賢治は,自分よりも他人の幸せを優先するという性格を有している。この性格は幼い頃から持っていたようで,18歳で島地大等編纂の『漢和対照妙法蓮華経』を読んで感動し,やがて法華経の世界にのめり込んでいく。賢治は,法華経の教えを童話の形にした作品を数多く残した。例えば,『銀河鉄道の夜』(石井,2021a,b),『若い木霊』(石井,2021c),『よく利く薬とえらい薬』(石井,2021d),『マリヴロンと少女』などがある。また,『農民芸術概論綱要』の序論でも「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない・・・われらは世界のまことの幸福を索(もと)めよう 求道すでに道である」と記載している。ま…