のり巻き 3 最初の企画では、のり巻きの話は前回でお終いの予定だった。思い出を書くだけでいいと思っていたのだが、そうもいかなくなった。1970年代以降のソウルのことを知りたくて、『ソウル 街ものがたり』(黒田勝弘、ネスコ:発行、文藝春秋:発売、1988)を再読していたら、こういう文章が出てきた。30年も前に読んだ本だから、内容をすっかり忘れていた。 「旅館街では、夜が更けるとモノ売りの声が聞こえる。連れ込み旅館の客たちを目当てに、路地で声を発してモノを売る。モノはおもに食べ物である。なかでも夜食というわけだろうか、ノリ巻き売りがよく通る」(中略) 「(ノリ巻きは)日本ルーツの食べ物だが、韓国で…