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つらつら津々浦々

2018-04-02

2018 1-3月感想(短)まとめ

| 10:04

ちょこまかとtwitterにて書いていた2018年1月から3月の備忘録(一部加筆修正)です。


     ※


【劇 場】

◆奇抜なアイディアとケレン味、そして行き過ぎたユーモアに溢れるアクションを前作から十二分に引き継いだキングスマン: ゴールデン・サークル』マシュー・ヴォーン監督、2017)は、しかし一方で展開をあれもこれもと盛り込みすぎの嫌いがあって、いささか感情のやり場に困った作品であった。


     ○


◆劇場公開“も”するOVAガールズ&パンツァー 最終章 第1話』水島努監督、2017)は、そのメディアの性質上「えっ、そこで終わるの?」という物足りなさはあるが、それなりにいいぞ……てな印象。戦車ばかりでなく、キャラのアクションも豊富で楽しい。そうとも、戦車の砲弾とは、よけるものなのだ。


     ○


スティーヴン・キングによる大長編小説の映画化ダークタワーニコライ・アーセル監督、2017)は、小説の壮大さにはもちろん欠けるが、精緻に描かれた画面とケレンのあるアクション・シーン、95分の尺にテンポ良くまとまった構成など、SFアクションというジャンルものとして十二分の出来映えだ。


     ○


◆近未来、気象の完全掌握を可能にした衛星システムが、謎の暴走にみまわれて世界が大変なことになる超ディザスター映画ジオストームディーン・デヴリン監督、2017)の良かった点は、上映時間が2時間以内であることと、都市破壊シーンが夜間でも適度に明るくて観やすかったことの2点、以上です。


     ○


◆紳士なフレンズ、もといクマが活躍するパディントン2ポール・キング監督、2017)は、絶妙な存在感パディントンが魅せるスラップスティックさに抱腹絶倒しながらも心温まる見事なコメディ。往年のチャップリンキートンへのオマージュにくわえ、ウェス・アンダーソンからの影響も興味深い。


     ○


◆鳩と二挺拳銃のマエストロ翁が一大日本ロケを敢行したマンハントジョン・ウー監督、2018)は、なんていうか、変わらねえなあこの爺さんはというか、遅れてきた’90年代アクション映画というか、絶妙にたまらんものがあるですな。


     ○


◆唐の都・長安を舞台に、若き空海詩人白楽天が妖猫の呪いの謎に挑む夢枕獏の小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』の映画化空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』チェン・カイコー監督、2017)は、絢爛な巨大セットが持つ力み加減と、あいだの演出における絶妙な緩み加減の按配が、どこか’80年代角川超大作を思い出す感触。角川映画らしいといえばらしい。


     ○


◆タリス銃乱射事件(2015)を映画化した15時17分、パリ行きクリント・イーストウッド監督、2018)の、けっして“劇映画”向きとはいい難い実話ベースの脚本──しかも本人ら主演──を、たしかに不思議な感触だが、かくもソリッドにまとめ上げてしまうイーストウッドの手腕の凄まじさよ! 感嘆。



◆音楽を憎む一家のなかでただひとり音楽を愛する少年が黄泉の国を彷徨うリメンバー・ミー(リー・アンクリッチ、エイドリアン・モリーナ監督、2017)は、スリリングで面白く、黄泉の国を彩るなんとも知れぬ総天然色が美しく、そして本当にいい映画だった。邦題原題を超えた久々の例ともなった。


     ○


◆謎多きアフリカの小国“ワカンダ”の国王が活躍するMCU作品ブラックパンサーライアン・クーグラー監督、2018)は、アフロ・フューチャリズムを徹底的に具現化した意匠や美術が美しく新鮮。また、思いのほか暴力描写が容赦ないところもよかった。主人公たちのルーツを巡る旅路と葛藤が胸を打つ。


     ○


◆人気ゲーム・シリーズの実写リブート『トゥームレイダー ファースト・ミッション』ローアル・ユートハウグ監督、2018)は、アクションの見せ方や謎解きの面など惜しいところがそこかしこにあるし、画面がもうちょっと明るければなと思う部分もあるけど、 トレーニングによって肉体改造を経たアリシア・ヴィキャンデルの熱演と、敵味方が怪我を負いながらジタバタ戦うという割と泥臭いアクション演出の感じもあって、かなり「好き!」な作品だった。3作くらいは、ぜひ続けてほしい。原作ゲーム(2013年のリブート作)でララ・クロフトを演じた甲斐田裕子を登用した日本語吹替版もイイ出来。


     ○


サーカス創始者P.T.バーナムの半生を描くミュージカルグレイテスト・ショーマン(マイケル・グレイシー監督、2017)は、古色蒼然たる総天然色と意匠による往年の黄金期ミュージカル映画的な画面の手触りと、今日ならではのビートやテーマ性とが融合した、ジャンルを刷新する意欲作だった。


     ※


【ソフト】

◆恥ずかしながら、続編の存在すら知らなかったクリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』オリヴィエ・ダアン監督、2004)は、たしかにリュック・ベッソンによるオリジナル脚本には細かいツッコミが多々あるが、しかし演出がかなり巧みで最後まで楽しく観られるオツな1本だった。


     ○


◆かつて悔恨を残した遺跡に再び挑む羽目になったトレジャー・ハンターたちの冒険を描く『ロスト・レジェンド 失われた棺の謎』(ウー・アールシャン監督、2015)は、実に“ちょうどイイ”按配。少年時代に木曜洋画劇場とかで偶然観たらドハマリしそうな感じって伝わりますかね。吹替えも贅沢なつくり。


     ○


◆全篇主人公主観のアクションSFハードコアイリヤ・ナイシュラー監督、2015)は、主観カメラのみで進行する映画ながら、豊富なアクションのアイディアと見せ方の工夫、劇中の設定を用いた自然な編集も相まって、かなり観易く面白い。ただし作品の性質上、僕含め弱い人は酔うので休み休み観よう。


     ○


◆清掃局と思われたバイト先が実はキョンシー退治の専門業者だった霊幻道士/こちらキョンシー退治局』ヤン・パクウィン、チウ・シンハン監督、2016)は、キョンシーものに『ゴーストバスターズ』と『ベスト・キッド』、そしてなにより『ヒックとドラゴン』を見事にブレンドし、スマホの使い方など、そこかしこに新鮮なアイディアを盛り込んだなかなかの一品だ。いやほんと、翻案のお手本みたいな映画だった。見事なり。


     ○


◆本当は劇場で観たかった三島由紀夫原作の『美しい星』吉田大八監督、2017)を遅ればせながら観た。ハッキリ言って、たしかに本作はパッと見トンデモ映画に属することは間違いないかもしれないが、しかし、本作もまたこれまでの吉田監督作同様に、客観的には常軌を逸したようにも思える虚構にすがることが、当人のささやかな、しかし切実な救いになることを複眼的にまざまざと見せ付けられるような作品だった。上映開始40分を境に激変する本編のテンションや編集、音楽使いなど、面白くって胸をグサグサ突かれるところ目白押しで最高だ。本当に吉田監督の映画は観るのに体力が要るなあ。


     ○


死亡事故が起きた演劇の再演前夜に巻き起こる恐怖をPOVで描いた死霊高校』(クリス・ロフィング、トラヴィス・クラフ監督、2015)は、米本国では低評価らしいが、これがなかなか面白い。件の演劇を巡る因縁が呼び込む物語的円環構造、静かに忍び寄る死霊など洋画ホラーとしては地味、だがそこがいい。


     ○


◆爆発が過剰なシリーズの第5作トランスフォーマー/最後の騎士王マイケル・ベイ監督、2017)は、実写とCG入り乱れる目を見張るような画の情報量にくわえて脚本があまりに支離滅裂なので、ついていくだけでも疲労困ぱい。なにを思って3種の縦横比をショットごとに混在させたのかも、謎を残す。


     ○


◆人気海賊シリーズ第5作『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ監督、2017)は、まずまず面白いが、アクションの見せ方が絶妙に下手で、痒いところに手が届かないもどかしさ。やっぱり、ヴァービンスキー(1〜3監督)はアクション演出が巧いね。


     ○


宇宙ステーション版“ニューヨーク1997”映画ロックアウト(スティーヴン・セイント・レジャー、ジェームズ・マザー監督、2012)は、良くも悪くもヨーロッパ・コープ製らしい雑多な面白さとユルさの混在している作品だが、本作はとにかく日本語吹替え版の出来が最高なので、一聴の価値あり。


     ○


モスクワ郊外に巨大宇宙船が墜落する『アトラクション 制圧』(フョードル・ボンダルチュク監督、2017)は、ID4かと思いきやスターマンでトワイライトで、ちょい第9地区という、なんともヘンテコな作品だった。ただ、冒頭の宇宙船墜落シーンと、それによって半廃墟と化す街の美術は見事な出来栄え。


     ○


江戸時代、師の行方を辿り日本に潜入した宣教師が、増勢する切支丹弾圧の現実に“転ぶ”までを描く遠藤周作の小説の映画化沈黙 -サイレンス-マーティン・スコセッシ監督、2016)は、素っ気ないほどの演出のなかに発露する暴力の空気が恐ろしく、ある種の潜入捜査モノとしてもソリッドで面白い。


     ○


◆張込捜査のために痴呆気味の老婆の部屋を間借りした刑事コンビのもとに、家出少女が転がり込む『OVER SUMMER 爆裂刑事』(ウィルソン・イップ監督、1999)は、やがて擬似家族となる4人をほがらかに映す人情喜劇の側面が味わい深い。後半、映画史上でもトップクラスに緊張感溢れる晩飯シーンは必見。


     ※


TVアニメ

◆すっごーいと評判だったTVアニメけものフレンズたつき監督、2017)をようやっと観た。ほんわかとしたキャラクターデザインや「狩りごっこ」という台詞が示すように、基本的にはお遊戯のようなユルさで進むにも関わらず、展開や画面のそこかしこに絶対的な虚無や死の香りがにおい立っていて、観ていると、楽しさのなかになんとも知れぬ不穏な感覚が立ち上ってくる。本作について「実質、飛浩隆『グラン・ヴァカンス』(早川書房、2002)のアニメ化ともいえまいか」という声を伝え聞いていたけれど、それも納得だ。正直、こんなに夢中になって観られるとは思ってもみなかった。たいへん面白かったです。


     ○


◆先日読んだ原作漫画(コトヤマ小学館、2014-)が面白かったので、TVアニメ第1期『だがしかし』高柳滋仁監督、2016)を観た。原作の精緻な作画を継承しつつ、1話8頁という作話を丹念に解きほぐし再構成した見応えのあるアニメ化だった。ただ、原理的に終われないのは、昨今のアニメ事情的にやむなしか。

2018-01-01

2018

| 03:08

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2017-12-24

2017年映画ランキング(映画館鑑賞作品) + 鑑賞作品リスト

| 10:37

すっかり開店休業状態なので恐縮ですが、今年僕が映画館で観た映画(39本)を備忘録としてゆるやかなランキング形式──“○”で区切られたなかは、ほぼ順不同くらいの気持ち──で並べております。なお、地方在住者であることに加えて、筆者の偏食具合から、かなり偏った作品リストになっていることをご容赦ください。それでは皆様、"Have yourself a merry little Christmas"

※気まぐれになんらかのコメントを書いた作品は、タイトルの後ろに記事へのリンクを貼っています。


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LOGAN/ローガンジェームズ・マンゴールド監督、2017)……記事参照

ブレードランナー 2049ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、2017)……記事参照

新感染 ファイナル・エクスプレスヨン・サンホ監督、2016)……記事参照



     ○



猿の惑星: 聖戦記』マット・リーヴス監督、2017)……記事参照

エイリアン: コヴェナント』リドリー・スコット監督、2017)……記事参照

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』新房昭之総監督、武内宣之監督、2017)……記事参照

スター・ウォーズ/最後のジェダイライアン・ジョンソン監督、2017)……記事参照

ダンケルククリストファー・ノーラン監督、2017)……記事参照


夜は短し歩けよ乙女湯浅政明監督、2017)……記事参照

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。アンディ・ムスキエティ監督、2017)……記事参照

ラ・ラ・ランドデミアン・チャゼル監督、2016)……記事参照

『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(ロジャー・スポティスウッド監督、2016)……記事参照

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックスジェームズ・ガン監督、2017)



     ○



『フェリシーと夢のトウシューズ(エリック・サマー、エリック・ワリン監督、2016)

ハクソー・リッジメル・ギブソン監督、2016)

オリエント急行殺人事件ケネス・ブラナー監督、2017)……記事参照

ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』神山健治監督、2017)……記事参照

ワンダーウーマンパティ・ジェンキンス監督、2017)


散歩する侵略者黒沢清監督、2017)

キングコング: 髑髏島の巨神』ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督、2017)……記事参照

『22年目の告白─私が殺人犯です─』入江悠監督、2017)

『ライフ』ダニエルエスピゾーサ監督、2017)

DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団』FROGMAN監督、2017)……記事参照



     ○



ローガン・ラッキースティーブン・ソダーバーグ監督、2017)

『バリー・シール/アメリカをはめた男』ダグ・リーマン監督、2017)

『T2 トレインスポッティングダニー・ボイル監督、2017)……記事参照

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたちティム・バートン監督、2016)

『ワイルド・スピード ICE BREAK』(F・ゲイリー・グレイ監督、2017)


アサシン クリードジャスティン・カーゼル監督、2016)……記事参照

ザ・コンサルタント(ギャビン・オコナー監督、2016)

ジャスティス・リーグザック・スナイダー監督、2017)

怪盗グルーのミニオン大脱走カイル・バルダピエール・コフィン監督、2017)……記事参照

ゴースト・イン・ザ・シェルルパート・サンダース監督、2017)……記事参照



     ○



バイオハザード: ザ・ファイナル』ポール・W・S・アンダーソン監督、2016)……記事参照

キング・アーサーガイ・リッチー監督、2017)

バイオハザード: ヴェンデッタ(辻本貴則監督、2017)……記事参照

メアリと魔女の花米林宏昌、2017)

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女アレックス・カーツマン監督、2017)


GODZILLA 怪獣惑星静野孔文瀬下寛之監督、2017)……記事参照



     ○



【以上39作品】



     ○



2017年鑑賞映画リスト(開いた後、さらに「オリジナルサイズを表示」ボタンをクリックすると、よりお読み易くなります)

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2017-12-20

2017年残りの雑記。

| 19:35

ちょこまかとtwitterにて書いていた備忘録(一部加筆修正)です。


     ○


◆陸・海・空の3視点が交錯するダンケルククリストファー・ノーラン監督、2017)は、古くは『イントレランス』(D・W・グリフィス監督、1916)、最近では『クラウド アトラス』(ラナ・ウォシャウスキートム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー監督、2012)にあったような時空変形圧縮型の編集と凄まじい撮影の美しさで、まさに観客自身が戦争状態にあることを複眼的に楽しめる(怖がれる)戦争映画の新たな傑作。ハッとさせられるラストの音響演出にも注目。


     ○


◆シリーズ最新作エイリアン: コヴェナント』リドリー・スコット監督、2017)は、エイリアン×失楽園×ギリシア神話×北欧神話×創世記×新約聖書×シェリー夫妻×クラーク等々という様々なサブ・テクストとコンテクストが乱交する、諸星大二郎的四方山SF大作として超愉快だった。


     ○


◆実話をベースにした猫映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(ロジャー・スポティスウッド監督、2016)は、いかにも感動ドラマ然とした大仰な演出を徹底的に廃した淡白でアッサリとした風味なのが実によかった。画面内のちょっとした変化が、押し付けがましくなく、じんわりと身に染みる。


     ○


◆もはや実写としか思えない毛並と皮膚の質感と存在感に戦争映画史への愛をヤマと詰め込んで、現実世界への痛烈な風刺とオリジナル・シリーズからの小ネタをまぶしたシリーズ第3作猿の惑星: 聖戦記』マット・リーヴス監督、2017)は、シーザーの辿る旅路として、見事な大団円を迎えていた。


     ○


◆劇場で見逃していたトリプルX: 再起動D・J・カルーソー監督、2017)は、なんつうか、もうね、やったァ─────────ッ!!!! Fuuuuuuuuu ((((.˙∠)))) F*ckin' yeah!!!! みたいな、たのしいたのしいえいが。ドニー・イェントニー・ジャーなど人種性別を問わずワールド・ワイドに起用しつつ、正直に真っ向からB級(バカ)アクション映画として振り切った実にマジメな造りで、ついでに世界の危機も救っちゃうとか、よくわからんが心は洗われるぞ。


     ○


◆人気flashアニメ秘密結社鷹の爪』シリーズの劇場版新作DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団』FROGMAN監督、2017)は、毒っけの効いたギャグが盛りだくさんで楽しい作品だった。安田顕が声をあてたジョーカーもよかったなぁ(力むと素が出るところも含めて)。


     ○


◆ただひたすらブレードランナー 2049ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、2017)は美しかった……。嘆息。


     ○


◆遠未来の地球を舞台にしたパワード・スーツもので、かつアニメゴジラをやるというコンセプトはすごくいいGODZILLA 怪獣惑星静野孔文瀬下寛之監督、2017)だったが、その他諸々が雑過ぎやしまいか。音量や設定をデカくして、人気声優にキメ台詞を連発させとけばいいってもんじゃないよ。


     ○


スティーブン・キング原作のホラーIT/イット “それ”が見えたら、終わり。アンディ・ムスキエティ監督、2017)は、劇中に映るポスターや看板が示すように、超凶悪なティム・バートン映画──そのほか、あの悪夢怪人が跋扈する作品など、舞台となる1980年代の映画がこっそり映っている──といった趣で面白い。なかでも、最初に画面に登場するポスターや印象的なロケーションから、とくに『ビートルジュース』(1988)を髣髴とさせる(きっとダニー・エルフマンのブンチャカと騒がしい音楽と差し替えても、ある意味イケるのではないか=暴論)。それにしても、ムスキエティ監督の演出は、じつに腰の据わっていて上品。瑞々しいジュブナイル要素と、計算しつくされた画と間で展開する恐怖シーンが見事にマッチした傑作だ。怖いよ。楽しいよ。


     ○


功夫武侠スチームパンクでコミック調のTAICHI太極 ゼロ』TAICHI太極 ヒーロー』(共にスティーブン・フォン監督、2012)は、サモ・ハン・キンポー演出による殺陣、日本語吹替え版の遊び心、ヒロイン玉娘(ユーニャン)役のアンジェラベイビーの美しさが格別で、とってもキュートなり。


     ○


オリエント急行殺人事件ケネス・ブラナー監督、2017)は、画作りや演出、施されたアレンジまで、まさに“いま”作られ、観られる作品として見事な再映画化だ。またラスト、ブラナー自身が作詞した本作の主題歌「Never Forget」(ミシェル・ファイファー)には、やられた。あんなん涙腺決壊するやろ。例によって字幕がない*1のが悔やまれる。


     ○


哭声/コクソン(ナ・ホンジン監督、2016)は、これでもかとツイストにツイストを重ねて、あの『セブン』(デヴィッド・フィンチャー監督、1995)の文字どおり7倍以上の観念世界へ突入するあたり、奇妙奇天烈摩訶不思議奇想天外四捨五入出前迅速落書無用な趣でタハーッとなるので、マジ必見だ。


     ○


スター・ウォーズ/最後のジェダイライアン・ジョンソン監督、2017)は、とにかく「よくやった!」ということに尽きる。ジョンソン監督の作家性が色濃い本作は、たしかに破戒的ではあるが、だからこそ「スター・ウォーズ」への原点回帰と同時に次世代への継承とが完全に果たされた、じつに解放的な一作となった。

*1:ので、なんとなく和訳してみた(検索しても出なかったし):  お家に、私のそばに帰ってらっしゃい。さあ笑って。「うん」と頷いて。一緒にダンスを踊りましょう。  とっておきのニコニコ顔をもって見せて。そして、優しく抱きしめてちょうだい。  お家に帰ってきてくれる? 私のもとに戻ってきてくれる? 愛しいあなた。  私たちは忘れない。私たちの心の中に、あなたはずっと生き続ける。だから安心して。  太陽がまぶしく照らす夏の毎日は、きっと一生の思い出。凍える冬を待つ暗い11月には、ぎゅっと私を抱きしめて。  ほしいものや願い事、将来の夢を、全部私に聞かせてくれる?   いつかお家に帰ってきたときに。私のもとに戻ってきたときに。愛しいあなた。  悲しいことがあったって、明日には忘れられる。困ったときには助けてあげる。愛と優しさを胸に、みんな、あなたを待ってるからね。私たちはずっと忘れない。お帰りなさい、愛しいあなた。

2017-09-12

2017年鑑賞映画 感想リスト/21-30

| 16:19

不思議惑星キン・ザ・ザゲオルギー・ダネリヤ監督、1986)……1980年代モスクワ。異星人と名乗る男に声をかけたマシコフとゲデバンは、その男が持っていた移動装置によって宇宙の彼方にある砂漠の惑星へと転送されてしまう。通りかかった小型船から降りてきた現地人たちは人間とそっくりだったが、彼らは「クー」としか喋らないのであった。果たしてマシコフたちは地球へ戻れるのか──崩壊間際のソ連製コメディSF

なんとも不思議な映画だった。基本的なプロットは見知らぬ惑星からの脱出劇なので、状況としてはたいへん緊迫しているはずなのだが、そのリズムと展開は非常にまったりとしたオフビートな笑いを醸しつつ、なんとも心地よく進む。それでいて本作が決して退屈ではなく、なにより公開当時ソ連で大ヒットしたのは、やはりSFという物語設定のそこかしこに、国内外に向けた様々な寓意や皮肉が暗に込められているにほかならない。ともすれば、よく本国で公開できたものだと思う。すべての冒険の果てに主人公たちに残された、ほんのちょっとしたものを観たとき、なにを思うだろうか。クー!


     ○


『T2 トレインスポッティングダニー・ボイル監督、2017)……仲間たちを裏切って1万2000ポンドを持ち逃げしたマーク・レントンは、逃亡先のオランダから20年ぶりに故郷エディンバラに戻ってきたが、すでに母は他界し、実家には年老いた父がひとりで暮らしていた。一方、かつて仲間だったスパッド、サイモン、そしてベグビーは、未だに悲惨な人生を送り続けていた──1996年から21年を経て登場した、まさかの続編。

爽快さと陰鬱さに揺れ動くカラフルでフィルムグレインにざらついた画をつなぐテンポのいい編集で、年を取ったオリジナル・キャストが例のなまりのキツい英語でまくし立てるあの感じが、なんとも懐かしいなぁと郷愁に浸っていたら──前作を実際に観たのは、およそ10年前だった──映画が進むにしたがって、胸を掻きむしりたくなるような感情が溢れてきて止まらない。エンドロールへいたる1ショットに集約される、そのあまりの苦々しさに「ぎゃああっ」と叫びそうになるのを、いまは紳士的に耐えている。かろうじて。

唯一の救いは本作が、前作でも聖愚者としての役割を大いに担っていたスパッドの成長譚としての性格を持っていたこと。スパッド、おまえ本当にいいやつだもんな!


     ○



名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』静野孔文監督、2016)……ある夜、警視庁の極秘データを閲覧していた何者かが逃亡し、その行方をくらましてしまう。翌日、リニューアル・オープンした東都水族館にやって来た江戸川コナンたち少年探偵団の一行は、何らかの原因で記憶喪失になったらしいオッドアイの女性と出会う。彼女の所作の端々に感じられる“黒の組織”の気配に灰原哀は感づくが──劇場版シリーズの第20作目。

昨年なんとなく「劇場版だけでも観ておけばなんとかなるだろう」と安易に思い立って、19作目までの未見作品を全部観たのけれど、所詮は付け焼刃だったことをひしひしと思い知ったような気がしないでもない。アバンの格闘アクションからカー・アクションは『ワイルド・スピード』シリーズもかくやでぶっ飛んでるし、『名探偵コナン』を観ているかと思ったらジェット・リーとユン・ピョウが観覧車の上でカンフーを始める(錯乱)し、阿笠博士の発明品は万能過ぎるしで、なにがなにやらを通り越して愉快千万。無理にでもレギュラー陣は登場させようという努力はじつに涙ぐましい。

本作の唯一の欠点は、舞台が水族館である必然性がまったくなかったこと。水によるディザスターが巻き起こるでもなく、イルカに乗って犯人を追うでもなく──って、これならトロピカルランドでよかったんじゃないかしらん。


     ○


ターザン: REBORN』デヴィッド・イェーツ監督、2016)……19世紀末。ジャングルのゴリラに育てられた野生児“ターザン”として伝説化していたジョン・クレイトン卿と彼の妻ジェーンは、米国特使であるウィリアム博士とともに、ベルギー国王レオポルド2世から領国であるコンゴ自由国への視察に招聘される。しかし、その裏ではコンゴとジョンをおとしめんとする陰謀がうごめいていた──エドガー・ライス・バローズによる『ターザン』シリーズの後日譚的作品。

本作は、前半が妙にもたついていたり、アクションにおける決定的なショット(キメの画)がどういうわけかことごとく抜け落ちていたり、クライマックスにおけるターザン野生動物連合軍との共闘も各種動物にもうちょっと個性的な見せ場──そも、ゴリラたちの印象がここでもっとも薄いのは致命的だろう──があってもよかったんじゃないかしらんと思ったり……など、昨今の大作アクション映画としては絶妙に煮え切らない部分も多い。

しかし一方で、本作の物語は、かつての列強国(白人)による第三世界(黒人等人種的マイノリティ)への差別搾取に対する落とし前を、フィクションだから可能な誠実さを持って描き出そうといるのが興味深い。アレクサンダー・スカルスガルド演じる高貴で野蛮な白人ターザンとサミュエル・L・ジャクソン演じる先進的で文明的な黒人ウィリアム博士──まあ正直、ウィリアム博士の正義感あふれるキャラクターによって、米国における黒人搾取の歴史がなんとなく不問にふされている感がなくはないが、その彼ですらインディアンの殺戮には加担した過去を悔いる発言をさせていたりと、なるべく公正なバランスを保とうと重層的にコンテクストをめぐらせているとは思う──が、相棒となってゆく展開が象徴的だ。


     ○


『ダークスカイズ』(スコット・スチュワート監督、2013)……郊外の住宅地に暮らすバレット一家。レイシーは転職活動中の夫ダニエルと、ふたりの幼い息子ジャシーとサムを支えながら、仲睦まじく暮らしていた。ところがある夜から家のなかで不可解な現象が頻発し、末っ子のサムにも異変が起こりはじめる。「サンドマンがやって来るんだ」と言って怯えるサムに、不安を募らせるレイシーだったが──監視カメラ設置型ホラー・サスペンス。

パッケージとコピーだけを見て、勝手に幽霊屋敷系ホラーと思っていたら、巻頭言がまさか亡くなるとは思いもしなかった作家の筆頭であるSFの巨匠アーサー・C・クラークのものであり、なにを隠そう本作は、ちょっとスレンダーマン風味のグレイの造型もな無気味なエイリアンアブダクションものなのでした。開幕早々、「あら! そっちなのね」と巻頭言で驚かされるというは新鮮な体験だった。

ジャンル的ツイストでの驚きを巻頭言によって自ら排しながらも、本作は予兆から発現、対峙するクライマックスから最高に後味の悪いラストに至るまで、その恐怖演出積み重ねが堅実で、見応え充分。とくに後半、家族がどんどん地域社会から孤立してしまう展開がヒリヒリとした緊張感を煽りつつ、クライマックス直前での家族の幸せな会話に繋げるという展開が素晴らしい。監視カメラ設置のくだりも適材適所といった使われかたで、決してダレることはない。かつて中2病がゆき過ぎてしっちゃかめっちゃかになってしまったかのような映画を撮っていたスチュワート監督とは思えない手腕に驚かされる。欲をいえば、ラストのJ・K・シモンズの表情に、もう少し含みがあってもよかったのじゃないかしら。


     ○


バイオハザード: ヴェンデッタ(辻本貴則監督、2017)……対バイオテロ組織“BSAA”のクリス・レッドフィールドは、自らの復讐のために大規模なバイオテロを画策する国際指名手配犯グレン・アリアスを寸でのところで逃してしまう。クリスはかつてのS.T.A.R.S.の仲間であるレベッカ・チェンバース教授と合流し、アリアスの陰謀を砕くべくレオンケネディに協力を求めるのだが──ゲームの設定を継承したフルCGアニメーション映画シリーズ最新作。

制作スタジオの変更や、製作総指揮に清水崇を置いたこともあってか、前2作よりもゴア表現が格段に増加。画面を舞う血飛沫、欠損する身体など、おためぼかしなしで大盤振る舞いである。また、辻本監督お得意のコンバット・アクションを駆使した殺陣も満載で、全篇にもりこまれた種々のアクション・シーンは、そのゴア描写ともあいまって演出がノリにノッていて楽しい。

しかし本作でも前2作と同様にその他のドラマ部分への甘さが健在で、絶妙につまらない。全体的にテンポが奇妙に悪く、なにより展開の──物語の筋そのものはともかく──積み重ね方に脈絡が足りていないため、楽しいはずの恐怖&アクション・シーンにもノイズを残してしまっているのが残念。プロット構成や編集をもっと精査すべきだった感は否めない。もったいないなあ。


     ○


LOGAN/ローガンジェームズ・マンゴールド監督、2017)……謎の原因によってミュータントが絶滅寸前となった2029年。かつて不死身の“ウルヴァリン”として知られたローガンもまた日に日に衰弱し、いまは乗り合いリムの運転手として糊口を凌ぎつつ、キャリバンとともに“プロフェッサーX”ことチャールズ介護しながらメキシコ国境に程近い廃墟に身を隠していた。ある日、見知らぬ女性から「とある少女をカナダ国境まで乗せてほしい」という依頼が舞い込んでくる。その少女ローラこそ、絶えて久しいと思われていたミュータントの新世代だという。いぶかしむローガンのもとに、謎の武装集団の影が迫っていた──『X-MEN』シリーズ最新作。

数あるアメコミ・ヒーローの実写映画化と一線を隔するような本作の予告編をはじめて観たときから楽しみにしていた。たしかに、シリーズものゆえの取っつきにくさがあるし、語り口が妙にまごついたり、明らかにサスペンスのためのサスペンスにしかなっていないシーンもあるし、処理しきれていない登場人物たちも多かったりと、全体的にみたときマズい部分も少なくない。あまりに出来すぎの動画メッセージには、その内容はともかくちょっと苦笑してしまった。

しかし、本作を形作る様々な素材の見事な素晴らしさが、それらを補って余り得る。長年にわたってウルヴァリンとプロフェッサーXを演じたヒュー・ジャックマンパトリック・スチュアートの老いさらばえた演技、ミュータントの少女ローラを演じたダフネ・キーンの眼差しひとつで画面をさらうソリッドな魅力、本作と同じく20世紀フォックス制作でR15指定を受けたマーベル・フランチャイズデッドプール』(ティム・ミラー監督、2016)の成功なくしてはあり得なかったであろう重く凄惨な暴力描写西部劇の傑作『シェーン』(ジョージ・スティーヴンス監督、1953)と聖書的骨子を援用しつつ語られる『X-メン』そのものへの内省と昇華の物語、そして映画的としかいいようのないラストショットの美しさ……と、枚挙に暇がない。エモーショナルで力強い魅力に満ちた本作を、ぜひ見届けたい。


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怪盗グルーのミニオン大脱走カイル・バルダピエール・コフィン監督、2017)……記事参照>>http://d.hatena.ne.jp/MasakiTSU/20170810/1502325511


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『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』新房昭之総監督、武内宣之監督、2017)……夏休み真っ最中のとある海辺の町。中学1年生の典道と祐介は親友同士だったが、それぞれが想いを寄せる同級生のなずなが2学期から転向することなど知る由もなかった。折りしも町の花火大会の日、学校のプールで競争する典道と祐介を見かけたなずなは、親への反発から、勝ったほうと駆け落ちしようと、密かに賭けをする──岩井俊二による同名ドラマ(1993)を長編アニメ化。

原作のTVドラマもおろか、まったくの予備知識なしで観たけれど、興味深い作品だった。コントラストの強めな美しい色合いの映像に表れる広角レンズの多用による丸く歪んだ画面や、校舎や風車といった円形の意匠と運動、明らかにスティーヴ・ライヒミニマル・ミュージックを模した劇伴などなど映画全体に施された円環構造的な仕掛けが、繰り返す1日の物語を駆動させていて面白い。ただ、キャラクターの外部に強迫観念的に施される意匠ゆえに、そうとなれば彼/彼女たちの着る制服は、もっと没個性的なものでもよかったのではないかと、思わなくもない。

しかし、本作が僕の心をとらえて放さないのは何故なのだろうか? それは、本作に不思議な開放感に溢れているからではないか。本作が一種タイムトラベルSFであることから早速引き合いに出されているらしい昨年公開の『君の名は。』(新海誠監督、2016)と本作をあえて比較したとき、前者が収束する物語、後者は拡散する──「どっちだっていい」──物語という区分けが可能であろう。ラストの花火とは、誰もが必ずや被る収束そのものからの解放にほかならない。なんとなれば、おそろしく純情でリリカルな『8 1/2』(フェデリコ・フェリーニ監督、1963)をみせつけられたようで、ちょっとした感動を覚えている。


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新感染 ファイナル・エクスプレスヨン・サンホ監督、2016)……ファンドマネージャーのソグは、妻と別居し、年老いた母と、娘スアンとともにソウルに暮らしていた。仕事ばかりでスアンをまったく省みていなかったソグは、娘が誕生日になにを欲しがっているのかもわからない。「釜山のお母さんに会いに行きたい」というスアンの願いに、一度は「仕事があるから」と渋るソグだったが、翌朝ふたりの姿は高速鉄道KTX101列車にあったのだった。出発の時間が迫るなか、不穏な影がソウル駅構内を駆け巡っていたとも知らず──世界的に高い評価を得た韓国ゾンビ映画

観終わったあと、思わず「完璧か」と呟いてしまった。完璧。やがて韓国を覆うゾンビパンデミックが走り出した列車の窓の外でフッと現実になる序盤のシーンからはじまって、フレッシュでかつ豊富なアイディアをこれでもかと詰め込んだゾンビがらみのシーンは、どこをとっても素晴らしい。KTX車内という閉所と、駅舎やその敷地といった開けた空間のどちらにもゾンビがらみの見せ場を用意した横移動あり、縦移動ありのメリハリの効いた展開は、観る者を飽きさせず、スクリーンに釘付けにして放さないだろう。

同時に、このゾンビパンデミックをとおして描かれる物語もまた素晴らしい。仕事と金のことばかりで娘だけでなく他人をまったく省みなかったダメ人間ソグが、ゾンビたちの襲撃や生存者たちとのやり取り、そして、すがすがしいほどのクズ人間との対決を経るなかで、すこしずつ父として、人間として成長してゆく姿は感動的だ*1。彼だけではない。このKTXに乗り合わせたすべての乗客が、この災厄のなかでそれぞれに成長し、あるいは退行してゆく。本作におけるKTXは、人生の縮図そのものにほかならない。まさに「人生という名のSL」である。

ゾンビものとして、乗り物パニックものとして、この上ない大傑作だった。

*1:演じたのは、『トガニ 幼き瞳の告発』(ファン・ドンヒョク監督、2011)で、どんな状況でも誇りと正義の心を失わない教師を演じたコン・ユ。