籠花入に卯の花を一枝入れてみました。 花の白さは、ただ目にまぶしいのではなく、空気のなかに沈むような、静けさをたたえています。 「山笑う」と言われるこの季節、芽吹きに沸き立つような生命の色に満ちていますが、その中にあって、卯の花は少し異なるところに咲いているようです。にぎわいから身を引いて、それでもなお光の中に立っているような白です。芭蕉とともに白河の関を越える折、曾良は卯の花を旅の身に飾りとして添えました。 卯の花を かざしに関の 晴着かな 身にまとうものは簡素であっても、関を越えるという境にあって、せめて卯の花の白を「晴れ着」として身につける。そこには、境を越えて新しい場へ向かうときの慎ま…