『服従』(2015年) ミシェル・ウエルベック(大塚桃訳)『 服従』 (河出書房新社、2017年) ミシェル・ウェルベック(1956~)というフランス人の作家がいる。ウェルベックは、西欧文明がグローバリズムと個人主義を追求した結果、あらゆるつながりが喪失したとし、そこで取り残された個人のゆらぎや苦悩を一貫したテーマとしている。 2015年に発表した『服従』では、行き着いた孤独によってイスラム教に改宗する男の姿が描かれている。この小説は、フランス大統領選挙が行われる「2022年」という発表時からは7年後の未来が舞台になっている。つまり今年である。 この年に行われる大統領選挙の第一回で、移民排斥を…