鮎川哲也氏の『黒いトランク』に印象深いシーンがある。 事件解決後、鬼貫警部が部下の丹那刑事と話している場面のことなのだが、鬼貫警部はまず「風見鶏が北を向くとき、風はどこから吹いているか?」と問いかけ、次に「無風状態のときもある」ことを指摘する。発想の転換に見えるが、むしろ「すべての可能性をきちんと検討したか」という戒めと捉えるべきで、シャーロック・ホームズの有名なあのセリフに通じる。 推理には帰納法と演繹法がある。このあたりは不勉強でよくわからないところもあるが、僕が親しんできた歴史学・考古学・民俗学は主に帰納法を用いる分野だと思う。 再現性がないため、仮説を立てても実験や観察で検証できないか…