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君主論

(読書)
くんしゅろん

Il Principe(伊)

(1513年) ニッコロ・マキャヴェリの最もよく知られた著作。君主は権力を維持するためには狡猾で冷酷な手段を用いねばならないと説いた。

http://dictionary.reference.com/browse/the%20prince

概略

マキャベリが公職から追放された時期に執筆された、比較的分量の少ない論考。メディチ家に献呈して公職に復帰しようという目的で執筆されたと見られる。

内容

基本的な構成としては、ギリシャ・ローマの時代やイタリアの同時代史での実例をふんだんに分析の俎上に乗せ、君主の行動とはいかなるものが適切であるかを論じる。

姿勢としては、強力な権力を保持して国家を安定的に統治するために、果断なる意志力(ヴィルトゥ)が重要であり、信義や信仰よりも現実の力を重んじるべし*1とする。
後の政治学で「現実主義」(リアリズム)と呼ばれることになる立場に近い。

古代ギリシャ以来の悪しき伝統とも言うべき政治への過度の理想視を否定し、(ルネサンス的に)技術の一種として政治を分析する。マキャベリ本人はどちらかというと共和制を理想とする立場であったと考えられる*2が、分裂して弱体なイタリアの現状を憂い、(チェーザレ・ボルジア的な)強力な手腕の持ち主によるイタリア統一を願う形で締めくくられている。

評価

政治における本音と建前の違いを露骨に指摘する内容となっているため、指摘されると困る側からは「悪魔の書」などとして告発された*3。また、民衆に対する極めて批判的な見方を展開しているため、共和主義的立場や性善説的立場からも忌み嫌われた*4

時代が進むと再評価が行われ、ルソーは「社会契約論」の中で

王侯に教えを垂れると見せ掛けて、人民に偉大な教訓を与えた。『君主論』は共和主義者の教科書である

と言っている*5

*1:ただし、その種の徳目を有している振りはしなさいとも言っているが

*2:そもそも「共和国論」とも言うべきリヴィウスのローマ史論考(政略論)の方がずっと分量は多い

*3:中身をよく知らないまま、無制限の権謀術数や「目的は手段を正当化する」を説く本だと勘違いして攻撃していた人も一杯いますが

*4:もっとも、政略論でも民衆に対する点数はかなり辛いですが。まあサヴォナローラ時代前後のフィレンツェにいて民衆に全幅の信頼おいてたら、その方がよっぽど変だと思います。

*5:もともと主張の根幹部分は政略論とそんなに違ってないので、実は当たり前。もちろん「本音と建前の違いを露骨に指摘」したことも大事ですが

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