精神疾患と正常の間に明確な区分を設けることはできるのでしょうか。この点については、アラン・フランセスの『<正常>を救え――精神医学を混乱させるDSM-5への警告』(講談社、2013年)が示唆的だと思います。 アラン・フランセスは、アメリカ精神医学会『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版(DSM-Ⅳ)の作成委員長でした。アメリカ精神医学会を牽引していたフランセスが、引退後、DSM-5を作成している研究者と再会したときに、その診断のインフレを危惧して、本書を執筆したとのことです。 DSMは、第3版(1980年)から、操作的診断法が採用されています。操作的診断法は生物学的検査に基づくものではないこ…