YAMAGUCHI::weblog

噛み付き地蔵に憧れて、この神の世界にやってきました。マドンナみたいな男の子、コッペです。

『入門OpenTelemetry』という本が出版されました #learning_otel

はじめに

こんにちは、AWSのオブザーバビリティ/SREを得意領域とするデベロッパーアドボケイトです。この度、私が翻訳しました『入門OpenTelemetry―現代的なオブザーバビリティシステムの構築と運用』という書籍がオライリー・ジャパン社より発売されました。印刷版は書店ならびに各社オンラインストアでご購入いただけます。PDFならびにEPUBオライリー・ジャパンEbookストアにてご購入いただけます。

www.oreilly.co.jp

『入門OpenTelemetry』はどんな本か

本書は、OpenTelemetry という、CNCFのIncubatingプロジェクトに関する解説書籍です。OpenTelemetryは非常に活発かつ巨大なプロジェクトで、訳者まえがきにも書きましたが、2019年にプロジェクトが開始したにもかかわらず、いまやCNCF傘下のプロジェクトでKubernetesに次いで2番目に活発なプロジェクトとなっています。(下記のCNCFのdevstats参照)これはもともとCNCF傘下にあったOpenTracingと、同様の目的のプロジェクトで同じようにすでにユーザーがいたOpenCensusが合併して成立したのがOpenTelemetryなので、発足時点ですでに関係者が多数いたのが要因の1つではあるのですが、それにしても発足時からの発展は目覚ましいものがあります。

all.devstats.cncf.io

そんなOpenTelemetryの解説書籍ではあるのですが、本書にはコード(プログラム、設定ファイル)の類はほぼ出現しません。これほど巨大なプロジェクトの入門書でコードがほぼ出現しないというのは、個人的には驚くべきことだと思うのですが、これは著者陣が意図してそうしました。OpenTelemetryが数多あるOSSの中でも規模が非常に大きい上に、扱っているものの概念が浸透していないこと、そして公式ドキュメントやサンプルを充実させていることがその理由です。

したがって、本書は次のような方におすすめな書籍です。

  • OpenTelemetryプロジェクトの全体像や検討事項を把握したい方
  • オブザーバビリティ・エンジニアリング』を読んでオブザーバビリティの実践を開始しようとしたけれど、計装やテレメトリー収集に関する戦略に関しての理解を深めたい方
  • プロジェクトでOpenTelemetryを使うことになったけれど、プロジェクトの背景や思想を先に知りたい方

OpenTelemetryの各言語用ライブラリを用いて計装をしたり、OpenTelemetryコレクターでテレメトリー収集をし、オブザーバビリティ基盤に送信したり、とい各作業はそれぞれが奥深いものです。筆者たちはそれぞれに関する詳細な解説を書くことも可能でしたが、あえてそれらを削ぎ落とし、背景にある思想や概念、設計方針のアドバイスのレベルでの解説にとどめ、詳細な実装はオンラインのコンテンツに譲った結果、本書はA5版で170ページ程度という、非常に読みやすいボリュームとなりました。

これが可能だったのも、OpenTelemetryというプロジェクトがその始めから、仕様をきっちりと決め、実装はそれに従うというガバナンスを整えていたことによります。もしこれが作者が1人のプロジェクトで、思いつきで実装をしたり、機能を追加したり、APIの仕様変更を行うような製品だったら、こうはいかなかったでしょう。大元の仕様や設計がこれから先しばらくも続くことが想定でき、それでいて細かな実装は変更しうる(APIの下位互換性はある)ものとして、最新版のサンプルを参照するほうが良いからこそ、こうした構成の書籍が成立します。

関連図書

オブザーバビリティバックエンドに関する書籍を挙げると、各ベンダーごとの書籍など多くなってしまうので、ここでは数冊にとどめておきます。

「オブザーバビリティ」という概念そのものを理解するのであれば、まず『オブザーバビリティ・エンジニアリング』をおすすめします。本書でより広い概念を理解したうえで、それを実現するための業界標準になりつつあるOpenTelemetryの理解を『入門OpenTelemetry』で深め、さらに細かな実装に関しては公式ドキュメントや他の解説書を読む、という流れができるでしょう。

OpenTelemetryというプロジェクトはあくまでテレメトリーの計装、収集、送信のみを扱うものです。そのため、テレメトリーがオブザーバビリティバックエンドに送信されたあとの処理に関しては関与していません。しかしながら、テレメトリーの属性(ラベル、ディメンションなどさまざまな呼ばれ方をする)はバックエンドに大きな影響を与えます。例としてはOSSのPrometheusの書籍を挙げていますが、これはベンダーツールでも変わりません。オブザーバビリティバックエンドはOpenTelemetryと対になるものなので、そのつなぎ込みに関わる機能やその概念を理解をすることで、より良い設計ができると思います。

謝辞

本書は日本国内でOpenTelemetryプロジェクトに割と初期から関わっている方々から多くのレビューを頂きました。訳者まえがきでも触れていますが、あらためて私が本書の出版に際してレビューに参加いただいた下記の皆様に感謝します(五十音順)。

またオライリー・ジャパン社の瀧澤さんにはこの2年で4冊の翻訳書の編集を担当いただきました。本書の出版でここ5年ほどずっと続いていた、常に原稿が手元にある状態がようやく一段落しました。本当にありがとうございました。いまは少しの開放感に浸っていますが、また別の翻訳プロジェクトでご一緒できる機会があれば、よろしくお願いいたします。

おわりに

OpenTelemetryはまだまだこれから普及していくOSSだと思います。いまやコンテナオーケストレーションといえばKubernetesデファクトになったように、オブザーバビリティといえばまずOpenTelemetryが選択肢に上がるようになってきました。本書はそのような状況にあって、多くの方々がそのプロジェクトと製品の概要を一息に理解するための優れた入門書だと思います。2025年に多くの方がOpenTelemetryに触れられることを期待しています。

YAMAGUCHI::weblogの2024年を振り返る

はじめに

こんにちは、AWSデベロッパーアドボケイトをしているものです。2024年も最終日となりました。私の誕生日でもあります。

www.amazon.jp

過去の年次の振り返りはこちら。

ymotongpooの2024年

去年立てた目標

  • コミュニティ関連
    • OpenTelemetry meetup とかハッカソンとかやっていきたい
    • Go Conference 2024は久々のオフライン開催なので無事に行う
  • 執筆・翻訳・監訳
    • 1冊は翻訳本を出す
    • 同人でもいいので何かしら書き下ろしたい
  • 趣味
    • キャンプでハンモック泊やタープ泊などの軽量キャンプに行く
    • 普通二輪の免許を取得したらツーリングキャンプに行く
    • グリル料理を覚える
  • 語学

コミュニティ関連

OpenTelemetry

opentelemetry.connpass.com

OpenTelemetry meetupは運営スタッフが増えたことや、イベントの間隔も3ヶ月に1回とかなので、2024年もなんだかんだで3回実施できました。これも会場を快く提供してくださる企業のみなさまのおかげです。大変ありがとうございます。このイベントの外でもOpenTelemetryが話題にのぼることがだんだんと増えてきて、OpenTelemetryがかなり普及してきたように感じます。

これまでは初歩的な内容が多かったように思いますが、2025年はより実践的な内容が共有されることが増えるだろうという期待があります。このイベントも継続して楽しくやっていきたいですね。

opentelemetry.io

それと並行して、OpenTelemetryのドキュメント翻訳プロジェクトが立ち上がったので、approverとして関わっています。OSSはドキュメントのあるなしで大きく普及度合いが変わってくると思うので、なるべく多くのコンテンツを翻訳できればと思っています。日本語化に興味がある方はぜひお声がけください。こちらもご参照ください。

ymotongpoo.hatenablog.com

Go Conference 2024とかGoコミュニティとか

Go Conferenceの主催が3代目の @sivchari さんへとバトンタッチし、新たなフェーズに入りました。新型コロナ禍からオンライン開催に移行していましたが、Go Conferenceは今年からまたオフライン開催が復活しました。素晴らしいスタッフの方々のおかげで大きな問題もなく開催されました。

大盛況のスポンサーブースエリア

歴代主催者での記念写真

今年はついに2013年から参加していたGo Advent Calendarに参加せずに1年が終わりました。今年は転職したこともあり、また別のアプローチでGoのコミュニティへの貢献などを増やしたいと考えています。

執筆・翻訳・監訳

今年は2冊の翻訳書籍を出版できました。これらの書籍はかなり内容的に思い入れのあるものだったので、翻訳に携われて本当に良かったです。

ymotongpoo.hatenablog.com

ymotongpoo.hatenablog.com

書き下ろしの執筆に関してはまったくできませんでした。年初には年後半にできればいいかなと思っていたんですが、まさか思いもよらず転職することになったので、年後半の予定がまったくもって想定していたものと違ってしまいました。

趣味

バイク

去年の振り返りを書いている段階ではまだ普通二輪免許も持ってなかったのですが、その後無事に年明けすぐに普通二輪免許を取得しました。その後、レンタルバイクで友人とツーリングに行って最高だったのと同時に、現状だと400cc付近に良いレンタルバイクの選択肢がなかったことと、排気量制限が鬱陶しくなったので、2月から4月頭にかけて大型二輪の教習にも通い、こちらも無事に免許を取得しました。

というわけで、今年前半は免許の取得からツーリングなどで趣味としてバイクに乗る時間が非常に多くありました。レンタルバイクや友人から次の車種を借りて、さまざまなバイクを試してみました。乗った順に並べるとこんな感じ。

  • Honda GB350
  • Honda 400X
  • Honda GB500TT
  • Ducati Streetfighter V2
  • Ducati Streetfighter V4S
  • Yamaha XSR700
  • Yamaha MT-07
  • Honda CB650R
  • Ducati Streetfighter V4SP
  • Honda CB650R(2回目)
  • Honda XL750 Transalp
  • Honda CBR650R E-clutch

そして友人である先輩が処分するというので、本当に旧車とは思えないくらい乗りやすかったGB500TTを安く譲ってもらいました。まさか初めて持つ125cc以上のバイクが旧車、それも1985年製のものになるとは思いませんでした。500ccということで、新車発売当時に同時に400ccモデル(GB400)も出ていたこともあって、日本国内にほとんど流通していない!しかもかなり古いので純正部品はまず手に入らない、なかなかメンテナンスが難しいバイクではありますが、バイク人生においてビッグシングルのキャブレター車を所有した、というのは良い経験になっていると思います。

譲り受けた時点で、前々オーナーがかなりいじった状態のままでフェンダーレスになっており、ナンバープレートステーとテールランプが単気筒の振動でかなり経年劣化してて、ツーリング中にいきなりもげてレッカーする羽目になったのはいい勉強になりました。(いまは新しいものに付け替えたのでしばらくは大丈夫)

レッカー車を山の中で待っていたとき

また、いまホンダで二輪開発の最前線にいる後輩含めて、研究室の世代が近いOBたちでツーリングに行けたのは楽しかったです。朝7時から夜11時まで、1日中雨の中のツーリングはしんどかったけど、それでもかなり楽しいツーリングでした。普段はソロツーリングが多いけど、気の合う人たちとのマスツーリングは楽しいですね。そんな後輩が開発を主導したE-clutchが搭載されたCB650Rを先日注文もしました。来年春には納車されます。

GB500TTを維持するか、それとも乗り換えるか、駐輪スペースの都合もあるのでめちゃくちゃ悩んでいます...*1

ツーリングキャンプ

たまたま1人で動ける時間があったので、11月半ばに初めてのツーリングキャンプに行ってきました。

初めてのツーリングキャンプなので、遠くを目指さず下道で行ける範囲、かつ積載量を加味してハンターカブでテント泊してきました。ハンターカブの積載力は本当にすごくて、リアキャリアだけで余裕を持ってキャンプ道具が積めてしまいました。真冬に行くとなると更に嵩が増しますが、そうだとしてもこの装備で考えると寝袋が厳冬期用に替わるくらいなので、余裕を持って行けそうです。

リアキャリアにてんこ盛りに載せたらスタンド1つだと転倒しかねない感じになったので、サイドスタンド2個にしたり強化しないといけないなと考えています。

転職

10月末に13年半勤めたGoogleを退職し、11月からAWSに勤務しています。

ymotongpoo.hatenablog.com

ここ何年かは、自分の興味による理由ではなく、他の要因でキャリアが決まってくることが多くなってきて、今回もそういった事情での転職でした。前職と現職で感じたのは、どんなに大きな組織にいても、身近な権限を持った人間の振る舞いが自分の身の回りに大きな影響を及ぼすということです。そういった意味では現職のマネージャーとディレクターには今のところ恵まれています。会社が変わると丸ごと文化も変わる上に、オンボーディングがかなりきっちり組まれているので、来年2月くらいまではそのキャッチアップで結構時間が取られる感じになっていて、少し焦りを感じています。

また新しいコミュニティに入るということで入社前は緊張していましたが、今のところAWS JapanやJAWS-UGのみなさんが温かく迎えてくださって、大変ありがたく感じています。JAWS-UGには、これまで得た知見を共有することでの貢献から始めていければなと思っています。一方で、AWSとしてJAWS-UG以外のコミュニティイベントへの支援もする、というのが今回の転職での私への期待として挙がっていたので、こちらはこちらで去年までと同様に関わっていければと思います。

1つ懸念点としては、日本ではコミュニティイベントが週末に開催されることが多く、家庭の事情を考えるとどうしても選択して参加せざるをえないということです。これから平日開催のイベントが増えることを期待しています。

語学

スペイン語は相変わらずDuolingoを淡々と続けているんだけれども、他の言語はスペイン語を継続するために辞めてしまいました。日常で使う機会がないとモチベーションを維持するのが難しいものです。

スペイン語のほうはなんだかんだで世界中で話者が多いので、使おうと思ったらまだ機会があるので維持できています。先日もre:Inventで南米から来ていた参加者たちとちょっとした会話をする機会がありました。

先日読んだ、尊敬するKazu Languagesさんの著書で書かれていた語学習得法の中で、自分が前から気になっていたPimsleurがおすすめとして書かれていたので、始めようか迷っています。(サービスを始めるとなると1日30分を必ず確保しないといけない)

来年に向けて

  • コミュニティ関連
    • JAWS-UGへの貢献
    • OpenTelemetry meetup の活性化
    • Goコミュニティへの新しい貢献
  • 執筆・翻訳・監訳
    • 書き下ろし
  • 趣味
    • ツーリングキャンプをもっと
    • グリル料理を覚える
  • 語学

*1:GB500TTに興味があるよ、という方はご連絡ください

OpenTelemetryの公式ドキュメント日本語化プロジェクトのメンバーを募集しています

はじめに

こんにちは、AWSデベロッパーアドボケイトをしているものです。この記事はOpenTelemetry Advent Calendar 2024の最終日の記事です。現時点で何日か穴が空いてるので、代打で書きたい方がいたらぜひご参加ください。去年の記事みたいなゴリゴリの内部実装みたいな話を書こうとも思いましたが、OpenTelemetryの盛り上がりを来年以降も継続するためにメンバー募集をしたいと思います。

宣伝

唐突に宣伝ですがOpenTelemetryの概念を理解するための入門書として『入門OpenTelemetry』という書籍が来月末に発売されます。

"Learning OpenTelemetry"の翻訳書です。ぜひ予約してください!

OpenTelemetry公式ドキュメントの翻訳プロジェクト

去年の6月にOpenTelemetryの公式ドキュメントの翻訳プロジェクトが密かに始まり、8月に正式にプロジェクトとして大々的に公開されました。

opentelemetry.io

現在、翻訳が進められている言語として、日本語、中国語(北京語)、スペイン語ポルトガル語、フランス語があります。進捗は言語によってまちまちですが、公式ウェブサイトの画面右上にある言語メニューを選択することで各言語のドキュメントを確認できるようになっています。

実際に上のアナウンスが日本語化されたブログ記事がこちらです。

opentelemetry.io

参加方法

私は母国語で公式ドキュメントが読めるというのはユーザーの拡大において非常に大切なことだと思っています。これを実現するには多くの人手が必要なのですが、今のところ日本語化のコントリビュートは4人からのみで、そのうちほとんどが私が翻訳したものになっています。しかし最近転職とかもあったので、私がほぼ稼働できていません!この火を途絶えさせないためにもぜひ参加メンバーを募集したいと思います。

コントリビュートの方法に関してはこのページに書いてあるので、面倒ではあると思いますがまず上から読んでください。(特にTranslation Guideのところが大事です)

opentelemetry.io

サンプルとして、 open-telemetry/opentelemetry.io にある既存の日本語版を見てもらえればと思います。

github.com

pull requestを作っていただけると、 @open-telemetry/docs-ja-approver になっている人々(現状日本語話者は私と @katzchang )がレビューしてからマージという流れになります。

github.com

pull requestがいくつかマージされると、上のGitHub teamに登録される流れとなり、晴れてapproverになれます。

気後れする方へ

とりあえずどんな感じなのか気になっているけどいきなりpull request作るのは気後れしてしまうという方は、ぜひOpenTelemetry翻訳プロジェクト関係者が集まるチャットに参加して気軽に話しかけてみてください!

まず公式はCNCF Slackの #otel-docs-localization チャンネルです。ここでは翻訳プロジェクトに関わっている世界中の主要なメンバーが全員揃っている上に、なんとまだいまは人が少ないので非常にカジュアルに会話できるという、大変オトクなチャンネルになっています。

cloud-native.slack.com

しかし「やり取りを英語でするのはちょっと・・・」という方向けにもおすすめの場所があります。それが古に作った「Observability Japan」という怪しいDiscordサーバーの #otel-docs-ja チャンネルです。

discord.gg

このDiscordサーバーですが、いまは OpenTelemetry meetup の開催直前になるとちょっとだけ盛り上がるだけという、かなり過疎なサーバーですが、質問などがある場合はすぐに反応があります。

このチャンネルは元々はOpenTelemetryの仕様が1.0になる遥か前に勇み足で日本語化を始めた際に、連絡用に作ったチャンネルだったのですが、公式な翻訳プロジェクトの開始に伴い、元々の日本語化プロジェクトのレポジトリはアーカイブとなりました。

github.com

ぜひお気軽にご参加ください!

やらないといけないこと

すでにプロジェクトは始まっているので、淡々と翻訳していくだけなのですが、記事の翻訳をするにともなって、副次的に次のようなことも課題として挙がっています。

  • 訳語の統一、およびそのブレの自動化
  • 言語間で差異が出ている見出しの順序の統一

方針などは議論しながら進めていければ思いますので、興味を持たれた方は上のSlackや、私のTwitter DMなどでご連絡ください。

おわりに

宣伝もしたとおり『入門OpenTelemetry』も出ますし、来年はOpenTelemetryがますます飛躍する年だと思います。ぜひ一緒に盛り上げていきましょう!

それではみなさん良いお年を!

Googleを退職します

こんにちは。Google CloudでオブザーバビリティやSREを担当していたエンジニアです。明日でこう名乗るのは最後になります。明日、2024年10月31日付でGoogleを退職します。

かしこまった挨拶

Googleに入社してから10年目までの話は次の記事で一旦まとめているので、改めて振り返ることはしません。

ymotongpoo.hatenablog.com

上の記事を書いたのは新型コロナ禍真っ只中で、カンファレンスなどもみなオンラインばかりで、人とのつながりがなかなか難しくなったころでした。その後、ワクチン開発や発症後の処置方法の確立、新型コロナウイルスの5類感染症への移行などがあり、オンラインからオフラインへの移行が再び起こりました。Google Cloud Innovatorsも立ち上がり、上記の記事の後の数年はこのコミュニティの活性化を大きな柱として仕事をしていました。

そして、唐突に退職に至ったわけですが、これも仕事が嫌になった、とか、評価が悪かった事による解雇とかいった理由ではなく、諸般の事情(主に家庭)から諸々検討した結果、そうなりました。13年半勤めた会社をこのような形で退職することになるとは思いませんでしたが、逆にこういったことがないとずっとGoogleで働いていたと思います。入社時と比べると企業の大きさは社員数で見ても8倍以上*1、売上高では10倍以上*2となりました*3。在籍中にはCEOが3回変わったことも含め、企業の文化も大いに変わったところもあり、残念ながら多くの良いと思っていた文化が失われました*4。しかし、依然として社員として働きやすい企業であることには変わりません。技術インフラも素晴らしいものが多く、いまのところまだ世界の先端をゆくものも多く見られます。

社内で仕事をご一緒した同僚も素晴らしい方々ばかりでした。職務上、開発、マーケティング、営業、技術営業、法務、PR、コンサル、サポート*5といったさまざまな職種の方々とご一緒する機会が多くあり、さらに自分の場合はそれが複数の製品においてありました。曲が強い人、いつでも穏やかな人、情熱ほとばしる人、信じられないほど思慮深い人など、みなそれぞれに個性的な同僚ばかりでした。振り返ってみると、こういった一人ひとりがGoogleの強さであると、あらためて感じています。国内外問わず同僚という枠を超えて多くの友人ができたことはかけがえのない財産です。

また社外の多くの方にもお世話になりました。YouTubeではコンテンツホルダーのみなさまと、Partner Developer Relationsでは初期採用事例として実装に協力してくださった企業の方々と、Cloud Developer Relationsではさまざまな顧客企業の方々と多くの関わりがありました。多くの場面で実際の利用者の視点からの製品フィードバックをいただき、ときには懇親会でざっくばらんなお話をしたりと、大変親しくさせていただきました。

コミュニティのみなさまにも大変お世話になりました。多くの技術カンファレンスに登壇する機会がありましたが、登壇者として、参加者として、スポンサーとして、多くの方々との関わりがありました。Google関連コミュニティも大変楽しく関わることができました。Google Developer Groupの皆様にはイベントで各地域にお邪魔した際に大変良くしていただきました。Google Developer Expertのみなさまには月例のミーティング、あるいは全然テクノロジーが関係ないBBQといったアクティビティなどで親しくしていただいたとともに、さまざまイベントでのみなさまの登壇やオンラインでの発信からは多くのことを学びました。何気ない会話が私の業務に生かされたこともたくさんありました。Google Cloud Champion InnovatorsのみなさまにはGoogle Cloudの多くのイベントでお世話になりました。これからもCloud Innovatorsの発展を楽しみにしております。

Googleという会社は、ご存知の通り、とんでもなく多角的な事業展開をしている企業です*6

これらすべてを行っている企業は2024年現在、ビッグテック/ハイパースケーラーと呼ばれる企業を含めても他に存在しません。そのような企業で、しかも各ビジネスが成長する中で、それを傍らで見ることが出来たというのは非常に幸運なことだったと感じています。特にGoogleにおいてDeveloper Relationsという部署は、常に各種製品の開発チームと関わりながら、ときには一緒になって開発を行うことができる、稀有な部署でした。(主要なサービスだとGoogleマップ以外には何らかの形で関わった事がある)さまざまなプロジェクトの思い出を数え上げればキリがありません。2013年後半から11年もの間、デベロッパーアドボケイトとしてGoogleで働けたことは私のキャリアにおいて大きな財産です。

退職することにはなりましたが、Googleが提供するサービスや製品が日常生活に欠かせないインフラとなっている今、Googleという会社との関わりが途切れることはありません。1人のユーザーとして、これからもGoogleが素晴らしい製品や技術を提供し続けてくれることを願っています。

13年半、ありがとうございました。

とりとめのない雑記

訪問したオフィスとか

訪れたオフィスの一覧を思い出して書いてみたけど、結構いろいろなところに行かせてもらった。ロンドンとニューヨークのオフィスが好きだった。パリ、シアトル、チューリッヒは結局行くきっかけがなかったのが残念だった。また新しい本社ビルも結局見ることはなかった。

San Brunoのオフィスは買収したYouTubeの本社をそのまま使ってたんだけど、食堂に入ってた会社の質が良くなくて、数多あるオフィスの中でもカフェは特に不人気だった。しかも外に食べに行くにしても歩いていける場所には選択肢が無くて、YouTubeのチームメイトはかなり食事に不満を持っていた。いまは改善されてるらしい。

  • Tokyo (Roppongi, Shibuya)
  • Seoul
  • Taipei
  • Hong Kong
  • Manila
  • Hyderabad
  • Kuala Lumper
  • Singapore (Asia Square, Mapletree)
  • Jakarta
  • Sydney
  • Melbourne
  • London (King's Cross, Victoria)
  • Amsterdam
  • Copenhagen
  • Berlin
  • San Francisco
  • San Bruno
  • Mountain View (Sunnyvale)
  • Los Angeles (Beverly Hills, Playa Vista)
  • Chicago
  • New York

あと自分は正社員の中でいうと勤続年数が全社員の上位6%くらいだったらしい。逆に13年以上在籍してまだ上位に5%以上の長期在籍者がいるというのに驚いた。

大変だったことなど

楽しかったことはたくさんあって書ききれないので、話す機会があればまたそのときに。

YouTube Liveの配信サポート

YouTube Liveがリリースしてまだ間もない頃にLIVE福島の郡山の回を現地で配信サポートしていたら、ユニコーンYouTube Live使ってリモート参加することになった。嫌な予感が的中して、現地で配信担当してた業者が配信をエンコードをモニタリングも兼ねてるノートPCで行い、WiFi経由で、バックアップ回線なし、モニタリングと同系統の回線を使って配信してくれたおかげで映像はカクつきまくって音も飛び飛びで会場はブーイングの嵐。明らかにデータ送信側の問題なのに、受信側のYouTubeのせいにされてめちゃくちゃ腹たった上に技術側の人間が現地に自分しかいないから、どうにかしてくれと言われてめちゃくちゃ困った。

あと視聴者がすごく多くなって急にラストワンマイルでのレイテンシーがひどくなったという報告を受けたので、現地からニューヨークにいたYouTube SREとGoogle Meetで話しながら対応したのはしびれる瞬間だった。

出張中に車上荒らしにあった

本当に面倒だった。

ymotongpoo.hatenablog.com

ymotongpoo.hatenablog.com

Google Now カードの対応

Googleアシスタントの前身となるGoogle Nowという機能があって、その中にサードパーティ企業がAndroidiOS向けのGoogle検索の上部にカードを表示できる機能があったんですが、ある企業が実装がうまくいかないというんでサンプルコードを書いて提供したところ、あろうことかそのコードをそのまま本番稼働させて事故になった。いまはもうサービスごと消えたんで良かった。

チェンナイのホテルで衰弱

このときの出張が、そもそも旅程が強硬だった上に、ハイデラバードまでは同僚と一緒に移動してたのがチェンナイへ行くのは自分ひとりで緊張感が高まっていた。全館カビ臭いホテルに着いてすぐに腹痛と下痢と熱に見舞われ、何も食べられずにベッドでポカリ飲みながら寝てたときは翌日登壇できると思えずしんどかった。翌朝には少し体調が回復したんで、なんとか登壇できて、その後のデリーへの移動もなんとかできたけど、とてもじゃないけど同じような旅程では行けないなと思った。案の定他の同僚も辛かったらしく翌年から旅程が変更になった。

ymotongpoo.hatenablog.com

gdg.community.dev

干し芋

www.amazon.co.jp

次の仕事

11月1日から新しい職場で働きます。

*1:2010年末で24,400人、2023年末で182,502人

*2:2010年度で230億ドル、2023年度で3,060億ドル

*3:この間にアメリカ自体のインフレもあるので単純な比較は出来ませんが

*4:大企業になったので不満がないかといえば嘘になりますが、今回の退職はそれとは関係のない話

*5:Google社外にも伝わる組織名に言い換えています

*6:これ以外にAlphabet傘下の別子会社も含めると自動運転などもある

*7:10億人以上のユーザーのいるサービスが検索、YouTubeGoogleドライブ、GmailGoogleマップGoogle Playストア、Googleフォトと多数ある

『SREをはじめよう』という本が出版されました #becoming_sre

はじめに

こんにちは、Google Cloudのオブザーバビリティ/SRE担当者です。私が翻訳しました『SREをはじめよう―個人と組織による信頼性獲得への第一歩』という書籍がオライリー・ジャパン社より出版されました。書店ならびに各社オンラインストアでご購入いただけます。

www.oreilly.co.jp

『SREをはじめよう』はどんな本か

(2024.10.17 追記: Forkwellさんのイベントで書籍紹介を行いました

www.youtube.com

本書は『SREの探求』のようにGoogle以外の組織を含めた、より一般的な文脈でのSREの実践を、オムニバスなエッセイの形でなく、概論の形で捉えたい人には最適の書籍です。すでに原著の『Becoming SRE』の日本語の感想などもいくつかの記事で見かけていますが、本書はまとめを読んで理解する、という書籍ではなく、本書と対話をするつもりで読み進めながら考えるほうが効果的な書籍だと思いますので、すでにまとめなどを読まれた方もぜひ翻訳版を手にとって一読いただければと思います。

本書は良くも悪くもSREを理解するための書籍です。SREとはなにか、を整理して要点を提示してくれている側面はあるものの、全体としては読者がSREの実践において現時点でどこにいるのか、その認識をより明確にするための補助となる書籍です。したがって、製品の細かな設定やベストプラクティスの構成に関する話ではなく、概念や文化、プラクティスに関する確認を散りばめています。「すでにSREは実践できている」と自認している方々にも、自分たちの立ち位置を確認するために、有用な書籍だと思います。

私が訳者としておすすめしたいのは、読者のみなさんの組織の中でSREに取り組んでいる方々全員で、本書を輪読をしながら感想や意見を交換することです。SREには多くのプラクティスが存在し、そのプラクティスの実践に寄り添うためのさまざまな技術や製品が存在します。(オブザーバビリティ、CI/CD、機能フラグ、ストレージ、コンテナオーケストレーター、IaC、ポリシーマネージャー、etc...)これらを、SREの根幹である「信頼性」を「適切なレベル」で「継続的に」維持するために使うという意識がある場合とそうでない場合とでは、システムに対する見方が大きく異なってきます。

本書の本文中にもあるように、本書はSREの概要に関してGoogleが提唱し続ける価値や実践に寄り添うようにしていますが、一方で多くの著者自身の意見を述べています。脚注のレビュアーのコメントにもぜひ注意を向けてみてください。本書を読み進めながら、「SRE実践の幅」を感じとってもらえれば幸いです。その幅を感じることで、本書以外のSRE関連書籍をあらためて読んだ際に、新たな発見があることと思います。

みなさんの感想をお待ちしています。

こぼれ話

著者 謝辞内の脚注7

今回、本を書くことは容易なことでしたが、世界は大変でした。本当に辛かった。誰にとっても。

この文の最後に脚注7として「原著の執筆は2021年下旬から行われました。」とありますが、これは新型コロナ禍であったことと、議事堂襲撃事件などを含め、アメリカでの治安の急激な悪化が背景にあります。著者がアメリカ在住なので本文でそのような表現になっています。(著者に確認済み)明言をしていないことと、議事堂襲撃事件はアメリカ固有の文脈が強く、日本語訳版において「世界は大変でした。〜誰にとっても。」という内容に即すかが悩ましかったので、新型コロナ禍の部分を強調でいるような含みをもたせるほうが良いと思い、脚注も同様にニュアンスを含めるにとどめました。

序文 アドリエンヌ・リッチの詩

序文冒頭のアドリエンヌ・リッチの詩の引用は最後の最後まで悩まされました。たとえば、3章の脚注10におけるリルケの詩や10章の脚注9にある首楞厳経、あるいはそれこそ他のオライリーやその他の著名な技術書からの抜粋などは、各々の日本語訳版をあたることで表現を揃えられました*1。しかし、このアドリエンヌ・リッチの詩に関しては日本語訳版が見当たらず、自分で翻訳することとなりました。

付録C 第10節

日本語話者、および日本在住の方向けのSRE関連情報を加筆しました。正直この内容は流動的なので掲載するか迷ったのですが、日本のSREコミュニティの発展を願って掲載しました。こういった情報がどんどん増えることを期待しています。

*1:資料の検索にあたっては編集の瀧澤さんのお力添えがなければ何倍もの時間がかかっているところでした。あらためて感謝します。

SRE NEXT 2024で「オブザーバビリティのマクロからミクロまで」というタイトルで発表しました

はじめに

こんにちは、Google CloudでオブザーバビリティやSREのデベロッパーアドボケイトをしているものです。少し時間が経ってしまいましたが、去る8月3-4日に開催された「SRE NEXT 2024」にて、開発フェーズの各段階におけるオブザーバビリティについての発表を行いました。

sre-next.dev

スライドはこちらです。

speakerdeck.com

動画はこちらです。

youtu.be

発表内容のTL;DR

本番環境が持つべきオブザーバビリティ(マクロなオブザーバビリティ)は、事前に拾いきれない不測の事態を発見し対応するためのものであるのに対し、リリース以前のオブザーバビリティ(ミクロなオブザーバビリティ)は、求められたパフォーマンスを提供していることの確認をするためのものです。そのため、それぞれに用いるツールセットや取り組み方には違いが生まれます。

これらを理解するために推薦する書籍として以下の4冊を挙げます。

  • 『SLO サービスレベル目標』
  • 『オブザーバビリティ・エンジニアリング』
  • 『効率的なGo』
  • 『詳解 システムパフォーマンス 第2版』

こうした情報を一貫した日本語で、日本の方に早く広く伝えたいので、翻訳活動を行っています。

『効率的なGo』という本が出版されました #efficient_go

はじめに

こんにちは、Google Cloudのオブザーバビリティ/SRE担当者です。出張中で発売日にきちんとした記事が書けなかったのですが、去る2月24日に私が翻訳しました『効率的なGo―データ指向によるGoアプリケーションの性能最適化』という書籍がオライリー・ジャパン社より出版されました。書店ならびに各社オンラインストアでご購入いただけます。

www.oreilly.co.jp

電子書籍版はオライリー・ジャパンのサイトにPDFおよびEPUBでの提供がありますので、そちらよりご確認ください。

『効率的なGo』をなぜ翻訳しようと思ったのか

私は業務において、SREやオブザーバビリティに関わる各種プラクティスの啓蒙や、それらの各種製品(Google Cloudのプロプライエタリ製品やオープンソースソフトウェア、その他関連製品なんでも)を使った実践などを解説したりしています。ここ数年でのオブザーバビリティに対する注目が高まったこともあり、計装やAPMに関する情報はだいぶ増えてきたように思います。一方で、ボトルネックの究明を行った後の最後の一歩、ボトルネックの改善をどう行うのかについては、アプリケーション開発の文脈に渡されてしまい、あまり一般的な解説が得難い領域でした。

そんな中、『オブザーバビリティ・エンジニアリング』の翻訳の第2校がちょうど終わる頃に、原著 "Effecient Go" の出版が決まり、急いでその内容を確認したところ、まさにその解説が得難い領域をテーマとした書籍であったこと、そして内容もGoに限らない、アプリケーション性能改善一般に触れる書籍であったことから、翻訳の企画をオライリー・ジャパンへと持ち込みました。

ここ最近私が関わったオライリー・ジャパンでの翻訳書籍は、企画が立ち上がった順序で言うと、『SLO サービスレベル目標』『オブザーバビリティ・エンジニアリング』の順だったのですが、ちょうどこの順序でサービス全体のマクロな視点の目標設定から始まり、それを効率よく観察するためのオブザーバビリティの獲得、そして問題がある場合の原因の究明までは理解ができますが、最後の性能改善の部分が足りないとと考えていました。そこにおあつらえ向きに本書が出版され、まさに福音でした。

また本書がGoで解説していたことも大きいです。自分が最も使う頻度が高く、長らく関わっているプログラミング言語なので、『Go言語による並行処理』と同様に、内容の理解は他の言語で解説されたものよりもできるからです。

こういった偶然が重なり、本書を翻訳する機会を得ることとなりました。

「効率的なGo」はどのような本か

本書は次のような読者に有益であると考えています。

  • Goによって開発されたプログラムのパフォーマンスを改善したいと考えているエンジニア
  • 他の言語でのパフォーマンス改善方法を知っているが、Goでの方法を知らないエンジニア
  • パフォーマンス改善一般について理解したい方
  • Goがどのようにリソースを使うか、理解を深めたいエンジニア

本書は書籍タイトルにもあるとおりGo製のプログラムを中心として、そのパフォーマンス改善手法について解説していますが、Goに限らない、プログラムのパフォーマンス改善において汎用的な考え方が紹介されています。

また本書はGoのランタイムからOSまでという、これまであまり解説がまとまった形で得られなかった低レイヤーの解説にもある程度のボリュームが割かれている書籍なので、初級者向けの書籍では刺激が得られないエンジニアにも、非常に興味深い内容になっていると思います。

関連図書

本書の関連図書として私からいくつか挙げてみます。

まず先にも紹介しましたし、本書の訳者まえがきにも書いたのですが、『SLO サービスレベル目標』『オブザーバビリティ・エンジニアリング』は真っ先に挙げたい書籍です。

もちろん自分が翻訳に関わったからでもありますが、先にも紹介した通り、一連のオブザーバビリティの獲得と性能改善というシナリオを大局的に理解するために必要な情報はこの3冊で網羅されています。

そしてプログラムの性能問題の調査に関しては『詳解 システム・パフォーマンス』を外すわけにはいきません。非常に分厚く、また価格も高いので購入がためらわれるかもしれませんが、逆にこの内容の充実ぶりで7000円を切る価格で販売されているというのは破格と言っても過言ではありません。内容も、非常に丁寧に解説されていますし、頭から通して読まなくても、辞書的に使えるところが素晴らしいです。一人一冊とまでは言わないまでも、一社に一冊は備えておくことをおすすめしたいです。

本書にならんでGoの内部挙動を紹介する書籍として紹介したいのは『Goならわかるシステムプログラミング』です。本書より少しだけ上のレイヤーで広くGoのランタイムの解説をしています。システムコールのレベルでGoのランタイムとOSの関係性を知りたい場合にはおすすめの書籍です。

また本書で解説されている内容の中で、GoプログラムとCPUに関する章(第4章)がありますが、そちらに興味を持たれた方は『プログラマーのためのCPU入門 』をおすすめします。より一般的な立場からプログラムとCPUはどう連携して動くのかを深く解説されている書籍です。

おわりに

私は職業柄、システム全体、サービス単体、関数1つと様々なレベルでの性能最適化に関わる話をすることがありますが、一貫して広まってほしいと思っている考え方は「性能を改善するためには計測し目標を立てること」です。本書が、その普及の一助になることを期待しています。

YAMAGUCHI::weblogの2023年を振り返る

はじめに

こんにちは、Cloud Operations担当者です。2023年も最後日となりました。そして私の誕生日です。だんだんと歳を重ねることが億劫になる年齢となってきました。例のやつを貼りました。よろしくお願いします。

www.amazon.jp

2020年3月から始まった新型コロナウイルスの猛威により様々な制限を設けることによって経済的な影響を抑えつつなんとかやってきた数年間でしたが、今年のゴールデンウィークを境に季節性インフルエンザと同じ5類感染症に分類されることとなりました。その是非はさておき、これにより様々な生活への変化が訪れ、私も数多くのオフラインイベントに登壇する機会が増え、仕事や生活が大きく変わった1年でした。

過去の年次の振り返りはこちら。

ymotongpooの2023年

去年立てた目標

  • オブザーバビリティ関連の展開
    • SRE関連含めたプラクティスの普及
    • OpenTelemetryイベントの実施
    • Collector関連でOSSを出したい
  • Goコミュニティ関連
    • Go Conference 2023 Springの運営を無事終わらせる
    • Gophers Japanの活動の拡大
  • 執筆・翻訳・監訳をすすめる
    • 新たな翻訳企画
  • キャンプ
    • 1年を通じたハンモック泊の充実
  • 語学
    • DELE受験

先に述べたように、新型コロナウイルスの分類が変更されたことによって生活が大きく変化し、当初考えていたようなことができなかったり、逆に思わぬ成果が多かった1年でした。

仕事

今年は社内の仕事で、技術的な仕事とプロジェクトリード的な仕事の割合ではだいぶ後者が増えてきたので、なかなか思うように時間が取れなかったのですが、いろいろとチャレンジングな仕事が多く出来たかなと思います。

イベント登壇

今年も去年に引き続き登壇が多かった1年でしたが、特にオフラインイベントでの登壇が増えた1年でした。ざっと記録を見てみましたが、今年だけでオンライン、オフライン含めて30イベントに登壇したようです。今年は意識してSLOに関する話を何度も繰り返し行っていました。少しはSREのプラクティスの普及に貢献できたのではないでしょうか。

主な登壇の記録は一旦こちらにまとめてあります。

github.com

イベント運営

自分でイベント運営をすることがかなり減ってきましたが、今年はGo Conference 2023とOpenTelemetry meetup 2023-10の運営に関わりました。

gocon.jp

opentelemetry.connpass.com

Go Conferenceは2代目座長の @tenntenn が今回で座長を退任し、来年は @sivchari さんが座長となります。2013年に勢いだけで始めたイベントが10年続いたのも、ひとえに毎年メンバーは違えど、一緒に運営してくださる皆様と、スポンサーや登壇者、そして毎回応援してくれる参加者などの、支えてくださる皆様のおかげに他なりません。これからもGo Conferenceが続くことを願っています。

OpenTelemetry meetupに関しては、3年くらいずっとやりたいという話を @katzchang としていて、今回オフィス移転前のCARTA HOLDINGSさんのイベントスペースをお借りして実現できました。2023年はOpenTelemetryに対する注目度が一段と高まった年だったので、良いタイミングで実施できたと思います。盛り上がりです。

執筆・翻訳・監訳

つぎのような目標を立てていました。

  • 執筆・翻訳・監訳をすすめる
    • 新たな翻訳企画

今年の頭に昨年末に校了した「オブザーバビリティ・エンジニアリング」が出版されました。

ymotongpoo.hatenablog.com

その半年後に、紆余曲折を経て数年越しで「SLO サービスレベル目標」が無事出版に至りました。2年強、コロナ禍でリモートワークが前提の中での翻訳作業でしたが、編集の高さんを始め、関係者のみなさまとは結局一度も直接お会いすることなく出版となりました。来年、機会があれば、今度こそご挨拶できればと思います。

ymotongpoo.hatenablog.com

また同じく、コロナ前から始まっていた企画であった「実践プロパティベーステスト」も無事に出版に至りました。鹿野さんには長年にかけてご迷惑をおかけしただけでなく、編集作業においては私の翻訳から、日本語として格段に上質なものにしていただき、本当に感謝しています。

ymotongpoo.hatenablog.com

2冊は単純に作業が滞った結果今年出版になってしまったというだけではあるのですが、1年に3冊出版というのはなかなかタフな仕事ではありました。特に「SLO サービスレベル目標」と「実践プロパティベーステスト」に関しては、今年を逃すともう出版できないかもしれないというプレッシャーにより無理にでも作業を進めたというのが本当のところではあります。

いずれにせよ、担当編集者のみなさまにも恵まれ、非常に充実した1年となりました。現在、また別の本の翻訳にすでに取り掛かっていて、そちらは早ければ来年第1四半期には出るのではないかと思います。そちらも楽しみにしていてください。

出張/旅行

新型コロナ禍以降、久々に出張などが復活し、海外への移動が多くあった1年でした。写真は初めて行ったクアラルンプールにあるペトロナスツインタワー

スペインは旅行でしたが、それ以外はすべて出張でした。シンガポールやマレーシアは時差が1時間しかないこともあり、本当に気持ちが楽な出張でした。歳を取るにつれて時差ボケが本当にきつくなってきて、サンフランシスコもバルセロナもどちらも本当に疲れました。

来年もすでに海外出張がいくつか決まっているので、現地の人々との交流がいまから楽しみです。

趣味

キャンプ

キャンプに関しては次のような目標を立てていました。

  • 1年を通じたハンモック泊の充実

今年は年の後半は後述する住宅購入やら、イベントやらで思ったほど時間が取れず、ハンモック泊に行けたのは年のはじめだけでした。合計で2回ではありましたが、3月と6月に行ったので、季節としてはだいぶ快適で、防寒対策はクローズドセルマットを用意する程度で、あとは寝袋の性能で十分でした。ハンモック泊での外の空気に直接触れながら寝る感覚は何度行っても爽快感があります。まだ雨のハンモック泊は経験したことがないので、来年はタイミングを見計らって実施したいです。

語学

去年に引き続きDuolingoを1年継続できました。毎日コツコツできるものは得意です。

去年は「DELEを受けるぞー」と息巻いていましたが、11月はCloud Next Tokyoの準備やら、家族旅行やらなにやらでまったく受験とか無理でした!早く受けられるようにしたいところです。いまの感じだと、受験をするとなるとリスニングが明らかに不得意なので、もう少し音声インプットを増やしたいと感じています。家族旅行で行ったスペインも、こちらが話しかけたり、あるいは文章の読み書きをするのはわりかしできるようになっていると実感できましたが、リスニングは他の3つの技能に比べるとレベルが低いように思います。来年は何かしら対策したいところです。

ところで、クアラルンプールに12月頭に行ったことで、思いがけず始めたインドネシア語およびマレー語ですが、文法がかなりわかりやすいので、このまま続けて行こうと思います。

その他

家を買った

去年奨学金を完済して負債がゼロになったばかりでしたが、今年はそれよりもずっと大きな住宅ローンという負債を抱えることとなりました。少し事情が特殊な形で家を購入したので、住宅ローンの審査がなかなか通らず、13行に審査を出してようやく2行から承認を得たという感じでした。ネット銀行は本当にテンプレートから外れると審査が厳しいということを学びました。

本当にこの図のとおりでした。(引用元: 住宅ローンの基本 | モゲチェック

紆余曲折ありましたが、無事に住宅ローンが組め、物件を購入できたので、あとは淡々と返していくだけです。新しい家は築浅の中古戸建てなので、大きなリノベーションが必要ないのが助かります。家具などはいま使っているものがだいぶ年季が入ってしまっているので、これを機に一新しようと思います。

普通自動二輪の教習

前述した物件は地方都市にあり、家の周りを移動するのに車だけだと個人的には不便だと思ったので、一旦原付一種を適当に買おうと思っていました。しかし他の地方都市に漏れず、家の周りは車社会のため、原付一種は馬力の低さゆえに発進や坂道で不満に感じそうだと思い、原付二種を買うことに決めました。とはいえ自分は中型自動車免許しか持っていない(歳がバレる)ので、原付二種には乗れません。こうした事情から、新しいことにも挑戦してみたかったのものあって、勢いで普通自動二輪の免許を取ることにして、年末に通い始めました。

まだ今の段階では卒業検定には至っていなくて、あと1時間第2段階の見きわめをしたあとに卒業検定という状況です。年明けの検定でどうなるか、まったくわかりませんが、合否は一旦置いといて、いままでちゃんと動かし方を知らなかった乗り物を動かせるようになるというのは単純に楽しいです。またこの歳になると、人に教えてもらえることのありがたさをしみじみと感じます。

原付二種を買うと決めてから通い始めた教習ですが、すでに今の時点で普通に中型バイクが欲しくなってるので、おそらくいずれ買うことになると思います。まずは免許を取ってから、いろいろとレンタルバイクで試してみます。

来年に向けて

来年はこんな感じでやっていこうと思います。

  • コミュニティ関連
    • OpenTelemetry meetup とかハッカソンとかやっていきたい
    • Go Conference 2024は久々のオフライン開催なので無事に行う
  • 執筆・翻訳・監訳
    • 1冊は翻訳本を出す
    • 同人でもいいので何かしら書き下ろしたい
  • 趣味
    • キャンプでハンモック泊やタープ泊などの軽量キャンプに行く
    • 普通二輪の免許を取得したらツーリングキャンプに行く
    • グリル料理を覚える
  • 語学

マレーシアに行ってきた

はじめに

こんにちは、Google CloudでオブザーバビリティやSREを担当しているエンジニアです。先日バルセロナに家族旅行に行ってきましたが、今年最後の出張として12月初旬にクアラルンプールに出張に行ってきました。

バルセロナに行くときはアムステルダムまで13時間、そこから乗継便で3時間強と体力的に疲れるフライトでしたが、それと比べたらクアラルンプールまでは直行便で7時間程度なので余裕でした。

旅程

日程 アクティビティ
11/30 NRT→KUL
12/1 マレーシアオフィスで仕事&登壇者懇親会
12/2 DevFest KL 2023
12/3-4 少し観光&KUL→NRT

気付きと感想

Malaysia Digital Arrival Card(MDAC)

マレーシアは90日間の滞在でパスポートの残存期間が半年以上あればビザなしで入国できますが、それ以外にMDACというデジタル入国カードを記入して、入国審査自動化ゲートを使うことを推奨されました。

これは今月1日から義務化されたそうなので、これからマレーシアに行く場合には事前に登録する必要があります。12/8からは登録していないと出発できないそうです。登録自体はパソコンでやればすぐにできるので、これから行くときは気をつけないといけないですね。

KLIA Ekspressを使って市内へ楽々接続

クアラルンプールの中心地はクアラルンプール国際空港(KLIA)から60kmくらい離れているのですが、KLIA Ekspressという特急を使うと一駅でKL Sentral駅まで着きます。乗車時間は30分ぐらいで料金も55MYR(2023年12月現在で1700円くらい)なので、一旦KL Sentralまで移動したい人にはとても便利でした。

会社のオフィスがまさにKL Sentral駅のすぐそばで、自分はKL Sentral周辺のホテルを取ったため、とても便利でした。

現金かQRコードでしか支払えないところがある

日本もそうですが、個人商店のような規模のお店だとクレジットカードを受け付けてくれません。そのため、現金かQRコード決済を用意しておく必要があります。最低限のセーフネットになる現金を用意しておくのが安全でしょう。

自分は海外に行った際にはソニー銀行のキャッシュカードを使って現地ATMから引き出しています。ソニー銀行は為替レートがかなりお得で、手数料もそんなに高くないと思うので便利に使っています。

moneykit.net

blog.moneykit.net

ネットの情報によると普通に過ごすだけなら1日50MYRもあれば十分とのこと。だいたい3日しか滞在しないし、カードが使えるところにも行くので、200MYR程度ATMから引き出した。

Grab超便利

シンガポール出張は度々あるため、現地での移動のためにGrabのアカウントはすでに持っていましたが、マレーシアでも配車サービスといえばGrabなので同じアカウントを便利に使えました。料金もだいぶ安く、KL SentralからSunway周辺まで20km近く、35分の乗車で34MYR弱でした(日本円で1000円程度)。

また先のQRコードでの支払いに関しても、Grab PayというのがあってGrabアカウントに旅券番号を登録すればすぐに使えます。

電車は券売機の機嫌を知るのが難しい

Grabは便利なんですが、基本的に公共交通機関を無理なく使える場合は乗りたい主義なので、電車も活用します。Rapid KLという鉄道がKL Sentral駅を中心にクアラルンプール市内をさまざまに接続しているので、ちょっと乗ってKLCCのほうへ行ってみました。

まず切符売り場で切符を買います。日本のSUICA的なTouch'n Goというカードもあるのですが、券売機を使ってみたかったので切符にしました。

www.touchngo.com.my

これが券売機です。

この券売機がなかなかに曲者で、まずカードを使おうと思ったら「調子が悪いのでクレジットカードはやってません」という感じで使えませんでした(券売機右上の赤くステッカーで隠してある部分)。まあでも現金が余ってたので特に気にせず買います。路線を選んで、行き先の駅を選ぶと支払いの画面になります。

ここが完全にトラップで、券売機によって使える現金がまちまち!写真を見てわかるように、使えない紙幣には大きくバツ印が書いてあります。この券売機は5MYR紙幣まで使えますが、別の券売機を使ったときは紙幣が一切使えませんでした。小銭をそんなに持ってなかったので、そのときは仕方なく別の券売機に並びなおすわけですが、最終的な支払いの画面までこのステータスがわからないので、ちょっとしたギャンブル気分でした。

マレーシア国産車がとても多い

マレーシアは長年首相を務めたマハティール元首相が国産車構想を打ち立て、1985年にプロトン社を三菱自動車三菱商事との合弁で作ったあとに、それをうけてダイハツ三井物産との合弁でプロドゥアというコンパクトカーメインの会社が立ち上がった、という話を、マレーシア滞在中に大量のプロトン車、プロドゥア車を見かけて調べてみて初めて知りました。

おそらくGrabで配車を頼むと、結構な確率でこの2社の車が来ると思います。

商業施設のCフロアの意味がよく分からなかった

クアラルンプール市内のビル施設には当然いくつも階があるわけですが、その中でフロア名が「C」となっているところがチラホラありました。ヨーロッパ文化圏、北米文化圏の国にそれぞれそれなりに行ったことがありますが、C階という区分けを見かけた記憶がないのでなんだろうと思っていました。

特定の階がC階になるわけではなく、ビルによってその階の位置はまちまちで、ただ共通項としては他の施設と繋がっている階がC階になっていたので、おそらくConnectionとかそんなような意味合いの言葉の頭文字だろうと思っていました。

これはKLCCの階

こちらはNU Sentralの階

で、NU Sentralのフロアマップを見て「Concourse」と書いてあったので、なるほどと思いました。実際英語版Wikipediaには次のような説明がありました。

en.wikipedia.org

C for "Casino" or "Concourse"

もしかしたら他の国でも見かけているかもしれないけれど、この頻度で見かけるのはクアラルンプールの特徴かなあと思いました。

Duolingoのインドネシア語コースが予想以上に役立つ

せっかくマレーシアに行くので、多少現地語がわかったほうがいいと思い、行く2日前から付け焼き刃でDuolingoでインドネシア語のコースを取り始めました。「え、マレー語じゃないの?」という疑問を持つのは当然で、本当はマレー語のコースを取りたかったんですが、Duolingoにはインドネシア語しかなかったので、そちらを始めました。

www.duolingo.com

インドネシア語とマレー語は文法や語彙などは近しいものがあるため、知っているとある程度現地で看板などが読めたりします。

www.tufs.ac.jp

インドネシア語、マレー語はダイアクリティカルマークを使わないアルファベットを使い、発音もほぼローマ字読み(eやcがわかりやすく音が違う)で、文法はわりとシンプルで覚えやすい感じなので、学びやすいなと思いました。

www.tufs.ac.jp

現地で現地語を理解するというのは、この上なく楽しいものなので、出張や旅行に限らず、なるべく様々な言語を習得していきたいものです。

早朝にNEXがない

成田に朝6時に到着したのはおそらく初めてでした。

ja.flightaware.com

到着してみてから初めて気がついたのですが、成田エクスプレスの始発が7時40分とかで、せっかく早く成田に着いたのに1時間くらい暇な時間ができてしまいました。

www.jreast-timetable.jp

www.keisei.co.jp

ちょっとだけ始発が早く、かつ山手線までの所要時間はとりあえず短い京成スカイライナーに乗るという手もありましたが、なにせ山手線に着く頃には通勤ラッシュとぶつかる時間帯だったので、疲れた体で荷物を持ってその中を移動するのもためらわれたため、成田線快速逗子行きで品川まで行きました。結局座れはしたものの品川まで1時間半くらい千葉方面からの通勤混雑に遭遇したため、次はこのあたりのスケジュールも考慮して帰ろうかと思います。

参照

スペインに行ってきた(2回目)

はじめに

こんにちは、Google CloudでオブザーバビリティやSREを担当しているエンジニアです。この記事はpyspa Advent Calendar 2023の6日目の記事です。昨日はしろうさんの「2023に有った無なこと」でした。

今年は本当に公私ともに疲れたので、11/19-27の日程でバルセロナに家族旅行をしてきました。そのときに気づいたこととか感想を書いてみます。

旅程

日程 アクティビティ
11/19 NRT→AMS→BCR
11/20 散歩、フラメンコライブ
11/21 サンパウ病院&サグラダ・ファミリア
11/22 モンセラット
11/23 市内バスツアー、外食
11/24 バルセロナ水族館、外食
11/25 バルセロナ動物園、外食
11/26-27 BCR→AMS→NRT

スペイン旅行と言いつつ、全日程バルセロナのみの旅行です。

気付きと感想

スペインは7年前に一度行っていて今回が2回めでしたが、前回は大人だけでの旅行で、今回は子どももいる旅行だったので勝手がだいぶ違いました。特に夜に気軽に遊びに行けないのは、バルセロナの旅行においてはだいぶ勝手が変わります。1度行ってる場所だからそんなに新しい気付きは無いだろうと思っていたら、前回と同行者も異なれば、自分のスペイン語力も違うこともあって、多くの気付きがありました。

シベリア上空通れないのきつすぎる

ロシアのウクライナ侵攻開始以降でヨーロッパに行くのが初めてでしたが、事前にわかっていたとはいえ13時間超のフライトはなかなか堪えました。シベリア上空が通れないので、行きは北極圏ルート、帰りは中国上空ルートで帰ってきました。

しかし、北極圏ルートなんて冷戦時代の過去の話と思っていたので、まさかこうしてそのルートを使う羽目になるとは思ってもみませんでした。昔と違ってアンカレジで給油しないで済むようになっただけマシとは言えますが、体が大きいのでエコノミーシートに13時間はなかなかにハードでした。またいろいろと国同士のいざこざはありますが、中国も上空を通してくれていることは助かりました。ここを通れないとなるとユーラシア大陸上空は中東経由とかにするしか無くなります。

ja.flightaware.com

ja.flightaware.com

またスペインは旅行当時の2023年11月には日本からの直行便が存在せず、今回はアムステルダムでの乗り換えにしましたが、乗継便の待ち時間も含めて片道20時間くらいかかったので、移動で相当体力持っていかれました。多少親バカになりますが、うちの子どもは長時間フライトにも関わらず移動中ぐずりもせず、iPadや機内エンターテインメントなどで静かに過ごしてくれて、本当に助かりました。これで13時間未満の直行便であれば余裕を持って家族旅行に行けるという自信にもなりました。

スペイン語で畳み掛けられる

新型コロナ禍に入ってからDuolingoでスペイン語の勉強を始めたんですが、3年位続けているといよいよ実際にスペイン語圏に行って試してみたいという気持ちになり、今回のバルセロナ旅行は個人的に修学旅行の意味も込めて行ってきました。毎日少しずつでも続けているだけあって、読み書きに関してはかなり分かるようになっていて、街頭の看板や文章、お店のメニューなんかはそのまま理解できることが多かったです。

また店員との挨拶や注文なんかのやり取りでは、こちらがスペイン語で話す分には普通に理解してもらえました。一方で、聞き取りはだいぶ難しいと感じました。こちらがゆっくりでもスペイン語を話すと、相手は普通のスピードでスペイン語で返してくるため、それを理解するのに苦労することがしばしばありました。「ゆっくり話してほしい」といっても結局0.95倍速くらいの速度で返されることが何度かあったため、ゆっくり話してもらうことは早々に諦めました。

英語のリスニングがまだ苦手で、全然聞き取れなかった頃の感覚を思い出して新鮮でしたが、最終的にスペイン語で意思疎通できなかったときは英語でやり取りできる事が多いので、安心感はだいぶ違いました。英語は国際語とはいえ、前回来たときの学びのとおりやはりスペイン語が話せるに越したことはないなと実感しました。

カタルーニャ語優先だけどスペイン語は全然使える

バルセロナ含むカタルーニャ自治州は、近年でも独立に関して住民投票が行われたりと、歴史的経緯から長らく中央政府との確執が強い地域です*1。独自の文化も持っていて、地域の言語であるカタルーニャ語を地域公用語としています。スペインの国家としての公用語スペイン語ではあるので、公共施設などではカタルーニャ語スペイン語、英語の3カ国語が併記してあるのがよく見かけられます。

これは動物園内の禁煙に関する注意書き。右側に太字で大きくカタルーニャ語、左側に太字でスペイン語、細字で英語が書いてあります。

これは水族館内の案内。上からカタルーニャ語スペイン語、英語。

これは駅の路線案内。左から太字で大きくカタルーニャ語、普通のウェイトでスペイン語、斜体で英語

そんなバルセロナですが「カタルーニャ語を話さなければ疎まれて無視される」というようなことはまったくなく、むしろスペイン語で話すのであれば歓迎されるようなことばかりでした。自治州として確執はあるものの、外国人旅行者がその国の言語を話そうとする姿勢を示すだけでだいぶ歓迎されているように思います。

バイクが多い

バルセロナ市街に長期滞在して気がついたのですが、市内を走っているバイクが非常に多かったです。

特にビッグスクーターを多く見かけました*2。目にしたもので多かったのはヤマハのXMAXスズキのBurgmanでした。警察も白バイにBMWビッグスクーターを採用したりしているくらいでした。

バイクが多いので、当然バイク駐輪場も充実しています。こちらはバルセロナ市街中心地のカタルーニャ広場の端にあるバイク駐輪場です。

他にも町中にバイク駐輪場がいたるところに設置されていました。

タクシーが多い

良くバルセロナの観光ガイドには「タクシーが多いから普通に手を挙げて捕まえましょう」みたいなことが書いてありますが、実際に観光にいってみて改めて意識してみると、どこを歩いていてもタクシーを見かけました。

この黄色と黒のペイントがしてあって、車両の上にTAXIという光るサインと緑ランプがあり、どこかに登録番号が書いてあるタクシーは正規タクシーなので安心して乗れます。料金は自治州が公表していて、記載のある何段階かのレートが適用されます。

料金 時間 初乗り km毎
T-1 平日昼間(8:00-20:00) €2.30 €1.21
T-2 休日終日 or 平日夜(20:00-8:00) €2.30 €1.45

他にあとT-3とT-4という料金体系がありますが、前者はタクシーアプリ(後述)経由での固定料金、後者はクルーズ船に乗るときの固定料金なので、流しで乗るときは上の2つの料金体系だけ気にしていれば大丈夫なようです。(空港など入るのに別料金が追加されることもあります)

タクシースタンドもあって、このような黄色でギザギザが書いてあるところで「TAXI」という看板がある場所で手を挙げて待っていればタクシーが来てくれます。

なお、Uberバルセロナでは使えませんが、上記のように流しのタクシーがたくさん走ってるのであまり困ることはありません。それでも自分の場合は、復路の飛行機が朝6時で、朝3時半には出なければならず、かつコンドの管理会社もタクシーの予約の手伝いはできないとのことだったので、仕方なくタクシー配車アプリを使いました。

www.free-now.com

FREE NOWというアプリが一番使われているとのことだったので、そちらを使ったのですが、最初だけSMS認証をしなければならず、使っていた海外SIMがSMSに対応していなかったので、その設定のためだけに日本のSIMを一瞬だけ使いました。日本でアクティベートしてから行くことをオススメします。使い方はUberとかと変わらず簡単で、かつちゃんと事前に予約した通りの時間に来てくれたので良かったです。料金も事前に提示してくれていたので安心でした。(おそらく上のT-3に該当する料金)

朝3時半でもちょっと移動して待っていれば捕まえられそうなくらいにはタクシーが走っていたので、一人で旅行している場合にはあまり必要ないと思います。

公共のゴミ箱が多い

上のタクシーが並んでる写真の手前部分に黒いゴミ箱があると思うんですが、あんなゴミ箱が街中にありました。町中でコーヒー飲んだりチュロス食べたあとのゴミなんかをそこに捨てられて便利でした。

そしてそれとは別にめちゃくちゃでかい分別ゴミ箱がところどころにあって「このでかいゴミ箱はどういう扱いなんだ...?」と疑問に思っていました。家庭ごみなんかもここに捨てに来るそうです。満杯になるとゴミ収集車がいい感じに集めてくれるそうです。

スーパーのレンチン食材も美味しい

「スペインはご飯が美味しい」というのはもはや説明の必要のないほどの周知の事実ですが、スーパーで売っているレンチンの食材も日本に引けを取らないほど美味しかったです。これはある日のもう疲れ切ってしまってコンドの中で食べることにした夕食の食卓ですが、ムール貝イカスミパエリア、スパニッシュオムレツ、ズッキーニスープのいずれもただ買ってきたものをレンジなりコンロで温めただけです。どれも満足でした。地元ビールはあまり好みではありませんでした。

スーパーといえば、生ハムにかける本場の熱意を感じました。

自転車専用道はあるにはある

日本では自転車は原則車道ということになって、急場しのぎで車線の端に自転車マークや走行帯を表す青い印を描いただけのところがほとんどですが、バルセロナ市街では一応専用道らしきものが確保されている場所がチラホラありました。

とはいえすべての道路がこうなっているわけではなく、ない場合は日本と同じように車道の端を走れという感じでした。日本と比較して思ったのは自転車に乗る人がアグレッシブで、連結バスの横を自転車がすり抜けようとしたけれど、車幅の狭さのせいでバスの窓にぶつかってる人が一人二人ではありませんでした。

観光バスは初手で乗っておくと便利

子どもが時差ボケで眠い中歩くのは嫌だからバスに乗りたいというので、到着3日目は一日市内観光バスに乗りました。バルセロナ市内観光をしてくれる観光バスは2種類あって、紫のほうがバルセロナ市が運営しているもの、赤いのが民営です。公共機関にお金を落としたほうがいいと思ったので自分たちは市が運営するものに乗りましたが、民営に乗っても大差はないと思います。

3日目で乗ることにしましたが、一番最初にこれに乗っておいたほうが良かったなと乗ってから思いました。理由としては「バルセロナ市街の全容を楽に大まかに知れる」「主要観光地のクーポンがもらえる」からです。

バルセロナは南東にある海岸から北西の山際の高級住宅街まで南北に高低差があるんですが、それを効率よく回るのはなかなか難しいです。特に南側の地区はあまり便が良くないので、さーっと流して主要な施設を様子だけ眺めたいという場合には観光バスは便利だなと思いました。

またバスに乗る際にもらえるクーポンを使うと主要な観光地がまあまあ割引される(家族全員分だとお茶するくらいは割り引かれる)ので、観光地に多く行く場合にはおすすめです。(オンラインで予約する場合に使えるクーポンコードも書いてある)

おわりに

まだ気付きはあったような気もしますが、気がついたらまた追記します。

スペインは今回が2回目でしたが、前回も今回もとても楽しく過ごせました。特に今回はスペイン語をある程度使えるようになってから行ったのでより楽しめました。やはり語学は楽しい。長時間フライトは大変ではありますが、また機会があれば、次はマドリードやマラガなんかに行ってみたいです。明日は渋川さんです。

参照

*1:サッカーでもレアル・マドリードFCバルセロナの対戦であるエル・クラシコ中央政府カタルーニャ地方の代理戦争的な意味合いを持っていることも有名。

*2:もちろん、普通のネイキッドやツアラーなども見かけましたが、スクーターの数が多かったです