1896年生まれ、1984年没。批評家、編集者。東京に生まれ、幼少年期をシアトルですごす。いくつかの私立大学、また鎌倉アカデミアで教鞭をとりつつ、戦前は岩波書店、戦後は中央公論社と平凡社の編集にかかわる。そのかたわらに多くの評論やエッセイを執筆。代表的な著作としては『共産主義的人間』がある。また平凡社の「世界大百科全集」の編集長でもあった。
読んだ本 柄谷行人『近代日本の批評Ⅰ 昭和篇 上』講談社学芸文庫 (1997) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 定義というものは普通先にくるものであるが、文学史的には後からくるものなのかもしれない。 「いまふり返ればあれはああだった」 という具合に。 小説は芸術でもあるとされるが、今日の「大衆小説」と呼ばれるものに芸術性はあるのか。 純文学と呼ばれる小説は一般に芸術性を追求する小説と言われている。 しかし、本書によれば明治期の小説は「純文学」であった。 大衆小説と純文学、なにがどう違うのか。こういうのが現代人にとって混乱している、まさに今の自…
読んだ本 林達夫『林達夫評論集』岩波文庫(1982) つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 最近は横文字が多いという声をよく聞く。 結論から言えば、五十年前と変わらないように思うのである。 本書をよく読めばなんとなくそう思えてならない。 ・・・ 85項には新しい造語、アメリカニズムに対する林達夫の言及がみられる。 このことを除いても、本書は逆に現代に生きる自分でもわからないカタカナが…
引用元:版元ドットコム つづきを読み終えた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 感想 本の内容に関しては、特に重要だと感じた部分は過去の記事に書き残したので感想を書いて終わりにしたい。 関東大震災、東京大空襲、朝鮮戦争やマルクス主義の台頭など、実に多岐にわたって強烈な出来事に揉まれた生涯であったと感じる。 そのなかで最後まで出版に向き合い続けた信念というものは本人しかわからない。 個人的な解釈では、自由への闘いであるように感じた。 それは岩波書店や中央公論社に一時は在籍していながらも、社内政治に辟…
読んだ本 引用元:版元ドットコム つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 本書もいよいよ残り80ページほどとなった。 塵も積もれば山となる。 分厚い本であっても、少しずつ読めば最後までたどり着く。 ・・・ 第二次世界大戦の影響により、林達夫は自身の蔵書をも奪われる結果となった。 そして再度、書目リストの作成に当たった際、波多野精一が推奨したリストを着実に読み進めたと本書に書いてあった。…
読んだ本 引用元:版元ドットコム つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 マルクス主義をめぐるイザコザが語られた。 岩波茂雄は決してマルクス主義者ではなかったと書かれていたが、岩波書店からマルクスに関する本が発行されたとき、ことごとく発禁処分を受けたり、書き手や編集者との対立など、複雑な出来事が描写されていた。 私の記憶が正しければ、発禁というのは裏を返せば言葉の力がどれほどの影響力を持っ…
読んだ本 引用元:版元ドットコム つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ トルバトゥール・・・中世の詩人 ジョングルール・・・中世フランスにおける旅芸人。聖者伝などを歌う。伝承の担い手として役割を果たした。 ベルクソン「宗教は知性の分解力に対する自然の防御的反作用である」 (『道徳と宗教の二源泉』) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 非常に密度の濃い第一章を読み終えた。 林達夫は書籍をめぐる重要な問い、「作家は誰のために書くのか…
読んだ本 引用元:版元ドットコム ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 本書は以前から気になっていたが手に取るタイミングではなかった。 そして数ヵ月経ち、今がそのタイミングだと感じまず60ページほど読む。 ・・・ 本書の序盤で林達夫は、まず関東大震災を経験した清水幾太郎と思想上の立場の比較がなされた。 神奈川県の鵠沼ではほとんどの家が倒壊されたと書いてあった。 地震のメカニズムにもよるが、死者の大半は火災によるもの、つまり間接的には都市構造によるものが大きいと…
本日に手にしておりましたのは、図書館から借りている「鶴見俊輔 詩を語る」 であります。この本は鶴見俊輔さんに谷川俊太郎さんと正津勉さんが聞き手になっ て詩の話などを聞くという体裁になっています。 初出は「詩の雑誌 midnight press」で2003年のことだそうです。これが刊行 されたのは2022年で鶴見さんの生誕100年を記念したということですから、ずい ぶんと時間がかかることにです。 「父のこと、母のこと」という見出しは、この鼎談の部分につけられたものと なります。 鶴見さん、谷川さんともに有名な両親を持ったことになるのですが、当方が話題 にしたいのは、谷川さんの母のことでありますね…
本日は久しぶりでの野暮用でありまして、いつもよりもすこし時間がかかって 帰宅しましたので、ちょっとくたびれでした。夜にはトレーニングにいくことは できないかと思っておりましたが、その元気はありませんでした。 夜には昨日に購入した車谷長吉さんの「文士の魂・文士の生魑魅」を手にする ことにです。この文庫の巻末解説は田中和生さん(1974年生まれの方だそうです) が担当で、田中さんは「『鹽壺の匙』以来その作品に魅せられながら、どうして 車谷長吉は私小説にこだわるのだろうとずっと思っていた。」と書き出していま す。 田中さんが「文学的な影響をあたえられ、またその新しい作品に注目しつづけ ている同じ世代…
林達夫(1896‐1984) 『デカルトのポリティーク』が書かれたのは昭和十四年(一九三九)。『反語的精神』は昭和二十一年(一九四六)。その間に戦争・敗戦があったが、林達夫の姿勢・着眼にはいさゝかの揺るぎもなかった。 新スコラ派がはびこる。哲学が教室内のものとなり果て、出世や利権や売名の道具と化す。世俗権力に寄添う。自由に考え、発言する者は危険視される。 戦前も戦後も、日本で権威を気取る者たちの心根には、なんの変化も進歩もなかったと見える。哲学は死んだ。 生きる道は限られる。ソクラテスはへりくだった。前途有望な青年たちに自力で考えさせ、発言させ、自身はツッコミに徹した。青年たちは、自ら賢くなっ…
今日の朝日新聞の社説「ウクライナ侵攻1年 戦争の理不尽許さぬ知恵を」はわたくしには何が書いてあるのか文意不明、というか支離滅裂のように思えるものであった。a)まず「ウクライナで日常となっている戦争の現実」が描かれる。 b)「戦争の非道は、弱き者により重くのしかかる」ということが次にいわれる。 c)それを受けて「この理不尽に終止符を打たねばならない」とされ「戦争を終わらせることができるのは、それができるのはそれを始めたロシアだけだ」。それを「プーチン大統領に強く求める」とする。 d)戦争の被害は食糧やエネルギーの高騰という形で全世界の人(特に弱者)に及ぶ。 戦争はいったん始まると終わらせることが…
個人的な経験に即して書けることだけ、メモ代わりに残しておきます。 『独学大全』は私も読みました。林達夫に私淑する読書猿さんにとって、学ぶことは確かに娯楽でもあるのかもしれない。でも文化を享受するだけではなく、発信するためのものでもあるのではないかしら。それに、『独学大全』は、資格取得のような、働くことや給与アップに直結する学びも勉強に含めていたはずです。当たり前ですけど。それは、娯楽でもあるかもしれませんが、スキルアップしこの世をサバイバルしていくための必死の努力であることの方が多いのではないでしょうか。 私は、休み時間に教室で小説を読んでいると「なんでそんなもの読んでるの?将来どうするつもり…
庄司薫の「赤頭巾ちゃん 気をつけて」は、安田講堂落城の後、東大入試の中止が発表されてしばらくして発表された。入試の中止などを背景にした作品であるからリアルタイムに書かれた作品である。この小説を読んで、それまでかすかに残っていた「小説でも書こうかな」という色気は完全になくなった。わたくしが20歳前後のことである。 わたくしの人生を前後に分けるできごとがあったとすれば、それは公的には東西の対立の終焉、東側の崩壊、マルクス主義の終焉であり、私的には大学闘争(紛争)であったと思う。前者はもちろんマルクス主義そのものの終焉である(それについては終焉したのは偽の社会主義、偽のマルクス主義であって、マルクス…
読んだ本 引用元:版元ドットコム 仲正昌樹『教養主義復権論 本屋さんの学校 Ⅱ』明月堂書店 (2010) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ ベンヤミン「(・・・)西ヨーロッパの新聞はまだ作家の手のうちにある有用な道具ではないからです。新聞はいまだに資本の所有物となっています」 ベンヤミン「われわれが写真家に求めなければならないもの、それは流行による磨耗から写真を救い出し、革命的な使用価値を付与する説明文を自分の写真に与える能力です」 ベンヤミン「作家たちに何も教えることがない執筆者は、誰に対しても教えることはありません」 ーーーーーーーーーーー…
読んだ本 引用元:版元ドットコム ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 いままで自分は、水声社から出版された本を多く貪り読んできた。 本書は創業者、鈴木宏氏の自伝的なものとなっている。 夢中になり100ページほど読み進めた。 ・・・ 人には野心が必要であるが、縁というのもまた同じくらい大事なものだと思うようになっている。 まだそこまで多くは読んでいないが、様々な人物の自伝を読んでそのように感じる。 例えば伝説の編集者と呼ばれている林達夫も、ある人物との縁がなければ岩波書店で仕事をしなかっただろうと思わずにはいられない。 また、関東大震災という偶発的…
曇だけれど、時々太陽もあらわれる。スーパー。長時間、昼寝。どんよりと低く雲が垂れ込めている。 肉屋。豚ロースしゃぶしゃぶ肉×3。 ガソリンスタンド。NML で音楽を聴く。■ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第二番 op.18-2 で、演奏はプラジャーク・クヮルテット(NML、CD)。■フォーレのヴァイオリン・ソナタ第一番 op.13 で、ヴァイオリンは千葉清加、ピアノは上田晴子(NML)。なかなか伸びやかなヴァイオリンで、あ、いい曲だなと思わせるレヴェル。それに比べるとピアノは凡庸で、ちょっと気になった。Touche le coeur 千葉清加(ヴァイオリン) 上田晴子(ピアノ)アーティスト:千葉清…
読んだ本 三島由紀夫『戦後日記』中公文庫 (2019) 引用元:版元ドットコム 正宗白鳥『自然主義文学盛衰史』講談社学芸文庫 (2002) トーマス・マン『ゲーテとトルストイ』岩波文庫 (1992) 引用元:版元ドットコム 林進『三島由紀夫とトーマス・マン』鳥影社 (1999) その他数冊 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 過去、世界的な規模で起きた文学運動について関心を持った。 そのひとつがエミール・ゾラを発端とした「自然主義」というものである。 こ…
楽山の読書家気取り2 『読書有朋』渡部昇一、谷沢永一著 2021年11月06日 楽山日記(LD) http://mn266z.blog.jp/archives/31058264.html お題の本の読後感想文を、また書いてきたかと思ったら、読みたい本のリストをあげて読書家アピールして終わっている記事です。不十分で、インチキで、楽山の自己愛の自己中の体質だけが分かるところが増えたと書かせているようです。 >本書は、渡部昇一と谷沢永一による対談をまとめたものである。随分前に読んだときはお二人が話題にしているのは自分が知らないものばかりで全くといっていいほど話についていけなかったのだが、今回再読して…
1、色というのは思考の要素だとおもう。境界線は天と海を隔てるけれど、碧色は天と海が共有するものである。色は境界線に対して多孔性porousとしてある。 2、アイルランドから、カネの話ばかりしているイギリスへ来ると、病的な感じがしたが、イギリス人はカネそれ自身が好きなのではなく明確性を重んじる文化だからとイギリス人は語る 3、トランプ旋風が起きなかった理由?あたりまえでしょう。それよりも、日本マスコミがトランプ旋風が起きて欲しいと願ったのはどうしてなのか知りたい。異常なんじゃない? 4、 津田左右吉をたたえよう 津田左右吉は「詩は外国語で書いてはいけない」と言っています。源氏物語は認めていたよう…
前回はこちら nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 前回は映画『もののけ姫』の製作秘話を明かす、宮崎駿『折り返し点』を読んだところからスタートし、小林秀雄、池田晶子、モリス・バーマン、林達夫へと流れていく過程を書いた。 今回はそのつづきから、最新の読書日記807までのふりかえりを行う。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー nainaiteiyan.hatenablog.com 文学や書物には何ができるのかという問いを絶えず行いながら本書を読み終えた。 正直なとこ…
読んだ本 引用元:版元ドットコム ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ ウ・トポス・・・・・・・ギリシア語。ユートピアの語源(諸説あり) 「存在しない場所」という意味がある。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 時間のあるうちにマルクスについてある程度理解しておきたいと思っている。 政治に詳しくなりたいという理由ではない。 端的に、人間の本質が隠れていると感じているからである。 それは、マルクス主義がなにか崇高的なものだからという理由ではなく、逆に物質礼拝はいろいろな意味で錯誤していると私は解釈してい…
曇。オッリ・ムストネンの弦楽四重奏曲第一番昼飯の抜き菜の味噌汁がめっちゃおいしかった。抜き菜はわざわざ買うようなものではないから、畑のある家の特権だな。 モーツァルトの「グラン・パルティータ」 ブリュッヘン指揮、18世紀オーケストラ。戴冠式ミサ 証聖者の荘厳晩課 アヴェ・ヴェルム・コルプス 珈琲工房ひぐち北一色店。森まゆみ『町づくろいの思想』を読み始める。社会時評、って感じかな。社会・政治的な思考の肌理が荒くて、大雑把な印象を与えられる。また、著者は典型的な東京の「意識高い系」の人で、こういうのは少し苦手でないこともない。しかしまあ、そんなことはどうでもいいのだ。硬派なエッセイといえばそうで、…
www.iwanamishinsho80.com ▼ぼくが私淑している一人が林達夫です。彼は岩波書店の『思想』や、平凡社の『世界大百科事典』の編纂に携わった人物です。ぼくは百科事典に出会ったのが遅くて、その分感激したというか、すごく助けられてきたという気持ちがあって、彼を知った時は興奮しました。 10/14(金)午前10時〜、11月の十三代目市川團十郎・白猿襲名披露興行夜の部「口上」&『助六由縁江戸桜』のチケット一般発売で大いに苦労、歌舞伎座特別会員&ゴールド会員の先行予約があって、10時20分ごろやっとアクセスできてもS席完売、何とか1F奥のA席を確保するのがやっとだった。左耳の難聴で近視(…