1896年生まれ、1984年没。批評家、編集者。東京に生まれ、幼少年期をシアトルですごす。いくつかの私立大学、また鎌倉アカデミアで教鞭をとりつつ、戦前は岩波書店、戦後は中央公論社と平凡社の編集にかかわる。そのかたわらに多くの評論やエッセイを執筆。代表的な著作としては『共産主義的人間』がある。また平凡社の「世界大百科全集」の編集長でもあった。
民主主義という語を、いつどこで覚えたのだったろうか。 小学五年六年時の担任教諭は、いかにも戦前の女子師範の節度謹厳を思わせる怖いオバチャン先生だった。私は自分の出来には余る教師運に恵まれた男と思っているが、まず最初がこの先生だ。あれこれの場面を今思い返しても、尊敬の念が湧く。四民平等も基本的人権も、この先生から伺ったのが最初だったにちがいない。なにしおう今では甲論乙駁半ばする「戦後民主主義教育」のまっただなかだった。 巡り合せでつい入学してしまった私立中学は、文部省(当時)学習指導要領なんぞは大胆に踏み破って平気な、独自カリキュラムの学校だった。社会科科目には「日本史」「世界史」「地理」のほか…
読んだ本 柄谷行人『近代日本の批評Ⅰ 昭和篇 上』講談社学芸文庫 (1997) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 定義というものは普通先にくるものであるが、文学史的には後からくるものなのかもしれない。 「いまふり返ればあれはああだった」 という具合に。 小説は芸術でもあるとされるが、今日の「大衆小説」と呼ばれるものに芸術性はあるのか。 純文学と呼ばれる小説は一般に芸術性を追求する小説と言われている。 しかし、本書によれば明治期の小説は「純文学」であった。 大衆小説と純文学、なにがどう違うのか。こういうのが現代人にとって混乱している、まさに今の自…
読んだ本 林達夫『林達夫評論集』岩波文庫(1982) つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 最近は横文字が多いという声をよく聞く。 結論から言えば、五十年前と変わらないように思うのである。 本書をよく読めばなんとなくそう思えてならない。 ・・・ 85項には新しい造語、アメリカニズムに対する林達夫の言及がみられる。 このことを除いても、本書は逆に現代に生きる自分でもわからないカタカナが…
引用元:版元ドットコム つづきを読み終えた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 感想 本の内容に関しては、特に重要だと感じた部分は過去の記事に書き残したので感想を書いて終わりにしたい。 関東大震災、東京大空襲、朝鮮戦争やマルクス主義の台頭など、実に多岐にわたって強烈な出来事に揉まれた生涯であったと感じる。 そのなかで最後まで出版に向き合い続けた信念というものは本人しかわからない。 個人的な解釈では、自由への闘いであるように感じた。 それは岩波書店や中央公論社に一時は在籍していながらも、社内政治に辟…
読んだ本 引用元:版元ドットコム つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 本書もいよいよ残り80ページほどとなった。 塵も積もれば山となる。 分厚い本であっても、少しずつ読めば最後までたどり着く。 ・・・ 第二次世界大戦の影響により、林達夫は自身の蔵書をも奪われる結果となった。 そして再度、書目リストの作成に当たった際、波多野精一が推奨したリストを着実に読み進めたと本書に書いてあった。…
読んだ本 引用元:版元ドットコム つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 マルクス主義をめぐるイザコザが語られた。 岩波茂雄は決してマルクス主義者ではなかったと書かれていたが、岩波書店からマルクスに関する本が発行されたとき、ことごとく発禁処分を受けたり、書き手や編集者との対立など、複雑な出来事が描写されていた。 私の記憶が正しければ、発禁というのは裏を返せば言葉の力がどれほどの影響力を持っ…
読んだ本 引用元:版元ドットコム つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ トルバトゥール・・・中世の詩人 ジョングルール・・・中世フランスにおける旅芸人。聖者伝などを歌う。伝承の担い手として役割を果たした。 ベルクソン「宗教は知性の分解力に対する自然の防御的反作用である」 (『道徳と宗教の二源泉』) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 非常に密度の濃い第一章を読み終えた。 林達夫は書籍をめぐる重要な問い、「作家は誰のために書くのか…
読んだ本 引用元:版元ドットコム ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 本書は以前から気になっていたが手に取るタイミングではなかった。 そして数ヵ月経ち、今がそのタイミングだと感じまず60ページほど読む。 ・・・ 本書の序盤で林達夫は、まず関東大震災を経験した清水幾太郎と思想上の立場の比較がなされた。 神奈川県の鵠沼ではほとんどの家が倒壊されたと書いてあった。 地震のメカニズムにもよるが、死者の大半は火災によるもの、つまり間接的には都市構造によるものが大きいと…
本日に手にしておりましたのは、図書館から借りている「鶴見俊輔 詩を語る」 であります。この本は鶴見俊輔さんに谷川俊太郎さんと正津勉さんが聞き手になっ て詩の話などを聞くという体裁になっています。 初出は「詩の雑誌 midnight press」で2003年のことだそうです。これが刊行 されたのは2022年で鶴見さんの生誕100年を記念したということですから、ずい ぶんと時間がかかることにです。 「父のこと、母のこと」という見出しは、この鼎談の部分につけられたものと なります。 鶴見さん、谷川さんともに有名な両親を持ったことになるのですが、当方が話題 にしたいのは、谷川さんの母のことでありますね…
本日は久しぶりでの野暮用でありまして、いつもよりもすこし時間がかかって 帰宅しましたので、ちょっとくたびれでした。夜にはトレーニングにいくことは できないかと思っておりましたが、その元気はありませんでした。 夜には昨日に購入した車谷長吉さんの「文士の魂・文士の生魑魅」を手にする ことにです。この文庫の巻末解説は田中和生さん(1974年生まれの方だそうです) が担当で、田中さんは「『鹽壺の匙』以来その作品に魅せられながら、どうして 車谷長吉は私小説にこだわるのだろうとずっと思っていた。」と書き出していま す。 田中さんが「文学的な影響をあたえられ、またその新しい作品に注目しつづけ ている同じ世代…
数年前に大塚金之助の詩歌についての論説を書いた。その時に、水田洋先生がその半生記である『ある精神の軌跡』で大塚の人物をかなり批判的に言及していることを知った。実は論説を書いたときには読んでなかったので、いつか読もうかと思い今日まで経ってしまった。最近、水田洋先生を追悼した中澤信彦先生の論説を読んだことと、また社会思想史の研究史を振り返る必要があったので、その意味でも水田先生のこの半生の記は必読と、ようやく通読した。 中澤先生の論説は以下 NAKAZAWA,Nobuhiko. Hiroshi Mizuta (1919-2023): A Life in Search of the Origin o…
これは古本屋で偶然に入手し、その「序」を読むまで知らなかったのだが、堀口大学訳詩集『空しき花束』は『月下の一群』の続編として刊行されていたのである。それは大正十五年十一月で、前年九月の『月下の一群』に続く訳詩集であることからすれば、当然のように思われがちだけれど、手元にある。だが『月下の一群』(講談社文庫、平成八年)所収の堀口大学の「年譜」(作製・柳沢通博)を見ても、『空しき花束』出版の記載はない。やはり多大な影響を及ぼした名訳詩集『月下の一群』の背景にあって、埋もれてしまった気配が感じられる。 しかし『空しき花束』にしても、判型は『月下の一群』と異なる四六判でありながら、紛れもない第一書房の…
読んだ本 林達夫『歴史の暮方 共産主義的人間』中公クラシックス (2005) 仲正昌樹『カール・シュミット入門講義』作品社 (2013) 仲正昌樹・塩野谷恭輔『宗教を哲学するー国家は信仰心をどこまで支配できるのか』明月堂書店 (2023) タミム・アンサーリー『イスラームから見た「世界史」』紀伊國屋書店 (2011) 澤田直『フェルナンド・ペソア伝:異名者たちの迷路』集英社 (2023) フェルナンド・ペソア『新編 不穏の書、断章』平凡社ライブラリー (2013) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 読書に疲れてきた夕方、BOOK・OFFに赴く…
晴。 側溝に落ちた木蓮の落ち葉を片付ける。 車を洗う。 少し体を動かしただけで温かくなり、暖房を切る。いい天気だ。 金柑の実を捥いで食う。 庭の秋明菊の咲いたあとが、結実して綿毛のようになっている。 紅いのはセンリョウ(千両)の実。 昼飯を食いながら NHK+ で「キャッチ!世界のトップニュース」を見ていて、月一で映画のコーナーを担当しておられる、国際政治学者の藤原帰一さんが、一年の総括を求められて、ウクライナ戦争などで「戦闘が長期化するということは、それだけ人命が失われ続けているということで、それがつらい」とちらっと仰っていたが、まことに共感する。今日のニュースでも、パレスチナ紛争はさらにレ…
晴。 才能というのはじつにありふれている。誰もが才能を求めてしまう。いや、僕も才能は好きだけれどね。凡庸こそがむずかしい時代だ。中庸とは凡庸なものである。 例えば、澁澤龍彦の文体って、まことにナイーブで凡庸だろ? かしこい人は、かんたんにバカにできる。でも、あれがむずかしいんだ。よい土台というのは、そういうものである。村上春樹も、そんなのだっていってもいいかな。 スーパー。野菜、各種農産物、乳製品など、高くなって驚いてしまう。インフレを実感するな。 昼。 寝ころがってうだうだしたのち、図書館。二日間延滞した。李琴峰さんの小説『星月夜』を借りる。エッセイ集では、温又柔さんの『私のものではない国で…
日曜日。晴。 十時間以上眠る。なのにあまりすっきりしない。 朝から気分が落ち込み気味。Depression. 心を調えるだけで午前中いっぱいかかってしまったな。 昼食は里芋とタコの炊き込みご飯。それから味噌汁の味噌は今日から、11.21 に近江の永源寺へ紅葉を見にいったとき、山奥の道の駅にて購入した地元のもの。おいしかったです。 珈琲工房ひぐち北一色店。 『林達夫 編集の精神』の続きを読む。なかなかおもしろいし、著者は相当の力量がある(って何様)。著者の落合勝人という人は、現役の敏腕編集者ということで、また、わたしと同世代である。 本書を読んでいると、わたしはかつて「林達夫のような何者か」にな…
冬至。晴。雲多し。 昧爽起床。暗い気分で目覚める。 NML で音楽を聴く。■モーツァルトの 二台のピアノのためのソナタ K.448 で、ピアノはマルタ・アルゲリッチ、アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキー(NML)。かつて CD で何度も聴いた演奏であるが、あまりのすばらしさに第一楽章など泣けてしまった。何という生の躍動! しかし気を取り直して聴いてみると、この曲、モーツァルトがリミッターをつけずに書いたそれで、和声やコード進行など、じつに斬新なところがあるではないか。長調から突然短調に転調するのはモーツァルトがよくやることであるが、この曲など、ハッとさせられる。規則どおりの進行からなの…
前回、イーヴリン・ウォー/吉田健一=訳『黒いいたずら』(白水Uブックス)のことを話題にしたが、「白水Uブックス」で思い出したことがある。 昨年わたしは、「コリン・ウィルソンが語るアナトール・フランス」というエントリで、「フランスの作品としては少くともあと一つ、『タイス』だけは、生涯のうちに読んでおきたい」などと書いたが、その『タイス』を過日、白水Uブックス版ですんなり入手することができたのであった。 『タイス』がかつて角川文庫版で出ていたのは知っていたけれど、容易に入手のかなわない代物だということは判っていた。いずれどこかで見つかるといいが……などとのんびり構えていて、一年に一度はかならず立寄…
林達夫の「歌舞伎劇に関するある考察」(1918年初出、四百字詰め約66枚)NHK大河の『どうする家康』は、NHKが総力をかけて制作しているらしく、見るにたる細部を備えているので、続けて見ている。家康は、「いくさなき世」を目指して、事実徳川時代は300年続いた。歴史モノも、その時代時代によって、人物の解釈が違っている。これまで家康は、「狸おやじ」のイメージで、若い俳優は演じなかったと思う。むしろ、信長の激しさや、秀吉の成り上がろうとする意志に焦点が当たっていた。いまの時代、部下を引き立て、部下を信頼し、おのれの弱さを認め、戦乱のない世の中を目指していく(あくまでNHKが表出している)家康型の人間…
10/07(土) 耳栓装着。 昨夜のMonster(9xx号室のキチガイ女)は→ 21時台 台所辺りほかで足を踏み鳴らす。スポンサーが来てい るフリをしたいのであろう。 03:38起床。 寒いので暖房する。 大江河馬噛ま=30分9頁(-p302)。 ネットサーフィン(PC)15分。 46.0kg(07:44)。 PC→ YouTube→ <ミニスタ> 仏語 動詞活用編(L6~L7)14分。 中条仏語=31分8頁(-p193)。 大江河馬噛ま=33分10頁(-p312)。 自転車に乗っていて、信号で止まる時に、ペダルで左の アキレス腱を強打した。激痛。年をとるとこんなことばかりだ 。 * * …
何だかどぎついタイトルであるが、朝日新聞社が中国を侵略したということではない。内扉の文をそのまま引用すれば、「昭和十四年元旦、日本人居留民が激増する中国の上海に日本語新聞が創刊された。その名は「大陸新報」。題字は朝日の緒方竹虎が筆を執り、近衛首相、板垣陸相の祝辞が並ぶ立派な新聞である。この「大陸新報」こそが、帝国陸軍や満州浪人と手を結び、中国新聞市場支配をもくろんだ朝日新聞社の大いなる野望の結晶だった。「正義と良心の朝日新聞」がひた隠す歴史上の汚点を、メディア史研究の第一人者が、半世紀近い真摯な朝日研究の総決算として、あえて世に問う。」 要するに、大東亜共栄圏が実現し、中国に多くの日本人が移住…
4時起床。洗濯物の片づけをしてから、残り野菜と昨日の刺身とを味噌汁にして朝食に。二度寝の間にセラーは2℃まで下がっていました。タクシー出勤。 1~3限が高3の授業(センター鷲田清一)。午後は体育祭の練習ですが、担任団への所属が無い私は参加の義務がなく、14時から年休を取って帰宅しました。体育祭自体にも参加する必要はない(と思うん)ですが、高1・高3の授業を担当している「準高校所属」だからなのでしょうか、1種目だけ、生徒・教員が一緒に走る或る種目に参加することになっていました。というか、走者一覧の名簿に私の名前が入った状態のパンフレットが印刷配布された後に、一緒に走ることになっている高1某くんが…
曇。 スーパー。セルフレジ、老人に対応がたいへんそうな人もいる。どうでもいいが、油類は高いんだな。オリーブオイルとサラダ油で1200円以上した。 たまに iPad mini でなく、PC で NHK+ を観ようとするときがあるのだが、Firefox だと弾かれるのを決まって忘れる。非推奨ブラウザにしておけば済むことで、何でアク禁(アクセス禁止)にするのだ。そもそも Firefox をサポートしないというのは、公共的な性格をもつサイトとしてあまり見識があるとはいえない。 昼。 NML で音楽を聴く。■ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第十一番 op.95 で、演奏はアリアンナ弦楽四重奏団(NML、CD…
初心者向けのリストは以前に書いたものがこちらにあります。最初に哲学書を読もうと思われたら下記のリストのほうがいいかもしれません。 waka-rukana.hatenadiary.com 最難解な哲学書 30冊 選ぶ基準 1.歴史的評価の高いもの 2.分厚いものや巻数の多いもの 3.翻訳も難しいとされているもの 4.西洋哲学の範囲内のもの 5.哲学以外の本も若干含まれる 古代 8選 『ソクラテス以前哲学者断片集』 プラトン『国家』 アリストテレス『形而上学』 プリニウス『博物誌』 『初期ストア派断片集』 セクストス・エンペイリコス『学者たちへの論駁』 プロティノス『エネアデス』 『ナグ・ハマディ…