宇宙人の説によれば、新約聖書の物語の欠陥は、キリストがそのみすぼらしい外見とはうらはらに、事実<この宇宙におけるもっとも強大な存在の息子>だったことであるという。だから新約聖書の読者は、はりつけの場面まで来ると、必然的に次のような考えに傾いてしまうのだ。ローズウォーターは読み上げた―― 「なんということだ――連中はとんでもない男をリンチにかけようとしている!」 この考え方には、双子の兄弟分がある。「リンチにかけてよい人間はほかにいる」だれか?有力なコネのない人間である。そういうものだ。 カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』 私たちは無意識的に「リンチにかけてよい人間」と「リン…