詩「眼にて云ふ」は,賢治の死後,倉庫の下づみの反古の中から発見されたものである。この詩は『群像』昭和21年10月創刊号に「眼にて言ふ(遺稿)」というタイトルで掲載された。この詩に魂が体を離れてしまう体外離脱に類似した心性が見られる。 だめでせう/とまりませんな/がぶがぶ湧いてゐるですからな/ゆふべからねむらず血も出つづけなもんですから/そこらは青くしんしんとして/どうも間もなく死にさうです/けれどもなんといゝ風でせう/もう清明が近いので/あんなに青ぞらからもりあがって湧くやうに/きれいな風が来るですな/もみぢの嫩芽(どんが)と毛のやうな花に/秋草のやうな波をたて/焼痕のある藺草(いぐさ)のむし…