朝、畑で草むしりをしていたときのこと。いつも同じ時間に通る、年配の女性がとことこと歩いてきた。腰を少し曲げて、後ろ手に手を組みながら──まるで、自分自身が散歩しているような歩き方だった。 でも、よく見ると小さな犬がひもにつながれて、後ろからついてきていた。犬の散歩だったのか、と気づいたとき、彼女は私のほうを一切見ることなく、体の向きも変えずに、ただ、そっと、自然に会釈をして通り過ぎていった。 その仕草があまりにも自然で、私は少し驚いてしまった。「これが、会釈というものなのかもしれない」と思った。 会釈とお辞儀。どちらも、頭を下げるという動きではあるけれど、その奥にある気持ちは、少し違っている。…