母が亡くなったとき、私はまだ学生だった。 それでも「お母さんの代わり」を引き受けた。引き受けるしかなかった。父は家事ができない人。 弟や妹も、学生生活をまわすことで精一杯だったと思う。 でも現実として、毎日の食事、洗濯、掃除、犬の世話、庭の手入れ、祖父母や近所との付き合いまで——全部、私が担った。泣きたいのは私も同じだった。 でも誰かの前で泣いたら、家族が崩れそうな気がして、泣けなかった。だから22歳で実家を出たとき、ちぎれそうだった心と時間が、少し戻ってきた。 でも今度は、仕事でくたびれた。職場の人間関係がつらくて、毎朝「もう行きたくない」と思いながら電車に乗った。 辞めたくてたまらなかった…