内閣が提出したものの方が圧倒的に多いのが現状です。二〇一五年に国会議員が提出した法案は七十二件で、このうち成立したのは十二件(成立率16・7%)。これに対して内閣が提出した法案は七十五件で、成立したのは六十六件(同88%)でした。
国会議員の立法活動を制限する法律や慣例があります。国会法は、議員が法案を提出する場合、予算が必要な法案は衆院五十人以上(参院二十人以上)、予算を伴わない法案は衆院二十人以上(参院十人以上)の賛成者が必要と規定。各党の役員の同意がない法案は、衆参両院の事務局が受け取らないのが慣例です。
国会の憲法論議の中では、こうした議員立法を縛るさまざまな条件を緩和して、議員の立法活動をより活発にするべきだという意見も出ています。
◇ 
憲法の主な条文についての解説を、随時掲載しています。


自民党改憲草案の関連表記
国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

関連サイト)
小学生でもわかる憲法入門 - まんがイラスト ぼうごなつこのページ(2014年2月14日)
http://bogonatsuko.blog45.fc2.com/blog-entry-1285.html

関連サイト)
首相、立憲主義を否定 解釈改憲「最高責任者は私」 - 東京新聞(2014年2月13日)
http://d.hatena.ne.jp/kodomo-hou21/20140213#p10

安倍晋三首相は十二日の衆院予算委員会で、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更をめぐり「(政府の)最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と述べた。憲法解釈に関する政府見解は整合性が求められ、歴代内閣は内閣法制局の議論の積み重ねを尊重してきた。首相の発言は、それを覆して自ら解釈改憲を進める考えを示したものだ。首相主導で解釈改憲に踏み切れば、国民の自由や権利を守るため、政府を縛る憲法立憲主義の否定になる。 
首相は集団的自衛権の行使容認に向けて検討を進めている政府の有識者会議について、「(内閣法制局の議論の)積み上げのままで行くなら、そもそも会議を作る必要はない」と指摘した。
政府はこれまで、集団的自衛権の行使について、戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法九条から「許容された必要最小限の範囲を超える」と解釈し、一貫して禁じてきた。
解釈改憲による行使容認に前向きとされる小松一郎内閣法制局長官も、昨年の臨時国会では「当否は個別的、具体的に検討されるべきもので、一概に答えるのは困難」と明言を避けていた。
今年から検査入院している小松氏の事務代理を務める横畠裕介内閣法制次長も六日の参院予算委員会では「憲法で許されるとする根拠が見いだしがたく、政府は行使は憲法上許されないと解してきた」と従来の政府見解を説明した。
ただ、この日は憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を認めることは可能との考えを示した。横畠氏は一般論として「従前の解釈を変更することが至当だとの結論が得られた場合には、変更することがおよそ許されないというものではない」と説明。「一般論というのは事項を限定していない。集団的自衛権の問題も一般論の射程内だ」と踏み込んだ。
内閣法制局長官の阪田雅裕弁護士は、首相の発言に「選挙で審判を受ければいいというのは、憲法を普通の政策と同じようにとらえている。憲法は国家権力を縛るものだという『立憲主義』の考え方が分かっていない」と批判した。
横畠氏の答弁にも「憲法九条から集団的自衛権を行使できると論理的には導けず、憲法解釈は変えられないというのが政府のスタンスだ。(従来の見解と)整合性がない」と指摘した。

立憲主義> 国家の役割は個人の権利や自由の保障にあると定義した上で、憲法によって国家権力の行動を厳格に制約するという考え。日本国憲法の基本原理と位置付けられている。

内閣法制局 安保法決裁「5月0日」 文書ずさん記載 - 毎日新聞(2016年9月26日)

http://mainichi.jp/articles/20160926/k00/00m/040/123000c
https://megalodon.jp/2016-0926-0831-38/mainichi.jp/articles/20160926/k00/00m/040/123000c


昨年9月に成立し、今年3月に施行された安全保障関連法を巡り、昨年5月に政府が同法案を閣議決定する前に内容を審査した内閣法制局が、法案の扱いを記録した公文書で、審査を終えて決裁した日を「5月0日」とするなど、ずさんな記載をしていたことが分かった。法制局はすでに修正しているが、毎日新聞の取材に経緯の説明を拒んでいる。【日下部聡】

内閣法制局は、法案や政令案が内閣の閣議で決められる前に、憲法や既にある法律と矛盾がないかを審査する。安保関連法案は昨年5月14日に閣議決定され、国会に提出された。

問題の公文書は「公文件名簿」と呼ばれる。審査のため各省庁から送られてきた法案や政令案について、それぞれ(1)受付日(2)決裁日(3)審査した後に内閣に送付した進達日(4)閣議にかけられた日−−や、審査担当参事官名などを記録し、一覧表にしている。30年間保存される重要な公文書だ。

問題の記載は、障害者支援にかかわり、国や自治体の財政などについて個人で調査する富山市の吉田憲子さんが見つけた。法案審査の経緯を知ろうと昨年9月に情報公開請求し、翌10月に昨年分の公文件名簿が開示された。その中で、安保関連法案のみ▽受付日が空欄▽決裁日は「5月0日」▽進達日は空欄−−となっており、「法律」なのに「政令」にマルがついていた。吉田さんの問い合わせに、法制局は「担当者のミス」と説明したという。

毎日新聞が今年5月に同じ文書の開示を受けたところ、受付、決裁、進達は法案が閣議決定された「5月14日」とするなど記載はいずれも修正されていた。

ずさんな記載の経緯や理由について、公文件名簿を管理している内閣法制局総務課は、取材に「開示請求した人以外の問い合わせには答えられない」と回答を拒否している。

内閣法制局の「行政文書取扱規則」によると、法案や政令案は総務課が受け付け、内閣に送付した日(進達日)は審査担当部からの連絡を受けて総務課の担当者が記入する。

異例の閣議当日審査
毎日新聞が入手した修正後の文書では、内閣法制局は昨年5月14日に法案審査を受け付けて直ちに決裁し、政府が同じ日に閣議決定していた。

他の法案とは異なるスピード決裁で、安保法制を巡る法制局の手続きに疑問の声が出ている。

入手文書によると法制局は昨年1年間に80件の法案を審査した。実質的な審査は「予備審査」という形で正式の受け付け前に終わらせておくのが慣例だが、安保関連法案以外は受け付けから閣議決定まで数日を要し、記載の誤りもなかった。

一連の経緯について、法制局の元官僚は取材に「これは変だ。どうしてこんなことになるのか」と首をかしげた。

問題の記載を見つけた吉田憲子さんは「法制局上層部で話が進められ、担当者は記入のしようがなかったのではないか。正規の手続きを経ていないとの疑いを抱かせる」と話す。

法制局は、情報公開請求者以外からの問い合わせには応じないとして取材を拒否しているが、情報公開法にそのような規定はない。国の情報公開制度を所管する総務省情報公開推進室は「開示文書は誰にでも平等に開示される。第三者の問い合わせに答えても問題はない」との見解だ。

安保法制への法制局の対応では、政府の集団的自衛権行使容認の閣議決定(2014年7月)に必要な憲法9条の解釈変更を巡り、局内部での検討過程を公文書に残していなかったことが発覚。横畠裕介長官は国会で、解釈変更について局内で議論したが反対意見はなかった−−と主張しているが、それを裏付ける記録はない。

【ことば】安全保障関連法
憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認や国連平和維持活動(PKO)拡充を柱とし、自衛隊法など10の法改正を一括した「平和安全法制整備法」と、自衛隊による他国軍の後方支援を認める「国際平和支援法」からなる。安保関連法のもと、踏み込んだ武器使用を認める駆け付け警護の任務が年内にも南スーダンPKOで自衛隊に課される。

安倍首相、改憲論議呼び掛けへ=生前退位で「有識者会議」設置−午後に所信表明演説 - 時事ドットコムニュース(2016年9月26日)

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016092600018&g=pol

安倍晋三首相は26日午後、衆参両院の本会議で所信表明演説を行う。首相は憲法改正への意欲を改めて示し、国会での議論を深めていくよう呼び掛ける見通しだ。天皇陛下生前退位をにじませるお気持ちを表明されたことを踏まえ、今後の対応について、検討のための有識者会議を設置することを打ち出す意向。政権の最重要課題であるデフレからの脱却に向け、取り組みを強化する決意も示す考えだ。
 7月の参院選の結果、憲法改正に前向きな勢力が国会発議に必要な3分の2の議席を衆参両院で確保して以降、首相の国会での演説は初めて。 
首相は、憲法の在り方を決めるのは国民であり、改憲案を示すのは国会議員の責務だとの立場。演説では、与野党を問わず国会での論議を本格化するよう促す見通し。生前退位の問題については、国民の理解の下に有識者会議で議論を深めたいとの考えを示す意向だ。
第3次安倍再改造内閣発足に当たり、「働き方改革」が政権の最重要課題の一つと位置付けられた。首相は演説で、「アベノミクス加速」を掲げた上、具体策として長時間労働の慣行の是正や、同一労働同一賃金の実現を目指す考えを示すとみられる。
外交関係では、ロシアのプーチン大統領との首脳会談を通じた北方領土問題の解決や、緊張状態が続く中国との関係改善に意欲を示す方向だ。

官邸、宮内庁にてこ入れ=お気持ち表明で不満 - 時事ドットコムニュース(2016年9月25日)

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016092500057&g=pol

宮内庁長官の風岡典之氏が26日付で退任し、山本信一郎次長が長官に昇格、後任の次長には西村泰彦内閣危機管理監が就任する。天皇陛下のお気持ち表明に至る過程で、宮内庁の対応に不満を持った首相官邸が、人事でてこ入れを図ったようだ。
お気持ち「優先的対応を」=生前退位宮内庁長官

宮内庁幹部の異動は春が通例で、風岡氏も当初は来年3月末まで務めるとみられていた。政府関係者は、退任が早まった理由について「お気持ち表明に関し、誰かが落とし前をつけないと駄目だ」と語った。
陛下の生前退位のご意向が官邸に伝えられて以降、杉田和博官房副長官らは、退位の自由は憲法上認められていないと判断し、負担軽減策の検討を進めていた。そうした中で陛下のお気持ち表明の動きが表面化した。官邸は宮内庁に対し、「陛下が思いとどまるよう動くべきだった」(関係者)と辛口評価だ。
宮内庁次長には、事務次官経験者が各省の顧問などを経て就任する例が多く、西村氏の「官邸直送」は異例。警察出身者の起用は22年ぶりで、同じく警察出身の杉田氏の意向が反映されたとの見方がもっぱらだ。西村氏は、来月から始まる「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の事務局に宮内庁を代表して参加する。 
ただ、官邸サイドの思惑通りに事態が進むかは不透明だ。安倍晋三首相は政府内の検討について「期限ありきではない」としているが、風岡氏は21日の記者会見で「できるだけ優先的に対応していただきたい」と述べ、ことさら検討をせかした。別の政府関係者は「人を代えたらうまくいくとは限らない」との見方を示した。

安保法成立1年 廃止、諦めない…各地で抗議集会 - 毎日新聞(2016年9月19日)

http://mainichi.jp/articles/20160920/k00/00m/040/023000c
http://megalodon.jp/2016-0926-0935-13/mainichi.jp/articles/20160920/k00/00m/040/023000c

安全保障関連法の成立から1年となった19日、国会前で抗議集会が開かれ、市民らが「みんなで憲法守ろう」「廃止まで諦めない」と反対の声を上げた。成立後、日本の安全保障環境は厳しさを増し、自衛隊の新任務である駆け付け警護の付与も秒読み段階だが、安保法制を巡る安倍政権への批判はやんでいない。【山崎征克、柳澤一男】

◇「受け入れ、修正の過程」…専門家指摘も
雨の中で「自衛隊員の命守ろう」というプラカードも見える。主催団体によると、参加者は約2万3000人で、この日全国400カ所以上で抗議行動があったという。
国会前には野党の国会議員も姿を見せた。民進岡田克也前代表は「憲法違反の法律は何年たっても憲法違反。それを廃止するのが国会の仕事だ」と訴えた。また、憲法学者の清水雅彦・日体大教授は「9割の研究者が違憲と考えた。どう考えても憲法に反しているのに、それが分からない首相は早く退いてほしい」と力を込めた。
参加者からは、安保法制の違憲性だけでなく、拡大した自衛隊活動や安倍政権の姿勢自体への疑問や不安の声が相次いだ。
千葉市稲毛区の無職、菅原軍次さん(73)は「海外で軍事力を行使すれば、必ず報復の標的にされる」と心配した。千葉県柏市の会社員、鬼木大輔さん(30)は「福島の原発事故で考え方が変わった。原発再稼働も安保も数の力で進める安倍政治にノーと言いたい」。埼玉県ふじみ野市の団体職員、武田梨華さん(38)は「消費増税など生活への負担は大きくなっているのに社会保障の充実は感じない。人に優しい政治を」と望んだ。
一方、各地で展開されたデモの参加者について「安保法制にやみくもに反対しているわけではない」と見る専門家もいる。
日本大危機管理学部の福田充教授は昨年の安保関連法成立前、研究室で参加者約400人にアンケートを実施した。大部分が「審議がしっかりなされていない」とする一方で、20代までの80%(30代以上の66%)が「日本一国で平和の維持は困難」と感じ、67%(同37%)が「世界情勢に合わせて安保政策も変わっていくべきだ」と答えた。
福田さんは「政府は説明責任を十分に果たさず、数の力で押し切った。安保法制には問題点もある」と指摘。その上で、日本人が犠牲になったバングラデシュでのテロや、北朝鮮が繰り返す核実験やミサイル発射などを踏まえ、「国際情勢を国民は冷静に見ている。夏の参院選でも与党が勝利した。今は社会が時間をかけて安保法制を受け入れ、修正していく過程にある」と分析する。

安保法「反対し続ける」 成立1年、国会前で抗議デモ - 共同通信社(2016年9月19日)

http://this.kiji.is/150536933470420999?c=39546741839462401
http://megalodon.jp/2016-0926-0935-35/this.kiji.is/150536933470420999?c=39546741839462401

安全保障関連法成立から1年となった19日、市民団体が国会前で大規模な反対集会を開いた。主催者発表で約2万3千人が集まり、参加者は雨の中、「廃止するまで諦めない」「みんなの力で憲法を守ろう」などと声を張り上げた。一斉行動も呼び掛け、各地でデモや集会が実施された。
国会前は「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が主催。6歳の娘を連れて東京都板橋区から参加した障害者施設職員山内朋子さん(40)は「安保法への関心が薄くなってきているが、成立1年で国会前に抗議に行ったよと周囲に話をしようと思い、参加した。関心を持ち続けたい」と話した。

軍事研究助成の新設枠を検討 1件数十億円に上限拡大 - 東京新聞(2016年9月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016092602000128.html
http://megalodon.jp/2016-0926-0936-02/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016092602000128.html

軍事転用可能な基礎研究の資金を助成する「安全保障技術研究推進制度」で、防衛省が一件の研究への助成額上限を、現行の十倍超の数十億円へ引き上げることを検討していることが分かった。武器や装備品に必要な技術研究開発を進める政府方針の下、現行制度ではカバーできない高額な予算が必要な研究をする大学や研究機関の取り込みを図る。 (望月衣塑子)
この動きに、軍学共同や沖縄基地問題で発言している世界平和アピール七人委員会の委員も務める慶応大の小沼通二(みちじ)名誉教授(物理学)は「軍学共同をさらに前進させるもので、平和を追求すべき科学者のあり方をゆがめる」と懸念する。
二〇一五年度に始まった技術研究推進制度にはこれまで百五十三件の応募があり、十九件の研究が採択された。いずれも助成の上限は三年間で一億二千万円。防衛省は来年度、この助成枠と別に、一件の研究に五年間で数十億円をつぎ込む新たな助成枠を設ける方針だ。来年度予算では制度全体で百十億円を要求し、このうち新設分として五年分の百億円を一括計上している。
防衛省は、大きな予算が必要なレーダーなどの基礎研究に取り組む大学や研究機関の研究者からの応募を見込む。原則五年の助成期間中に得られた研究成果をさらに発展させ、再び応募することも可能で、採択されればさらに五年間の助成を受けられる。防衛装備庁は「長期契約でより高度な先端技術を防衛装備品に取り込みたい」とする。
政府は今年一月にまとめた第五期科学技術基本計画で、安全保障の項目を初めて設け「安全保障上の諸課題に対し、必要な技術の研究開発を推進する」と明記。大学や民間の技術の防衛装備への積極的な転用を目指す。
技術研究推進制度への応募は初年度百九件から、二年目の本年度は四十四件に減った。小沼名誉教授はその背景として「政府の軍備拡張路線に反対する研究者が増えている」と指摘。「研究者に膨大な資金を見せて巻き込もうとする政府のあざとさを感じる。軍備拡張を進める政策に日本の未来はあるのか」と話す。
宇宙物理学者の池内了(さとる)名古屋大名誉教授も「来年度の防衛省の予算要求を見ると、防衛装備庁は中長期的な観点から軍事装備品の開発に乗り出している。助成金制度の拡充は、それに合わせ軍事装備の開発を本格的に進める体制づくりの一環だ」と批判している。

新・共謀罪 危うい本質は同じだ - 東京新聞(2016年9月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016092602000134.html
http://megalodon.jp/2016-0926-0936-28/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016092602000134.html

またも「共謀罪」をつくろうと政府は動いている。東京五輪パラリンピックに向けての「テロ対策等」と看板を掛け替えるが、危うい本質は同じだ。本当に新設が必要なのか、根本から疑う。
犯罪が起きて、犯人を逮捕できる。つまり日本の刑法は行為を罰する。それが原則である。もちろん殺人未遂罪など未遂で処罰できる法律もある。共謀や陰謀、予備という未遂前の段階で処罰できる法律も数々ある。
国家転覆を狙う内乱陰謀罪。外国と通じて武力行使を招く外患誘致陰謀罪。爆弾を仕掛けようと企てた段階で処罰できる爆発物使用共謀罪…。だが、あくまで原則は、法を犯す意思だけでは罪に問わない。それが根本である。
共謀罪は正反対である。相談し、合意した段階で成立する。これを六百以上もの犯罪を対象にするから、まるで原則と例外が逆転する現象が起きる。窃盗や詐欺なども含まれる。社会全体を投網にかけるようなものだ。
行為を罰する原則から、合意という「心の中」を処罰する。それに対する抵抗感は強かった。反権力の結社やデモなどで適用されないか−。人権侵害や市民監視の恐れはないか−。さまざまな反対論が沸き起こり、過去三回、廃案になった経緯がある。
政府は共謀罪の名前を「テロ等組織犯罪準備罪」に改めるという。同時に共謀だけでは罪としないで、資金集めなどの「準備行為」の段階で罪が成立となる。
だが、六百以上の犯罪が対象なのは変わりがない。準備行為であっても、捜査当局による拡大解釈などは十分ありうる。原則と例外の逆転関係は同じなのだ。
もともと国連が二〇〇〇年に採択した国際組織犯罪防止条約が発端である。条約批准のため国内法が求められた。ただし国と国とをまたぐマネーロンダリング資金洗浄)や人身売買などが念頭にある。テロ対策が主眼ではない。
それに本当に国内法は整っていないのか。政府は新設を求めるが、日弁連は「共謀罪がなくても条約批准は可能だ」と反論する。日本には重大犯罪に対処する国内法は整っていると考えるからだ。テロ対策の法律も備わっている。
つまり出発点から議論が食い違う。秋の臨時国会では提案が見送られるが、そんな状態で政府が進めてはならない。もしテロへの不安に便乗する発想があるのなら、なおさら許されない。

(私説・論説室から)おみすてになるのですか - 東京新聞(2016年9月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016092602000135.html
http://megalodon.jp/2016-0926-0936-53/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016092602000135.html

「名古屋の杉山さんの容体が悪い」。ドキュメンタリーの映画監督である林雅行さんからメールが来たのは八月二十三日だった。
杉山千佐子さんは太平洋戦争で負傷した民間人への補償を求める活動をずっと続けた人である。一九四五年の名古屋空襲。爆弾の破片で杉山さんの左目がつぶされた。義眼も入れられず、眼帯姿で戦後を送った。
「戦時中には被災した民間人を補償した法律がありました。国側は戦後に法の効力がなくなったと説明しますが、元軍人らには援護法ができ、年金が支払われています」
あまりに不公平ではないか−。かつてお目にかかったとき、そう訴えていた。背景には戦争ではみんなが苦しんだのだから、がまんせよという国の姿勢があろう。受忍論と呼ばれる。だが、ドイツでは民間人も国の補償が受けられる。杉山さんからそう教えられた。受忍論は人を見捨てているのと同じだ。
九月九日になって、また林さんからメールが来た。「杉山さん。会話、食事できず。少しずつ衰弱」。十八日の朝には−。
「先ほど杉山さん亡くなりました。今日百一歳の誕生日でした」
願いだった「戦時災害援護法案」は国会に十四回も提出されたが、いずれも廃案−。林さんが制作した作品に「おみすてになるのですか」がある。その言葉が今、鋭く突き刺さる。 (桐山桂一)