節1:密室殺人の発覚 根津輝の死が「事故」でないことは、誰の目にも明らかだった。 部屋の扉は、内鍵と補助ロックで閉ざされていた。 窓は二重構造で、すべての鍵が内側からかかっていた。 そして凶器は見つからず、床には第三者の足跡すら存在しない。 玲奈は沈黙の中、ノートに簡潔な言葉を記す。 「密室殺人。証拠隠滅あり」 陽太が震える手で額を押さえながら言った。 「くそっ……マジかよ……これは、ヤバいやつだ……」 「ふざけないで」 玲奈の声は冷たく鋭かった。 「“これはヤバい”じゃない。誰かがここで“人を殺した”のよ」 全員が黙り込む。 詩帆は窓際に立ち、森をじっと見つめていた。 「逃げ場はないって、言…