「わかった」 まつりが前を見る。 「勇気が出た」 キーボードの前に行く。 「時間通り、始めよう。ヒカル」 僕は頷いた。正午にスタートの予定だ。五分前。 クラブの仲間。少し離れたところに集まっている。手を振ってくれた。 もっちーがペットボトルを持ってきた。 「大熊君がホットのお茶がいいって」 なんだ、あの野郎。ふたり、いい雰囲気だ。 思ったが口に出す余裕はない。時間だ。 まつりを見る。彼女が小さく頷く。唇が固く結ばれている。表情が固い。 おそらく僕の表情も強ばっている。仕方がない。初めての経験なのだ。 一曲目は、まつりのソロだ。Dセブン・サス・4で始まる。 彼女が二回、キーボードを叩いた。スピー…