板挟みに遭った場合に、迷うことなく弱いほうの味方に立つという選択は、簡単ではない。娑婆での立場の問題にせよ、わが身一個の思索上の問題にせよだ。一見容易な、疑う余地のない一択に見えてしまう点にこそ、事の面倒さがある。 『史記』の「商君列伝」に、こんな史実が記されてあるという。 ――昔、魏(ぎ)の宰相公叔座(こうしゅくざ)が重病の床に臥した時、魏王がしたしく見舞って、(公叔座の)手を取りながら、『もしその方に万一のことがあったら、誰を宰相として国政をゆだねたらよいであろうか。私のために教えをのこしておいてくれ』と言うと、公叔座は、『商鞅はまだ年こそ若いが、世にも稀な才能をもっております。陛下がもし…