キッチンに鍋を見つけた、半開きで蓋がずれている。意を決して、覗くと変色した肉と野菜が水分を吸って膨張していた。蓋を閉めて、換気扇のボタンを押すのを躊躇い、鈴木は口で呼吸をする。現場を荒らすわけにはいかないのだ。振り返って窓の施錠を確認。リビングの窓は鍵がかかっている。それから別室をざっと物色、窓はすべて閉まっていた。もちろん施錠も。出入りは、扉からと言えそうだ。鈴木は再びリビングへ。 身元はすぐに判明した。死体はバッグを提げていた、帰ってきてすぐに命を引き取ったらしい。しかし、外傷は見られなかった。見開いた目、つまり咄嗟に死が訪れた、ということだろう。鈴木は首を振る、詮索は後回しだ。バッグのマ…