食材を鍋に入れた状態でそのまま食卓に出される料理。鍋物(なべもの)、あるいは鍋と呼称する場合もある。
一抱えほどの大きさの鍋に様々な食材を入れ、卓上コンロやホットプレートなどで調理しながら、複数人で囲んで食するのが一般的である。そのため、家族団らんの機会が減った現代において、鍋料理は家族の絆を深め、心も身体も温めるには最適な料理である。
最も一般的なのは陶器製の土鍋である。土鍋は熱伝導性が低いため火がじっくりと通り、長時間の煮込みでも焦げ付いたりする危険性が低いために鍋料理に適している。
基本的な鍋の形状は「浅くて口の広いもの」。これは、さまざまな材料がひと目でわかり、取りやすいからである。底は、卓上コンロの上での安定性を保つため、適度に丸みを帯びている。
近代以前の日本の住居には、囲炉裏が用意されることが多く、そこで煮炊きした料理を取り分けて食べる事は日常的に行われていた。江戸時代に入ると、囲炉裏の無い町屋や料理屋で、火鉢やコンロを使用した『小鍋仕立て』という少人数用の鍋が提供され、鍋から直箸で何人かがつつくという現代見られる鍋料理が発達した。その後も明治に入ってからの牛鍋の流行など鍋料理は一層の普及がみられた。調理の近代化により、熱源が木炭からガスなどに転換するにつれて、加熱をしながら食べるという方式は飲食店での提供が主となったが、カセットコンロなどの発明と普及により、再び家庭でさかんに鍋料理が食べられるようになっている。
鍋料理をするにあたりどこからともなく現れ、出汁の量、具材を入れる順序や位置、火加減など、非常に細かく指定して仕切る人。 「鍋を美味しく作ってくれるが、ちょっとウザい」という何とも微妙な立ち位置であり、一歩間違えると嫌われ者になりかねない存在である。
なお、「鍋奉行」のほかにも以下のような呼称がある。
奉行よりも厳しい仕切り役。鍋料理の場で少しでも自分のやり方に反する行為があると激怒するほどの人を指す。奉行より権力があり、逆らうことができない。
灰汁(アク)をすくい取る作業を担当する人。
鍋奉行とは逆に、ほとんど手を出さずにひたすら食べられる時が来るのを待ち、おいしくできた鍋を楽しむだけの人。男性を「待ち奉行」、女性を「待ち娘」と呼び、それぞれ「町奉行」「町娘」のもじり。
いずれの立場にしろ、鍋料理とはみんなでおいしく楽しく鍋を囲むものであり、その心を忘れてはいけない。
鍋料理―日本料理店、鍋専門店、居酒屋、エスニック料理店の鍋レシピ101品
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