技法においても精神においても、仏師らの長い伝統をもつ国で、伝統を内から食い破るかのように脱皮して、近代彫刻を確立した過程として、順番に荻原守衛(碌山)、高村光太郎、中原悌二郎を置くことは、ほぼ誤りではないのだろう。その過程は高田博厚にいたって、いちおうの完成にいたると考えてよろしかろう。以降は、近代美術の解析深化を企てて変容してゆく、モダンアートの過程へと移っていったように見える。 またある人の高田評には、こうある。文芸の小林秀雄、音楽の吉田秀和、美術の高田博厚の三人は、それぞれの分野を究めることをとおして、普遍的示唆や暗示にまで到達した人で、ひとつの芸術分野の達人というよりは思想家・哲人と称…