緑水色の青磁の茶碗(青磁輪花碗)。高台周りのひび割れをホッチキスのように鎹(かすがい)で留めて修理してある。張りのある曲線を描いて立ち上がる姿の優美さ、わずかに緑をふくんだ青磁釉の美しさを持つ。なお「馬蝗」とはヒルを意味するという。 『馬蝗絆茶甌記』 他の史料 鎹で修理された陶磁器 参考文献 『馬蝗絆茶甌記』 馬蝗絆の由緒は、享保十七年(1727)に儒学者の伊藤東涯が記した『馬蝗絆茶甌記』に詳しく記されている。 これによれば、平安末期に平重盛が南宋杭州の育王山*1に黄金を寄付した際、当時の住持仏照からの返礼の品々の中に青い茶甌(茶碗)が一つあった。この茶甌は「翠光」が見たことがないほど透き通っ…