■再録 2 42話 井上ひさしさん、それはちょっと違うよ(2011-08-06) 井上ひさしが書いた日本語関連の本はほとんど読んでいるが、おそらくはその最後の本になるだろうと思われるのが、『日本語教室』(井上ひさし、新潮新書、2011)だ。この本は、2001~02年に上智大学で4回にわたって行われた講演を筆記したもので、えらくまとまりが悪い。話が散漫になりすぎているという点は別にして、もし私がその講演の場にいて、質疑応答の時間が与えられていたら、手をあげて「それは、ちょっと違いますよ」と言いたくなる個所があった。 この本の18ページから、母語の話を始める。母語とは、赤ん坊の「脳がどんどん育って…