外出予定のある日だ。いつものゲン担ぎで、ベーカリーにてメンチカツパンを買う。本日の抱合せは、コーンマヨとツナサラダにした。 高校時分の級友がつどって花見散歩だという。谷中霊園の五重塔跡に集合とのことだ。むろん花より一献の連中だから、二次会の会場も設定されてある。 幸田露伴の小説『五重塔』で有名な塔だ。建立に携わった大工たちの噺である。その塔は昭和三十二年(1957)に火付け心中に遭って焼け落ちた。地中に残る土台石の天が今も地表に平たく見えて、わずかに伽藍の規模を窺わせる。 跡地は小公園として整備され、霊園内最大の広場として格好の目印となっている。広場前の道は、上野方向の霊園正面口から日暮里方向…