幾千もの声をもつ多様なものの全体のためのただひとつの同じ声、すべての水滴のためのただひとつの同じ《大洋》、すべての存在者のための《存在》のただひとつのどよめき。それぞれの存在者のために、それぞれの水滴のために、そしてそれぞれの声のなかで、過剰の状態に、すなわちそれらを置き換えかつ偽装し、そしておのれの可動的な尖端の上で回りながら、それらを還帰させる差異に達したのであれば(ジル・ドゥルーズ, 『差異と反復(下)』河出文庫, p.351)。 水平線から到来する無数の波の群れが交わす緊迫した、とはいえ希望も絶望もない力ないし可能態の「結果」としての海洋の光景を、そして海洋と無数の波との差異から生起す…