ふとした瞬間に思い出す。 あの時、あっちの道を選んでいたら──今とはまったく違う人生だったんじゃないかって。 たとえば進学のとき。就職のとき。あの恋を終わらせたとき。あの誘いを断ったとき。何かを諦めたあの瞬間。 「たられば」に意味はないと分かっていても、“もしあの時”が、いつまでも頭から離れない。 当時は、それが最善の選択だったと思った。 時間がなかった。余裕がなかった。自信もなかったし、人の顔色ばかり見て、自分の気持ちなんてどこかに置き去りにしてた。 けれど、あとになって思う。あれは「決断」じゃなくて「逃げ」だったんじゃないか。 自分を守るために、傷つかないように、無難な道を選んだだけだった…