今回は、古今和歌集のよみびとしらずの歌。 忘られむ時偲べとぞ浜千鳥ゆくへも知らぬ跡をとどむる (わすられむ ときしのべとぞ はまちどり ゆくへもしらぬ あとをとどむる) 古今和歌集 巻第十八 雑下 996 【普通の意訳】 どこへ飛び去っていくのか分からない浜千鳥が、足跡を残していくように… いつか忘れられてしまうであろう、この時代を思慕せよと、万感の思いを込めて、私たちはこうして文字を書き留めていくのです。 …… 「浜千鳥」の「跡」を、文字を書き留めると解釈するのは、古代中国の漢字発祥の伝説に由来するのだという。 伝説では、中国古代の黄帝に仕えていた、蒼頡(そうけつ)という史官が、鳥や獣の残し…