◇導入◇ 前章では、「罪悪感と恥の文化」という観点から、西洋と東洋のモラル観の違いを概観しました。第2部では、善悪を哲学的に考える上でよく取り上げられる二大潮流、「功利主義」と「義務論」について詳しく見ていきたいと思います。これらは私たちの日常生活の中で無意識に用いている価値判断にも大きく影響しており、同じ行為でも「誰にとって・どれだけ利益があるか」「行為の意図は正しかったのか」で評価が異なることがあります。 さまざまな思考実験や、実際の法律・政策の場面でこれらの考え方が取り入れられており、その対立や折衷は現代社会においても大きな意味を持ち続けています。ここでは、功利主義と義務論の基本的な考え…