ほり・たつお(1904-1953) 小説家、作家、批評家。随筆、翻訳も。室生犀星と芥川龍之介と知己、西欧と軽井沢を愛す。代表作に『聖家族』『奈穂子』『風立ちぬ』『曠野』『楡の家』、紀行記『大和路・信濃路』など。
1904年(明治37年)12月28日、東京生まれ。1929年、東京帝国大学文学部国文科卒業。 1953年(昭和28年)5月28日、死去。
馬酔木の花 馬酔木の木は 村の山 道の脇 どこにでもある。 花が咲いていない時の馬酔木は 濃い緑の艶のある葉っぱが 枝にふさふさとついている 全く目立たない木だ。 20代に読んだ 堀辰雄のエッセイ「大和路」に 馬酔木の花が出てくる。 京都 浄瑠璃寺の山門への道に 並んで植っているというのを読み 数年後(半世紀前)に友達と尋ねた事がある。 JRの駅から どうやって行ったのか覚えていないが 田舎道 山道を随分歩いた記憶がある。 そして 辿り着いた浄瑠璃寺は 本堂の前に 小さな池があるこぢんまりとした寺だった。 綺麗な吉祥天の像もあったと思うが 覚えていない。 馬酔木の木は 花の季節ではなかった。 …
読書日記 2024年2月14-20日 ・堀辰雄『風立ちぬ』 ・フランツ・カフカ(原田義人訳)『変身』 ・渡辺航『弱虫ペダル』11-12巻 ・アイザック・アシモフ(川村哲郎・仁賀克雄訳)『夜来たる』 ・泉鏡花『春昼・春昼後刻』 ・江戸川乱歩『押絵と旅する男』 ・谷崎潤一郎『陰翳礼讃』 ・カート・ヴォネガット・ジュニア(伊藤典夫訳)『スローターハウス5』 ・アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『悪童日記』 ・アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『ふたりの証拠』 ・アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『第三の嘘』 ・正岡子規『歌よみに与ふる書』 以下コメント・ネタバレあり
彼女の顔はクラシックの美しさを持っていた。(...)彼はいつもこっそりと彼女を「ルウベンスの偽画」と呼んでいた。 ルーベンス。国立西洋美術館にも何枚かは所蔵があつたと思ふ。ルーベンスの、陽光を帯びる鮮やかな色づかいは、確かに比類なく美くしい。だが彼の筆致は宗教画向きではない。彼の描く人間、薔薇色の肌を持つ人間は、生き生きとし過ぎてをり、背徳的ですらある。 主人公の年齢は定かでないが、恐らく十八から二十四の青年。年の割に少年の多感さを残してゐる。彼は恋愛に初心で、その気性にコンプレックスを抱いてゐるやう。本作はそんな彼の精神を分析する、フランス式の心理小説である。 以前、『聖家族』の時にも書いた…
※この記事にはアフィリエイト広告が含まれています 秋ソングなのに清涼感たっぷりの不思議な歌です! 楽曲を聴いてみる 当時は歌が下手だと言われた? こんなに爽やかなのに歌詞は悲しい内容 モチーフは堀辰雄さんの小説? この楽曲にはデュエットバージョンが存在! 秋ソングなのに清涼感たっぷりの不思議な歌です! 何だか最近昭和アイドルの歌を 取り上げることが多くなっているので 何となく流れで今回も取り上げます 今度は松田聖子さん「風立ちぬ」(1981年)です! このようなことを言うのもアレなのですが 私は聖子ちゃんより明菜ちゃん派なんです でも楽曲は好きなのでCDは持っているという そんな人間です でも…
♬ 風たちぬ~ 今は秋 今日から私は心の旅人・・・・ もう泣くなよとあなたがくれた・・・さよなら~~~ ♪ (「風立ちぬ」歌:松田聖子 作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一) ハチヤ君がコピーを整理しながら、くちずさんでいる。 私「おやまぁ、松田聖子かい?よくそんなキーの高い曲を歌うなぁ」 ハ「あ、のりもさん。おはようございます。この歌すきなんですよ。秋らしいでしょ」 私「と言うよりも、聖子ちゃんだからだろ?アイドル好き、ハチヤの面目躍如だもんな」 ハ「もぉぉ・・・」 私「当ったろう?俺なんかは、『風たちぬ』っていうと、堀辰雄の小説の方を思い出すよ」 ハ「はは、さすが、古いこと好きの『のりも』さん」 …
堀辰雄の心理小説。別で『美しい村』も読んでゐたのだが、そつちは途中で飽きてしまつた。本作は「ラディゲのやう」と評されてゐるがどうだらう。この小説に限らず、堀辰雄の作品は理知でなく、寧ろ感覚に特徴付けられると思ふ。印象派の絵画のやうに。 私と堀辰雄の出逢ひ。14か15の頃、漱石の前期後期三部作を読み了へて、次に何を読むべきか或る人に相談した所、堀辰雄を薦めて呉れたのだつた。中学生に『菜穂子』は分らなかつたが、堀辰雄の文體は記憶に残つた。 堀先生はご自分の好きな本、ご自分の世界の糧となるものを見つけられることがお上手な感じがしますね。 遠藤周作の言葉。彼の言は正鵠を得てゐる。堀辰雄は自分の世界を持…
今朝の体重65.3kg、体脂肪6.6%(だったかな??)。 よくわからないが体重が減った。まあ、1kg程度であるが。あまり関係がないかもしれないが、昨日は1週間ぶりにトレーニングセンターへ行った。1回500円、ロッカー10円、ドリンクは120円、計630円。 だいたいルーティンが決まっている。スミスマシン30分、18kgダンベルで肩あたり3セット、懸垂順手10回x3,逆手10回、ぶら下がり足上げ系3種類。ストレッチなどを行い、空いていれば1時間20分くらいである。 前は1回2時間以上やっていた記憶があるが、あまり長時間やるのは逆に良くない、という事も聞いて、なるべく高負荷で少ない回数、時間も早…
先週は1週間トレーニングができなかった。 今朝の体重は65.3kg、体脂肪は11%。思ったより体重が低いのだが、運動切れだと体脂肪はこんな感じ。 思うに我が身体の中で、「運動したら私は筋肉、運動しなかったら私は脂肪」と思っている部位や部分があるに違いない。 その子(?)の本質は果たしてどちらか。筋肉?脂肪?? 自身の体であってもわからないことだらけである。 先週はお世話になったかたの通夜に急遽参列させていただいた。翌日ご家族からお電話を頂いた。当方東京から参上したので、お気を遣わせたようだ。申しわけなかったが、故人であればそうしたと思う、とおっしゃる奥様の言葉が深く胸に残った。これも故人の計ら…
画像:リンクより 堀辰雄の名作小説を三浦友和×山口百恵で描く 今朝の1日1映画は『風立ちぬ』(1976年 日本)を鑑賞。 昭和17年、軽井沢。 病気の療養中である少女、節子(山口百恵)の家にたくさんの友人たちが集まるが、その中のひとり、達郎(三浦友和)は節子にひそかに好意を寄せていた。 節子にお見合いの話があると知り、不安になる達郎だったが、友人たちが案じてお見合いは破談となる。 そのころ、戦局は悪化し、達郎の友人が外地に向かう一方、節子にまた縁談の話が持ち上がる。 いよいよ意を決した達郎は節子に結婚を申し込もうとするが、達郎の友人の戦死を聞き…。 三浦友和×山口百恵というゴールデンコンビが共…
常なるものを見失う。 小林秀雄は「無常といふこと」でそのような事を述べている。 生きていることは一種の動物的状態であり、死して初めて「人間として確固たる形をなす」という事を言っている。 時間という概念は、現在の人間の殆ど全てが囚われている「ただの考え方」なのだろうか。それは「科学教」と同じく、現代人の宿痾なのであろうか。 「飴のように伸びる過去と未来」というような表現を小林はしている。 飴、という語を決して上品なものとして表現していない。むしろべたついて、子供っぽくて、忌々しいものだ、と言っているのだ。 スッキリと、「今」にいるしか無いのだろう。今には過去も未来も、「今」の要素の一つとして含ま…
相変わらず堀辰雄を読んでいる。つい『堀辰雄事典』まで買い求めてしまった。一つ一つの項目が小さな堀辰雄論であるのと同時に、誰がどの論考でどのように論じた、という部分まで書いてあるのがいい。まさに事典だ。bensei.jp 堀辰雄繋がりで、件の(というのはつまり、うちに全巻揃っている)彌生書房「現代の随想」シリーズから『福永武彦集』を読み始めた。福永武彦は堀辰雄の弟子とまで言っていいのかはわからないが、堀辰雄を慕っていた年下の文人たちの一人。筑摩書房版『堀辰雄全集』の編輯に従事した人物でもある。その随想文が良いのは当然としても、文体や考え方もわりと好きで嬉しい(良いには良いのだろうが自分は好きじゃ…
先週末のこと。 何かの拍子に『浄瑠璃寺の春』という堀辰雄の名随筆が思い浮かびまして、早速、ネット検索してみました。そうしましたら、春になると浄瑠璃寺を思い出すという書き込みが散見できまして、その多くは私と同じ年代の人たちでした。 たぶん、その理由は、高校生のときの教科書に、この随筆が採用されていたからでしょう。 今では流行らないワンフレーズの長い文体ですが、時間を持て余すようになった今読み返すと、その文章は、一緒に浄瑠璃寺に居るように思わせる力があります。 そんな突然の思いつきで、「春」である今こそ行くべきと旅程を考えました。 浄瑠璃寺は奈良と京都の県境にありますから、奈良駅から更にバスに乗ら…
タイトルの通り! 歴代アニメ映画興行収入ランキング TOP30をご紹介いたします。映画興行収入ランキングの中から、アニメ映画をピックアップしてランキング化しています。年々、アニメジャンルは日本で公開された映画の中でのシェアが高まってきていると思います。映画鑑賞作品選択の1つの指標(参考)としてご覧いただければ幸いです。Amazonプライムビデオで観る際は、会員見放題、レンタル、購入のいづれかの選択になります。※興行収入(こうぎょうしゅうにゅう)は、映画館の入場料金収入のことをいいます。※ランキングは、更新日時点に基づいております。〇 公式X(旧Twitter):プレシネマ更新:2024 / 5…
珍しく《文学》を感じさせる解説で面白いヨ。ドイツ文学はほとんど読まないできたけど、トーマス・マンはゲーテよりは読みたいとは思ってきたヨ。「魔の山」といえば在職中にリューマンが読んでいたのを見かけた覚えがあるけど、ボクが持っている文庫は未読ながら「ブデンブローグ家の人々」(ブッテンブローグと表記する場合もあり)だと思っていたけど、見当たらないネ(だいたい1回で見つかることは少ないけど)。自家には書庫がないので本はあちこちに散らばっているから、探すのがタイヘンでネ。 「魔の山」はいわゆるサナトリウム文学(結核文学)として知られているので、日本でいえば堀辰雄や立原道造などの〈軽井沢文学〉なのであまり…
こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 愛を求めて、人生の意味を求めてインドへと向う人々。自らの生きてきた時間をふり仰ぎ、母なる河ガンジスのほとりにたたずむとき、大いなる水の流れは人間たちを次の世に運ぶように包みこむ。人と人との触れ合いの声を力強い沈黙で受けとめ河は流れる。純文学書下ろし長篇待望の文庫化、毎日芸術賞受賞作。 第二次世界大戦争を経て、それまで隆盛していた日本の文学は大きく変化しました。空襲によって与えられた凄惨な経験と、戦禍によって与えられた精神への強烈な苦痛は、文学という形を通して新たな思想や哲学となり、第一次戦後派という思潮を生み出しました。その後、復興に伴い流れ…
「漱石は狂人」説。 ほー、宮崎は両国の生まれなのか。で、半藤はボート漕ぎで隅田川の仔細を語ると。 軍艦やら戦闘機やらのトリビアには全く興味湧かず。こいつらはやっぱ「愛国主義」者なのだわ(;´・ω・) 宮崎駿の父はアナーキーで権威が嫌い、デカダンなモダンボーイか。 最近では渋い画面がつくれず、強烈な蛍光色になってしまう。 堀辰雄の文芸賞の賞金3000円で婦人は戦時生活ができた、と。 英米のメカに惹かれ、中露独を貶める宮崎はバカデミー賞がふさわしいやね。 中島飛行機は三鷹から所沢まで牛が引っ張っていった。
四月は堀辰雄ばかり読んでいた。そんな気がする。四月のいつごろから読んでいたのか? もしかしたら三月だったのか?(そうではなかったと思うけれど) そのあたりは記憶の靄の向こうにありはっきりしない。はっきりさせるために日記を書いているのではないのか。日記をめくればすぐにわかるではないか。そう問う向きもあろうがはっきりさせなくても特に困らないので日記は参照しない。四月は堀辰雄の月だったと思う。 私は飽きっぽくて気分屋だから、断定は避けたいが、どうやら堀辰雄に惚れ込んでしまったのではないかと判断しても間違いではないと言えないこともないようだ。www.chikumashobo.co.jp 筑摩書房版の堀…
・不思議な時計 本の小説著者:北村薫出版:新潮社 <宮さん、宮さん>の調べが響く萩原朔太郎の遺品の時計行き着くところはそこなんだけど、本や映画、演劇等々に記憶の連鎖を追いかけるようにして、そこまでの逍遥を9つの連作にした作品です。泉鏡花文学賞をとった「水 本の小説」の続編。…って、内容が続いてる訳じゃないです。 昔の映画「猟奇島」「痴人の愛」小説、洋画の邦題映画語り穂村弘のエッセイ塚本邦雄のエピソード(誤記)授業について(上田敏)萩原朔太郎のあれこれ映画と父の思い出朔太郎の遺品猫町やらパノラマ館やら堀辰雄から蜂のトランプ朔太郎の時計前橋文学館の講演やらシェークスピアやら 読み終わって思いつくま…
萩原朔太郎は昭和十七年に亡くなり、その翌年から十九年にかけて、小学館から『萩原朔太郎全集』十二巻が刊行されている。 (第三巻『詩の原理』) この出版に関して、『小学館五十年史年表』(小学館社史調査委員会編輯・発行、昭和五十年)はその第三巻『詩の原理』の書影を挙げ、その内容明細もトレースしているけれど、全十巻と誤記し、十一冊までがたどられているだけだ。そうした記述や言及は大東亜戦争下の出版の事実の確認の難しさを伝えているし、それもあってこの時代における小学館版『萩原朔太郎全集』の企画や編集の実態は判明していない。『小学館の80年』(平成十六年)では言及すらもない。 それでも「同年表」からわかるの…
2023.3.15 旦那さんを奈良駅に送った後、ひとりで向かったのが秋篠寺 元々皇室好きな私は秋篠寺から名前が取られて秋篠宮家が作られたことは知ってましていつかは行ってみたいと思ってました。 入り口がわからず、最初裏口?に着き戻ろうとして車をこする。あーあやっちまったー 受付に行くまでの道の苔がとてもきれい 本堂が国宝です。 すっきりとしたきれいな建物 光仁天皇の勅願で建てられたお寺とのこと とてもきれいなので大規模修理が終えて間もないのではと思います。 中は撮影禁止🈲 ここは堀辰雄が東洋のミューズと呼んだ伎芸天という仏さまが有名みたいなのですが・・ この方です。写真お借りしました。 正直全く…
5月4日(土)晴れ 入国して2日が経った。初日こそ雨の中歩き回ることになったものの、昨日と今日はよく晴れている。たまに天気雨に打たれるくらいだ。パリは想像以上に寒い。行く前は半袖で観光を楽しむ気満々で、念のためと薄手の長袖や上着を持ってきたのだけれど、初日はそれだけでは足りないほど寒く、早々にパーカーを現地調達することになった。安心と信頼のPULL&BEAR、バリで一目惚れしてパーカーを買って以来、リヨンで手袋を現地調達した際にもお世話になり、今回で3度目の利用になる。狙い通り、好みのかわいい服を見つけることができた。日本に帰ってからも日常使いするだろうと思う。 2日目はジヴェルニーを訪れた。…
・だるい性別関係の手続きも一段落した。はず。窓口担当者は慌てて担当を変わったり、声をひそめてしゃべりがち。みんな、大丈夫だから落ち着いてください。 大声で復唱されたり嫌な顔をされたりするよりはいい。 ・4/20(土)、21(日)、TRPの日は仕事だった。以前は会場に行ったが、もう行けない。TRPへの思いは単純ではない。「昔はよかった」とは絶対に言わないが、しかし限界まで行ってしまったと思う。 ・次世代の人たちの話を聞いた。少し前には私ら世代が上の世代から「隔世の感」と言われたけど、もっと若い人たちの人生は全く別のフェーズに入っている。すごいなぁ。 ・性別に悩まされる時間が減って、自分の人生と生…
森辰徳くん、誕生日おめでとう!!! チームのバランサーとしていつも不動峰を支えてくれてありがとう!! 本日、4月18日は、不動峰中2年生「森 辰徳」の誕生日です!どんな強敵相手にも堅実に食らいつき、勝利への一歩を確実に重ねて行ける森くん。向上心と協調性を兼ね備えている、不動峰の躍進に不可欠な選手です!#テニスの王子様#森辰徳誕生祭2024 pic.twitter.com/SepYdT7gnc — 『新テニスの王子様』公式 (@tenipuri_staff) 2024年4月17日 本記事は森くんのプロフィールを読み解いて、オタクが名前、プロフィールの由来を勝手にちょっと考察する記事です。真実は不…
[演劇] 平田オリザ 『S高原から』 駒場アゴラ 4.15 軽井沢?あたりにある高級サナトリウムの面会室、裕福な若者たちだが、みな自分の死を予感しており、見舞いの友人たちと一緒に明るくふざけ合っているが、孤独は深い↓ アゴラ閉館で「さよなら公演」の一つ。1991年初演だが、平田演劇の主題である<人と人との距離の感情の動き>が見事に表現された名作だ。マン『魔の山』をベースに堀辰雄『風立ちぬ』をちょっと加えたという全体の構想がいい。サナトリウムなら入所者が昔の小説『風立ちぬ』を話題にする可能性は大いにあり、「いざ、生きめやも」の「めやも」の部分は、舞台の各人の深層意識の核心にもかかわらず、誰もその…
作者の小野塚力さんから、評論集 『第三の磁場』〜辻野久憲試論〜を御恵投いただき、早速読ませて頂いた。 二十八年という短い生涯の中で、早くに、梶井基次郎、堀辰雄、宇野浩二らと交わり、萩原朔太郎に師事した、今では忘れ去られた作家、辻野久憲について書かれている。 作者の小野塚力さんは、私を私小説の沼に引き摺り込んだ師匠で、まぁ、いつも面白い作品を紹介して、読ませたくなるように仕向けるそそのかせ、が本当に上手い。 本書もその得意技が至る所で炸裂している。 宇野浩二あたりならば、江戸川乱歩、横溝正史好きなら、エッセイから手繰り寄せて、ギリギリ現代でも読まれる作家ではあるだろうけど、その周辺であった辻野久…